うー、だるい…。頭、ぼーっとする…。

目が覚めて、あたしがまだ熱が引いていないのを、嫌でも
思い知らされた。
テレビでインドの修行僧だか何だかが滝に打たれてるのを見て、
コレだ!と水ごりの真似事をしたのがまずかったのか。
あとは期末テストの返却を待つだけというこの時期に、あたしは
もう笑っちゃうくらい見事に夏風邪を引いてしまったのだ。

来たる夏休み、SOS団のみんなが全員、最後まで
あたしについて来れますように!とか祈願しておいて、
当のあたしが寝込んでれば、世話はない。
ま、いいけどね。何事も思い立ったらチャレンジしてみるのが
あたしの性分だし。こんなちゃちな夏風邪くらい、
気合いでさくさく治してみせるわよ、うん!

と張り切った途端、胃の辺りに引き絞るような痛みが走って、
あたしは思わず、うう~っと呻いた。
夏場だというのにあたしは布団を頭までかぶって、ぶるぶると
寒さに震えている。肌を触れば、感じるのはすごい熱量。
薬、飲んだのに…やっぱり苦しいなあ。こんな時、みんなが…
あいつがそばに居てくれたら…。

「馬鹿みたい」

頭に浮かんだ想いに、あたしはベッドの中で呟いた。
なんだって、あいつなんかに頼ろうとしてんの? 中学の頃から、
あたしは何でも自分一人でこなしてきたじゃない。
こんな病気くらいで、弱気になって…寂しいとか思うなんて
おかしいよ、あたし。
認めたくない、認めらんない、こんな感情。

寝よう。今日はどれだけたっぷりぐっすり眠ったって、
誰にも文句は言われないんだし。
次に目が覚めた時には、熱も引いて…こんなワケの分からない
不安さなんて消えてなくなってるわよ、うん…。

…………
………
……


ん…冷たい…気持ちいい…。
ぼんやりした頭で、あたしはそう考えていた。絞り直した
濡れタオルが、おでこに乗せられたんだ。
熱がすーっと引いていく感じに、ほぅ、と安堵の息が洩れる。

「ありがと、母さん…」

小さくそう呟いたあたしに、でも返された言葉は全く
予想外なものだった。

「すまん、起こしちまったか。大丈夫か、ハルヒ?」

途端、あたしは目を真ん丸にして上半身を跳ね起こしたわ。熱が
無かったらバネ人形みたいにベッドから飛び出してたと思う。

「キョ、キョン!? あんた、なんでっ!」

ここ、つまりあたしの部屋に!?と問いただそうとしたあたしを、
キョンの奴は両手を広げて、あーはいはいとばかりに制した。

「驚くな、つー方が無理だろうが、とにかく落ち着け。
 これから経緯を説明してやるから」

言いながら、キョンはデジタル体温計の先をあたしの口元に
突き出してくる。それを咥えさせられ、
必然的に黙らせれたあたしに、キョンはゆっくりと語り始めた。

その話を要約すると。
あたしが急に風邪で休んだので、放課後、こいつはあたしん家に
電話で容態を訊ねてみたそうだ。そうしたら母さんに、
家まで来てほしいと頼まれたという。
食材や氷なんかが乏しいので買い出しに出掛けたいのだけれど、
病気の娘を放っとくわけにもいかないでしょ、とか言われたそうで。
あたしが居ないので当然SOS団の活動も無かったこいつは、
留守番役のつもりで、のこのこ出向いてきたらしい。

前々から思ってたけど、本当にキョンってば暇を持て余してんのね。
あたしがSOS団に誘ってやらなかったら、きっと悪い方向へ
進んでたに違いないわ。

ともかく母さんの指示の下、やってきたキョンは即座に
あたしの部屋に放り込まれ、

「ハルヒの事お願いね~♪」

との一言を残して、母さんは車で出掛けてしまったという。
キョンの奴は他人の家の中をうろつき回るわけにもいかず、仕方なく
あたしの部屋で看病を続けていた、そうだ。

「勝手に部屋に上がられたら、そりゃ迷惑だろうがな。お前を
 放っぽって帰るわけにもいかなかったし」
「ま、まあそうね。別に悪気があったわけでもなさそうだし、
 そういう事なら、ゆ、許してあげなくもないわよ」

