涼宮ハルヒの変人奇人っぷりは今更何も言わなくても解かると思うが、そうでなくても変わっている奴というのは意外とたくさん居る。
自己紹介で宇宙人に集合をかける奴は居なくても、「趣味は石集めです」とか言うやつは居るし。
SOS団なる団を立ち上げる奴は居なくても、サッカー部とコンピ研とミステリ研を兼部する奴は居る。
ハルヒの常軌を逸した変人ぶりに隠れて目立たなくなっていても、そんな奴らはまぁ普通に生息していると言うことだ。

前置きが終わったところで、本題に入ろう。

国木田という奴は、これはこれで変わった男だ。

 

「SOS団文芸支部機関誌、第2巻を発行するわ!」
ハルヒが団長席の前で声高らかにこう宣言したとき、俺は目眩を覚えたね。
一応もう一度聞こう。
「ハルヒ、何だって?」
「だから、SOS団文芸支部の機関誌よ!あれをまた作るの!」
SOS団文芸支部なんて団体は存在しないぞ。
「何故だ?」
「頻繁に文芸部の活動してりゃぁ生徒会長も何も文句は無いでしょう。それにちょっとおもしろかったしね」
俺は全くおもしろくなかったけどな。
「また何か?くじ引きで何を書かせるか決めるのか?」
そうだったらまた恋愛小説を書くハメになりそうだからな。いや、そうなるだろう、確実に。
「そうよ」
ああ、そうなの。
「でも今回は書き手を全員集めてからくじ引きを行うことにするわ」
「書き手って、俺達の他に誰が居るんだ?」
「鶴屋さんと・・・谷口とか国木田あたりね、阪中さんにも協力を要請しましょうか」
ああ、阪中よ。君もSOS団の人数足りない時用補充要員の一人になってしまったのかも知れん。心から哀れむ。
「じゃぁ3人を呼んできて頂戴」
「もう帰ってるだろ、多分」
「大丈夫よ、3人には教室で待ってるように言ってあるから」
3人ともさぞかし不安で一杯なことだろうな。
「鶴屋さんはもう少しで来る筈だから。ほら、さっさと行く!」
「へいへい・・・」
そんな訳で、俺は部室を後にした。

 

教室には、ハルヒの言った通りに谷口と阪中と国木田の3人が残っていた。君達も暇なんだな。
谷口と国木田はまぁ良いとして、阪中には一応詫びを入れておこう。
「すまん、阪中。ハルヒのワガママに付き合わせることになっちまって」
「いや、私は別にいいのね。長門さんに恩返しも出来るし。でも――」
でも?
「そういう言葉はまず俺に掛けてくれ」
「谷口君がこんな調子なのね」
なるほど。
「前回書いたアレのせいで俺の青春の日々が何日分失われたと思ってるんだ?俺の時間を返せ」
あの恐ろしくつまらない日常エッセイにか?
「ああ、俺に文才が無いのは解かってるんだ。だから涼宮にそう言ってくれ」
確かにお前の文章を読むぐらいなら、枝豆の豆を延々と取り出してる方がよっぽど時間を有効利用出来てるだろうけどな。
「しかし、お前の主張がハルヒに通る可能性は0だ、あきらめろ」
「・・・・・・・・・」
俺がこう言うと谷口は黙り込んだ。こいつもあのハルヒと4年も同じクラスだ、当然それは解かっているだろう。

ここまではほぼ予想通りだ。
阪中はそれなりに快く受け入れると踏んでいたし、谷口も文句を言っても最終的にはやるハメになると解かっていた。
しかし、解からないのがこいつだ。
「国木田もすまないな、何度も」
「別に僕は良いよ」
まぁこいつもこうだろう、とその時俺は一人で納得した。しかし、続けて国木田の口から、驚くべき言葉が出た。
「結構楽しいしね」
What?何が?
「国木田、お前、何が楽しいって?」
「何がって。皆で映画撮ったり、野球したり、本作ったりするのがだよ」
楽しんでるのはハルヒ一人かと思ってたんだが・・・。
「本当に?心からそう思うか?」
「どうしたのキョン?キョンは涼宮さんと居て楽しく無いの?」
その質問はどういう意味だ。
「僕はいっつも楽しそうに何かやってるキョンと涼宮さんが羨ましいなー」
国木田は夢を見ているような口調でそう言い、最後にこう付け加えた。
「まぁ前のキョンみたいに、雨の中でストーブ運ばせられたりするのはごめんだけどね」


アンビリーバボー・・・。
俺もあの活動が楽しく無いのかと聞かれれば、そんなことは無いと答えるが、それは宇宙人や未来人や超能力者がセットで部員となっているからというところが大きい。
それを知らない純正一般ピープルの国木田が楽しそうと捉える。
SOS団員でそれを知らないのはハルヒだけだ。つまりハルヒと国木田は同じような思考回路を持っているということか?
いや、国木田はSOS団とハルヒのことをよく知らないだけだ。そうに違いない。
試しに入団してみろ国木田。最下級者として、いろいろコキ使われるぞ?

