一週間前のことだ。SOS団が根城にしている文芸部室にハルヒが鶴屋さんを連れてきた。
鶴屋さんの誕生パーティーを鶴屋邸で開催するらしく、その会にSOS団の面々にも出席を願いたいという話だった。
しかしその誕生会というものがただの誕生会ではなく、鶴屋さんの誕生日を祝ってくれた出席者の一人に
鶴屋家の財産を半分譲渡するということなのだ。

鶴屋さん「ウチのお爺ちゃんがめがっさ情に脆い人でさ。孫の誕生日を自分のことのように祝ってくれるような人には
     お金で御礼をしても足りないくらいだとさ!財産の半分でよければいくらでもくれてやるってさ!」

阿呆だなその爺さん。でもこれはものすごく有難い話じゃないか?友達である鶴屋さんの誕生日を祝ってあげたいという気持ちは普通にあるが、
それだけで鶴屋家の財産を半分も貰えるんだぜ?でも出席者の一人にしか譲渡しないって?
ということは鶴屋さんの誕生日を一番祝福した人物が財産ゲットというわけか。

みくる「鶴屋さんのお誕生会、楽しみですね。あ、財産が欲しいわけじゃないですよ!私の大事なお友達ですから、心をこめてお祝いしてあげたいです。」
ハルヒ「そうね。鶴屋さんにはお世話になったしSOS団が精力を込めて鶴屋さんの誕生日を祝福するわよ!」
古泉「鶴屋さんのお爺さんにも困ったものですね。何も僕達は見返りが欲しくて鶴屋さんの誕生日を祝うわけではありませんのに。」
長門「おめでたい」

こいつらの表情からは金に目がくらんでる様は読み取れない。微小なりとも金に目がくらんだ自分が恥ずかしくなってきたな。
でもこれが正常なはずなんだ。そうだろう?おかしいのはコイツらの方さ。


6日後、鶴屋さんの誕生日の前日の夜、俺は鶴屋さんへの拙いプレゼントを用意して、もしかしたら財産を少しでも貰えるかもしれないという
淡い期待を胸にしてベッドに寝転がると、その横から有り得ない人物の声が発せられた。

「久しぶり」

この聞き覚えのある声・・・朝倉涼子が俺の部屋に居たのだ。

俺は反射的に恐怖を感じ、飛び上がってファイティングポーズを取った。
キョン「何故お前がここにいる?長門によって消されたはずじゃ・・・」
朝倉「完全に消されたわけじゃないの。私の暴走データだけを消去し、身体と通常の記憶はそのままにしてあったの。
   ずっとあるアパートの一部屋で待機モードを実行していたけど、鶴屋さんの財産譲渡に関する情報を長門さんから
   盗み出すことができてね。私がその誕生会に出席して遺産を頂いちゃおうと思って。」
キョン「鶴屋さんを甘くみないほうがいいぜ。あの方は恐らくお前の悪意に気付くだろうさ。お前なんかに財産は渡さないさ。」
朝倉「たしかに彼女は只者ではないようね。でも私や長門さんについて全てを知っているわけではなさそうだわ。
   私の能力を使えば彼女を欺くことも可能かもしれないわよ?」
キョン「何をするつもりだ?」

朝倉「アナタは少しの間この中に入っておとなしくしてて。」
俺は朝倉の生み出した妙な空間の裂け目の中に放り込まれた。その中は牢獄みたいな感じで、ベッドとトイレとテレビがあるだけだった。
朝倉「私が財産を貰ったらすぐに出してあげるわ。食料は逐一配給するから。他にも希望の物があれば言ってね。」
キョン「しまった。くそ!朝倉め、何をするつもりだ。」


パーティー当日
鶴屋邸には既にキョン以外のSOS団の面々と谷口と国木田、同じクラスの同級生の何人かが既に集まってガヤガヤやっていた。
谷口「まさか俺達も誘ってもらえるとはな。」
国木田「映画撮影や文化祭で少し会っただけなのにね。」
みくる「鶴屋さんは過ごした時間の長さは気になさらないお方ですから。短い時間でも共に過ごした人は皆お友達だそうで。」
古泉「人徳のある方には人もお金も集まるものなのですね。」
ハルヒ「ところで財産の半分を誰か一人にあげるって本気かしら?別に財産が欲しくて鶴屋さんを祝うわけじゃないけど。」
古泉「その辺はとくに気にしないでよいのでは?今日は純粋に鶴屋さんの誕生日をお祝いして差し上げましょう。」
ハルヒ「そうね。ところで皆プレゼントは何持ってきた?あたしは手作りのパジャマ。」
古泉「僕も手製のものです。鶴屋さんの家は大抵の物があるでしょうから、手製の物の方が喜ぶかと思って。この木彫り像です。」
みくる「私は帽子を作ってきました。」
ハルヒ「有希は?」
長門「私はこれ。彼女が好きだと言っていた水戸納豆。」
一同「・・・・・・・・・(どおりでさっきから部屋が納豆臭いと思った)」

