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高校3年、夏休み初日。
部室には4人の高校生がいた。
先に卒業しながらも、毎週の探索に来てくれていた一人の女性を待つために。
そういえば、去年の卒業式、SOS団の全てのメンバーが何らかの変化を得た。それについて話そう。
……俺はあくまでも一般人だ。


朝比奈さんの卒業式の日、未来に帰る話をハルヒに聞かれ、俺達は一切をハルヒに打ち明けた。
ハルヒの力のこと、長門の親玉の事、古泉の超能力の事、ジョン・スミスの正体は時間疎行をした俺ということ、そして朝比奈さんが未来に戻り二度と会えなくなること。
ハルヒはやけにあっさりと信じ、力を自覚した。
「ふ~ん。あたしにこんな力があるなんてね。便利そうね、これ。」
と、力を自覚したハルヒはしばらく、外の桜の色を白から赤に変えたりしていた。
俺は平凡な世界が終わり、電波な世界が始まることを覚悟していた。
しかし、それは無駄に終わった。
朝比奈さんが最後の別れを告げて部室を出ようとした時、ハルヒは泣きながら朝比奈さんを止めたのだ。
「うぐっ…みくるちゃんに……会えなくなるなんて…ひぐっ……イヤ。」
朝比奈さんも、もらい泣きをしながら答える。
「で、でも……これは《既定事項》なんです…ふえぇぇん!」
ここでハルヒの口から、まさかとも思えるセリフが吐かれた。
「じゃあ!未来に帰る道具なんて消すわ!情報統合思念体ってのも!それならあたし達はずっと離れないでいられるわっ!!」
それをただひたすらに《望んだ》のだろう。

長門は思念体との交信が取れなくなり、朝比奈さんも頭の中からTPDDが消え去ったと言っていた。
そうやって、まだ全員がこの時間平面上とやらに残っていた。


「みくるちゃんはまだ!?遅いわ!」
ハルヒは力は残っているが、完全に制御出来るようになっている。
もともと頭が良い奴だから当然だろう。
部屋の隅でハードカバーを読んでいる長門。
能力はそのままだ。ただ、《申請》とやらが必要無くなったらしい。
ニヤけ面で、詰め将棋の古泉。
古泉は確認のしようが無い。閉鎖空間が生まれないからな。
まぁ、こんな感じで普通の生活を過ごしている俺達。
今日からは夏休みということで、まず部室で全ての予定をたてようというわけだ。
……受験?
「そんなもの関係ないわっ!!」だそうだ。

しばらく経つと、不意に部室のドアが開く。
「す、すいませ~ん。……お、遅れちゃいました…。」
大学に入り、人が変わったように大人っぽくなった朝比奈さんが部室にきた。
俺にとってはもはや《憧れ》に値する人だ。
「おっそーーい!!みくるちゃんっ、罰として《あれ》に着替えなさい!」

……その《憧れ》の人が目の前で裸にひん剥かれようとしている。
俺と古泉は息を合わせたように外に出た。
「やめてぇ~~!じ、自分で脱ぎますからぁ~!!」
悲痛な叫びが聞こえた。
ああ…また楽しい夏休みが始まるんだな。
などと考えながら、俺は窓から景色を見ていた。

「入っていいわよ!」
ハルヒの元気な声が聞こえて、俺と古泉は部室に入った。
そこには、昔の可愛らしいメイドとは違う、少し綺麗な、大人のメイドがいた。
俺と朝比奈さんの目線が合い、微笑んできた。
心が奪われた。しばらくポーッとしていたら、消しゴムが飛んできた。
「いってーな、何すんだよハル……「あ、あたしじゃないわよ……。」
ハルヒが驚いた表情を向ける先には、長門が居た。
「………あんまり、デレデレしないで。」
長門さん?あなたそういうキャラでしたっけ?
長門はすぐにハードカバーに目を落とした。
「ま、まぁいいわっ!とりあえず、夏休みの予定決めに移りましょっ!!」
さっき、俺に投げようとしたシャーペンを置き、ハルヒはそう言った。
………長門が投げなかったら俺はヤバかったのか?