まぁそれでもこの時の俺は、意外と近くに変わった奴が居たもんだなぁ、程度にしか考えていなかった。
その後、俺は国木田と言う人間がさらに解からなくなることになる。


「連れてきたぞ」
「遅いわよ!何やってたの!?」
部室にはSOS団の団長と団員以外に、名誉顧問様が既に来られていた。
「ハッハッハ、君たちも暇だねぇ!まぁよろしく頼むよ!」
鶴屋さんが俺の後ろの3人に向かって言った。
俺は所定の席に、3人は余った席に座った。
「君が阪中さんかぃ?みくるから話は聞いてるよ!可愛いわんこ飼ってるんだって?」
「そ、そうなの!それがとっても可愛いのね!」
鶴屋さんと阪中が動物談義に花を咲かせているとき、また国木田のプチ変人ぶりが発揮された。
「今まで見たこと無かったけどすごいねここ。絶対生活出来るよ」
そうかも知れんが、絶対にしたく無いな。
「本当に良い部屋だね。生徒会は許してくれたの?」
「いや、文芸部からハルヒが奪った。長門が正式な文芸部員だ」
「へー・・・何で長門さんがこんな部に入ってるのかと思ったら、そんな経緯があったんだね」
そうなら朝比奈さんが何故ここに居るのかも疑って欲しいね。それにそんな経緯が無くても、ハルヒなら気に入った奴は強制的に連れて来る。
「でも、何となく、涼宮さんらしい部屋だね」
俺でも『ハルヒらしさ』というのはよく理解出来ていないんだが、こいつには解かってるのか?

「はい!雑談はお終い!今からクジを引かせるから、自分の担当を確認し次第各自執筆に入って頂戴!」
ハルヒが手を打ちながら俺達にそう言った。
席替えの時のように、紙のクジが入った缶を回していく。
どうせじっくり選んでもハルヒの希望通りになるのは解かっている。俺は缶の中を見もせずにクジを取った。
谷口は缶の中を睨みつけていた。どうやら書いてあることが透けて見えないかと考えたらしいが、薄い鉛筆で書かれた文字は視力1.0の谷口には見えなかったようだ。
国木田も俺と同じようにスッと引いてから、鶴屋さんに回した。
「んー・・・どれにしようかなぁ・・・よし!これに決めたりぃ!」
俺は今回鶴屋さんにはかなり期待していた。
故におもしろいテーマになれば良いが、ホラーでも書いたときには俺は一生夜に用を足すことが出来なくなるのでは無いかと危惧している。
最後に古泉が余ったクジを引いて、缶はハルヒの元に戻された。

それでは、各自の振り分けを発表しよう。以下の通りだ。

俺:恋愛小説
朝比奈さん:推理小説
長門:幻想ホラー
古泉:童話
鶴屋さん:漫画
阪中:動物観察記
谷口:伝記
国木田:恋愛小説

「ハルヒ・・・」
「何?」
「何で恋愛小説の担当が二人も居るんだ?」
皆ももうお気付きだろう。俺と国木田の二人が恋愛小説の担当となっている。
一つの機関誌に二つも恋愛小説が入ったら無駄に甘くなってしまってしまいそうだ。
「いいじゃない別に、他に思いつかなかったのよ」
だから、何でSFを入れないんだ。
「言っとくけど、合作じゃダメだから。一人で一つずつ恋愛小説を書くの。解かった?」
「解かったよ、涼宮さん」
俺のため息よりも早く、国木田が応答した。
「あら、解かってるじゃない国木田。で、悪いけど早めに部室出てってくれる?この部室には基本的にSOS団関係者しか入れないの。あ、阪中さんは良いのよ、特別に」
・・・スマン、谷口、国木田。ハルヒも別に悪気は無いんだ、多分。

俺が心の中で謝ったのは、二人は言われた通り早々に出て行くと思ったからだ。
実際谷口は出て行った。ハルヒの退室命令を谷口は退室許可と受け取ったらしい。
しかし、国木田はそこに居た。
「国木田。何かあるの?」
この次、国木田と口から、またしても信じられない言葉が出てきた。
「僕もここに居たいなぁ」
why?何故?
「国木田、何故そう思う」
「皆の進み具合とか見ながら自分もやりたいし」

「それに、皆でやるのって楽しいしね」


そんなわけで、今国木田は俺の隣でニコニコしながらパソコンのキーを叩いている。
反対の隣には、これまたニコニコ顔の古泉がいるもんだから、俺の口の両端は今にも吊り上りそうになっている。
ああ、当然国木田がここに残ることをハルヒが簡単に許す筈は無かったさ。
しかし、俺はまた国木田に驚くことになった。

