あるところに、全く笑わない少女がいました。
あまりの無表情に皆がその子を笑わせようと頭を捻ります。
しかし町一番の頭のいい人の方法でも、少女は笑いません。

少女は色々な体験をして、少しずつ大きくなっていきました。
大きくになるにつれて、悲しいこともいっぱい覚えてしまいました。
だから笑っていないと自分が悲しみに耐えられなくなっていってしまいました。
少女は少しずつ笑い方を覚えていきました。

彼女の快活な笑い顔をみればみんなが幸せになりました。彼女の笑顔は安心をもたらしました。

ある時、笑う彼女の元に一人の女の子がきて言いました。

「私はあなたの笑う顔を見て幸せです。
でもあなたは幸せなの?」

彼女は本当に幸せなのかな?
彼女の周りは幸せだけれども
彼女は本当に幸せなのかな?
彼女の周りは幸せだけれども

「よくわかんないわ……変な本ね……有希、読む?」
「もう読んだ」
「あっそう……つまらないわよねこの本」
「人による」
「……そうかしら……?」

――――

「キョンくんっ……キョンくんっ……!」

(あの人はいつも……とても楽しそう……)

「アハハッ!! めがっさ面白いよっ!!」

(でも……完全な笑いではない……私には分かる……)

「みくるんはそんなこと気にしないのっさ! アハハッ!」

(……何故……?)

――――

「来て」
「おやっ、ゆきんこアタシになんか用にょろ!?」
「話がしたい」
「珍しいこともあるもんだねっ! いいよっ!」

――――

「ううっ、寒いねぇ! いやぁ屋上までくるとは、どんだけ重要な話なんだいっ!? ほらここボケるとこにょろよ!」
「……私には隠さないで言ってほしい……辛くても全部聞くから……」
「おおっ、お……? なにをっさね……?」

「あなたの笑顔は、作り笑い……?」

「……!?」

「私には分かる……あなたの目の奥にはいつも悲しい光が映ってる……」

「なっ、そ、そんなことないっさ……! ……ははぁ、ゆきんこアタシみたいに笑えないからってそんなふうに嫉妬しちゃってぇ!! コラッ!」

「……私がもし笑うとするなら、あなたのように笑いたくはない……涼宮ハルヒのように笑いたい……」

「……え……あ……?」

「あなたの笑い顔をなにかに例えるなら、それは静止物。あなたの笑顔は、何かの模写……?」
「まるで人の笑顔を写したように、自然。それでいてあなたには不自然。」
「…………」
「そう考えて今あなたに」

「もういいよ……」

――――

「いつから気付いてたのかな……言って欲しいな……」
「初めて会った時から……とても自然な笑顔だと思ってた、でも自然過ぎてどこか変だった……笑顔も口調も……」
「そっか……ゆきんこ頭いいもんね……バレちゃったかぁ……」
「……どうしてか知りたい、その笑顔の訳を……」
「……誰かに話すのは初めてだけど……ゆきんこは信じるよ、だから……言うよ」

――――

「はじめはどこからかなぁ……そうだね、私が伯父さんの家に預けられてた頃だから……9歳頃かなぁ……
家の事情でちょっとばかし伯父さんの家に預けられてたんだ……その頃は、笑ってた……
家にいるのもよかったけど、伯父さんいい人だと思ってたから……別に寂しくなかった……
……でもその伯父さんはとってもお酒飲みでね、よく私に暴力とか……時にはもっと嫌なことされたんだ……
ゆきんこにはわかんないよね……? いい人だって思ってた人に、無理矢理されるなんて気持ち……
そのことなんて両親全然知らなくてね……誰も助けてくれなくてね……もう生きてるのが嫌だったのさ……
……でも、たまに伯父さんの家にくる若い男の人がいたのさ……名前も覚えてない人……多分親戚……
この人の前じゃ伯父さんも優しくてね……その人もすっごい優しくしてくれてね……
いつからか……その人がくると私の部屋によんでずっとお話したのさ……楽しかった……

その人が言ってたのさ……笑顔のほうがいいって……でも笑顔なんて私わかんなかった……
ずっとずっと虐められて笑顔なんて忘れてた……笑うことなんてできなくなってた……

それで、いつからか伯父さんの仕事が失敗したとかなんとかで、伯父さんお酒飲んで私にもっと嫌なことするようになったの……
想像出来ないだろうけど……もう嫌だったのさ……死ぬのも……生きてるのも……
それで私、あの人に会いたくて、助けてほしくて……家から出ちゃったのさ……
名前もしらない、なにをしてる人なのかも知らない、まず外の世界を知らない私の考えなんて浅はかだったよ……
でもね、でもね……ずっ~と、ほんとにずっ~と、知らない道を歩いてたら、向かいの家の庭に、あの人がいたのさ……
嬉しくて、夢じゃないかと思って思いっきり走ったのさ……横からトラック来てるなんて考えもしなかったさ……
……そしたらね、男の人もこっちに走ったきてくれてね……私に飛びついてそのまま……
……私を抱きかかえたまま、トラックにひかれちゃった……多分偶然じゃない……助けてくれたんだと思う……
いっぱいいっぱい血がでてるのにその人……笑ったの……すごく綺麗に……笑ったの……

……死んじゃったのかどうかなんてわからないさ……家を飛び出した私を心配してすぐ両親が迎えに来てくれたから……

……伯父さんがどうなったのかもわからない、でもそんなことどうでもいいの……それでね
私、家に帰ってから……ずっとあの人の顔を思い出して……笑う練習したのさ……
ずっとずっと、ほんとにずっと……あの人のようになりたくて……あの人に笑顔、見せたくてさ……

……いつの間にか私は笑ってた……だってもう笑う以外の顔をするのが怖かった……
……笑わないと、笑わないとあの人が死んじゃったような気がして……さ……
……だから笑うの……あの人に見せたいの……抱きついて言いたいの……

……ほら、こんなに笑えるようになったよ……って」

――――

「全部言ったら……すっきりしたよ……」
「…………」
「……どうなのかな……私はバカなのかな……? あの人は死んじゃったのかな……?」
「それは……わからない……私にはわからない……」
「……そっ……か……」


「ねえ……ゆきんこ……私いま……どんな顔してる……?」

「…………あなたは……いま……」

――――

「ハハハ、鶴屋さんはいつでも元気で笑顔ですね」

「わ、笑いすぎですよぉ~……! もぉ~……!」

「アハハッ! さあみくるん大人しくするっさ! 逃がさないにょろ~!」



何が正解でなにが間違いなのかなんて私にはわからない……

でも何が本当の笑顔で、何がそうでないかは分かった気がする……

……窓辺に……雪……。



「……私はあなたの笑う顔を見て幸せです……
……でも、あなたは……幸せなの……?」

彼女は本当に幸せなのかな?
彼女の周りは幸せだけれども
彼女は本当に幸せなのかな?
彼女の周りは幸せだけれども



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