……結局、予定は決まらずにこれから探索に行くことだけが決まった。
俺は、朝比奈さんと長門と一緒だ。
やれやれ、何か一波乱ありそうだな…。


早くも一波乱。
学校を出るや否や長門は早足で歩きだし、俺達は公園に連れて行かれた。
そこで長門はいきなりこんな事を言い出した。
「……わたしはあなたが好き。でも、あなたは朝比奈みくるばかり見ている。……朝比奈みくる、あなたはこの人のことをどう思ってるの?」
長門から愛の告白。しかも、3人でいるにもかかわらずだ。
俺は赤面した。いや、この状況でストレートに好きなんか言われたら赤くなるさ。
「あ、あ~…長門。そういうのは普通は二人っきりの時に言うもんなんだが……。」
長門はこっちを見て答えた。…いや、睨んだと言った方がいいかもしれん。
「あなたは、黙ってて。……これは女同士の問題。関われるのは、涼宮ハルヒを含むわたし達三人だけ。」
……長門、何に影響されたんだ。
長門は言い終わると、携帯を取り出してメールを打ったようだ。
「いま、二人を此処に呼び出した。……あなたに誰が好きか選んでもらう。」
おいおい、マジでか?

俺は朝比奈さんを窺うと何やら顔を赤らめて考え込んでいるようだ。
……俺って、いつからこんなモテキャラになったんだ?


しばらくすると、ハルヒと古泉が来た。
……いきなり長門暴走モード。
「わたしは、彼が好き。あなたはどう思ってる?」
このセリフに不意をつかれ、ハルヒと古泉は固まった。
3秒程フリーズした後、古泉は居場所を無くしたかのように3人から離れ、俺が一人座っているベンチにきた。
「あなたが人気者で羨ましいですよ。」
嫌味か、それは。
「個性の強い奴等ばっかりで困るがな。」
古泉は3人の方を指さし、ニヤけ面を崩さずに答えた。
「ほら、みなさん必死な割に楽しそうですよ。個性が強い方が元気でよろしいのでは?」
3人は、楽しそうに主張しあっているように見えた。
「まぁ…な。」
「それより、あなたは誰を選ぶかを決めといた方がよろしいのでは無いですか?」
古泉がニヤけ面を満面に浮かべて、楽しそうにしていた。案外、一番楽しめているのはこいつじゃないだろうか。

何十分たっただろうか。
3人が話を終えて俺達のベンチに向かってきた。
「キョン、あんた…はっきりしなさいよ。」
とハルヒが言う。
「あ、あの……いまから、一人ずつ…その…告白、しますから。」
と朝比奈さん。
「全部聞いたら、選んで。」
と長門。
これは何処のテレビ番組のなんの企画だ。…などと考えている内に、古泉は当たり障りない位置まで移動していた。
まずは、長門が前に出て来た。
「……何度でも言う。あなたが、好き。」
短く、はっきりとした告白が長門らしいな。
などと考えていると、キスされた。
「~~っ!?な、長門っ!?」
「わたしの……気持ち。」
そう伝えると、あっさりと後ろに下がった。

次に出て来たのは朝比奈さん。
「あ、あの!わたし、…大学に行っても……キョ、キョンくんのことばかり考えてましたっ!!」
やはり、言葉の後に待っていたのはキスだった。
「……わ、わたしを…選んでください、ね?」
そう言って朝比奈さんは小走りに下がって行った。

最後はハルヒ。
「あんたね、今までにあたしから受けた恩を考えるならあたしを選びなさいっ!」
ヘッドバットのような押しつけるようなキスをされた。
「……ずっと、好きだったんだからね。」
そう言い残し、ハルヒも下がって行った。

さてさて、残されたイベントは俺の返事だけだが……正直、厳しい。
《みんな違ってみんな良い》と、どっかで聞いた詩のように一人一人違った良さがある。
その中から一人を選べというのは、最も幸せな人間であると同時に、最も不幸な人間かもしれん。
俺は、小一時間程悩み続けた。

意を決し、俺は3人の前に立った。
「みんな、聞いてくれ。…俺はみんな好きなんだ。……だけど、付き合えるのはただ一人しか考えてない。」
3人の間の空気が強張った。みんなが俺の目を見て話を聞いていた。
「だけど、約束してくれ。俺が誰を選んでも……これまでの関係は崩さないと。」
3人はただ無言で頷いた。
それに、俺は微笑みを返すと、口を開いた。
「俺が……俺が一番好きなのはっ!!」





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