「なぁ国木田~……」
「ナンパ?ゲーセン?どっちかな?」
こ、こいつ……俺のパターンを読んでやがる。
当たり前だな。ここ数日、ろくに変化のない生活だ。
学校が終わるとナンパかゲーセン。
いい加減飽き飽きだ。
「たまにはよぉ、こう……変化を付けようぜ?キョンを誘うとかさ」
キョンの奴はとうとう涼宮と付き合いだした。遅ぇ。
しかし彼女がいるのは羨ましいな。ナンパをしてもその日だけでさよならばっかりだしな。
「それは良い考えだけど……涼宮さんが「あたしが許すと思う?バカ谷口」
俺と国木田の間に割り込んできた顔だけは良い女、涼宮ハルヒ。
その後ろにはキョンがやれやれと言いたげな顔で立っていた。
「谷口。ナンパは無理だがゲーセンなら俺は行きたい。……というわけでハルヒも一緒に連れてっていいか?」
「「はぁ!?」」
涼宮と俺の声が被る。合唱コンクールにも出れそうな見事なハーモニー。
「ちょっとキョン。勝手に決めないでよ。あたしは……むぐっ!?」
キョンは涼宮の口を手に持っていたうまい棒で塞いでいた。……あ、食ってる。
そこら辺はキスで塞いでたらかっこよかったんだがな。

「頼む。たまには息抜きしたいんだよ、な?」
……まぁ、いっか。これはこれで何かありそうで楽しみだ。
「しょうがねぇな。学校終わったらすぐ行くからな!」
「キョン、久々に対戦しようね。僕はかなり強くなったから」
国木田もどこかうれしそうだ。やっぱり、なんだかんだでキョンといるのは楽しいからな。
それにしても……涼宮、か。


「よしっ、まずはキョン。俺と対戦だ!」
「いいだろう。ボコボコにしてやる」
あ~あ、谷口が先に始めちゃったか。僕はしばらくどうしようかな……。
「ね、ねぇ国木田。ちょっと……あたしについてきてくれない?」
いつもほとんど喋ることのない涼宮さんに誘われた。何の用かな?
大人しく頷いてついていくとある場所にたどり着いた。
「あれ……二つ取りたいの。でもさ、一人でやるの恥ずかしいからついててよ」
あぁ、なるほど。
そこにはクレーンゲームと、その中に入ってる二匹の人形があった。
涼宮さんもお揃いのを持ちたいなんてかわいらしい所あるなぁ。
僕はしばらく黙って見ていた。……すっごく下手くそ。
もう1000円は使ってるのに、一回もギリギリまですら行かない。

でも、必死になる涼宮さんを見てると笑顔が出て来る。キョンが少し羨ましいな。
「ちょっとやらせてくれない?」
涼宮さんは半ベソをかいていた。
「うぅ~……あ、あたしの小遣い、この200円で最後だからね!任せたわよ!」
この人形、そんなに難易度は高くない。
僕はあっさりと2つ取って、涼宮さんに手渡した。
「あ……ありがと。あんたすごいじゃない、見直したわ……」
「いいよ。たまに楽しいことに誘ってくれるお礼だよ。……それよりさ、谷口まだ涼宮さんに未練があるんだよ」
そう、あいつはかわいそうにキョンと付き合い始めた今でもまだ諦めきれてない。
「そ、そうなの?あのバカ、未だに……」
「だからさ、厳しく突き放すか優しく諭してあげてくれないかな?じゃないと谷口、幸せになれないからさ」
涼宮さんは黙ったまま考えこんでいた。手に持った二つの人形を大事そうに抱えながら。
「今の涼宮さんなら谷口の気持ちもわかると思うんだ。だって、涼宮さん変わったから……あ、谷口が来た。交替かな、じゃあよろしく!」
僕はそう言って離れて行った。涼宮さんはどっちを選ぶかな……。

