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「だからお前は自分の身の程を知れ。それさえすりゃお前はバカだがまずまずの顔をしてるんだから彼女くらい出来るぞ」
俺はがっかりした。なんだキョンの野郎。自分はハーレムにいるからって見下したように話しやがって……。
「そうだよ。谷口はいつも高いレベルを求め過ぎるからナンパだって失敗するんだよ」
国木田まで……。こいつもこないだ俺に内緒で二十歳の人と付き合い始めやがった。しかも逆ナンだぞ、逆ナン。
「お前らなぁ!かわいい女と付き合うのは男の夢だろうが!」
キョンと国木田が顔を見合わせた後答えた。
「僕の彼女の写真見せたら谷口はAランクプラスだって……」
「まぁ、俺の付き合ってるハルヒは言うまでもないだろ?」
くっ……こいつら。
「畜生!わかったよ、お前らの彼女よりかわいいAAランク以上と付き合ってやる!!覚えてろっ!」
俺は走りだした。何処へって?もちろん家へだ。
今日はゆっくりと休んで明日の土曜日にはバリバリに決めてナンパしてやる!
朝からだ、朝から!


なんで誰もヒマじゃないんだよ……。俺は朝からずっとAAランク以上に声をかけ続けた。

「ごめんね、彼氏が待ってるの」
「ん~、惜しい!もう少しであたしのストライクゾーンだったのにね」
「私、ガキは相手にしないから。まぁキミだったら三年後には相手になってあげるわ。それまでフリーだったらね」
……聞かされた言葉を自分で整理してて落ち込むぜ。なんだよ、あと一歩ばっかりかよ。
しかし、あそこまで豪語しといて明らかにあいつらに勝てない女を連れて行くと確実に笑い者だ。……ん?あの人の背中から出るオーラは確実にAAランク以上!行くしかない!
俺はその人の肩に手をかけた。
「ふええぇっ!!」
「すいません!俺とお茶でも……って、あれ?」
俺に涙目で振り向いたのは、朝比奈みくる先輩だった。制服でも軽くAAランクプラスを超えるが、私服だとヤバ過ぎるな。
「あ、あれ?あなたはキョンくんのお友達の……え~と…」
「谷口です!ご無沙汰してます!」
朝比奈さんは俺のことを思いだしたようで、メチャクチャにかわいい笑顔でペコッと頭を下げた。
「そ、それで……あの……何か、用ですか?」
はっ!俺の目的はナンパだ。あまりの美しさに見とれて忘れてたぜ。
「いやぁ、実はですね……まぁ奢りますんで一緒にお茶でもどうですか?」
「ふえっ?……え~と、それってナンパ……ですか?」
「まぁ、ナンパ……ですね。あはははは…」
朝比奈さんは、しばらくの間考えたような表情をして、俺を見上げて少し恥じらいながら口を開いた。
「えと…お茶だけなら…」
これは脈有りか!?ここからは話術の勝負だな。会話だけは面白い人間として定評のある俺の実力を見せてやる!


「ふわぁ……なんか此処、雰囲気の良い店ですねぇ…」
俺の行きつけであり、知る人ぞ知る隠れた名店に連れて来た。

此処を気に入らないのはあのバカで鈍感なキョンくらいのもんだろう。
「なんでも好きなもん頼んでください。俺のオススメはこれとか……」
こんな会話や、俺の笑い話などをした……というよりしまくった。
その間、朝比奈さんはずっと笑顔でいた。かなり手応えありだ。
その内に、俺からの一方通行の喋りではなくなり、会話になった。部室でのキョンの尻に敷かれっぷりと教室での尻に敷かれっぷりなど、時間を忘れる程会話を楽しんだ。


「あ!もうこんな時間……行かなくちゃ!」
おいおい、マジっすか。ここで帰られたらキョンや国木田に『ほれ見ろ』とか言われるに決まってるぅっ!
最低でも告白だけはしなければ、今日の苦労が無に帰してしまう!
「じゃ、じゃあ最後に一か所だけ!着いて来てくれませんか!?」
またもや悩む表情。吸い込まれそうになるぜ。
「ん~……はいっ!わかりました、行きます。急いでくださいね?」
おぉ!天は俺に味方しているのか!
俺は朝比奈さんを隠れた名店の近くにある、眺めの良い場所に連れて行った。


