目覚まし時計が鳴る。
とりあえず俺はいつものように止めるには止めるが、後5分だけ寝させてくださいと心の中でつぶやき、もう一度寝ようとした。

が、ドアが開く音がする。
どうやら、妹がいつものように起こしに来たらしい。
また俺の上に飛び乗って起こしに来ると思うと、今すぐ起きよう・・・というより逃げようという気持ちにはなるのだが、
あいにく、今の俺には眠気にまさるものなどなかったようで、体が動かない。
せめて今日は必殺布団剥ぎにしてくれ・・・
と言いたいところだが、あいにく昨日は暑かったので布団はさいしょから剥いだ状態である。

くそ、このままやられるしかないのか・・・

と思ってはいたが、妹はいつものように俺の上に乗ってはいるものの、いつもより優しく・・・まるで、起こさないように慎重に乗ってきたような感じである。
何だ?もしかしてここからおもいっきり叩くとか殴るとかして起こすつもりじゃないだろうな?

と、そんな不安をよそに妹は俺の胸をもんできた。
何だこりゃ?マッサージか?
にしても、何で今日はこんなことを・・・

「あん」

そんな誰かの声が聞こえてきて俺はいきおいよく起き上がった。
何だ今の声は?いや、はっきり言おう。今の声は俺の声帯から出た。
だが、誰がなんていおうと俺はこんなに声は高くないし、
だいたい、無意識に「あん」なんて言ったことなんてこれっぽっちもない。

「いて・・・」
どうやら俺がいきおいよく起きあがったせいで妹は飛ばされたらしい。
ん?にしても、こっちもいつもと声色が違うような・・・
で、俺は妹のほうを見た。
妹は・・・ん?妹?・・・これは・・・・妹というより・・・弟・・・・

それを見たとたん、俺はむしょうに嫌な予感がし、ゆっくりゆっくりアゴを引いて、下を見た。
そこには、今までなかった二つの膨らみ・・・
と同時に俺は部屋を飛び出し、洗面所に向かった。
そこの鏡に写っていたのは胸まである長い髪、いつもより薄い眉毛、二つの膨らみ、いつもより大きい眼・・・などなど
昨日までの面影は確かにあるがその姿は誰がなんていおうと、

女である

とりあえず俺は朝食を食べ終え、部屋に戻り、なぜかあった北校のセーラー服を来て学校に登校することにした。
ったく、ハルヒは何がしたいんだろうな。

と、思って昨日のことを思い出した。
それは俺が昨日提出だった宿題を忘れて、明日までに提出しないと単位とれないかもな・・・とか脅されていたため、部室でハルヒに分からないところを教えてもらいながら宿題をやっていたときだった。
「あんた、女になりたいと思ったことある?」
ハルヒは確か昨日、そんなことを言ったはずだ。
とりあえず俺は少し考え、「ない」と答えたんだが、一方のハルヒはなにやら溜息をつき「そりゃあ苦労したくないしね」とか言っていた。
そしてその後、「男はもっと女の苦労を知るべきなのよ」とか言ってたな。
他には「男は楽そうでいいわよね」とか「性差別の対象になるのは断然女のほうが多いと思わない?」とか、
そういや、一昨日にそんな感じの特別番組をやってたか・・・
そしてこうなったってわけ・・・

にしても、この格好かなり恥ずかしいぞ。
しかもこの上り坂のせいで、下からの目線が気になる気になる。
まあ、誰も見てなさそうだけどな。

「あっ!キョーン」
後ろから女の声が聞こえてきた。
振り返るとそこに不細工な女がいた。
面影からさっするに、多分谷口だろう。
スカートにチャックがあればもう少し分かりやすかったんだがな。

「ねえ聞いてよキョン、昨日ちょっと買い物にいってね、そしたらイケメン二人がいたから勇気をだして逆ナンしてみたのよ。そしたらその二人どうしたと思う?苦笑いしながらそそくさと逃げて行ったのよ、信じられないでしょ?」
谷口が女だったらやりそうなことだ。
勇気を出してっていう部分なんてかなり嘘っぽいね。
ところで、ここでも俺はキョンなのか。

