「二人のハルヒ 第3部」

夏休みは終わった。
島で嵐が来たり、 永遠の夏休みが来て大変だった。
詳しくは、「退屈」「暴走」を読んで欲しい。
そんな訳で、2学期が始まった。
俺の予想通りに死人になって帰って来た奴がいた。
谷口もその一人である。
「あー、夏休み中ナンパしたが大失敗だった」
谷口、もうナンパやめろ…。
「何だと?俺は、ナンパしないと彼女作れないぞ」
なら、ナンパはやめて好みの子を探して告白しろよ。
「あーダメダメ…俺は、ナンパするしかないからな」
勝手にしろよ、あとミニハンバーグ貰うぞ。
「ちょ、おま…あー!」
咄嗟に、教室から出てSOS団室へ向かった。

いつものようにノックして入った。
部室にいたのは、古泉、朝比奈さん、長門、そしてハルヒ(大)だった。
「どうしたんだ?」
何だ、空気が重い感じがする。
何かこう…嫌な予感がする。
「それは、そこの涼宮さんに聞いたほうがいいですよ」
自慢のスマイル顔である古泉が言う。
「ハルヒさん、何があったんですか?」
「…時は動いたわ」
時は動いた?
「えぇ、そうです…未来へ通信したんですけど、繋がらなくなっちゃってぇ…」
泣きそうになる朝比奈さんがそう言った。
何だって!?
「そうです、長門さんも主に通信しようとしても出来ないんですよ」
いつの間にか、真面目顔になった古泉。
「長門、それはホントか」
「ホント」
長門は、冷静で答えた。
何故、みくるの上司も長門の主も繋がらないのか。
通信を遮断出来る奴はいるのか。
俺は、色々思い出してみた。
あった、遮断出来る奴がいた…
それは、長門と同じ宇宙人が通信を遮断出来る。
しかし、その宇宙人は誰なのか。
何故、こんな事をするのか。
考えても答えが見つからなかった。
「それは、誰がやったんだ?」
全員、ハルヒ(大)へ注目した。
「それは…」
それは?
ハルヒ(大)は俺に向かって言った。
「キョン君、あなたが知ってる人物よ」
俺が知ってる人物?
もう一回思い出そう、俺が知ってる人物、宇宙人、1学期であった出来事…。
まさか、アイツなのか。
「そう、私達を困らせた人物…朝倉涼子よ!」
な、何だと!
その時、俺の頭からフラッシュバックが起こる。

(遅いよ)

(人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』
って言うよね)

(あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見る)

(あなたが死ねば、必ず涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こす。多分
大きな情報爆発が観測出来るはず。またとない機会だわ)

(この人間が殺されたら、間違いなく涼宮ハルヒは動く。これ以上の情報を
得るにはそれしかないのよ)

(涼宮さんとお幸せに。じゃあね)