「国木田、ここはね、SOS団員とその関係者しか入室を許されないの。解かる?」
ここに居たいと言った国木田に対し、ハルヒが言った。
「それは解かるよ」
「じゃぁあんたは何?SOS団と何の関係があるの?」
こう聞かれると、国木田は少し考えてからこう答えた。
「んー・・・キョンの友達かな」
「フンッ、有希かみくるちゃんのならまだしもキョンの友達じゃぁ何の権限も無いわね」
それはどういう意味だ。
「じゃぁ国木田。ここに残る方法を教えてあげましょう」
「どうするの?」
国木田の質問に対し、ハルヒは何故か半笑いになりながら答えた。
「不思議を私に提供しなさい。そうしたらSOS団協力者としてこの部屋に残ることを許可するわ」
なるほどね。阪中を残したのはそういうわけか。
「不思議かぁ・・・」
またさっきと同じ、考えるポーズを数秒したあと、国木田が言った。
「じゃぁさ、涼宮さんにとっての不思議なことって何?」
「私がおもしろいと思うことよ!」
それは国木田でも思案できまい。

が、国木田は俺の予想から100光年ほどズレたことを言い出した。
「じゃぁさ、涼宮さん。地球って何で回ってるのかな?」
・・・どうした国木田?
「知らないわよそんなこと」
「それを不思議とは思わない?」
「別に・・・」
「うーん・・・じゃぁこのパソコン。何でキーボードを叩いたら文字が打てるの?」
「知らない・・・」
なるほど、なんとなく国木田の言いたいことが解かった。
要するに、不思議なんかその辺に腐るほどあると、国木田は言いたいのだ。
「だからさ、涼宮さん。宇宙人とか未来人とか超能力者とか異世界人とかを探すよりもさ、まずは身近な不思議から調べていったらどうかな?
 そこから新しい不思議が見つかるかもしれないし最終的には宇宙人とか未来人とかに繋がるかも知れないよ?」
確かにすぐそこに宇宙人と未来人と超能力者は居るからな。
「へ、屁理屈こねてんじゃないわよ!私はね、人間が作ったものには興味無いの!人外の存在のみに価値があるのよ!」
「涼宮さんは宇宙人とかを見たこと無いよね?なのにそう言う単語の存在を知ってるのは何処かで聞いたからでしょ?それは結局人間の作ったものなんじゃないかな」
な、なるほど!国木田!俺は前からそういうことが言いたかったんだ!
「違うわよ、誰かがそれを見たからその単語が生まれたのよ!」
簡単に折れるハルヒでは無かったが、国木田はそれにおっとりと返す。
「それはいいけど涼宮さん、宇宙人のことを知りたいんだったらまず宇宙のことを調べてみたらどうかな。宇宙人を探すんだったら絶対役に立つと思うよ」
「・・・・・・・・・」
「涼宮さん、もう一度聞くけど。何で地球は回ってるの?」


そんなわけで今ハルヒはネットで、地球が自転している理由及び宇宙のことについて調べている。

ちなみに、その後も一騒動あった。朝比奈さんが使わないパソコンを誰が使うかだ。
ハルヒは国木田へのせめてもの報復としてだろう、明らかにそれを国木田に使わせないようしようとしていた。
しかし、パソコンに阪中は慣れていないらしく断念。
鶴屋さんもお題がお題だからパソコンは使わないそうだ。
それで結局自動的にノートパソコン一台がSOS団から国木田に貸し出されることになった。
ハルヒは物を無駄にするのが嫌いな節があるからな。

それにしても驚いた。あのハルヒが言い負かされるとは。初めて見たな。
しかもそれを今までハネケイソウ並に普通だと思っていた俺の昔からの友達にだ。確かにディベートとかその類は強かったが、ハルヒより上とは思わなかった。
がしかし、ハルヒも恐らく本気では無い。
普通のハルヒだったら「宇宙のことを調べてみたらどうかな?」のところで「私はそんな回りくどいことはしないの!」などと答えていただろう。
だが、そう言わなかったのは何故か?それは謎だ。
国木田のことを少し認めたのか、本気で地球が何故回るのか不思議に思ったのか。まぁそんなことはどうでも良いだろう。
何はともあれ、この部室に俺の昔からの友達で一般人の国木田が居るというのは、多少違和感があったがどっちかと言うと嬉しかった。いつもは超人に囲まれてるからなぁ。


さて、国木田の話はとりあえずここまでにして、ここからは俺達の文芸部的活動について話そう。

今回も健気さの頂点に居たのが朝比奈さんだ。
前回の童話と違い、推理小説という明らかに不向きなジャンルを扱わなくてはいけない。
と言うか、彼女に文章中でとは言え人を殺すことが出来るのか、甚だ疑問だ。
だが彼女はこれからの数日推理小説を何冊も読み続け、その間パソコンの前に座っていた長門の代わりになった。
しかし朝比奈さんなら未来的なトリックをいくつか知っていても良さそうだけどな。
と、思ったら・・・
これは数日後完成して解かったことだが、その推理小説は本当に1000年後の未来の舞台にしたものだった。
未来だから出来るトリックならいろいろ難しいことを考える必要が無いというわけだ。
読者が全く推理をすることが出来ないことは朝比奈さんだから許そう。
長いので全文を載せることは出来ないが、大体のあらすじはこうだ。

西暦30XX年。文明は超高度に発達している。

その時代、ある城で殺人事件が発生した。

未来の技術を駆使しても犯人が解からなかったため、警察は世界的名探偵「R」に調査を依頼した。

Rによって暴かれた真実。レーザー銃を手に取る犯人。

Rの説得で膝を折る犯人。

この世から犯罪が無くなるまで、Rの仕事は終わらない!

