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参っちゃったね。
 まさか、こんなことになっちゃうなんてさ。
「ごめんっ!本当に悪気はなかったんだよっ!」
「そんな、問題じゃ、……ぐしゅ、あり、ありません……」
 んー、状況が分かんないと思うから、最初から説明するよ。


 今日は久々にみくるがうっとこに遊びに来たんだよ。
「お邪魔します。……私が一人でここに来るのって久々ですね」
「そだねっ!」
 ほんとに何時以来かな?
 この間来たのはみちるちゃんってことになってたっけ?
 あれ? みくるが見慣れないアクセサリーをつけてるなあ。
「なんだい、それ?」
「これですか?」
 そう言って首にかかったネックレスを持ち上げる。
 特に大した装飾もないけど、相当古いもんだと思うねっ。
「そうなんです。わたしがお母さんから、お母さんはお婆さんからって、
ずーっと昔から伝わってるものなんです」
「そんな大事なものをつけてきたのかい?」
「ええ」
「ちょっとみしてもらっていい?」
 みくるが少し困ったような顔をする。
 でも、もう一押しすれば……だねっ。
 あたしは手を合わせて頭を下げた。
「ねっ、いいだろ?」
 結局、予想通り貸してもらえたんだ。
「ふーん。やっぱりだいぶ古いものだねっ。下手に引っ張ったら壊れちゃ……」
「そんなこと、しないで下さいよ」
「……うん」
 普段はおっとり喋るみくるが強い口調で言ったもんだからびっくりしたっさ。
 大事なものだから、そろそろ返そうと思ってみくるの首に掛けてやろうとしたら、
 恥ずかしがって逃げるもんだからつい悪乗りして追いかけたんだよ。
 そしたら、ネックレスのチェーンがどっかに引っ掛かってさ……、後は分かるにょろ?
 それで冒頭の場面に戻るんだね。


 突然みくるが立ち上がって涙声で言ったんだよ。
「わたしもう帰ります」
「ちょっと待つっさ!すぐなお……」
「鶴屋さん、大っ嫌いです!」
 そう言って部屋を出て行くみくる。
 あたしはもう何をしていいか分からなかったよ。
 結局、ちぎれたチェーンを集めた後は何もする気が起きなくて寝ちゃったんだ。
 月曜日にどんな顔して会えばいいんだろう?


 月曜日に教室につくとみくるはもう自分の席にいた。
 恐る恐る挨拶してみたんだね。
「おはよー、みくる」
「……」
 長門ちゃん張りに無言。これは相当まずいね。
 こういう時は一人で悩むよりは誰か他の人にも相談してみよう。
 第一候補は同じ部活の、ハルにゃんかキョン君かな?
 というわけで昼休みにキョン君のクラスに行ってみたっさ。
 どうもハルにゃんはいないみたいだね。
「キョン君!」
 キョン君はびっくりしたような目であたしを見てる。
 実際びっくりしてるんだろうけどね。
「何かようですか?」
「うん、実はね、キョン君……」
 あたしは大まかに事情を話したんだ。
「それであたしはどうするべきかなっ?」
「謝るのが一番だと思いますよ」
 そだね。でも、なかなか話しかけれる雰囲気じゃなくてさ。
「じゃあ、こうしましょう……」
 キョンくんの案は簡単に言うとSOS団のクリスマスパーティーの時に謝るってものだった。
 他の三人にも協力してもらうらしい。
「いやー、キョンくん案外いいこと思い付くねっ」
「案外、ですか」
「ああ、ごめんよっ。
それでさ、ものは相談なんだけど今度の土曜日ちょーっと付き合ってくんないかいっ?」
「別に構いませんよ」
 いや、これで安心できるねって思ってたけど土曜日までまだ何日もあるんだよね。
 願わくば黒みくるが覚醒しませんように。くわばらくわばら。


