おいおい、何なんだこれは……………
やれやれ、非常識な事に慣れたとは言えこれはパニックになるぞ。
俺は額に手をやり、ため息をついた。

朝、今日は妹のうるさい攻撃が無いなと思い。
やっとあいつも大人しくなったかと思って体を起こすと、毎朝見慣れている俺の部屋ではなかった。
かといって閉鎖空間っぽい雰囲気の学校に飛ばされたわけでもなく、
時間を越えたわけでもないし、別世界に行ったわけでもなさそうだった。

上の3つはまぁ、俺の希望的観測であるだけな訳だが。
目の前には見る限り生活感のない殺風景な部屋、俺が知る限りでは長門の部屋以外には考えられなかった。

なんで俺がこう皮肉臭く言っているのかというのであれば、体がどうもその部屋の主の姿になっているようだったからだ。
そう、俺は長門になってしまったらしい。

俺が長門になっているなら、俺はどうなっている。

そう思った俺は、学校に登校することにした。
どうやら長門は制服のまま寝ていたようで、着替える手間がかからなくてありがたかった。

学校に着いた俺はすぐさま、俺がいるはずの自分のクラスへ足を向けた。
教室をのぞくと、その席は空席のままだった。
教室で話しているやつを捕まえて、聞いてみたが
「まだ来ていない」との事だ。
ついでにハルヒも来ていないかと聞いたが、同様の返事が返ってきた。

とりあえず、この状況を打破したい俺は教室から背を向け。
その足をいけ好かない笑顔の超能力者のいるクラスへ向けた。

1年9組に足を運んだ俺は、古泉がいるかと教室の入り口側に立っていたやつに聞いた。
「あー、古泉君?いるよ、ちょっと待っててね」

そういうとそいつは、古泉くーん女の子が呼んでるよーと叫びながら
古泉の場所へ向かっていった。

目の前に来た人物は、いつものへつら笑いをせず無表情のままであった。
それをみて俺はこの非常識な現象をあと3回見るのであろうなと盛大にため息をついた。

「お前は長門か」
「……………」

しばし沈黙の後、ある意味もう見ることのできないであろう
無表情の古泉はこくんと頷きこう言った。

「…………そう」

「とりあえず、昼に部室に行こう
ほかのやつらもどうなっているかわからないしな」

「……………」

古泉の姿をした長門は、もう一度頷きおそらく古泉の席であろう場所へ戻っていった。
それを見届けた俺も長門の教室へ行き、教えてもらった席へ座り一通り授業を受けた。

幸か不幸か、普段から無口な長門の振りをしたまま授業を受けるのはそう難しくなかった。
授業の合間の休憩時間にもクラスメートから話しかけられる事は皆無だ。

休憩時間中に自分のクラスに行きたい衝動に駆られたが。
時間が短いこの時間ではやれる事も少ないので、昼休みまで俺はじっと我慢をした。


4時間目のチャイムが鳴り終わったあと、席を立ってすぐさま部室へと足を向けた。
長門ととりあえず話をするためだ。

まぁ他のメンツにも異常が起こっているなら、部室へ来るだろうと思ったのもあるわけだが。

部室を開けようとドアノブに手を触れようとした時こちらに向かって走ってくる人物がいた。

朝比奈さんだが、何かが違う。

「有希~~~~~!大変よ大変!!」

大変と言いつつもその目はキラキラと輝いている、この顔をする人物を知っている。

「あたし、みくるちゃんになっちゃったみたい!!
もしかして、有希も違う誰かになったりしているの!?」

息を弾ませながら、こちらを見る。
たしかに、朝比奈さんはこんなハイテンションにならないからな。
こんな朝比奈さんを見るのも、おもしろいがそれではダメだ。
俺の朝比奈さんはおっとりしてて、ちょっとドジで、ほんわかとした笑顔を振りまいてくれる朝比奈さんじゃないといかん。

ハルヒ……………、お前は朝比奈さんになったんだな。
「って、キョン~~~~~!?」

朝比奈さんの姿で絶叫した声は、外で歩いている人物がビックリするほどの大きなものだった。

「なんでこうなっちゃったのかしらね!!」
「キョンと私と有希が入れ替わったって事は、古泉君とみくるちゃんも変わったかもしれないわね!」
「そうだ!みくるちゃんの格好だし、コスプレしてみようかしら!」

etc、etc………

弾丸のように朝比奈さんの声で、俺の耳に入ってくる。

長門は姿が変わっても、部屋の隅で本を読んでいる。
古泉の姿でやられるのは、不気味とも思えた。

やれやれとため息をついていると、ガチャと扉が開いた。
入ってきたのは妙におどおどしてなみだ目のハルヒと、いけ好かない笑顔をしている俺だった。

「ふぇぇ………、一体どうなっているんでしょう」

泣きそうなハルヒ、いや朝比奈さんか。
一生で見られるか見られないか判らないような珍しい光景を今日一日で一生分見たような気がしてきた。

「いやはや、これは5人が入れ替わってしまったみたいですね」

俺の姿をした、古泉は笑顔を崩さずにそう言った。
どうでもいいが、俺の顔でそんな顔をすると気持ち悪いからやめてくれ。

「おやおや、と言われてましても困りましたね」

「そんな事どうでもいいじゃない!!
いまはどうやって元に戻るのかが大事よ!
みくるちゃんの体もいいけど、やっぱ自分の体が一番だしね!」

と会話しているところに、ハルヒが大きな声でみんなを制す。

「おい、これは一体どういうことなんだ」

俺は小声で古泉に話しかける。

「さぁ、僕にはわかりかねますが。
おそらく何か外因的な要素の所為で入れ替わってしまったんだと思います」

俺はその外因的な何かが何なのかと聞いているんだが。

「詳しい事はわかりません、涼宮さんが願ってしまってこうなったのかもしれませんし。
精神を入れかえてしまって、涼宮さんの能力を無効化してしまおうと情報思念体の急進派が行ったことかもしれません」

俺は本を読んでいる、長門の方に体を向けた。

「お前はこの現象はどうなのか説明できるか?」

「……原因不明。
情報思念体とコンタクトも取れない」

じゃあ俺が取れるってか?

「おそらくそれも不可能………。
長門有希としての個体能力は、一般人並になっている。
そのため情報思念体としての能力は使えない」

「なるほど、長門さんの精神を別の固体に入れることで能力を封印させているわけですね」

古泉がそれに返答をする。
長門なら何とかしてくれると思っていたんだが、この分だと古泉の超能力にも朝比奈さんの力も使えないんだろう。
その事実に俺は愕然とした。

「何こそこそ話してんの!!
とりあえず、ここでグダグダやっていても仕方ないし放課後にもう一回集合しましょ!!
じゃあ授業終わったら、みんなここに集合ね!」

わくわくした様子のハルヒがそう言って、みんな部室を後にした。
とりあえず午後の授業を受けて、今後のことを相談するんだそうだ。

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