という映画がありました。

こんな感じだ。
オチが可愛らしく、しかも笑える。これには俺から90点をあげたい。


それで、朝比奈さんが推理小説を読み耽っている間に俺は何をしていたのかと言うと、
「・・・・・・・・・」
ボーッとしていた。
別のジャンルならまだしも、2度も恋愛小説を書かせるのが間違っている。前回でさえ苦し紛れに捻りだしたものなのに。
こうなったら普通に作るしか無いのだが、それも思いつかない。
「いいよねキョンは、中学時代の話をそのまま書けば良いんだから」
だからそれは違うって言ってるだろ。
「もし俺がそれを書いたとしよう。しかしそれをハルヒは認めないだろうな。何故なら『恋愛小説』というお題に沿わないからだ」
「またまたぁ」
なんでこいつらはこんなに勘違い全開なんだ。
「でも国木田・・・お前かなり書けてるんじゃないか?」
俺と話をしている間でも、国木田はディスプレイから目を離さずにキーを叩き続けていた。そのスピードがまた凄かった。長門の三分の二程度はある。今の長門と比べると2倍程国木田の方が早い。
「お前何を書いてるんだ?考えながら書いてるようには見えないが。自分の体験か?」
「違うよ。他人のこと」
何だそれは。
俺がモニターを覗こうとすると、国木田が俺の顔を押さえてそれを防いだ。
「完成させたら読ませてあげるから。それまでは見ちゃだめだよ」
「ああ、そう・・・」

朝比奈さんはこのとき読書しているだけだったし、長門は多分見せてくれない。阪中の動物観察記にはあまり興味が無い。
俺はとりあえず古泉の執筆状況を確認することにした。
「どうだ古泉、書けてるか」
古泉は俺に苦笑しながら肩をすくめて見せた。
「正直、ぜんぜんですね。朝比奈さんと代わることが出来れば良かったんですが」
「だったらそう言えばいいじゃないか」
「聞くまでも無いでしょう?」
「・・・そうだな」
ハルヒは一度決まったことは二度と覆さないからな。
「あなたはどうなんですか?2回目の恋愛小説の方は」
俺は最初の古泉と全く同じ動作をして見せた。
「正直、ぜんぜんだな。触りも思いつかない」
「だから、貴方は中学生――――」
「それはもう聞き飽きた」
さっき国木田から言われたばかりだ。
「ええ、例え貴方の言う通りだとしても、それを恋愛小説に見えるように調整すれば良いのでしょう?」
「あ」
そうか、その手があ―――。
「ねーよ」
「何故です?」
笑いながら聞く古泉に、俺は言い放った。
「お前、その俺の中学生時代のことを聞いて笑いたいだけだろ」
「いけませんか?」
白状しやがった。
「どちらにしろ貴方の得になることに変わりは無いはずですよ?」
そりゃそうだが。
「まぁ貴方が純粋に創作したラブストーリーも読んでみたいですけどね」
お前には一番読んで欲しく無い気がするな。

「それはそうと・・・」
古泉の顔の笑みが少々薄まった気がした。
「貴方の友人、中々個性的ですね」
「どっちがだ」
「どちらもですが、今居る彼の方が」
俺は国木田の方を見た。微笑を浮かべながら恐るべきスピードでキーを叩いている。
「もしかして、国木田が異世界人だとか言うんじゃないだろうな」
「そうかも知れませんね」
おいおい。
「冗談ですよ。ここに転校してくるときに貴方のことについては全て調べてあります。貴方の友達についてもね。彼は間違い無くただの人間です」
だろうな。そんなことは長く付き合ってる俺が一番知ってる。
「まぁ、貴方の友人ですからね」
どういう意味だ。

しかし、何と言っても今回最大の無理難題を押し付けられたのはこのお方だ。
「あの、大丈夫ですか鶴屋さん?」
「いんやー・・・今回はちょっちキツイっかな~・・・でもまぁ何とかなるっさ!!」
鶴屋さんが引いたクジにはなんて書いてあったか覚えているだろうか。そう、『漫画』だ。
「鶴屋さん、漫画描いたことあるんですか?」
「いやぁ~、まぁちょっとはあるにょろよ」
あるんですか。
「今、ネームを描いてるところにょろ。見るかい?」
「拝見させていただきます」
なるほど、ネームというのはこんなに雑でいいのか。しかし、雑ながらもこの絵とコマ割りの異常な上手さは何なんだろうね。
「ハルにゃ~ん!この部屋付けペンとか無いよねぇ?」
「あー、無いわね。今度買っておきましょう」
ハルヒがパソコンから目を離さずに答えた。そんなもの買っても使うのは今回だけだと思うぞ。
「じゃぁあたしが今日の帰りにでも買って行くっさ!明日ここで描いても構わないっかな?」
「いいわよ」
ハルヒ。お前のせいでこうなっているんだから、せめて顔を見て返事をしたらどうだ。
「すみません鶴屋さん」
「いいってことよ!ハルにゃんも忙しいようだしね!」

