(この話は長編・涼宮ハルヒのすき焼の続編です)

俺は今最高に気分がいい。
どのぐらい気分がいいかというと嫌いな奴が盲腸で入院したと聞かされたくらいだな。
なんでかというと古泉夫妻、長門、そしてハルヒと一緒に高級温泉旅館へSOS団不思議探しin熱海という名目で小旅行に来ている。

以前のすき焼パーティーで俺が発案し、みくるさんがかの鶴屋さんに掛け合ってみたところ、
「うちが経営してる温泉旅館が熱海にあるからそこ貸し切りにしちゃってよっ」
とすんなりと場所提供をしてくれたのだ。
まさにセレブリティ。
今鶴屋さんはデキるキャリアウーマンとして自社を盛り上げている。
しかしあの人の富豪発言は何等嫌味がない。
谷口何かがもしそんな発言をしようもんならボッコボコだ。湯煙殺人事件だ。

てなわけで俺は自分ちが何個も入りそうな大浴場の隣りにある露天風呂でくつろぎながらイケメン若旦那のスマイルを煙のモザイク越しに眺めていた。

「古泉、以前お前に聞いた話なんだがな?」
「長門さんの親玉についてですか?」
「あぁ、あれから何か動きはあったか?」
「はっきり言って何も見られません。他のインターフェイズも、ハルヒさんが普通の女性に戻った今、役目を終えあるべき所に帰った様ですし。
情報思念体の科学的解明が今は主な仕事です。」

お前も長門のように意味の分からん言葉を喋るようになったか。あ、前からか。
話をふっといてなんだがここは適当に返事しておこう。
後々また説明ラッシュをくらわされたらたまらん。

「そうか。」

あ~話の内容に詰まってしまったばっかりにこんな話題に…。まぁこいつは酒に酔わせたら面白いし、吉としよう。

その時であった。

「ひゃぁあ~~~ぁん!」

竹格子で仕切られた露天風呂の向かい、つまり女湯から天使の断末魔が聞こえた。

「みくるちゃん!またおっきくなったんじゃないっ??弾力も艶もあの頃のまんまだわ!
未来人ならでわの美の秘訣があるならあたしに教えてよ―!」
「ななな無いですぅ~どこ触ってるんですか~!」

ハルヒっ!!!GJ!!!否っ、旦那の前だ、反応に困る。

「僕たちも対抗しますか?」

断るっ。ニヤけながら顔を近付けるな。
皮膚感覚が気持ち悪いっ。

「有希ぃ~あなたもちょっとおっきくなったんじゃ!!そういや背も伸びたし!」

ハルヒの怒濤の精神攻撃によってのぼせそうになった俺は古泉を誘って中にある冷水に入った。

「いいのか古泉、あのままじゃハルヒのおもちゃだぞ。」
「痴漢に襲われている訳じゃないですし、みくるもその辺は理解していると言ってました。」
「そ、そうかよ…。」

さすがに冷たくなってきたな。
もう一度露天風呂の方へ行った俺たちは、またもやハルヒたちのスピリチュアルアタックをまともに食らうハメになった。

「キョンったらね…!(禁則事項)が(禁則事項)ですっごい(禁則事項)なんだから!!信じらんないわっ。」

ぬぁっ…ハルヒそれは俺たちが向かい側に居るとわかってるのかっ!!古泉も笑いすぎだ!!

「一樹くんもあれなんですよ~(禁則事項)(禁則事項)(禁則事項)~。」

みくるさんそんな大胆な…。
古泉が沈んで行くっ…古泉、古泉ぃい!!

温泉ってのはこんなに頭に血が上るのかと思うくらいポカポカになり、定番の浴衣に着替えた俺と古泉はこれまた定番のマッサージチェアに腰を降ろした。
古泉は顔の上にタオルをかけ、完全にダウンした状態だ。
仕方ないよな、古泉が(禁則事項)だったなんて……。お疲れ、古泉。