ぽりぽりと頬を掻くキョンにそう言って、あたしはぷいっと
顔を背けた。元々が熱で赤くなってるから気付かれてはいないとは
思うけど、かーっと上気した顔を見られたくなかったのだ。

あたしの胸の内では、『母さん、ナイスーっ!』という歓声と
『また何を余計な事してくれてんのよ母さんッ!?』という怒声が
一緒くたになって吹き荒れていた。

そりゃ、ね。こいつが来てくれた事は嬉しいわよ。別にキョンじゃ
なくったって、病気の所に誰かがお見舞いに来てくれれば、
あたしだって素直に嬉しいと思う。うむ。
でもでも、なんであたしが寝てる間に勝手に部屋に入れちゃうのよ!
よりにもよってキョンの奴を!?

ああ、寝汗で髪とか変な風になってないかな。口だって
朝食の後から磨いてないし。
部屋の中だってそうと分かってれば、もう少しは整理整頓を…。

…整理整頓?
し、ししし、しまった! あたしとした事がッ!
机の上の写真立て、アレをキョンの奴に見られたりしたら、
何もかもみんなバレバレじゃないのよっ!?

そうして、つい視線をそちらに向けてしまったのが、さらなる
失策だった。
キョンもつられるようにそちらを見やって…「あ」と一言呟くなり、
こいつはわざとらしく難しい顔で体温計を凝視し始めたのだ!

「あー、38度2分か。まだちょっときついか?」
「べ、別にそれほどでも…。
 って、ちょっとキョン! あ、あんた、気付いてんでしょ!?」

あたしに胸倉を引っ掴まれたキョンは、困ったように視線を泳がせて、
やがて観念したように、そーっと首を縦に振った。
そりゃそうよね、アレで分かんなかったら本当にどうかしてるわ。

なんて、穏やかに納得できるはずも無く。
やり場のない怒りと恥ずかしさに、熱で赤らんだ顔を
さらに耳の先の細胞ひとつまで真っ赤に染め上げたあたしは、
じわっと涙目でキョンを怒鳴りつけていた。

「こ、このバカ! スケベ、変態!
 人の秘密にズカズカ入り込んでんじゃないわよッ!?」

もしもあたしが、もう少し大人だったなら。この時の対応も
きっと違っていたと思う。好きな相手に好きな気持ちが
バレたって、全然構やしないじゃない、と。
たぶん、あたしの母さんもそんな風に考えたんだろう。

でも、この時のあたしはまだまだ子供で、照れくささや
気恥ずかしさといった感情の奔流にあっけなく心が流されて、
自分がひどい仕打ちを受けたように感じてしまったのだ。

分かるでしょ? 子供ってのは『弱みを握られる事』を
やたらと恐れるものなのよ。
寝起きの混乱と風邪の熱で朦朧とした頭は、その憤激を
まんま、キョンへの逆上としてぶつけていた。

「だ、大体あんた、本当に看病とかしてたわけ!?
 怪しいもんだわ! あたしが寝てる間にヘンな事しようとか、
 こっそり下着でも盗んでやれとか考えてたんじゃないのッ!?」

思い返すだに恥ずかしい。あれは、典型的な子供の
言い掛かりだった。相手を貶める事で
自分の尊厳を守ろうとする、幼稚な考え方だ。

あたしのその、不条理極まりない口撃に。
でもキョンの奴は怒りもせずにあたしの目を見つめて、それから
静かにこう言ったの。

「あのな、ハルヒ。俺も男だから、もちろんそっち方面には
 興味はあるさ。今日ここまで来たのだって、下心が無かったって
 言えばウソになる。
 つか、最初にお前に声を掛けたのも、近くの席の可愛い女の子と
 仲良くなっとこうとか、そんな程度のつもりからだったしな。
 だけど」