そこで、鶴屋さんは何故か国木田をチラっと見て言った。
「キョン君の友達、前見たときは普通だな~って思ったけど意外とやるじゃないか」
それは俺が一番驚いてる。
だが思い出してみれば国木田が怒ったり泣いたりしているところは見たことが無い気がする。
下手したら長門や古泉より読みにくいやつなのかも知れない。
だったら俺風情が長く付き合っていても人物が掴みきれないのは仕方ないだろう、と一人で納得してみたりする。
「まぁハルにゃんとユカイな仲間達に比べたら全然普通だと思うにょろ。なんて言うのか、雰囲気っていうのかにゃ?」
この人の勘は本当に動物並みだな・・・。
「でも最近キョン君にもそういう雰囲気がついてきたにょろよ?オーラみたいなものが」
・・・ちょっと、貴方がそんなこと言うとシャレになりません。
「まぁ私は国木田君達と一緒に傍観させてもらうよ!頑張ってねキョン君」
もう何をどう頑張ればいいのやら・・・教えてくれますか?

「解からないわ・・・」
翌日登校した俺は「おはよう」の代わりにそんな言葉で迎えられた。
「何がだ」
「地球が何で回ってるかよ!あーもう!国木田め~・・・」
驚いた。ハルヒが一日以上俺達以外の誰かに言われた言葉を記憶していて、しかもそれをそれなりに気にしているとは。
「自転軸だとか自転周期だとかそんな単語は出てきたのよ。でも理由が解からないの!何で?」
俺が知るか。
「ていうかこんなの調べて本当に意味あるのかしら・・・」
それを今初めて疑問に思ったのか?
「国木田の言ってたことは解かったか?地球及び多数の惑星が自転していると言うことに、何か宇宙人的な陰謀とかそんな感じのことが隠されてるんじゃないかってことだよ」
俺が一応否定しておこう。そんなわけねーよ。

「って、そんなことはどうでもいいのよ!小説は進んでるの!?」
「うっ・・・」
・・・昨日から一文字足りとも書いていない。気持ち的には結構頑張ったんだぜ?その結果だ。
「はぁ・・・またあんた待ちになるのかしら。鶴屋さんが多少遅れるのは認めるけど、あんたは絶対締め切り間に合わせなさいよ!」
それは非常に難しいな。軽くお題でも振ってくれれば良いんだが。
あと勘だが、鶴屋さんは多分締め切りに間に合わせてくるだろう。それも超ハリクォリティな原稿を持ってな。
「昨日見てたところ、あんたが一番進んでないわよ。もっと頑張りなさい」
俺は編集長の励ましの言葉にため息で応えた。


部室に入った俺は驚いた。
「やぁキョン。今日も頑張ろうね」
国木田がまるで当然のように古泉の隣に座っていたからだ。
「国木田、お前今日もここに居るのか?」
「うん、結構気に入ったからね。谷口も誘ったんだけど『俺は絶対いい』って」
谷口が正しい気がする。
「あれ?居ちゃだめだった?」
俺は良いんだが・・・。
「ハルヒ、良いのか?」
俺は既に団長席でパソコンと睨めっこしている編集長に聞いた。
「ああ、国木田も捻くれてるけど一応謎の提供者だから。謎が解けるまではここに居ることを許可したの」
それで今その謎を解こうと一生懸命なわけね。

「国木田、お前随分進んでるな」
コンピューター上のメモ帖の横についたスクロールバーは、これ以上無いほど小さくなっていた。
「うん、明後日か明々後日ぐらいには完成して見せられると思うよ」
長門のSSと出来上がるのはどっちが早いかな?

俺は何気なく前の席に座る長門に聞いてみた。
「長門、お前何を書いてるんだ?」
「幻想ホラー」
「いや、そうじゃなくて―――」
「前の続きなの?」
ここで突然入ってきたのが国木田だ。
「・・・そう」
「へー、そうなんだ。前の長門さんのあれ、すごく良かったよ。続きもすごく気になってたんだ」
俺には良いとか悪いとか、まずそれが解からなかったから、続きを気にしようが無かったんだが。
国木田にはそれが解かったのか?
「・・・ありがとう」
静かに礼の言葉を述べる長門。その顔が心なしか嬉しそうに見えるのは俺だけだろう。
「珍しい人」
長門がそう言ったのが聞こえたのも、多分俺だけだ。