とりあえず、今はキョンとのゲームを楽しもうっと。


……参ったわね。まだ、谷口があたしのことを好きだったなんて。
しかも、その谷口が真横にいる。
厳しく突き放すか優しく諭すか……ね。もしかして、国木田はあたしを迷わせて楽しんでるんじゃないかしら?
「涼宮、なんかしたいこととか……あるか?」
首を横に振る。今、あんたのこと考えてやってるんだから感謝して黙ってなさい。
よく考えると、最初に付き合ったのはこいつよね。
んで、さっさとフったけど変わらずに接してくれたのも谷口。
……はぁ。やっぱり厳しくなんて出来ないわね。
「谷口、あんたまだあたしに未練タラタラなんだって?国木田が言ってたわよ」
出来るだけ、普段通りに。……でも優しく。
「うげっ!……ば、バカ。そんなわけないだろ!」
見慣れた谷口の動揺する姿。本気なのね……。
「……諦めてよ。あんたは嫌いじゃないけど……キョンのことが好きすぎるの。だからあんたは自分の幸せを掴みなさい」
谷口は急に真面目な顔になった。
「俺が……誰を好きだろうと関係ないだろ?それが、彼氏持ちの奴でもよ」
「国木田が心配してるのよ。このままじゃあんたが幸せになれないから……って」
「だがな、中学からずっと好きだった奴を簡単に諦められるかよ」
正論だ。あたしも、もしキョンが別の人と付き合ったって簡単に諦められない。
じゃあ、どうしろって言うのよ。こんなんじゃ国木田に悪いわ、人形だって取ってもらったのに……。
「……まぁ、俺だってずっとお前を好きでいてもしょうがないってわかってるよ。国木田に心配させ続ける訳にもいかないしな」
よかった、わかってくれたわね。これで谷口にもいつか幸せが来るわ。

「だけどさ、最後に夢くらい見させてくれ。俺と一緒に……あれ、行こうぜ?」
谷口が指をさした先には、いわゆる《プリクラ》なるものがあった。
「あれくらいで良いなら……構わないわ」
しかし、とても古い型ね。今時同じのが15枚出てくるのって少ないわよ。……100円だからいいけど。
谷口と並んで、フレームを決める。なんだか珍しい光景ね、自分で言うのもなんだけどさ。
「キョンとじゃないけど……笑えよな?」
「む……わかってるわよ、失礼ね」
「はははっ!それでこそ涼宮だぜ。ほら、前向けよ」
あたしは髪を整えて、前を向いた。……まぁ、80パーセントの笑顔くらいで良いわよね、谷口だし。
機械の音声が聞こえてくる。
3……2……1……。
チュッ。
へ?何?今の頬についた柔らかい感触は。
横を見ると、谷口がニヤニヤしながらこっちを見ていた。……キス、されたのよね。
「こらぁ!ふざけんなっ!バカ、バカ谷口!」
「いいじゃねーか、ほっぺだったんだし!……お、出来たぞ。ありがとな、涼宮」
そう言って谷口は小走りに逃げ出した。
「待ちなさい!」
あれ?あたし……何を言おうとしてんのよ。
「は、半分渡すのが……礼儀ってもんでしょ……」
谷口が唖然としている。そりゃそうよ、あたしもビックリしてるもん。
ハサミで切り取った半分をあたしは受け取った。キョンに見つかったら怒るかなぁ……。
その前に!やっとかなきゃいけないけとがあるわね。
「谷口……調子に乗りすぎたわね……」
「ちょ……涼宮、待て!さっきのしおらしい態度は何処行ったんだよ!」
「問答無用!死ねぇっ!」
こうして、谷口をボコボコにしたあたしは、ちょうど遊び終えたキョンと帰ることにした。
もちろんキスしてもらったことは、言うまでもない。


「国木田……やっと踏ん切りがついたよ。心配してくれてありがとな」
「いいよ、別に。だけど谷口、男だね。涼宮さんにキスするなんてさ」
違うぜ、国木田。あんなことする気はなかったんだ。体が勝手に動いたのさ。
もういいさ。だから泣くなよ、俺。
「国木田、飲みに行こうぜ……」
「別にいいけど……コーラにしとこうね」
俺の恋は終わった。だけどいいじゃねーか、新しい恋はすぐそこに落ちてるさ。
国木田とナンパしてりゃ、その内出てくるんだ。……あ、あの人かわいいな。
「そこのお姉さん、俺達と飲みに行きましょう!……コーラを!」


おわり

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