谷口と共に教室につくと、ハルヒは珍しくまだ来ていなかった。
といっても鞄はあるので、トイレでも行っているのだろう。
きっと男子トイレ。

「あっ!おはようキョン」
こいつは国木田だな
あまり変わってないような気がするのは俺の気のせいか?
にしても、昨日の記憶が男の自分である俺があまり動揺してないのはどうしてだろうな?
何ヶ月前かにもしこんなことがあったらすぐに長門や古泉のところに行っていただろうが、
後でいっか・・・って思っちまうようになっちまった。
こんな自分が嫌になるよ。
こんなこと慣れたくないんだがな。

にしても、昨日の記憶があるのは俺以外では誰がいるんだ?
頼むから俺だけとか言わないでくれよ。

で、そんな中、教室に一人の少年が入ってきた。
やけにかっこいい。
サッカーでもやってそうな雰囲気だ。
その男は、俺の顔を見るなり笑いをこらえてるようなしぐさをとった。
どうやらこれがハルヒらしい。
にしても、何で笑いをこらえる。
「ちょっとキョン、私たちと話してる時に涼宮のほうむかないでよ。まさか、あなた達やっぱりできてるの?どこがいいのかしらあんなガキんちょ」
「まあまあ、キョンは昔から変な人が好きなのよ」
うっせー、そんなんじゃねーよ。何度言えば分かる。

で、俺はそんな二人を無視して席についた。
「おいキョンキョン」
キョンを2回続けて呼ぶな。
「そのほうが女っぽいと思うぜ。でさ、お前髪ポニーテールにしろよ。ポニーテ・・・・・・はは、ダメ・・・お腹痛い。やっぱりこっちむかないで」
なんなんだこいつは?
後、妙に男っぽすぎるんだが、そういう性格になったのか?それともわざっとやってるのか?
でも、昨日の記憶が残ってたら変だよな?
こいつは違和感感じるだろうし・・・
とりあえず俺はハルヒの言われたとおりに前も向き、それからあっという間に・・・というわけでもなかったが午前中の授業を終えた。

そうそう、この世界には昨日までの世界といくつか共通点がある。
もちろん、性格や属性などは変わっていないが、変わってなくて違和感があるのが二つほどある。

まずは身長。
この世界は基本的に男より女のほうが身長が高いようになっているらしい。
まあ、これが高くなってたり低くなってたりしたら人の判別がつかないからありがたいかもしれないが、やはりなんとなく違和感があるような気はする。

二つ目が名前だ。
つまりハルヒの名前は男になってもハルヒなのである。
これまた微妙に違和感があるが、まあいいだろう。

にしても、本当に中途半端だな~。
自分のつごうのいいように行動するハルヒならではだろう。

で、俺は弁当を食べ終わると、「お客さんよ」という国木田の言葉で廊下を見ると、
えらい美少女がそこにいた。
あの身長と、俺に話があるところからみて間違いなく古泉だろう。
あいつも昨日の記憶が残っているのだろうか?

で、話を聞いてみると残っていたようである。
話はもちろん、この性別が逆転した世界について。
古泉の話によるとどうやら昨日の記憶が残っているのはSOS団のメンバーだけらしい。
機関に問いただしても知らないとのこと。
「こうなったのもやはり昨日の発言が原因でしょう」
実は言うと昨日の発言は部室で5人全員がいるときにハルヒが言ったものだ。
古泉は一人で詰め将棋、長門はいつもの定位置で読書、朝比奈さんはお茶の研究をしていたように思われる。
てっきり俺ぐらいしか聞いてないものかと思ったが、こいつも聞いていたのか。

「ところで、涼宮さんはこんな世界になったことに困惑してたりはしませんか?」
古泉がそんなことを聞いてきたので、俺は朝のハルヒの態度を説明した。

「なるほど、もしかしたら涼宮さんはこの世界を夢の中・・・だと思っているのではないでしょうか?」
まあ、こんなわけわからん世界になったらそう思うのも無理はないだろうな。

「僕の考えはこうです。涼宮さんは男と女がいれかわればいいのに・・・と願った。そしてその願いはまず涼宮さんの夢の中で実現した。で、その夢がそのまま現実にまで影響を及ぼし、涼宮さんが起きても、ああまだ夢か・・・と思ってる・・・と」
なんか、無茶苦茶な説明なような気もせんが、とりあえず納得しておこう。

