気象庁はこの連日の暑さは今日も続き、午前中の早い時間で本日の最高
気温が観測史上最高を更新する暑さになることを告げ、不要不急の外出は
避けるるよう繰返し警告していたし。電力会社は電力供給が限界に近くなって
きたため、さらなる節電を呼びかけていた。

田舎から帰ってきたばかりの俺は、何の因果か、買出しのために外を歩いて
いた。

「キョン! いつ帰ってきてたのよ!、連絡ぐらいよこしなさい!、団員と
して報告義務の怠慢は罰金ものよ!」

記録的な暑さも、ものともしない元気さで、呼び止められた、誰かって、
こんな日に、見ているほうが暑苦しくなるような元気さで声かけてくるやつ
なんで、そういないだろう

「元気だな、昨日の晩だ、こっちがこんなに暑いなら、もうしばらく向こうに
いればよかったと後悔していることろだ」
「なーに なっさけないこといってるのよ、この程度の暑さなんて、なんでも
ないじゃないの!」

こいつの冷却系はいったいどうなっているんだ、人間技じゃないな
長門ならこんな日でも涼しい顔していそうではあるが

「で、なに、買物?」
「ああ、帰ったばかりで、家の中なんにもないんでな」
「つきあったげるわよ」

一体どうゆう風の吹き回しかって、そよ風すら吹いてはいないがな、こうして
この、くそ暑いなか、俺とハルヒは並んで歩いているのだった。
どうやら、ハルヒの奴、俺が田舎に帰っている間は、SOS団の活動も休みに
していたようで、かまって欲しいオーラを放出しまっくている

俺がこんなハルヒを見て、ちょっとからかってやろうと思ったとしてもそんな
に不思議じゃなだろう

「こう暑いとな、昔聞いた話を思い出すな」
「なにそれ」
「こんなに暑い日には外に出るなって話、聞きたいか」
「別に、きーたげてもいいわ、話しなさいよ」
「俺の田舎の方の話なんだが、夏女って話がある」
「なにそれ、怪談?」
「そう、むかしむかしの話、今日みたいにえれー暑い日のこと、旅の親子が
いてな、あまりの暑さで進むこともままならず、小さな木陰をみつけて、
休んでいたそうだ」

怪談は好きなのか、口をはさむことなく、ハルヒは俺の話を聞いている

「すると、彼らが通ってきた路から、一人の女が歩いてくるのが見えたんだ、
倒れるような暑さの中、その女は、まるで何事もないように、こっちに歩いて
いる、びっくりするというより2人は恐怖を感じた、なにしろ旅なれた大の
大人がまいってしまいそうな暑い日なのに、その女は、まるで気持ちよく散歩
でもしているように歩いているんだ、多分この世のものではないだろう、そう
思った」

別に俺の田舎にそんな話があるわけではない、このくそ暑いのにふらふら出
歩いている誰かをちょっと皮肉った、そんだけのことだ

「そのうち、その女は、木陰にいる親子に気がつき、近づいてきた、歩いてき
て疲れたので、水が欲しいという、夏の最中、水を持たずに旅をするなぞ、
尋常なことではないし、旅人も子づれということもあって、水は貴重だ、それ
にその女、この暑さの中、さほど苦しんでいる様子もない」

自分で話を続けていながら、俺の頭もこの暑さのせいで少々朦朧とし始めてい
たのかもしれない、あたかも自分がかつて体験した出来事のように、話を続け
ている。

「旅人が水を渡すのを躊躇しているのを感じたのか、その女は、旅人の親の
方に向かって、水が大事なら、そなたからもらおう、そういったかと思うと、
女は、ふいに息を吸い込むようなそぶりをみせた、すると、その旅人は、みる
みる干からびて干物のようになってしまった。その様子を見ていた、子供の
方は、おびえながらもおずおずと水の入った竹筒を差し出したそうだ、そりゃ
命は惜しいものな、するとその女は、お前はよき形をしている、このこと人に
告げぬなら、命だけは助けようぞ、その子はそこまで聞くと、卒倒してしまい、
気が付いたときにはすっかり夜も暮れた時だったそうな」


「云わぬといったろ」

なんだハルヒ

「お主、云わぬと申したであろうぉぉぉぉ!」

突然のハルヒの怒声に、なさけないことに 俺は腰を抜かして尻餅をついた
格好になってしまった。

「ぶふぁふぁふぁ おっかしー その程度であたしを出し抜こうなんて、
キョンの分際で100年はやいわ」

続けて聞こえてきたのは、俺を見下ろすように仁王立ちして、その手を俺に
差し出しているハルヒの笑い声だった。

「完敗です」
俺はそれだけいうのが精一杯だった

ふと頬に風を感じる、いままで、炎天下で坩堝のように蒸されていた街角に
風がとおる

まるで、夏女がその苛立ちと怒りを解き全てを許したかのように

ハルヒはその後、とてつもない上機嫌で俺の家に押しかけ妹を巻き込んで
一騒ぎして帰っていった。

ハルヒ、おまえ、俺の居ない間、ひょっとして寂しかったのか?

夕方の天気予報は、この夏の記録的な暑さも今日で峠を越えたと告げていた。
                                           <完>


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