交互に中る扇風機の風が心地いい。

完全に沈黙した古泉を眺めながら温泉の余韻を楽しんでいるとハルヒ達も上がってきた。

「はぁ~家のお風呂だとこうはいかないわ―っ。あ、キョン先に出てたの?」

「いいお湯でしたね~。あれ?一樹くん大丈夫??」

この方たちは自分の言ったことわかってるのか?
長門、その含み笑いみたいな表情やめてくれ。…こんな顔ができるようになったのか、成長したな。

「起きて、一樹くん。」
「あ…少し寝てたようですね。」
「さぁ、宴会場まで貸し切りよ!早速行きましょう♪」

そういってハルヒはいつかの様にみんなの先頭に立ち、勇み足で宴会場へ進んだ
これまたみんな浴衣が似合うな…。またのぼせてきた。

宴会場の戸を開けたと同時に俺たちはその広さに驚愕したね。
俺ら5人が暴れても簡単に被害を被りそうにないな。
しかもカラオケ付ときたもんだ、ステージ付の。
料理も物凄く豪勢だ。殿様になった気分だね、こりゃ。

「鶴屋さんには頭が上がらないな。」
「本人が居ないのがちょっと残念だわっ!鶴屋さんの分まで楽しみましょうっ!!」

当の鶴屋さんは「ニューヨークに出張」らしい。

「キョン、乾杯の音頭とって!」
「それでわ、この温泉旅行を祝して…」
「やっぱいいわっ!かんぱーいっ!!!」

団長の音頭が終わるとみんなは一心不乱に料理へと箸をのばす。

相変わらずハルヒと長門の食いっぷりはフードファイトそのものだったね。
ハルヒ、そんなに食べるとまた太るz

「うるさいっ…。」

俺の脇腹の柔らかい所にハルヒのエルボがクリーンヒットし、口にエビフライを半分出しながら白目を向くと言う醜態を晒してしまい、
いい感じに出来上がった古泉に爆笑を提供してしまった。
長門も楽しそうだな。良かった、報われた。

そうやって徐々にボルテージを上げていった俺らは、ハルヒの提案でカラオケをすることになった。
…しかし少し人一人に対してステージが大きすぎる気が…。

やっぱりハルヒは歌が上手かった。結婚してからというもの、二人でカラオケに行く事なんて無かったからな。
高校の文化祭でもそうだが、こういう時にハルヒの多才ぶりを再認識するな。
朝比奈さんは…決して上手くは無かった…。だが俺の心の中の鐘は鳴りっぱなしだ!
そして長門だが、これまた意外に上手かったな。いや、その前に今時の歌を知ってた事にびっくりだ。

すっかり3人のカラオケ大会となった宴会場のステージの前で俺と古泉は、
歌の合間に拍手や声援を贈るふりをして、「仲のいい夫婦」について討論していた。

カラオケを一通り楽しんでいると突然部屋の戸が勢いよく開いた。

「やぁハルにゃんたち~盛り上がってるねっ、楽しんでもらってうれしいよっ。」

あの緑なす長い黒髪を後ろで縛り、突然現れたその人は紛れもなく鶴屋さんだった。
天真爛漫さはあの頃のままだな。
マイクを握り締めたままハルヒが大声で喋る。

「鶴屋さん!わざわざこんな豪華なとこありがとう!!」
「いやぁ他ならぬみくるやハルにゃんの頼みなら何でも聞くよっ。キョンくんや古泉君も久しぶりだね~っ。
そこに居るのは長門っち!?変わったね~!!みんな元気そうで何よりっ。夜はまだまだこれからだよ!!」

鶴屋さんは笑顔のままハルヒにも負けないようなマシンガントークぶりで答えた。
そして座っていた俺や古泉を無理やり立たせ、3人のステージを大いに盛り上げた。

すっかり鶴屋さんの旋風に巻き込まれた俺らはその大宴会を終えると、これまたハルヒの提案で外で花火をすることになった。

まったく、お肉に続いて花火までお使いに出されるとは…。端から見たらカカア天下もいいとこだな。

「いいキョン、こんだけあるんだからいっぱい買って来るのよ!」
ハルヒ達に渡された五千円を財布に潜め、コンビニへむかい、
両手に抱えきれないほどの花火を買い込んできた俺は、旅館の真下を通る河原へ降りる。
浴衣に河原というアンバランスさもいいな。鶴屋さんはスーツだがそれがいい。

