あっつい夏の盛り、もう何度目になるんだろう、SOS団恒例の
市内不思議探索 本日午後の組み分けは、久しぶりに俺とハルヒのペア

あいかわらず、ハルヒは正面をまっすぐ見据えて、ずんずん進んでゆく

「おい ハルヒ、そんなに急いで歩いちゃ、見つかるものの見つからないぞ」

「なに 悠長なこといってんのよ キョン! 探す場所は山のようにあるんだから
ゆっくりまわってたら、時間たんないじゃないの」

ハルヒ、それは、何を探すのか判っている場合の話だと思うぞ

チリンチリンチリン チリンチリン
涼げな音

「今時 風鈴屋か?」

「いってみましょう、さあ」

風鈴の音色を頼りに、細い路地に分け入ってゆく、もちろん、先頭はハルヒ
何度か、小さい角を折れてゆく

見知らぬ場所にでる
ふいに 風を感じる

「こんな場所がまだ、残っていたんだ なんか なつかしい風景ね」

有刺鉄線で囲まれた、雑草の生えた空き地
ご丁寧に土管が3本積まれたままになっている
そして 木製の電柱

いくらなんでも、普通の空間とは思えない

「駄菓子屋さん めっけ!」
「あー なっつかしい これ買い食いしたなぁ 小さい時」

ハルヒは、眼を輝かして、あたりをうろついている 本当 おまえらしいぜ

(こんにちは)

背後から声をかけられ、あわてて振り返ると、小さい女の子
ちょうど数年前の妹ぐらいの感じ

(あんまり おどろいてくれないんですね ちょっとがっかり)

いや 十分 おどろいているさ 顔にでない性分なんだ、きっと

(あの方の力を少しお借りしました 最近では、私たちのこと思い出してくれる
方も少なくなってしまって)

「でも 無用心ね、だれもいないのかしら」

幸い、ハルヒは、さっき見つけた駄菓子屋の店先探索が忙しいようで
こっちの気配には気づいていない

(すみません 自己紹介まだですね ご察しのとおり 狐です)
(この風景は、あの方の一番古い街角の記憶)
(わたしたちは 人の記憶の中にすむものです)

(だから ときどきでいいんです、こうして偶に心の隅において、思い出してもらえれば
存在しつづけることができるんです こんなに強い力をもった方は 本当 久しぶり)

とりあえず、邪悪な存在ではないようだ
いや 人として失くしてはいけない そんなものが かのじょたちなんだろう

(街も人も変わってゆきます、たぶん、わたしたちが 存在できないような形に
だから、今日は久しぶりのお仕事です)

ハルヒ いや あいつとも話をしたのか

(いいえ、でも あの方は 賢いお方 すべて判っていっらしゃいます)

(お邪魔しました、もう少しで、終わります まだいずれ どこかの街角で)

「ねえ、キョン、なに、ボーっとしてるのよ!」

ハルヒがこっちへ近づいてくる

「みてみて あの店、こんな場所が、こんな近くにあったなんて 今度はみんなで
こないといけないわね」

ハルヒ おまえって奴は こうゆう時には 本当 綺麗な眼をするんだな

パラパラパラパラ

晴天の青空の下、雨?

「あ にわか雨、ここじゃ 雨宿りでもできない あの店まで 走るわよ」

ハルヒは俺の左手をとって駆け出す
角を曲がる

チリンチリンチリン

また風鈴の音

角をまがりきったところで突然、ハルヒが立ち止まる
そこは、いつもの街の喧騒の中、バス通りの車の音 いつもの風景
夏の陽射し

文字通り 狐につままれたような顔をした ハルヒがいた

しばらく、2人で黙ったまま並んで歩く

「ねぇ キョン 不思議って一体なんだと思う キョンにとって不思議ってなに?」

「さあ なんだろうな、でも 不思議って奴は、自分の中にある不思議を感じる
なにか によって出来ているんじゃないか 不思議を感じる力によって、自分の中
に作られる大事なもの、それが、不思議だろ きっと」

「ふーん まあ 合格点ってことかな、わたしも今、ちょっとそんな感じがしてる
わたしにとって、不思議は、見つけて、解明するものだった、んん 今でも
わたしの不思議は、そうゆうもの、でも、キョンがいったような不思議ってのも
あってもいいかな そんな風に思った」

 確かに、ハルヒは今の出来事をしっかり理解しているようだ

「でも俺にとって、一番の不思議は ハルヒ お前だな」

「なによ それ」

「いったろ、俺の不思議は俺の中にある大事なものだって」

「なら、わたしの不思議は キョン あなたってことになるのかな」

その時 ようやく俺はまだ左手をハルヒと繋いだままだったのに気がついた

「みつけちゃったね 不思議」

「そうだな」

「でも この不思議はみんなには 内緒よ」

       ある夏の昼下がり
       どこかの軒先の風鈴の音が チリン

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最終更新:2007年01月15日 01:39