『無題4』 長門有希


「貴方の目的は何ですか?」

ある時、男が私に聞いた。

解かりません。

私はそう答えた。私は何故ここに居て、何がしたいのか。本当に解からないからだ。

「××××ではないのですか?」

男が再び聞く。

そう言われるとそうだったような気がする。しかし本当は違うかも知れない。

そうかもしれません。

疑いながらも、私は答えた。

「そうですか。ならば僕達は仲間ですね」


仲間。私のことだろうか。

「そうですね」

何時から居たのか、女の人も言う。

「行きましょう。僕達の目的は一つです」

男が振り向いて歩き始める。女の人もそれに続く。

私はしばらくその場に立ちつくしていた。本当にこの人達について行っていいのか、答えを出しかねていた。

私に構わず二人は歩き続ける。その背中がどんどん小さくなる。

仲間。私のことだろうか。


「う~む・・・」
「どう?」
A4紙を眺める俺の顔をハルヒが覗き込む。
「どうって・・・一応前の続きだろ?」
「あんた意味解かるの?」
「なんとなく」
回数を増せば、読解は比較的安易になっていくようだ。
前回の続きなんだから、この男と女は前回と同一人物とみて間違い無い。そしてこの二人は古泉と朝比奈さんっぽい。
つまり、長門と古泉と朝比奈さんが共通の目的を持ち、仲間になったとかなってないとか、そんな感じだろう。
その3人の共通の目的と言えばハルヒの観察と暴走の阻止。次にはハルヒが登場するのかも知れんな。
「次は?これだけか?」
「うん、そう。昨日出来たところまで貰ったの。気になってたから」
またお題に幻想ホラーなんて入れたのは、こいつも長門のSSが気になっていたからだろう。
「それより、あんたはどうなの?進んでるの?」
「・・・・・・・・・」

「谷口、国木田。ちょっと来なさい」
俺に散々説教したあと、ハルヒはこの調子を維持したまま別の奴も説教するつもりのようだ。迷惑なこった。
「谷口、あんた書けてるの?」
さて、谷口のお題は何だったかな。忘れたな。
「涼宮、お前伝記つったってなぁ・・・誰の伝記だよ」
そうだ、伝記だ。初めて聞いたとき俺も同じことを思った。
「別に誰のでもいいわよ。あんたの尊敬する人とか。私でもいいわよ」
そこまで真っ直ぐに変人だと尊敬に値するかも知れんな。
「でも絶対自分のなんか書くんじゃないわよ?あんたの伝記なんか誰も読みたくないから」
まぁ、谷口のミジンコ並みに普通な人生の伝記を読まされてもおもしろくは無いだろうが。
「はいはい、そうですか・・・」
そんなことを言いながら谷口は退がった。谷口、お前誤魔化しつつ逃げただろ。

「で、国木田はどうなの?」
「うん、明日か明後日には多分出来上がるよ」
ハルヒはこんな言葉を予想していなかったようだ。少しうろたえたのが解かる。
「そ、そうなの?まぁ当然ね。我が部室を特別に貸してあげてるんだから」
「ありがたいよ。今日も行っていいかな?」
まずハルヒから無理に仕事を押し付けられて、それを消化するための場所を提供してやるのはまぁ当然のことであって「ありがたい」と感じるのは少々おかしく無いか?
「別に構わないわよ。でも小説が完成するまでよ?」
「うん、解かってるよ」
国木田・・・お前はもしかしたら相当変わり者なのかも知れん。

「国木田・・・お前もしかして相当変わり者なんじゃないか?」
昼飯を食っているとき、谷口がウィンナーを口に運びつつ国木田に聞いた。
「え?どういう意味?」
「どういう意味?じゃねぇよ。何であの涼宮と同じ部屋に居て何も感じないんだ」
「そりゃ、何かは感じてるよ。楽しいな、とか」
「・・・・・・・・・」
谷口の絶句。
「驚天動地だ・・・」
懐かしい言葉だな。
「お前もそのSOS団とやらの一員になるのか?止めとけよ?俺の親友達が皆涼宮になったら困る」
失礼な。
「ハハ、その団には多分入らないよ。涼宮さんが許してくれ無さそうだし」
ハルヒが許してさえくれれば入団する気なのかコイツは。
「それにしても、何でお前等そんなに涼宮と話せるんだ?もしかして俺がおかしいのか?」
お前は十分おかしいが、それは多分関係無いだろう。
「と言うか谷口、お前も結構喋れてるじゃねーか。何でそんなにハルヒが苦手なんだ?」
「喋れてる?あれでか?アレは俺と喋ってるわけじゃねぇ。ただの俺の小説の進み具合の情報を機械的に仕入れて、早く書くよう適当に促してるだけだ。そこに会話は成り立ってない」
そうかも知れんが。
「谷口、谷口は最初っから涼宮さんをそんな風に決め付けちゃってるからダメなんじゃないかな。確かに最初は全然話せなかったかも知れないけど、高校生になってから変わったんじゃない?」
こう言って国木田は何故か俺を見た。それにつられるように谷口も俺を見る。クソ、何なんだお前ら。
「そうだな。キョン、あわよくばあれを普通の性格にしてくれよ。そうすればただの可愛い女子高生なんだから」
「無理だ」
もしそうなったとしても、お前とどうにかなることなんか絶対無い。