…思い出したくねぇ、あの悪夢を。
朝倉涼子…今度は何を企んでるのだ。

「朝倉は恐らく、世界を崩壊しようと企んでるに違いないわ」
ハルヒ(大)は、団長席に座りながら言う。
俺は、疑問に思った事あった。
「ちょっと待ってください!朝倉は死んだ…と言うが…消滅したんですよ?」
確か、長門の手によって消滅したはずだ。
なのに、何故こんな時に現れるんだ。
「それは、僕が説明しましょう」
出た、説明好き野朗め!
取りあえず、聞くか。
「向こうの世界から来たからです」
待て、何で向こうの世界からなんだ?
「えぇ、それは説明します」
早くしろよ。
「図を描いた方が分かりやすいでしょうね、∞を描きますね」
古泉は、∞を描いて顔上げて得意のスマイルした。
「まず、左側を時間Aします…そして、右側に時間Bとします」
ふむ、その真ん中は俺達がいる時間となる訳か。
「そうです、僕達がいる時間をX時点としましょうか」
それでどうなるんだ。
「まぁ、見て下さいよ。左は時間AからX時点へ流れてるとしまょう…。
で、X時点から時間Bへ流れ、時間BからX時点へ流れ、X時点から時間Aへ流れる事に
なります」
つまり、時間Aと時間Bは別世界だとしたら、X時点へぶつかって行く訳か。
「そういう事になります」
…まさか、時間Aと時間Bは俺達と同じ時間で動いてると言いたいのか。
「あなたの言う通りですよ」
ならば、朝倉はどうやってここへ…。
「いいえ、ここにはいないんです」
どう言う事だ。
「確かに、僕は『向こうの世界から来たからです』と言いましたが…違うんです」
言ってる事がめちゃくちゃだぞ。
「つまりですね、向こうの世界に居ながら通信を遮断出来るんですよ」
古泉が言ってる事はホントなのか、長門。
「ホント」
そうなのか。
「不可能じゃない…可能」
マジかよ…。
「じゃ、朝比奈さんのはどうなんだ」
「それは、多分…僕達の世界を閉じ込めようとしてるのでしょう」
閉じ込める?
「えぇ、朝比奈さんや長門さんの通信を遮断したら、上の命令は来なくなるでしょう」
と言う事は、朝比奈さんは未来や過去へ行けないし、長門は主の許可を受ける事が出来ないのか!?
「えぇ、そうですよ」
何でこった…。
俺は、足が抜けたように、この場で座ってしまった。
そうだ、ハルヒさんのはどうなんだろうか。
「どうするんですか、ハルヒさん」
ハルヒは、目を閉じたまま座っていた。
何分経ったのだろうか、ハルヒ(大)はゆっくり目を開けた。
「…私のなら問題ないわ」
どう言う事だ。
朝比奈さんはダメだったのに、ハルヒさんは大丈夫なんだ。
「多分、向こうの朝倉さんは未来の涼宮さんがいる事は知らなかったのではないのでしょうか」
説明ありがとう、古泉。
しかし、朝倉って間抜けな所あるんだな。
「でも、キョン君…朝倉の事は油断しないで、いい?」
はい、分かってます、ハルヒさん。

キーンコーンカーンコーン…

昼休みが終わる合図が鳴ったな。
そろそろ教室へ戻らないと…。
「待って、キョン君」
部屋を出ようと思ったが、ハルヒ(大)に止められた。
「何ですか、ハルヒさん」
ハルヒ(大)は少し溜息してから言った。
「今の時代の私の事を頼むね」
と、笑顔した。
未来の女の人って眩しいなぁ。
「えぇ、分かってます!…では」
「いってらっしゃい」
俺は、自分のクラスへ急いだ。
やれやれ…教室にいるハルヒに何か言われるだろうな。


「…とにかく、みくるちゃんの代わりに…私が止めないとね」
窓の外を見るハルヒ(大)。
「朝倉、こんな事するなんて…許せないな...」

午後の授業が終わり、放課後。
部室へ向かってる途中に誰がいた。
「おや、キョンくんじゃないか」
何だ、鶴屋さんですか。
「あ、こんにちわ」
「やぁ、どしたのさ!暗い顔してるよっ!」
暗い顔?近くにある鏡を覗いて見た。
確かに、暗い顔になってる。
「何かあったのかぃ!良かったら、あたしに相談するかいいよっ!」
朝倉がまだ生きてる事で少しショック受けてたんだな…俺って。
「いいえ、特に何でもないんですよ…えー、ほら!授業の疲れですよ」
「そうなのかぃ?あたしは、めがっさ頑張ってるにょろ~!」
ケラケラ笑う鶴屋さん。
「では、俺は部室へ向かいます」
「ちょっと待つにょろ!」
「何です?」
鶴屋さんの顔が真面目顔になった。
何か深刻な事でもあったのだろうか。
「…スモークチーズあるかぃ?」
何だ、それかよ。
「……」
「……」
「…ありません!」
「にょろ~ん…」