「では、始めましょうか。」

古泉が先陣を切って手持ち花火に火をつける。
それに続き打ち上げ花火にも点火し、バンっという夏らしい音とともに女性陣の黄色い声もマッチして、実に風流な感じだ。

「ふふ、実は僕、花火大好きでしてね…」

なんだ古泉その危険な目は、ロケット花火をこっちに向けるなっ…ちょっ…………火着けやがった…!バカ…!やめ…

「マッガーレ」

ロケット花火は俺の目の前数十cmスレスレで弾道を変え、しばらくして破裂した。
腰を抜かした俺は真っ先に犯人を罵倒した。
ハルヒ達は目を逸らしていたがすぐに古泉の方を向いて言った。

「すごいじゃない古泉くん!超能力ってまだ使えるの!?」

「いいえ。これは一種の賭けです。僕も一瞬ヒヤッとしましたwwwwww」

こいつは酒を含むと危ない奴だとひしひしと実感したね。


その後も花火片手に飛んだり跳ねたりして誰一人犠牲者を出す事なく行事を終了した。

正直、古泉夫妻がうらやましかったりする。

そして旅館に戻り、就寝の挨拶を終えると用意された各部屋へと落ち着いた。
部屋割りは俺と古泉、ハルヒとみくるさんに長門といった感じだ。
夫婦に分かれて長門だけ炙れると可哀相だという気配りだと後でみくるさんから聞かされた。
妥当だとは思うが…なんだ…やっぱいい。
ところで鶴屋さんも女性3人の部屋に泊まるらしい。
「せっかく来たから一緒に泊まらせてもらうっさ~っ。」
まぁ一部屋自体広いからな。問題はないだろう。
だがしかし何か気になることがある。しかし何が気になっているかもわからない。
古泉は…寝たのか。

俺も疲れ果て、酔いが回った体をふかふかの布団に沈め、眠りに入った。

ぐっすり夢をみかけていた俺に古泉が話しかけてくる。

―もう寝ましたか…?―

夢の中にまで干渉してくるのか…古泉、
そのせいで目が覚めてしまった…何だ。

「先ほどのロケット花火の件ですが、申し訳ありませんでした。」

いいよ別に、怪我もなかったしな。

「あれ、実はあながち賭けでもないんです。」

俺は自分の耳を疑った。

「なんだって!?」
「僕が以前持っていた能力はハルヒさんのおかげで使えていた能力、使えるといっても閉鎖空間の中でのみ。
しかもあのような分かりやすい能力ではありませんでした。」
「つまり何が言いたい。」
「約13年前に起きたハルヒさんのもたらしたできごとによって僕は能力を使うことができました。
しかしその6年後、あの日に僕たちは回りと変わらない普通の人間に戻った。」
「………。」
「なぜ今は僕だけが能力を使えるのかは謎ですが…。この前のスキヤキパーティでスプーンを曲げたのも、実はそれを試す場だった。
とどのつまり、現在僕が超能力を使えるのは世界がまた変わろうとしている証拠です。ハルヒさん以外の何者かの手によってね。」

今の俺にとってはにわかに信じられないが…またあのヘンテコな世界に逆戻りか。
やれやれ…。

まったく、この年になってこんな頭を使うことになるとは…。

「刺激的でいいじゃないですか。」
「うるさい。」

無理やり起こされて変に目が覚めちまった俺は、古泉を誘ってまた温泉に入ることにした。
そこへいく途中、どういう訳かまだ起きて居たらしい鶴屋さんに遭遇した。

「やぁキョンくん達、寝らんないついでに見回りでもしようかと思ってねっ。一応ここの管理してるからさっ」

「ハルヒ達はもう寝ましたか?」

「ハルにゃんはさっき温泉に入るって出てったよ?」

「そうですか。」

夫婦は考えることも同じってことか。
軽く話をし、鶴屋さんと別れ、俺たちは温泉へと向った。
そして一っ風呂浴びた俺たちは早々に部屋に戻り眠りについた。

だが行きも帰りもハルヒに会わなかった。入れ違いだろうと思い、さほど気にはしなかったが。

次の日の朝、俺は自分の意思で目が覚めることなく、また無理やり起こされていた。
今俺の目の前には古泉はもちろん、みくるさんに長門、それに鶴屋さんが居る。

ハルヒはいない。
一応携帯にかけてみるが、部屋の片隅で存在を主張するかのようなバイブ音で俺たちに本人不在を知らせてくれた。

みくるさんの話によると「朝起きて見たらハルヒさんが居なかったんです…。」
長門にいたっても右に同じといった感じでうなずいた。
鶴屋さんは申し訳なさそうな表情を浮かべながら
「昨日温泉入るって行ったっきり戻ってないみたいだよ…。あたしが部屋に戻ってきた時にも居なかったから……。」