部室に居たのは、仲良く談笑する古泉と国木田だけだった。
「お前等、何時の間に仲良くなったんだ?」
「さっきですよ」
「さっきだよ」
そうかい。
谷口は古泉と話すとムカツクって言ってたけどな。国木田は大丈夫なんだろうか。
「何が?」
まずそこが解からないのか。
「彼の小説、読ませて頂きましたよ・・・フフフ・・・」
何故お前が笑うんだ。気持ち悪い。
「お前、完成したのか?」
「いや・・・まだかな」
何だその曖昧な言い方は。
「完成するまで読ませないんじゃなかったのか?」
「それはキョンだけだよ」
訳解からんぞ。
「いまから推敲しながらワードソフトに移すから、それが終わるまで待ってよ」
そうかい。待たせていただきますよ。

「それで古泉。お前は完成したのか?」
「ええ、一応は」
昨日までは全然とか言ってたじゃねーか。
「童話というのは基本短いもので良いんです。それに、書き出せればすぐですよ」
そうなのか。
「見せてみろ」
「良いでしょう」
俺は古泉の手からルーズリーフのファイルを受け取った。


800年程前のことになります。

村の外れにある森に、一人の魔女が住んでいました。
その魔女は心が大変綺麗でしたが、ただ魔女というだけで村の人に迫害され、仕方なくこの森に住んでいます。
世は魔女狩りが広く行われている時代。これもまた仕方の無いことだと、彼女は自分に言い聞かせて生きてきました。

ある日、彼女が花を摘むために近くの花畑に行くことにしました。
その花畑は大変綺麗な花がたくさん咲き誇り、ここに来るだけで彼女の心は癒されました。
ただ、そこにはいつも彼女以外には誰もいません。何故なら、その花畑は彼女の住んでいる森にあり、その森には誰も入ってこないからです。
この綺麗な花を誰かに見せてあげたいと、彼女はいつも思っていましたが、それは叶いません。これも仕方ないことなのです。

しかし、その日は違いました。花畑に、一人の青年が居たのです。
いえ、別に初めてのことでは無いのです。以前にも何度かはそこに人が居たことがあります。
しかし、皆彼女の姿を見ると「魔女が来た!」と叫びながら逃げていくのです。
そして、今回もそうだと彼女は思いました。

しかし、彼はそうしませんでした。
これは初めてのことです。
「やぁ森に住む魔女さん。会えて光栄です」
しかも、彼女が魔女であることを知っていました。
「貴方は、誰ですか?」
彼女が問いました。
「旅人です。遠くからやってきました」
そうですか、と彼女は答えました。
「貴方は、魔女が怖く無いのですか?」
彼女が再び問いました。
「僕にはそれが解からないです。何故そこの村の人たちは魔女を恐れるのですか?」
そういえば何故だろう。心臓をとられるとでも思っているのだろうか。
「僕の旅してきた町では、魔女も魔法使いも皆仲良く暮らしていました」
羨ましい。彼女はそう思いました。
「良かったら僕達と一緒に来ませんか?」
そのとき彼女は、彼が一人で無いことに気が付きました。
木の陰から、一人、二人、三人の人が出てきました。男が一人と、女が二人。
「旅っていうのは、良いものですよ」
男の一人がいいました。
「ちょうど魔女の一人でも欲しかったところなの」
女の一人が言いました。
「決めるのは貴方」
もう一人の女が言いました。

「どうしますか?」
「行きます」
彼女は、すぐに答えました。
「そうですか。それではすぐに出発しましょう」
彼女は驚いた。
「今すぐにですか?」
「今すぐにですよ。時間は有限なんです」

彼女は、生まれ育った森に別れを告げることになりました。
帰ってくることは無いかもしれないけど、今までありがとう。

そうして、彼女は旅に出ました。
その旅には、いくつもの困難が待ち受けてるかも知れません。
それでも、彼女は負けません。

何故なら彼女には、仲間が出来たから。


「・・・・・・・・・」
「どうです?」
「これ、お前が書いたのか?」
「そうですよ」
うーん、古泉らしいとこもあるが、らしくないところもある。要するに、よく解からない。
ある意味では古泉らしい、中途半端な作品とも言える。
「と言うかこれ、これで終わりなのか?」
「一応はそうです。次に繋げられるようにはしていますが」
何でだよ。
「涼宮さんがまた機関誌を作ると言い始めるかも知れませんからね。まぁ3回目に童話を書くかは解かりませんが」
勘弁してくれ。俺が3回目も恋愛小説になったらどうする。いや、なる。確実に。
「国木田、これどう思う?」
俺は俺のあとにファイルを手に取っていた国木田に聞いた。
「良いんじゃないかな?これが童話なのかはよく解からないけど」
確かに。
「まぁ童話なんて定義が良く解からないしね、話としてはおもしろいと思うよ」
「そうかぁ・・・?」
俺には解からんね。


二日後には、ほとんどの原稿が上がり、まだなのは俺と国木田と谷口と、あと鶴屋さんだけだ。
締め切りは明日。俺はまだ一文字も書いていない。どうしたもんかね。
そして、そんな締め切りレースから今日も一人抜け出した。