さて、どうしたものか…。
向こうの世界に朝倉がいるとすれば、ここの世界も影響する。
朝比奈さんの時間転移出来ない、長門の主の許可も出来ない。
そうなれば、この世界は孤立されると言っていいのだろうか。
頼れるのは、あのハルヒ(大)の通信だけか。
古泉が言った通り、時間Aと時間Bは俺達の知らない世界…つまり、パラレルワールド
と呼ばれる世界である。
パラレルワールドとは、俺達がいる世界から複数の道がある。
どんな未来が待ってるのか、俺も知らない…。
ハルヒがいない世界なのか、超能力者や宇宙人に未来人がいない世界なのか…色んな世界がある。
話を戻そう、朝倉はどうやって攻めて来るのか考えてみた。
向こうから来る可能性あるかもしれない…向こうに居ながら、この世界を潰すかもしれない。
いずれにせよ、自分で確かめるしかないのだ…そうだろ、朝倉。
「なーに、考えてるのよ?」
うぉぅ!び、吃驚した…なんだハルヒじゃないか。
「挨拶もノック無しで入るなんで、キョン…あんた変だよ」
周りを見れば…古泉が盤ゲームしてる。朝比奈さんはお茶入れをしてる。
長門は静かに本を読んでいる…ここは、SOS団室だ。
…考え事をしながら部室へ向かってたんだな。
「すまない、俺は考え事をしてたから気付かなかったよ」
もし、朝比奈さんが着替え中だったら、恐ろしい事になってたな。
「そう…で、何を考えてたの」
「何でもいいだろ、別に大事した事無いぞ」
まぁ、大事した事あるけどな。
「そんなに考えて気付かないなら、深刻な事あったと見えるわ」
ちっ、鋭い。
「事情あったからな、考えてたんだ…お前には関係ない」
ハルヒは、仏頂面で唇を突き出した。
「むぅ~…」
そんな顔したって無駄です。
ハルヒのマシンガン発言は流して、長門を見た。
「……」
長門の瞳は、今にも吸い込まれそうな眼をしている。
長門は、俺が見てるのを気付いた。
そして、長門は俺に向かって言った。
「気を付けて」
何を気を付けろと?
「来る」
WHY?

クニャリ…

な、何だ!く、空間か!
そうだ!ハルヒ!
慌てて、周りを見ようとしたが。
「っ!?」
俺は、どんでもない恐怖感が来てしまった。
そう、俺だけ残された…。
一緒に居た古泉や朝比奈さんや長門はいない。
ハルヒもだ。
「そんな…そんなバカな…」
誰もいない空間、まだ夏は残ってるのに寒い、暗い…。
何だ…ここは…。
怖い、何だが怖く感じる。
そうだ、誰がいるのか確かめないとな。
「おーぃっ!誰がいるのかーっ!」
    …………
…誰もいない、どうすればいいんだ…。
「長門ーっ!朝比奈さーんっ!古泉ーっ!ハルヒーーっ!」
    …………
やっぱり、いない。
くそ、どこ行けばいい…。
周りは暗い、どっちが北なのか分からないぐらい暗い。
どうしたらいいんだ。

「ふふふふ、困ってるみたいね」

この声は!
「私よ、覚えてる?」
この声の主は、朝倉涼子だ。
何でこんな所にいるんだ。
「あら、驚いて声が出ないの」
そりゃそうだ、一度、消滅したはずの朝倉がここにいるからな。
取りあえず、話してみようか。
「お前は、何故こんな所にいるんだ?」
「パラレルワールドから来たと言っていいかしら」
なるほど、パラレルワールドから来たと言うのか。
「ハルヒ達はどうした」
朝倉は少し笑って言った。
「大丈夫よ、皆、向こうにいるんだから」
俺が居なくなってるのを慌ててるのだろうか。
「それに、あなたは寝てるだけよ」
じゃ、ここは夢だと言うのか。
「もう誰もココへ来ないわ」
いつの間にか、あの時のナイフを持ってやがる。
冗談じゃねぇ、前のようには行かないのかよ!
「ふふっ、う・ご・か・さ・な・い・で・ね」
しまった、アレが!動きを止める奴か!
「さぁ…行くよ」
朝倉はナイフを構えて突進した。
「なっ!?」
動け!動けよ!俺よ!動いてくれよ!動け…。
「動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
俺は思わず叫んだが、どの道、死ぬだろうな。
はは、もうダメだな…。

   ガッ!