にしても、夢をそのまま現実にもってくるか!
恐ろしい女だ。

っていうことはあれか、今日の朝の笑いは俺が女になった姿を見て笑ってたんだな。
失礼な。俺はこの顔そんなに悪いと思わんぞ。

ところで古泉、今日はやけに話してるとき顔が遠かった気がするんだが気のせいか?
その美少女顔ならいつもの距離でも俺は拒絶せん。
ところでだ、どうやったら元の世界に戻れるんだ?
「涼宮さんが望めば元の世界に戻れるでしょう。たとえば、元の世界のほうがよかった・・・というようなことが起きるとかね」
元の世界のほうがよかったと思えること・・・か・・・

それにしてもこいつ、やっぱりもともとが美形だけあってかなり美少女だな~。
でも、何でいつもより0円スマイルの量が少ないんだ?
ものすごく惜しいぞ。

「とりあえず、涼宮さんにはあなたが男であるような素振りを見せないでください、できるだけ女性らしく振舞うように」
と言って、古泉は教室に戻っていった。

そして、午後の授業も終え、今俺は部室にむかっている。
いつものようにトントンとノックをすると、「は~い」と、まだ声変わりしてない男の子のような声が聞こえてきた。
扉を開けるとそこにはとてもかわいらしい男の子。
あぁ朝比奈さん、やはりあなたは男になってもかわいらしいです。

ところで、長門もそんなに変わってないような気がする。
まあ、もともとがショートヘアーだからかな?
髪型があまり変わってないからそう思うだけだろう。

で、そこの美少女は何してるんだ?囲碁の必勝本とかいう本読んで。

そういえば、今日の朝比奈さんは制服のままか・・・
と思い、ふと右側のハンガーロックを見てみた。
どうやら、ここに掛けてある服は変わってないらしい。
てっきり、メイド服が紳士服にでも変わってるものかと思ったが・・・。

で、俺の顔を見て何を思ったか朝比奈さんは。
「いや、あの、男の子の格好でメイド服もどうかと思いまして・・・」と言った。
いや、別に俺は今のあなたにメイド服を着てほしいとは思っていませんよ。
でも、朝比奈さんの場合、自分が男になってることを忘れてメイド服をいつものように着そうだがそれはなかったようだ。

にしても、誰が着るんだこの服?
古泉か?
いやいや、今の古泉は美少女だがこれは萌え系ではなく、大人の魅力を感じさせそうな美少女だ。

まさか・・・・俺じゃないよな?

で、そんな時ドカーンとドアが開いて俺は頭をドアにぶつけた。
「チーッス!って、あれ?キョンキョン何してんだよ。んなとこで」
何してるってわかんねーのか、お前が急にドアを開けるから頭をぶつけたんだよ。
「まあ、そこにいるほうが悪いんだな。さて、メイド服はあるな。よしキョンキョン、これ着ろ」
と言いながら、ハルヒは俺にメイド服を渡してきた。
「待て待て、それを着るの?」
「そうだぜ」

当たり前なように言うな!
ってか、サイズが違うだろ!

「何ボーっとしてんだよ。ほら早く脱げ!」
そう言うなりハルヒは俺のセーラー服を無理やりぬがそうとしてきやがった。
誰がどう見たってセクハラである。

朝比奈さんは顔を赤くして顔を手で隠してるし、古泉はいつもより微笑んでるし、長門はやはり読書。
誰かこいつを止めろーーー!
と思っているとハルヒが「うっ!」とか言ってしゃがみだした。
ああそっか、今のこいつは男だったな。
「一人で着替えろ!おい、そこの男二人も部屋出るぞ」
そう言ってハルヒは俺にメイド服を渡し、朝比奈さんと長門を連れて廊下に出て行った。
ってか、あいつは本当にここを夢と認識してるのか?自分で「うっ!」とか言ってる時点で気づくだろ。

「もしかしたら、ここが夢ということすら忘れているのかもしれません」
なんじゃそりゃ!
と、このとき古泉のほうを向いて俺は気づいた。
先ほどより古泉の顔が近づいていることに。