「はい、キョン、涼宮さん。出来たよ、恋愛小説」
早速ハルヒが国木田の手からファイルを引っ手繰る。
「どれどれ?」
ハルヒが国木田の小説を読んでいるとき、俺は暇だったからハルヒの顔を観察してみることにした。
最初はどんな文句をつけてやろうかしらとニヤニヤしていたハルヒの顔が次第に曇っていき、そしてだんだん赤くなっていくのが肉眼でも解かった。
ほう、ハルヒを赤面させる恋愛小説を書くとは、国木田もなかなかやるじゃないか。次に泣き出したりしたら本気で国木田をSOS団に勧誘しているところだ。
「どう?涼宮さん」
読み終わったらしいハルヒは、国木田を無視して俺にファイルを差し出した。
「キョン、読んでみなさい」
「?」
多少訝しがりながらも、俺は明朝体で印字されたその文字列に目を通した。


皆さんは、大切な友人や恋人との出会いを覚えていますか?
僕は親友との出会いははっきり覚えています。中学の入学式で、最初に話し掛けてくれたのが彼でした。
いえ、今日はその話ではありません。

今日は僕の親友と、その恋人のことについて、話したいと思います。


二人が出会ったのは、僕達が高校生になった春です。

「この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が居たら私のところに来なさい。以上」

彼女は最初のHR。自己紹介の時間に、こう言いました。彼女にクラス全員の視線が集まっていました。当然、彼の視線も。
それが、二人の出会いです。

それから数日後、僕に新しい友達が出来ました。
その人はさっきの彼女と同じ中学校らしく、彼女のことばかり話します。そんなに好きなんでしょうか。
その彼によると、彼女は中学校時代から変なことばかりやっていたらしいです。
彼女が変なのは僕が見ても解かりました。誰とも話さないし、何よりあの自己紹介です。
あの自己紹介で解かったのは名前と出身校と『彼女は変な人だ』という事実だけです。

それから数週間後、彼と彼女が話しているところを度々見るようになりました。
僕は「彼女でも話すのか」程度にしか思いませんでしたが、彼女と同じ中学の彼は「驚天動地だ・・・」と言いました。そんなに凄いことなんでしょうか。

それからさらに数週間後、僕は彼女が初めて笑うところを見ました。それは、他の誰にでも無く、僕の親友である彼に向けられたものでした。
それを僕も見ることが出来たのは、その時が授業中だったからです。
その時彼女は、笑いながらこう言っていました。

「作ればいいのよ!」

彼は問いました。

「何を?」

「部活よ!」

それから数日後、彼と彼女は数人の部員を集め、部活を作ったそうです。

名称不明、活動内容不明の部活で、彼は忙しくなりました。
僕達と遊ぶことも少なくなりました。

(中略)

それから約1年後。僕は2年生になりました。
また僕は、二人の友達と同じクラスです。そのクラスには彼女も居ます。

しかし、2年生になった彼は、僕達と話していても何処か違うところを見ているような、そんな感じがしました。

彼女は、1年生のときと比べて、見違えるほどに明るい性格になっていました。
例の部活動に僕達が巻き込まれることもありました。笑顔を見ることも度々ありました。

そしてある日、僕は彼からこんな言葉を聞きました。

「俺、あいつのことが好きなんだ」

「・・・そうなんだ」

正直言うと、それは言われる前から解かっていました。
そして多分、彼女も彼のことが。

「でも、不安なんだ。あいつが俺のことをどう思ってるのか」

「大丈夫だよ」

「何でそう言える?」

「だって、彼女があんなに変われたのは。君のお陰じゃない」

「・・・そうか」

数日後、僕に親友には、親友よりも大切な人が出来ました。

二人の幸せを、僕は心から願っています。


終わり


「・・・・・・・・・」
「どう?キョン」
「どう・・・」
何だこのモヤモヤ感は。
もう文体や書き方についてはどうでも良い、問題は内容だ。
「国木田、このセリフ。どうみてもこいつのだろ」
俺は何故かボーっとしてるハルヒを示しながら言った。が、それに対して飄々と国木田は答える。
「いや?涼宮さんのセリフを参考にしてみただけだよ。その人は涼宮さんじゃなくて、僕が作ったキャラクターだよ」
「この『僕』ってのがお前だな?じゃぁお前の親友の『彼』ってのは誰だ」
「『彼』は『彼』だよ」
ハハハ、こやつめ。
「お前確かモデルにしてるやつがいるって言ってたな?誰だ」
「・・・解かるでしょ?」
いや、解かるけども・・・。

「涼宮さん、僕のはこれで良いよね?」
「え?ええ?・・・え?」
キョドり過ぎだハルヒ。
「僕の分、これで終わりで良いよね?」
ダメって言ってやれハルヒ。いらん噂を立てられそうだ。お前もそれは嫌だろ?
「あー・・・うん、いいわよ。お疲れ」
え?いいのか?それには深い意味があるのか?
「良かったぁ、ありがとう。会誌出来たら一部よろしくね、キョン」
「あ、ああ・・・」
そこで何故か国木田は、俺の顔を見て笑った。
「キョン、顔赤いよ」
「は?そんなわけ――――」
「涼宮さんも」
「はぁ?そんなわけ無いでしょ!!」
何故か再び、国木田は笑った。

「二人の幸せを、僕は心から願ってるよ」

 

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最終更新:2020年09月13日 02:05