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「今日はなんだか解らないけど楽しいなあ」
なぜだろう。SOS団の皆と一緒だから?
それは毎日そうだからそれだけじゃない。
いつもあたしは今退屈だ、という苛立ちより、もうすぐ退屈に
なってしまうんじゃないか、という不安感からイラついていたような気がする。
今日は、少なくとも、TDR(東京ディズニーリゾート)にいる間は退屈に
ならないような予感がしていて、それで楽しいんじゃないかな。
だから、TDL(東京ディズニーランド)を出る時間になっても、この退屈に
ならないことが保障されている時間が終わってしまいそうで、
なんとなく不安になってそれでふと目についた「カリブの海賊」に
入ってみたくなってしまった。TDLにいる時間をちょっとでも引きのばしたくて。

もっとも、カリブの海賊に何の興味も無いのか、というとそうでもない。
あたしは映画は「見る」より「撮る」方が好きだから、そんなに映画を
一杯見るというわけじゃないけど「パイレーツオブカリビアン」という
映画にはぐっと来てしまった。ストーリーとか特撮とかじゃなくて、
ジャック・スパロウの生き方がいい。肩の力が抜けていて、それでいてタフで
賢くて、人情脆くて、おまけによく考えると正義の味方。あんな生き方ができたら
最高って感じよね。残念ながらキョンの説明では、カリブの海賊のアトラクションは
「パイレーツオブカリビアン」が撮影される前に既にあったそうで、
このアトラクションにはジャック・スパロウは出てこないっていうことだ。
それはすごく残念だけど、でも、とにかく、行ってみても損は無いはず。

ああ、これはボートに乗って展示を見学するタイプのアトラクションなのね。
キョンの説明では、TDLやTDS(東京ディズニーシー)にはこういうボート方の
アトラクションは数が多いそうで、別に「海賊」だからボート、という
わけでもないらしい。ボートの先頭にあたしとキョンと有希、2列目に
みくるちゃんと古泉くん、その後ろに他のゲスト(お客)が乗り込んだ。
どっかのレストランの中を流れる川を流されて行き、へんな骸骨の飾りが
わけのわからないことを口走っている下を通るといきなりがくんと
加速がついて下降した。不意をつかれたあたしはおもわず目をつぶってしまい、
「わっ」と叫んでしまった。で、目を開けるとそこは、
同じボートの上でもさっきまでの暗がりじゃなくてさんさんと輝く
太陽の下。見渡す限りの広い海。わたしはなんだか変な服装になっていて
舷側によりかかって海を眺めている。となりに同じ様に海を眺める男。
ってまさかあんた、
「俺はジャックスパロウ。で、あんたは?」

「まずい...」
「どうしました」
「ハルヒがいなくなった」
「それはそれは」
「閉鎖空間はどうなっている」
「確かに形成されているようですね」
「有希?」
「涼宮ハルヒは閉鎖空間に移行している。帰還予定時刻は未定」
「なんてこった」
「あなたが置いて行かれるとは珍しいこともあるものですね」
「一言多いぞ、古泉。どうすりゃいい?」
「さあ、こういうパターンは初めてですのでなんとも」
「お偉がたに連絡でもなんでもとってなんとかしろ」
「ただいま」

あたしはどうやら「ジャックスパロウ海賊団」の一員という設定らしかった。
剣と銃を渡されて、客船を襲ったり、追跡してくる海軍と
戦ったりする。何もかもが作り物とは思えないリアルさ。
ある時は、海軍に追い詰められて海賊船が火災を起こし、決死の
脱出行。最後の最後でスパロウと二人っきりで船に取り残される。
スパロウが私に向かって
「俺と来るか?」
なんて手を出したりして。思わず、手をつかんだら、船と船の間を
ロープにぶら下がってひらりと跳び移り、跳び移った先は
海軍の帆船。海賊団はそのまま戦って見事、海軍の船をゲット。
あー、なんか楽しいなあ。みんなもこんな体験してるんだろうか。
それにしても、スパロウが出てこないなんて、キョンの情報も
いい加減だなあ。


「涼宮さん、かなりお楽しみのようですね」
「そりゃー、良かったな」
「いいのですが、もどっていらっしゃらないとなるといろいろ問題があるのでは?」
「戻って来ないのか?」
「あなたの代わりを向こうでみつけたようですよ」
「俺の代わり?代わりってなんだ」
「本当、鈍い方ですね」

浜辺でジャックと二人。
「あんた、どこから来たんだ?」
「どこって、そんなことどうでもいいじゃない」
「戻らなくていいのか?」
戻る?戻るってどこへよ?
「どこから来たのか知らないけど、向こうには想われ人の一人くらいいるんだろう?」
そんなものいないわよ。
「本当にこっちにずっといていいのか?」
どうなんだろう、よくわからないけど、でもずっとこのままこのアトラクションが
続いてくれたら最高!
「いられるだけ長くいたい」
「そうか、じゃあ」
え、まさか、これって.....。

「これ以上はまずい」
「どういうことだ長門?」
「涼宮ハルヒと現実空間のリンクが急速に薄らいでいる」
「どうするんだ。古泉、行って連れ戻してこい!」
「無理ですよ。涼宮さんが帰りたいと思わなければ、連れ戻すことは不可能です」
「あー、ちきしょう、面倒くさい。俺が行けばいいんだろ」
「...最初から、そうすればいいのに。」

ジャックの顔がすぐ目の前に近付いて来て、あたしの心臓が胸から飛び出す程
ドキドキしているちょうどそのとき、
「待てよ!」
って声が。キョン?
見ると、キョンもなんだか、いかにもって衣装を身に付けている。
どうみても文化祭にでてくるキャストミスの海賊にしか見えないところがお愛敬だ。
「キョン、どうだった、楽しかった?」
「帰ろう」
「え、何言ってんのよ。すごい、いいとこだったのに」
「だめだ、帰ろう」
「何、むきになってるのよ。ただのアトラクションでしょうが。
頭おかしいんじゃないの?それともやきもちでも焼いてるの?」
「もう終わりだ」
「うるさいわね、馬鹿キョン、あっち行ってよ」
「おいおい、お二人さん、こっちにも一人いるんだけど、無視かい?」
ジャックは剣を抜くと、いきなりキョンに切りつけた。
キョンも慌てて剣を抜いて合わせるが、高校生とジャックスパロウじゃあ
勝負にならない。あっという間に組み伏せられて、胸を刺されてしまった。
「あー、だから言わんこっちゃない。あっちに行ってなさいよ。
キョン、キョン?聞こえないの?え、うそ、キャー死んでる」

結局、キョンがじゃましたおかげで、アトラクションを最後まで満喫できなかった。
まったく、ただのアトラクションなのにムキになっちゃって馬鹿みたい。
キョンが変なときに来なければスパロウと最後まで行けたのにな。
でも、キョンが来たとき、ちょっとだけうれしかったのは内緒だ。
「待てよ」なんて言ったときのキョンは珍しくちょっとだけ格好よかったかな?
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.
.
「だから嫌だったんだ」
「まあ、そうおっしゃらずに」
「本当に胸を刺されて死んだんだぞ」
「お気の毒さまです」
「お前が行けば良かったんだ」
「僕が刺されて死んでも、涼宮さんはこちらに戻って来たいとは思いませんよ」
「どういう意味だ。どうして、お前なら死んで良くて、
俺じゃあまずいんだ。おんなじだろう」
「本当にお分かりにならないんですか?困った方ですね」


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