よくよく考えれば俺自身、先ほどよりこの美少女古泉に惹かれない。
むしろさっきの長門や朝比奈さんに惹かれそうな・・・。

どうやら、今日中に元の世界に戻るようにしなけりゃいけなさそうだな。
明日になりゃ俺は本当に女になってしまいそうだ。

で、俺は今メイド服を持ってるわけだが・・・・
しかたない、着替えるか。
おい古泉、こっち見るな。
「失礼」

そう言って古泉が後ろをむいたのを確認すると俺はセーラー服を脱いでメイド服を着た。
やっぱりきつきつだ、それに袖の長さがたりない。
でも、やはり胸は余裕があるな。
別に悔しがってないぞ。

ちなみに、今の俺の胸はいつものハルヒぐらいだ。
まあ、まじまじと見たことがないからよく分からんが、結構でかいとは思う。
ちなみに、今俺に背をむけている古泉はよく見てないが俺と同じぐらいだったように思われる。
って、何語ってんだろうね、俺は。

「入っていいよ」
俺がそう言うと古泉は背を壁に向け、ドアはいつものように・・・いや、いつもよりいきおいよく開いた。
まさか男になってさらにパワーアップしたんじゃないだろうな?
で、そのいきおいよく開いたためかいつもより激しい風がおき、メイド服のスカートをなびかせた。

そこで俺は違和感を感じた。
メイド服のサイズがぴったしになっている・・・
便利な力をもったものよのう、ハルヒよ。
ボロボロの服を魔女から魔法をかけてもらってきれいなドレスにしてもらった気分・・・・・にはなってないが。

「よーし、じゃあキョン、お茶淹れろ」
結局キョンかよ。
「わざわざ2回連続言うのもなんかめんどいんだよ」
はいはいそうですか。
テメーに愛情なんてこめて淹れねーからな。
とは思いながらも、朝比奈さんに教えてもらったおいしいお茶のできる方法でお茶を淹れた。

にしてもこの暑い中、よく朝比奈さんはメイド服を着てたもんだ。
もっとハルヒに文句でも言ってやったらいいのに。
せめて、「通気性がよくて涼しいのにしてください!」とか。
いや、それ以前に「着せるな!」と言うべきか。

「よーし、じゃあ写真撮るぞ」
「なっ!」
「じゃあ、みくる君と有希。そのテーブルちょっと端に寄せろ。撮影の邪魔だから」
そうすると、長門は軽々、朝比奈さんはこれ以上ないぐらい真剣に歯を食いしばってテーブルを持ち上げ、端に寄せた。

「ほら、早くポーズ取れって」
「どうやって?」
「どうってこうだよ」
そう言うとハルヒは自分で俺にやらせるであろうポーズになった。
今のハルヒがやるとなんか気持ちが悪い。
しかたない、やるか。
「はい、じゃあセクシー路線にいこう!」
すると、無理やりメイド服をの前をはだけだそうとした。
だけど、やはりまた「うっ!」と言ってしゃがみこむ。
おいおい、弱い男だな。

「古泉さんお願い。ちょっとやってて」
「分かりました」
と言って、ハルヒは外に出て行った。
トイレにでも行ったか?

「じゃあ、撮影のつづきを始めますか」
「待て待て、もういいだろう」
「涼宮さんには、やはりしたがわなければ」
待て待てそうじゃない、お前の顔つきが先ほどと違うことだって分かってる。

で、結局俺は古泉に俺のセクシー写真を撮られたわけだ。
この古泉がやったほうがいいだろうに・・・

ってか、この写真どうするつもりだ?
「おーい、終わったか~?」
いきなりドアが開いたかと思うとハルヒの声が聞こえてきた。
風の音と混じってはっきりとは聞こえない。
まあ、そういう問題じゃないんだがな。

で、ハルヒのほうをむくとそこにはもう一人、坊主に近い髪の少年がいた。
さすがに俺も分からなかったね。
「やっほー、おっ!みくる宿題がんばってるね~まあ今回の宿題めがっさ簡単だからすぐに終わると思うよ」
「えっ?そうですか?僕よく分からないんだけど・・・」
「そうかい?まあ、分かんないところがあったらオレっちに言ってよ!」
鶴屋さんか。
にしても、何でベリーロングヘアーからベリーショートヘアーになったんだろうね?
後、朝比奈さん、あなたショタっ子意識しすぎです。

で、何で鶴屋さんがここにいるんだ?
「みんな喜べ、鶴屋さんには今度の合宿場所をまたまた提供してもらった」
「今度行くところはめがっさいいところだよ~みんな心しとくように!」
「パスポート持ってないやつは今週中に用意しとけ」
今度は海外かよ!