「すごい……こんな綺麗な所が近くにあったんですねぇ……」


ふふふ、完璧だ。俺に何かが足りないと言うのなら、誠意と熱意とムードでカバーだぜ。
それでは、いざ勝負!!
俺は勢いよく朝比奈さんの肩を掴み、顔を見つめた。
「ひぇえっ!なっ、ななな何ですかぁっ!?」
「朝比奈さんっ!俺と付き合ってください!」
よし!男らしく言えたぜ!
「ひょえええ!!は、離してくださいぃっ!」
「とりあえず返事を……ててっ!痛ぇっ!」
その時、俺は何者かに腕を捻られた。
「キミっ!かわゆいみくるに何乱暴なことしてるんさっ!!」
この声は……痛ぇっ!!
俺はさらに誰かに蹴られ、地面に倒れ伏した。
「た~に~ぐ~ち~……あんたなにみくるちゃんに手ぇだそうとしてんのよ」
これはマズい。この学校で最強コンビであろう涼宮と鶴屋さんのペアに俺は見下ろされていた。
「女の子を優しく扱えない男は嫌われるっさ!」
「それ以前にあたしのSOS団の団員に手を出すなんて良い度胸してるじゃない…」
や、ヤバい。殺される…。
「あ、あの……本当に反省しておりますので…許してくれぇっ!!」
俺は走った。そりゃもう走ったよ。スポーツテストで過去一番速かった時以上に速かったのに、なんでこいつらは追いつくんだよ……。
追いつかれた上に足払いを食らって再び地面に突っ伏した状態に。
「まったく…三人で出かける約束をして、みくるちゃんが遅いから探してたらまさかあんたに邪魔されてるとはねぇ……。
どうせまたキョンと国木田辺りに何か大ボラでも吹いたんでしょ?」
くっ……図星だ。
「う、うるさい!!俺だって、俺だって真面目なんだ!かわいい彼女作って遊びたいんだよ、畜生!」

「ふ~ん、キミもなかなか良い夢持ってるね!だけど女の子の扱いは考えないとダメさっ!
まずは自分を磨いてめがっさいい男になってから出直してきなっ!!いいかな!?」
「うっ……はい……」
もういいよ……もういい。
俺は一人で公園を後にしようとした時、声が聞こえてきた。
「あの……ご、ごめんなさいっ!また、学校でぇっ!」
朝比奈さんの声がやけに心に染みるぜ……。


「畜生!結局成果なしだ!!笑うなら笑いやがれ!」
俺は教室でムカつく二人に朝から叫んでいた。
「まぁ、朝比奈さん相手じゃなぁ……」
……ってオイ!キョンの野郎どこからそれを?涼宮め……。
「えぇ!?谷口、朝比奈さんをナンパしたの?そりゃ無茶だよ~」
うるさいぜ、国木田。俺はもう本気でブルーだ。俺の青春は何処へ……そして、俺の器なんてこんなもんだったのか。
「そこの落ち込んでるバカ谷口。みくるちゃんからのお情けの手紙よ」
なんだと?涼宮は俺の前に封筒を投げやると、教室にもかかわらずキョンとイチャつきだした。
しかし、俺にとっては今はこの封筒が一番重要だ。端の方から丁寧に開けて行くと、中にはかわいらしい文字で手紙が書いてあった。

《谷口くん。えっと……ごめんなさい、あなたの気持ちには答えられません。だけど気を落とさないでね?
わたしは谷口くんは格好いいと思います。だから鶴屋さんが言ったように中身を磨いてわたしよりかわいい人と付き合ってください!

PS、わたしのことをかわいい人って言ってくれてありがとう、うれしかったです。》
メチャクチャ嬉しいような……悲しいような。しかし、朝比奈さんが俺の為にこんなに手紙を書いてくれたんだ!
中身を磨いてやる!誰からも振り向かれるような男になってやるぜ!
「涼宮!!」
「な、なによ……」
「男の中身を鍛えるには、何をすればいいんだ!?女として教えてくれ!」
「………う~ん、とりあえずグラウンドを五周走ってみたら?」
グラウンド五周か……よし、藁にも縋る思いだ、行ってやる!!
そうして俺はグラウンドへと走って降りて行った。

~谷口が行った後の教室~

「ま、まさか信じるなんて思わなかったわ……」
やっぱりこいつは真面目に考えてなんてはいなかったか。
「気にするなよ、ハルヒ。あいつは今は男を磨けると言えばなんでもするような男だ」

「そうだよ、涼宮さん。それにあと二、三回ナンパに失敗したら元に戻りそうだし」
同感である。それに、朝比奈さんを初め、ナンパに失敗した女達から言われる《断り》の言葉をあそこまで真っ直ぐに信用するのは凄い才能だとは思うな。
女の言葉なんて何処までが本音かなんてわかりゃしない。それをあそこまで信じることが出来るからこそ、……失敗が続くのだろう。

俺は窓から谷口の様子を見下ろして、誰にも聞こえないように呟いた。
「やれやれ、まぁよしとするか」
何故ならあいつは今だってイキイキした表情で走ってやがるからな。
あいつは一生女に苦労し、失敗を続ける人生の方が谷口らしくていいよな。
そう思った、月曜の朝だった……。


終わり
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