そこへキョンが到着
キョン「やあ諸君。遅れてすまない。」
ハルヒ「遅いわよバカ!罰としてアンタは今日はパーティーが盛り上がったところで何か面白い芸をやりなさい。」
みくる「キョン君はプレゼントは何を持ってきたんですか?」
キョン「いやー俺の小遣いじゃ大した物は買えないのでね。こんな物しか用意できなかったんすよ。」

そう言ってキョンが皆に見せた物は豪華な額に納められたモナリザが悩んでいる表情をしている絵だった。

国木田「こ、これって!?」
古泉「"モナリザの苦悩"ですよ!時価数千万は下らない一品です!」
ハルヒ「ア、アンタこんなものどうやって手に入れたのよ!?宝くじでも当ったの!?」
キョン「お前達何を寝ぼけているんだ?伝統栄えあるあの鶴屋家様の大事な大事な一人娘さんの誕生パーティーだぞ?
    これくらいの物を用意するのは当然だろう。お前らは何だ?そのゴミの数々は。鶴屋さんの誕生日の価値はそんなゴミと
    同等だとでも?鶴屋家も見くびられたもんだな。」
一同「・・・クッ!・・・」

キョン「俺のこの心のこもったプレゼント見れば、鶴屋さんも俺に財産を渡す気になるんじゃないかな。」

一同の怒りに満ちた視線がキョンに向けられる。
キョンはそんな視線をものともせず、ただただ鼻で笑い、一同を蔑みの目で見返した。
次第に一同も怒りと欲望を言葉に表す。

谷口「キョンてめー、随分と汚ねぇな。」
国木田「プレゼントなんかで鶴屋さんの心を揺るがそうとするなんて」

ハルヒ「財産はこの中で唯一人、立派に団長を務めているこのあたしが貰うべきよ!」
谷口「なに言ってやがる!気の弱そうな人間だけを集めてその中で威張って悦に浸ってるだけの小物のくせに!」
ハルヒ「何よその言い方!」

国木田「みんなよく考えてみてよ。僕は鶴屋さんと会ったのはほんの2~3回だけなのに誕生会に誘われたんだよ?これはもう僕に気があるってことじゃないかな。だから財産は未来の夫である僕に」
古泉「↑谷口以上の駄キャラが何か言ってますよ。」
ハルヒ「谷口はまだキャラが立ってるからね。たしかに国木田はメインキャラの中では一番の駄キャラね。」
国木田「クッ!」

古泉「アナタ達、財産を貰える気でいたのですか?傑作ですね。財産はこの中で一番の苦労人であり、人格者であるこの僕に対して
   賞賛の意を込めて与えてくれるものだと思っていましたが。」
ハルヒ「主体性を持たない流されタイプの人間が何を言うか。いつもニコニコと振舞ってれば危機を回避できると思ってるあたりが嫌らしいわ。」
谷口「ホモの人格者か。笑わせるぜw」
古泉「何てことを言うんですか!」

みくる「財産は、鶴屋さんの親友というポジションであり、性格良し、人当たり良し、手先が器用、純粋な心を持っているこの私が貰うべきなのです!」
古泉「ボソッ(未来の上司からも信頼されてない阿呆が)」
ハルヒ「身体ばかり成長して、精神的に全く成長しない小娘に財産なんか渡せないわよ!」
みくる「何ですってー!」
長門「いや、全くその通り」

みくる「(ビキビキ)この糞アマ!」
みくるが長門に殴りかかる。殴られた長門は表情を変えないまますかさず反撃の蹴りをみくるに浴びせる。
吹っ飛ばされたみくるがハルヒにぶつかり、ハルヒも怒り狂って喧嘩に混じりだした。
ハルヒ「上等だァ!」
古泉「下衆どもが」
次第に乱闘は広がり、古泉、国木田、谷口も含めた醜い乱闘パーティーが開催された。

30分くらい乱闘は続いただろうか?
次第に全員に疲れが見え始めたころ、今までその争いを高みの見物していた元気いっぱいのキョンが乱闘の中に入り込み、全員を一掃する。
キョン「強い人間こそが鶴屋家の財産を与えられるに相応しいのだ! くたばれ!」

ハルヒ「くっ・・・キョンの分際で・・・」
みくる「もう・・・ダメ・・・」
古泉「下衆などに・・・僕が・・・」
長門「(バタン)」
谷口「無念」
国木田「もう少しで・・・億万長者に・・・」