朴訥なキョンの口調が、やけにあたしの胸に響く。

「だけど、熱に浮かされたお前が目の前でうーうー唸ってたら――
 さすがに、そんな気分になれるかよ」

そうして、キョンの奴はあたしをなだめるように、ポンポンと
軽く頭を叩いたのだった。

ああ。バカだ。あたしは大バカだ。
こいつは、キョンの奴は本当に心底から、あたしの事を心配して
くれてたんじゃない。

なのにあたしは、くだらない体裁ばかりを気にして。自分の事だけで
頭が一杯になって、あげくの果てにはキョンに向かって、
ひどい難癖を突き付けて。
謝らなきゃ。でなけりゃキョンの奴、あたしのバカさ加減に呆れて
帰っちゃうかも…。

「あ、あのね、キョン。あたし、その、ごめ…」

ところが、そこから先は言わせて貰えなかった。キョンは、

「まだ熱あんだろ? いいから、寝てろよ」

とあたしの言葉を遮ると、そっと肩を押さえてあたしを寝かせつけ、
掛け布団を掛け直し、さらには上半身を起こした際に
跳ね飛んでいた濡れタオルを洗面器の水で絞ってもう一度、
あたしのおでこの上に乗せてくれたのよ。

わざとだ。絶対、わざとだ。
キョンの奴、あたしが謝ろうとしたのに、わざと素知らぬフリを
したんだ。全部、病気のせいだと言わんばかりに。

その気遣いに、内心ホッとしてるあたしが居て。そんな自分が
どこか許せなくて。布団の端から目から上だけを覗かせたあたしは、
その目でキョンを睨みつけた。

「どうしてよ…」
「ん? 何がだ、ハルヒ」
「どうして、そんなに優しいのよ!?」
「いや、どうしてって言われても。病人に厳しく当たる奴が居たら、
 そいつはオニだろ」

なんで怒られてるのかワケが分からん、とでも言いたげに、
キョンの奴は肩をすくめてみせる。

「あまりワガママばっか言われても困るけどな。うちの妹なんか
 元が甘えん坊だから、風邪の時とかはひどいぞ。
 やれ冷たいフルーチェ食べたいだの、モモ缶開けてだの、
 つまんないから何か芸見せてだの。
 それに比べれば、お前はむしろ普段の方が…ぐわっ!?」

べらべらと講釈を述べるキョンを、あたしはだるい体から
振り絞った渾身の力で蹴っ飛ばしていた。

風邪で膝関節が痛いし、腿の筋肉も悲鳴を上げてる。たぶん、
普段の半分の力も出せてはいないだろう。
キョンの奴も最初こそよろけたものの、今は椅子に座ったまま、
あたしに蹴られるに任せている。

「な、なんだよハルヒ、いきなり?」
「ずるい…あんた、ずるいのよ、キョン!」
「はあ?」

面食らった顔のキョンを、あたしはベッドに横たわったまま
パジャマの裾から裸足の先を伸ばして、何度も何度も蹴りつけた。
そうして潤んだ瞳であいつを睨みつけて、あたしは魂から
搾り出すような声で叫んだ。

「病気でつらい時に、そんな風に優しくされたら…
 あんたを好きだって気持ちが、抑えられないじゃないのよ!!」

くやしい。心の底から猛烈にくやしい。
くやしいけど認めざるを得ない。こいつの優しさが、心遣いの
ひとつひとつが、嬉しくてたまらない。あたしの事をこんなにも
大切にしてくれるキョンが、とても、とても大好きだって!