そうして俺たちはハルヒの行方を探すべく、分担して行動をすることになった。
まず真っ先に女湯に向ったみくるさんと長門だが、当然のごとくハルヒは見つからなかった。
鶴屋さんは旅館の従業員に聞き込みに行っている。

俺と古泉は昨日の河原やハルヒの行きそうな場所をくまなく調べたがどこにも居なかった。
しかし世話の焼ける奴だ…。

一旦俺たちは旅館のロビーに落ち合うことにした。まず鶴やさんにかけその事を知らせ、次にみくるさんの携帯へと連絡を入れる……

……出ない…?
近くに居るであろう長門にもかけてみるが長門も同じ、出たのは留守番サービスの女の人だ。

とりあえずロビーに集まった俺と古泉と鶴屋さんはみんな困惑していた。
ハルヒに続いてみくるさんや長門まで消えるなんて。
そして古泉はハルヒや最愛の妻まで行方をくらまし、相当テンションが落ちてるように見える。

「僕はみくると長門さんを探してきます。あなたと鶴屋さんは引き続きハルヒさんの捜索をお願いします。」

そう言い残し古泉は俺たちと逆方向へと向った。
鶴屋さんは

「長門っちとみくるまで…ちょっとまた従業員に聞いて来るよっ!この辺で探しててちょうだい!!」

そう言って走ってどっかいってしまった。

しばらく俺はみんなが居なくなるというこの不可解な現象について考えていた。

長門の親玉、古泉の超能力、そしてこの胸のつかえ。

世界がまた変わろうとしている。
これが長門の親玉の仕返し…?それとも前のハルヒのように退屈しているからこんなことをするのか…
どうしても観察対象が欲しいって訳か?

という事はまだハルヒは無事ってことか…?観察対象を殺すはずないもんな…ならなぜみくるさんや長門をさらう必要がある…。
次々に居なくなるとしたら次は古泉か鶴屋さんが危ないっ…。
待て、確かみくるさんと長門と鶴屋さんは一緒に行動していたはずだ。
ロビーに集まったときには忘れていたが、鶴屋さんは確かにあの二人と……………

その時俺の胸のつかえの正体が明らかになった。

?!!…確か鶴屋さんは海外へ出張のはず!!なぜ今ここにいて俺らと行動している!?

…次は古泉が!!そう思い、俺は古泉の携帯に電話をかける…………………………出ないっ!!

「やっと気付いたかいっ?」

くそっ、手遅れか!!電話を片手に唖然としている俺の背後に立ったのはやはり鶴屋さんだった。
パタリと音を立てながらにじり寄って来る。

「でも気付いたのは褒めてあげるよっ。」

「みんなをどこへやったんです!!」

「居ないよっ。正確に言うと居ない事になった。」

何!?

「長門っちがよくやってたやつだよっ。情報結合の解除、そして情報の操作っ。いやぁ~そのまま気付かなかったらもっと楽だったろうに~残念だったねっ」

「…あんたは誰なんだ?!」

「キョンくんの思ってる通り、親玉で正解だよっ。長門っちはしっかりこっちで回収さしてもらったからね。
反旗を伺うのに時間かかっちゃったけど、こんな旅館を乗っ取るなんてたやすいたやすいっ!」

みんな居なくなっただと!?
随分手のこんだ仕返しだ。
俺の肩は怒りと恐怖で震えていた。
だんだんと俺に距離を詰めて行く鶴屋さんの恰好をした長門の親玉は更に続けた。よく喋る奴だ。

「7年前あなた達が長門っちやみくるを普通の人間にしちゃった事はこっちとしては大誤算だったね~。
ま、その時ハルにゃんは思ったのさ、せっかく自分がこんな能力持ってたのに今無くなっちゃうのは勿体ないってね。
本当だったら前と同じような能力がハルにゃんに使える予定だったけどうちの優秀な長門っちがそれを阻止したんだよっ、
でもあの時の新たな情報爆発はいくら優秀な長門っちでも止められなかった。結果微弱ではあるけど情報を改変する能力をもったのさ。」
なるほどな、だから古泉はまた超能力を使えるのか。前のとはちょっと違うが。
「人間になっちゃった長門っちを取り戻すためあたしは全てのインターフェイスを回収し、あたしの依城に最も最適なインターフェイスを作り上げた。」