キョン「わーっはっはっは。財産は俺のものだ。」

パーティーに来ているキョンは朝倉涼子が変装している偽者である。

これまでの乱闘の一部始終を鶴屋さんは監視カメラで見ていた。
鶴屋さん「ぐぬぬぬ・・・キョンくん!」

バタン!
鶴屋さん「キョンくん!」
偽キョン「おお!これはこれは鶴屋さん。ご覧ください。貴方の家の財産を狙う輩は俺が粉砕しておきました。
     それとこの絵は俺からのプレゼントです。」
鶴屋さん「キョンくん・・・ワタシは決めたよ。キミにだけはビタ一文たりとも財産は渡さないとね!」
すかさず鶴屋さんは持っていた機関銃でキョンを撃ちまくった。

ドガガガガガガガ!
偽キョン「ひえええええええええ!」
一同「待て―――――――――――!!」
いつのまにか目を覚ましていた一同が全員で偽キョンを追いかけて鶴屋邸を走り回った。

その頃本物のキョンは・・・・
朝倉が窮地に立たされたことにより、キョンを閉じ込めている能力にまで力を回す余裕が無くなったため、キョンは牢獄から出られた。
キョン「くそ、こんなことをしている場合じゃない!早く鶴屋邸に行かないと。」

キョンが鶴屋邸に行き、パーティー会場まで行くとそこには誰もおらず、でかいテーブルの上に豪華な食事が置いてあるだけだった。
キョン「静かだな。何だ、アイツらまだ来てなかったのか。朝倉も居ないみたいだ。」
俺は用意してある食事を食べながらみんなを待った。」

ゾロゾロ
ハルヒ「くっそーキョンの奴、どこに隠れたのかしら。」
偽キョンを捕まえることが出来ず、全員一度会場に戻ってきたようだ。

谷口「あ、キョン!」
キョン「よお皆。先に頂いてるぜ。」

一同「グヌヌヌヌヌヌヌ・・・・・・(怒)」
キョン「どうしたんだ皆?そんなに恐い顔して」
みくる「どうしたんだ?ですって!」
国木田「よくもまあ抜け抜けと!」
古泉「恥ずかしくないんですか!?」

キョン「ちょっと待て。一体何のことだか・・・」
ハルヒ「ふざけるなー!みんなやっちゃえ!」

ドカドカバキバキドゴドゴ!!

俺はパーティーに出席しているメンバー全員からリンチを受けている。何故だ!?
キョン「俺が一体何をしたっていうんだ・・・」
谷口「あんな事をしでかしておいて今更しらばっくれるんじゃねえ!見損なったぜ。」
キョン「あんな事? はっ! それはまさか朝倉の仕業じゃあ・・・」
ハルヒ「この期に及んでそんな見え透いた言い訳をするなー!」

ドカドカバキバキドゴドゴ!!

みくる「!?」
古泉「どうしたんです?朝比奈さん?」
みくる「あそこに・・・キョンくんがもう一人いる・・・」
古泉「本当だ!長門さん、あそこにいる人物の正体を見破ってください」
長門「(コクン)」
長門はうなずくと指からビームを放ち、それが偽キョンに当るとキョンの姿形をした着ぐるみが剥がれ、朝倉の姿に変わる。

朝倉「うふ。バレちゃあしょうがないわね。ゴメンねキョンくん。SOS団のみなさん、また会いましょうね~」
そう言って朝倉は消えていった。
ハルヒ・谷口・国木田・鶴屋さんもキョンの着ぐるみが剥がれて朝倉が剥きだしになるところから見ていたようだ。

みくる「・・・・・・・」
古泉「・・・・・・・」
長門「・・・・・・・」
ハルヒ「・・・・・・」
谷口「・・・・・・・」
国木田「・・・・・・」
鶴屋さん「・・・・・・」

谷口「ま、まあ、真犯人も見つかってキョンの疑いも晴れたところで」
一同「めでたし めでたし♪ ってことですな~! アハハハハハハ♪」

キョン「全然めでたくねーよ・・・」
一同「!?」

キョン「この落とし前、どうつけてくれるんだ・・・」
一同「ガクガクブルブル」

キョンは落ちていた機関銃を乱射し始めた。
キョン「ピーヒャラ ピーヒャラ パッパパラパ♪」

ハルヒ「ちょっとキョン!謝るから!」
みくる「ひええええええええええ!」
古泉「待て待て! ほら見て! マッガーレ! マッガーレ!」
谷口「ちょ、シャレにならねーよ!」
国木田「ひいいい、母さ~ん!」
鶴屋「財産あげるから!全部あげるから!」

楽しいお誕生会でした。
終わり

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