さて、こうやっていつもとあまり変わらぬ一日を過ごしてしまったわけだが、

・・・いやいや、全然違うぞ。何を言ってるんだ俺は

こんなことやってる場合じゃないんだ。ハルヒに前の世界のほうがよかったと思わせなければ。
ったく、どうすりゃいい?

やはりここは長門に相談してみよう。
「わたしはどちらでもいい、涼宮ハルヒの観測こそできれば男であっても構わない。でもこれだけははっきりいえる。世界を元に戻すことができるのは、君しかいない」
そうか・・・・。
って、おいおいそうじゃなくてどうやったら元に戻れるかを聞いてるんだよ。
それより、何か今の発言に違和感があったのは気のせいか?
「君は女、涼宮ハルヒは男」
うーん、今のはヒントと考えたほうがいいのか?
それは分かってるんだが・・・

で、さっきからハルヒはデジカメとパソコンをつなげて何をしてるんだ?
って、うぉい!
「何してんのよ!」
「んだよ。この写真をホームページのトップに貼ろうとしたんだよ」
「そんなことしても誰も来ないから!」
するとハルヒは少しの間、黙り込み。
「そうだな、お前の体なんか誰も興味もたないか」
とか言ってゴミ箱フォルダに入れた。

はぁ~本当にどうしたらいいもんかね~?
俺は窓の外を見ながらそんなことを思った。
野球部はソフトボール部になって練習している。

ふと、窓に映ったハルヒがこちらをチラッと確認したのが分かった。
そうすると、ゴミ箱フォルダを開き、『kyon』フォルダを作ってそこに先ほど捨てた俺の写真を入れてそのフォルダを隠しフォルダにした。
ったく、どこでその技覚えたんだよ。そんなことするのは俺だけでいい。

「ちょっと、今私が外見てる間に私の写真元に戻したでしょ?」
「えっ!・・・ん・・・んなことしてねーよ!」
「じゃあ、この『kyon』っていうの何よ」
「えっと、これはだな、何だろうな。きっと何もないんだよ。そうだ、そうに違いない。うん、そうだ、何もない!」
「無茶苦茶嘘っぽい!」
俺はハルヒからマウスを奪おうとするが、器用にハルヒは俺から逃れようとして、なかなか取れない。
俺のほうが身長が高いから手もハルヒより長いはずなのだが・・・
「うっ!」
またハルヒはうなった。

どうしてだ?と思って下をみてみると俺の胸がハルヒの背中を押さえつけてることに気づき、俺はとっさにハルヒから離れた。
「悪かった。このフォルダは削除する」
そう言ってハルヒは『kyon』フォルダをゴミ箱フォルダに入れ、ゴミ箱フォルダの中を空にした。
まあ、ハルヒでもこうしたら元に戻せないぐらい知ってるだろうし、元に戻すことはできないだろ。

が、俺はハルヒがこっそりデジカメに手をのばしているのを見逃さなかった。
あの中にはまだ、俺のあのセクシー写真が入ってるはずだ。
俺はすばやくデジカメを奪うと、中に入ってる写真を確認した。
やはりまだ残っていたか・・・
「ちょっと待て、俺は今からそっちも消そうと思ってたんだよ!」
お前の言うことなんて信じられるか。
ったく、これは立派なセクハラだぞ・・・・
ん?セクハラ・・・・・か・・・・

しかたない、すまんハルヒ、奥の手だ。

俺はハルヒに平手打ちをし、「うわぁぁぁぁん」と誰でも嘘泣きと分かる泣き方で部室を出た。
むかうは職員室。そこでハルヒにセクハラされたといえばいい。

「おい、ちょっとまてよ!キョン!」
ハルヒがおいかけてきた。
よしよし、おいかけたほうが何かと話が早い。

俺は一度後ろを振り向きハルヒが追いかけて来るのを確認した。
が、そのときに俺は油断してしまっていきおいよく誰かにぶつかってしまった。
ぶつかった相手は、いかにも将来キャリアウーマンになりそうな女であった。
その女は俺の顔をみるなり、憎たらしい顔つきになったが、ハルヒが追いかけてくることを分かるとすぐに先ほどの顔つきに戻った。
このままじゃハルヒにつかまる。
しかたない、このさい、この女でいい。
「あの人に、セクハラ行為されたんです!やらしい写真撮られたり!」
「またあなたですか。今度はセクハラ。さすがの団員も逃げ出してきたということですね。全く、今度こそ本気で処分を検討したほうがよさそうですね。」
「なっ!おいキョン!生徒会長なんかの肩を持つ気か!」
これ生徒会長かよ!
確かにそう言われればそんな気が・・・