 それで、約束の土曜日になったにょろ。
 待ち合わせ場所にはキョンくんと妹ちゃんがいた。
「すいません。親が出かけちゃって。こいつを留守番させる訳にもいかないから……」
「いいって、いいって。一人で留守番なんてつまんないかっね!」
 あたしは妹ちゃんに笑い掛けたんだ。そしたら妹ちゃんが爆弾発言を投下したんだよ。
「これって、デートなの?」
 むむむ、それは難しい質問だね。
「断じて違う」
 キョンくんが即答。鶴にゃん悲しいっさ。
「気を取り直して出発進行にょろ!」
「にょろ!」
 キョンくんから聞いてたけど本当に耳についたものを片っ端から真似てるみたいだね。
「……ところで行き先は決まってるんですか?」
 頭をおさえながらキョンくんが言う。
「うん、壊しちゃったネックレスのかわりになるようなものを買いに行くんだよっ」


 しばらく歩くと目的の店が見えたんだ。
「ここだよっ!」
「なかなか古めかしい店ですねって、こら待て、勝手に入るな!」
 キョンくんはお兄さんが板に付いてるね。
「なんだかんだでもう十年以上ですから」
「すごいねぇ。ともかく、あたしたちも入るっさ!」
 店内の照明は落ち着いた感じだったよ。
 キョンくんは先に入っちゃった妹ちゃんを探していたね。
「全く、どこ行きやがったんだ? ……ああ、いたいた」
 あたしもキョンくんについてってみたっさ。
 すると妹ちゃんがじーって一か所を見てるんだっ。
「何を見てんだ、お前は」
「これ欲しい」
 妹ちゃんが指差したものを見てあたしは思わず息を飲んだよ。
 そこにあったのはこないだみくるが付けてたものと全く同じものだった。
「お前にはまだ早……」
「いいよ、お姉さんが買ってあげるよっ!」
 キョンくんが遠慮と非難が半々の視線を浴びせて来る。
「気にしないで下さい、鶴屋さん。こいつのわがままですから」
「いいじゃないかっ!先輩の言うことは素直に聞く物だよっ!」
 キョンくんはまだ何か言いたそうだったけど、結局何もいわなかった。
 あたしは妹ちゃんに訊いた。
「妹ちゃん。買ってあげたら大事にするかい?」
「するよ」
 よく見ると妹ちゃんとみくるって似てるんだよね。
「どのくらいだい?」
 妹ちゃんは少し考えた後こう言った。
「家宝にする」
 横でキョンくんが笑いをこらえている気配がある。でもあたしは無視して言ったんだ。
「よし、決まりっ! ちゃんと大事にするんだよっ!」
 結局、あたしたちはそこで妹ちゃんようにネックレスと代えのチェーンを買ったんさ。
「今日はどうもすいません」
「気にしないでいいよっ! 付き合ってもらったお礼さ」
「そうですね」
 いつの間にかもう駅前だったよ。
「んじゃねっ!クリスマスの日、よろしくねっ!」
「ちゃんと仲直りして下さいよ」
「任しとくっさ」
 何て言ったけどだいぶ不安なんだよね。


 それでもクリスマスパーティーの日。
 宴もたけなわの頃ハルにゃんの一言でプレゼント交換が行われるはずだったんだけど、
 あたしとみくる以外のみんなは『偶然』プレゼントを忘れちゃったのさ。
「ごめんね、鶴屋さんとみくるちゃんだけでやってもらってもいい?」
「いい……です、よ」
 とぎれとぎれに返事するみくる。
 とにかくあたしは謝りながらみくるに綺麗に包装したネックレスを渡した。
 みくるはちまちまと包装紙をはがして中を見たときびっくりしていた。
「これ……?」
「替わりにもなんないけどさ」
 新しいチェーンについた古い装飾品。
 みくるは恐る恐るそれを首に付けてくれた。
 今度はみくるが堅い動きであたしにプレゼントを渡してくれた。
 中に入っていたのはみくるとお揃いのアクセサリーだった。
 あたしもみくるにならって付けてみた。
「似合ってます」
 ここでなぜかハルにゃんが種明かしするような顔で言った。
「実はあたしね、みくるちゃんから相談されたのよ。鶴屋さんと仲直りしたいって。
そしたらキョンが同じことを鶴屋さんから相談されてるって言うのよ」
 知らぬは本人ばかりなりってことかい?
「そうね。でもいいじゃない。一件落着で」
 まあ、そうなんだろうね。
 だってみくると仲直りできたから。
 それが何よりのクリスマスプレゼントにょろ。
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