だから、あたしはくやしかった。こいつの優しさは、きっと
特別なものじゃない。妹ちゃんにも、仮に有希やみくるちゃんが
風邪を引いたって、同じように優しく接するんだ。

自分でも、理不尽な願いだと思う。だけどその時、確かに相反する
二人のあたしが居た。
もっともっと、キョンに優しくしてほしいと願うあたしと。
自分だけが特別でないのなら、もうこれ以上優しくしないで!と
願うあたしが。

どっちにしたって、言ってるあたしがワケの分からない
状態なんだから、言われたキョンの方だって応対に困るだろう。
事実、あたしに睨み据えられたキョンは困惑しきった表情を
浮かべている。

「…よく分からんが、どうもお前に恥ずかしい思いをさせたせいで、
 こんな雰囲気になっちまったみたいだな。
 じゃあ代わりに、と言っては何だが、俺も少しばかり
 恥ずかしい話をするぞ?」

椅子に座り直して、こほんとひとつ咳を打ったキョンは、
そうしておもむろに語り始めた。

「気を悪くするなよ? 本音の話な、ハルヒ、今朝のHRで
 お前が今日は休みだって聞いた時、俺は正直ホッとしてたんだ。
 なにしろお前と同じクラスになって、特にSOS団を
 結成してからは、俺にとって心穏やかな安息の日々ってのは、
 遠い記憶の彼方にすっ飛んでっちまったからな」

やれやれと言いたげに、キョンは遠い目をしてみせる。なによ、
ここぞとばかりに文句を言ってやろうってわけ?

「実際、お前が居ない教室ってのは、実に静かで穏やかだったね。
 俺は授業中に背中を突つき回される事もなく、久々に
 いたって学生らしい学生生活って奴を送る事ができたさ。
 そうして1時間目が終わって、2時間目が終わって
 昼休みが過ぎて…午後の授業が始まった時には
 もう俺は、物足りなさを感じてたんだ。平穏無事すぎる世界に」

そう言って、キョンの奴は苦笑いを浮かべてみせた。

「今までが、ジェットコースターに振り回されてたような
 毎日だったからな。それがいきなり、
 三輪車に乗せられたみたいな気分なのさ。安全で平和で…
 退屈で、つまらない。
 俺は、自分で自分の事をごく普通の一般人だと思ってたんだが、
 どうやら知らない間に、お前に毒されちまってたみたいだな」

言うと、キョンは目を細めてあたしを見つめた。何なのよ、一体。

「だから、なに?」
「…分からないのか?」
「分からないから訊いてるんじゃない。言いたい事があるんなら、
 ハッキリ言いなさいよ!」
「やれやれ、仕方ない。いいか、一度しか言わないからな」

すーっと息を吸い込むと、キョンは大真面目な顔で、こう言ったの。





「俺は、お前が居なくて寂しかったんだよ、ハルヒ」





へっ? 今、こいつ…何て言ったの?
目をぱちくりとさせるあたしに、キョンの奴はどこかあらぬ方向へ
視線を逸らしながら、こう続けた。

「お前が俺の後ろの席に居る、いつの間にか、それが俺にとって
 当たり前になってたんだな。
 そいつは俺にとってまったく不本意な事実で、出来れば認めたくは
 なかったんだが。でも、どうしても否定できなかった」
「って、ちょっとキョン、それって…!?」
「つーか、まず最初に気付けよ。いくら俺がお人好しだからって、
 嫌いな奴をわざわざ見舞いに来たりなんかしないっての」

布団からはみ出したままのあたしの足をそっと押し込んで、
そっちの方が熱でもあるんじゃないってくらい赤い顔をしたキョンは、
あたしにこう言い含めてきたわ。

「だから、早く良くなってくれよ、ハルヒ。お前には馬鹿みたいに
 大笑いしてる表情が、一番よく似合ってるんだ。たかだか
 病気ごときで塞ぎこんでんじゃねーよ」
「と、当然よ! こんな夏風邪くらい、気合でさくさく
 治してみせるわ!」