って、あれ?痛くないぞ。
朝倉の手にはナイフ持ってない?
俺の位置から、ちょっと離れた所にナイフが落ちてた。
一体、誰がやったんだ。
「大丈夫?キョン君」
「ハ、ハルヒさん!どうしてここに…」
まさか、ナイフを飛ばしたのはハルヒ(大)だったのか。
「あなたのプログラムはまだ甘い」
長門!ん、待てよ。
「長門、主に許可出来なかったんじゃないのか?」
「それは、私が言うわ」
長門の代わりにハルヒ(大)が説明してくれるとはな。
「どういう事です?」
「私のいた時代は、古泉君の『機関』と有希が入ってる集団とみくるちゃんがいる集団…その3つの集団を
私の力によって、同盟する事に成功したの」
へぇ、それは良かったな。
「それで、私のを使って有希の主に呼び出して話し合った結果、許可出来たのよ」
それでか…。

「どうして、あなたがここにいるの」
朝倉は長門の方へ睨んだ。
「私がここにいるからよ」
そのお陰で助かった。
まだお礼しないとな。
「あなたは誰よ」
朝倉の目を長門からハルヒ(大)へ移した。
「私は、未来から来た涼宮ハルヒよ」
「な、何で!?」
「あんたは、私がここにいる事を知らなかったのようね」
朝倉は俯いて、そのまま座った。
「私の負けね…いいわ、元に戻してあげる」
朝倉は、悲しい顔して言った。
俺は、どうしてこんな事をするのか知りたかった
「朝倉…何故こんな事をしたのだ」
「私は、あなた達がいる世界が羨ましかっただけ…でも、もういいや…」
朝倉は顔上げ、俺の方へ向いた。
「これは私の我侭だから、じゃあね」
別れを付け、異世界から飛ばされた。
俺は一瞬見たのだ…笑顔しながら泣いてる朝倉を…。

目覚めた時は、もう部活終わった頃だった。
「起きた?」
窓の側に本を読んでる長門がいた。
「あぁ…朝倉はどうなったんだ」
「朝倉涼子は、先ほど別世界へ帰った」
そうか…帰ったんだな。
「それに、通信も回復した」
「…朝比奈さんもか?」
「そう」
そうか、やっと終わったんだな…だけど、朝倉とは、いつか会えるような気がする。
「なぁ、長門」
長門は本を読むのを止め、こっち向いた。
「朝倉と別れて悲しかったか?」
「…少し」

翌日、ハルヒ(大)に会って話した。
「ハルヒさん、やる事はもう終わりましたね」
「そうね」
ハルヒ(大)は、わぁ…ここ懐かしいなぁと思ってるように眺めてた。
「この後どうするんです?」
「そうね…三年間、ここに居る事にしたの」
一年間も!?
「懐かしいから、ここに居たいだけだもん」
そんな理由で!?
「それに…」
ハルヒ(大)は俺に向かって、目を細めた。
「この時代に居る私を守ってね?」
ハルヒ(大)のウインク攻撃!
くぬっ!マジでくたばる五秒前だぜ!
「分かりました、必ず守ります」
だって、前から決心してたもんな。
「そっか、それと…いい加減に告白したら?」
「な、何でですか!」
「この時代の私の事、好きなんでしょ?」
からかないで下さいハルヒさん。
「な、何を…バカな事を言ってるんですか!」
「あはははは、キョン君かーわーいーいー」
ずっと、からかうハルヒ(大)。
…無視しよう。

ビリリッビリリリッ

お、電話だ。
ポケットから取り出して見ると、ハルヒからの電話だった。
「もしもし、今すぐ、いつもの場所へ来て」
「了解、団長さん」
「いいわね?遅かったら、死刑だからね!」
やれやれ…告白するのはまだ遠いと思うけど、それまでハルヒの側に居たい。
ハルヒがいると、楽しい事が起こるからな。
感謝してるぞ、ハルヒ。本当はお前の事が好きだからな…。
だから、いつか告白しようと思ってる。

      「あぁ、分かってるよ、ハルヒ!」

その後、ハルヒ(大)は英語の教師として働いてる。
俺達は、いつものように活動してる。
…告白するのはいつだろうな。
「やれやれ…」


              完

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