まあいい、言葉をつづけよう
「あんなことされて嫌がらない女なんていないわよ!」
恥ずかしさがあまりこみあげてこないのは何でだろうね?
もうそろそろ本気で女になってしまうのかもしれない。
だが、まだまだ俺の台詞は終わっちゃいねえ!
「ハルヒは女じゃないから分からないんだよ!」
「セクハラなんかするハルヒなんて大嫌い!」
「こんなことするなら私が男でハルヒが女ならよかった!!」
最後はちょっと無理やりすぎたか。
まあいい、元に戻れるならな。
まあ、これで元に戻れるという保障はないが・・・

それからハルヒは涙を隠しながら玄関まで走って一人で帰っていった。
おいおい、男の格好でそんな行為しないでくれ、はっきり言って気色悪いぞ。
さてさて、隣の生徒会長さんにはなんて言おうかね。

で、次の日。
俺は男、ハルヒは女である世界、つまり元の世界に戻っていた。
ハルヒは俺の顔を見てなぜか少し笑みを浮かべ、すぐに窓の方向にそっぽを向いた。
やっぱりハルヒは女のほうが断然いい。
別に、昨日のハルヒを一瞬でもいいと思ったつもりはないがな。

で、俺がじーっとハルヒのほうを向いてると、急にいつもの何ワットもありそうな笑顔で俺にこう言った。
「ねえ、キョン」
「何だ?」
「あんた、メイド服着なさい」
いきなりハルヒがそんなこと言うもんだから俺は胸に手をあてて膨らんだものがないか確かめた。
よし、ない。
「おい、俺女じゃないぞ」
「そんなこと分かってるわよ。安心しなさい、ちゃんとカツラも用意するわ」
「いや、そうじゃなくて何で俺がそんなことしなきゃならねーんだよ」
「今度の映画よ映画。そうね、今度の設定ではあんたが有希の仲間の魔法使い役で出るの。名前はキョンキョン。そして、古泉君をうまくあやつって古泉君と結婚、偽名は古泉キョ・・・」
「ちょっとまて、何で俺なんだ?」
「あんた以外誰がいるのよ?」
「お前がやればいい、何だったら鶴屋さんにたのめばいいだろうが」
「私は監督とか脚本とか忙しいの。それにいつもお世話になってる鶴屋さんを悪役でだすなんて失礼よ」
「だとしたもだ、そんな設定にせずとも、長門が何かの拍子で復活したとか、そのほうが面白いだろ?」
「ダーメ。これは団長のわたしが決めたことなの。下っ端が何言ったって無駄よ。どうせ文句言うならクランクアップしてからにしなさい」
「だいたい、俺が女装したら笑いしかとれないだろうが」
「それならそれでいいじゃない、笑いあるところに福来るよ!それにキョンキョンは不細工な女という設定にするわ」
「それより、何でメイド服なんだ?主婦ならメイド服は着ないだろ?」
「じゃあ、もともとメイドとして働いてたんだけど、そのままご主人様の古泉君と結婚ということにするわ」
「何だそりゃ!」
「そうね、どうせ不細工という設定なら古泉君より20歳年上という設定にしましょ」
「何でそんな設定が必要なんだよ!?」
「何となくよ」
で、数日後、ハルヒがネットショッピングで買ったカツラが届き、まだまだ文化祭は先と言うのにクランクインした。
俺はきつきつの朝比奈さんのメイド服を着て芝居をやっている。
朝比奈さん、メイド服が心配なのは分かりますがそんな目で見ないでください。
「ちょっとキョンキョン!ちゃんとやりなさい、ちゃんと」
はいはい。

横の古泉を見ていたらもう一度あの時の古泉を見て見たい気もする。
でも、ああいうのは人生で1回だけでいいんだ。
だけど、まだまだこいつらとはいろんなハプニングを経験しそうだ。
今度は何が起きることやら。

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