意気込んでそう答えて…ふと、ある考えに思い至ったあたしは、
下からじっとキョンの瞳を見上げた。

「な、なんだよ」
「ねえ、風邪引いた時の妹ちゃんって、あたしよりワガママなんだって
 言ってたわよね。じゃあ…あたしもワガママ言って、いい?」

上目遣いでそう言うと、あいつはあからさまにひるんだ様子を見せる。
そんなキョンに、あたしは間髪入れずに畳み掛けた。

「早く風邪が治るように…おまじない、して?」

そうして、指先で自分のおでこを指し示す。ハァと溜め息を洩らして、
キョンは片手をあたしのおでこの上にかざした。

「痛いの痛いの、飛んでけ~」
「バカ、違うでしょ!?」

頬をぷんすか膨らませつつ、あたしは指先で、今度は自分の唇を
トントンと叩いてみせる。これでようやく理解できたのか、
キョンの奴はひどく狼狽した表情を浮かべた。

「ちょ、お前…それはいくら何でも恥ずかしすぎるだろ…?」

「うっさい! あんた、あたしに早く治ってほしいんでしょ!?
 おまじないしてくんなきゃ、もう一生治ってやんない! ずっと
 このまま寝込み続けてやるから!」
「お前なあ、言ってる事がメチャクチャだぞ」

じたばたと駄々っ子のようにわめき散らすあたしに、キョンは
頭痛てえ、と言わんばかりにこめかみを押さえていたけど、やがて
諦めたように、椅子から立ち上がった。

「小学生の妹と張り合うなよな、まったく…」

忌々しげに呟きながら、それでも濡れタオルを取り除けて、
あいつがベッドの隅の支柱に片手を掛ける。ぎしりとベッドが
軋む音が響いて、あたしは心持ち、身をすくませる。
あいつの胸元から、あいつの汗の匂いがする。

そうして、ゆっくりと覆い被さってくるあいつの影で、
あたしの存在が黒に包まれて。
あたしのおでこにあいつの唇の先が、触れた――。






はてさて、おまじないの成果かしらね? 翌朝には、
あたしの風邪はすっかり良くなっていた。
母さんは「もう一日くらい様子見た方が良くない?」って言ってたけど、
逢って安心させたい奴も居たし、ね。
まだ少し身体はだるいけども、学生鞄を提げたあたしは満面の笑みで、
通学路を駆け上がっていく。なぜだか、あたしには確信があった。
絶対にあいつと出逢えるっていう確信が…ほら、いた!!

「やっほー、キョン!」
「ごぼあっ!?」

全く油断してたんだろう。あたしのジャンピングニーをまともに
背骨へ喰らったキョンは、見事に前方へ吹っ飛んでいた。

「おい…朝一番の挨拶がコレか、ハルヒさん…?」

おでこに砂利石を貼り付けたキョンが、恨みがましい目で
こちらを睨んでくる。
あたしはそれにフンと鼻を鳴らし、今日はきちんとリボンで
結んである髪を片手でかき上げると、両手を腰に当てつつ
胸を反らせて、恒星級の笑顔で答えてやったわ。

「なによ、ちゃんと約束通りに風邪を治してみせたから、
 いの一番に報告してやったんじゃない。
 感謝こそすれ、文句を言われる筋合いなんて無いわっ!」
「あのなあ、どうしてお前はそう…」

と、説教めいた言葉を口にしかけて、キョンは苦笑しつつ
安堵の表情を浮かべてみせた。

「まあいいさ。お前がそうして笑えるようになったんなら、
 それが何より一番だ」

途端、ボッとあたしの顔が朱に染まる。あたしは慌てて、
キョンの奴を引きずり起こした。

「な、なに恥ずいコト言ってんのよ!? それより、
 さっさと学校に行くわよ学校に!」
「お、おいハルヒ、待てって…」

キョンの手を握り締めたまま、あたしは通学路の坂を
上っていく。そう、こいつと知り合って、あたしは確かに
弱くなってしまったと思う。こいつを頼る気持ちが、
心に芽生えてしまったから。

でも代わりに、あたしは今よりもっともっと
強くなってやろう。キョンが困った時には、いつでも
どんな事ででも、あたしを頼りに出来るように。
そうね、とりあえずあんたが病気やケガで寝込んだ時には、
あたしが付きっきりで看病してあげるわ。嫌とは
言わせないからね!

吹き出る玉の汗も気にせずに、あたしはキョンと一緒に
校門を駆け抜けた。楽しい夏休みは、もうすぐだ!



夏風邪サプライズ  おわり


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