それが鶴屋さんになったってわけかよ。長々と喋りやがって。
怒りが最高潮に達した俺は勢いよく後ろを振り返り親玉に殴りかかろうとした。
それと同時に俺の額に冷たい感触が伝わった。前屈みになった俺の額には、宇宙人には似つかわしくない、ピストル。
俺だけはまともに消すってか?!

「いくらあたしでも、時間を逆上っての情報の操作はめんどくさいんだっ!だからキョンくん、君には悪いけどっ…。」

そう言って鶴屋さんは引金にてをかけた。
非常に残念だが今の俺にはピストルに打ち勝つ術がない。
しかもみんなを消されちまったときた俺の精神はついに目の前の強敵に平伏し、気がついたら地面に両膝をついて…涙を流していた。

「みんなを…返してくれ……。」

楽しかったなぁ。ハルヒと一緒にいたあの日々、結婚してからも随分とあいつに振り回されたっけ…。
みんなと久しぶりに集まった日のスキヤキは神懸かり的に旨かったな……。
長門もあんな表情ができるまで進化した…。
そんなみんなとまた一緒にあつまれて良かった。
そういえばあいつが…ハルヒが拗ねた時にしょっちゅう言っていたきもするが…今あえて言おう。

ハルヒ…愛してるぞ。

いろんな思い出やらなんやらがわずか一秒のうちを走馬灯のように駆け巡る。

「それは無理だねっ★」

くそっ…………

思いっきり目を閉じていた俺の顔に冷たいものがふりかかった。

…水?
「あっはっは~!!キョン君びびりすぎ~wwwwwwみんな~終わったよっ♪」

すると向こうからみんながニコニコしながら歩いて来る。話が読めない。

「キョンく~ん!ごめんねっ?みくるたちに頼まれたどっきりだったのさ~!」

そう言うことか…ちくしょう。泣いちまったよっ!!

「いやぁここまでうまく行くとは思いませんでした!」
「ごめんなさいね?うふふ♪」

楽しそうだなおい、こっちは必死だったんだぞ、

「キョ~ン~!何泣いてんの!ほ~らぁ顔ぐちゃぐちゃ!!」

安心して腰が抜け切った俺を抱き締め、ハンカチで顔を拭ってくれたのはハルヒだ。

「ただの温泉旅行じゃつまんないからまた古泉くんに協力してもらったの。どう?楽しかったでしょ?」
「あたしもあんな長っが~~~~いセリフ覚えるの大変だったさ~!!」

まんまとハメられた俺をみてみんな楽しそうに笑っている。長門もクスクスと控え目に笑っていた。
俺もつられて吹いてしまった。久しぶりにやってくれるな古泉。

じゃあ長門の親玉がどうこうってのも…?

「今日のための下拵えといったところでしょうか?ロケット花火も本当に勘ですよw」
「殴るぞお前。」

よく見ると長門もクスクスと控え目に笑っていた。

「…ユニーク。」

そうか、長門の笑顔に免じて今日のところは許してやるよ。
だが、覚えて置けよ?いつか仕返ししてやるからな!!

「さぁみんな!気晴らしに温泉にでも入って、遊園地にでも寄って帰りましょ!!」

ハルヒの呼び掛けにみんなは答え、俺を除いて盛り上がっていたみんなは温泉に入り、荷物をまとめて旅館を後にした。

古泉のファミリーカーで遊園地へ向う途中、鶴屋さんを含めた女性四人は後部座席で束の間の睡眠をとっていた。
助手席の俺は安堵しきって脱力していた。

「ところで古泉、情報統合思念体が冗談ならお前の仕事はほんとは何なんだ?」
「ふふ、やっぱり気になりますか?」
「気になるな。お前の仕事は怪しいのばっかりだからみくるさんが心配だ。」
古泉は俺に満面のスマイルを振りまきこう言った。



「簡単にいえば、タイムマシーンの研究でしょうか。」
「なるほどな。」

温泉症候群 ―完―

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