あたしは今、公園のベンチに座り独りでうなだれている。

そりゃあ、あたしだって落ち込んだりもするわよ…。

なにか不幸なことがあったんじゃない…。

人になにか言われたから落ち込んでるんでもない…。

あたしはヒドイ事故嫌悪に陥ってるの…。

「はぁ…」
さっきから出てるのは溜め息ばかり。

「なんであたしってこんな性格なんだろう……」
溜め息じゃないとしたら自分を否定する言葉。

『ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?』
『ごめんじゃないわよ!バカキョン!!』
『あ~!もう今日は解散!!』

ついさっき部室で自分が発した言葉を頭の中でリピートする…。
ほんとに嫌になるくらい素直じゃない、自分勝手な発言…。

キョンだって謝ってたのに…。
別に怒るようなことじゃなかったのに…。
心ではとっくに許してたのに…

キョンのことが大好きなのに………。

…いつからだろう?
キョンに特別な感情を抱くようになったのは。

最近のような気もするし、ずっと前からだったような気がする。

どっちにしろ変わらないのは、
あたしがキョンが好きってこと。
これは気の迷いでも精神病の一種なんかでもない。
これだけは断言してもいいわ。

「はぁ……」
溜め息は幸せが逃げるなんてよく言うけど、出ちゃうんだから仕方ないじゃない。

キョンだってこんなあたしのこと好きになってくれるわけない……。

頭では理解してる。
自慢じゃないけどあたしは理解力はある方だから。

素直になれたら、どんなに楽だろう…。

キョンに直接『好き』って言えたらな……。

情けなくて目にはうっすらと涙すら浮かんできた……。

あたりはもう薄暗くなってきていた。

「そろそろ帰ろ…」

今は一人でいたい気分だけど、
早く家に帰らないと変質者が出るから……

ガサッ

あたしの座ってるベンチのすぐ後ろの草むらが揺れる。
言ってるそばから!?
あたしは逃げる準備をとっさにする。
おとなしく被害にあうつもりはないけど、なるべく不快な気持ちにはなりたくないから。

しかし草むらを揺らした犯人の声は聞きなれた声だった……

「悩める乙女発見にょろ~」

「つ、鶴屋さん!?」

そう、みくるちゃんのお友達の鶴屋さんだった。

「ハルにゃんこんにちは~!!
…ん?こんばんは~かな?」
首を傾げる鶴屋さん。
笑顔と八重歯がかわいいわね。

「こんにちは鶴屋さん。
いきなり出てきたからビックリしたわ!」

「ごめんにょろ~。
ハルにゃんが悩める乙女状態だったから驚かしてみたっさ!」
手を顔の前で合わせて申し訳なさそうに謝ってきた。

なんか年上には見えないのよね、みくるちゃんといい鶴屋さんといい……

……ん?
悩める乙女?
……あたしのこと?

「べ、別に恋なんてしてないわよ!?
キョンのことなんてなんとも………」

「「あ…」」
あたしと鶴屋さんの声が被った。

やばい!
涼宮ハルヒ一生の不覚!!
あたしはすぐに言い訳の言葉を返した
「えっと…その~」
ダメだ!なんも浮かばない!!

いつもなら誰もが次の日に使いたくなるような言い訳が思い付くのに…

あたしは頭をフル活動させていた……
がその努力も虚しく鶴屋さんが言った
「な~るほどね~!!
ハルにゃんはやっぱりキョン君が好きなんだね~!」

あたしは諦めた…。
諦めるのは好きじゃないけど、今はフォローが最優先よ!!

「だ、誰にもいわないでね!?鶴屋さん!
特にアイツには絶対!!」

自分の口からは言えないけど、他人の口から伝わるなんてもっと最悪よ!!

…まぁ、鶴屋さんは言わないでくれると思うけどね。

「ハルにゃん安心するにょろ~!あっしは口の固さは日本屈指だからさ~」

笑いながら言う鶴屋さん。
「ほ、ほんとね!?」
あたしは念を押した。
それほど知られたくないことだから。

「信じていいっさ!!」
鶴屋さんは力強く言った。

あたしは自信満々の鶴屋さんを逆に不安に感じたけど、ここは鶴屋さんを信じることにした。

「でも条件があるにょろ!」

「え!?じょ、条件?」
信じた瞬間鶴屋さんから、交換条件を突きつけられてあたしはテンパった。

「そう……その条件とは……」

ゴクリ
あたしは息を飲みこみ、鶴屋さんの交換条件に備えた。

「あたしに悩んでた理由を打ち明けて欲しいっさ!!」

………コクリ
あたしは黙って頷いた。
なんか予想外の条件に拍子抜けしてしまったから、勢いでね。

黙っていてくれるのなら話しても同じだし、誰かに相談したかったのも少しあるしね…。

それにしても好奇心旺盛な人だわ。
あたしと張り合えるぐらいじゃない?
まぁ、野球の助っ人もやってくれるような人だから、
世話を焼くのが好きというか性分なのかもね。

「あたしがキョンに……………なんだけど……………こういうわけで………」

あたしは胸のうちを全部打ち明けた。
なんだか鶴屋さんになら言っても大丈夫な気がしたから…。

あたしが話終わると鶴屋さんが言った。
「なるほど!
つまりハルにゃんはキョン君にベタ惚れなわけだ!」

あんなに長い話をしたのに、実に簡潔にまとめられてしまった。

「うん……///」
あまりに簡潔にあたしの気持ちをまとめられて、
あたしはなんだかすごく恥ずかしかった。

「ハハハ!!ハルにゃん顔真っ赤でめがっさかわいいにょろ~!!」

ウグッ…
一応年上の鶴屋さんには文句も言えないから、あたしは押し黙るしかなかった。

かわいいかどうかは分からないけど顔が赤いのも恐らく事実だから…。

少しの間、鶴屋さんは笑ってたけど、なにか感じたみたいでいきなり笑うのを止めた。

「…ごめんね。ハルにゃん。
真面目な相談してくれたのに……」

ションボリして謝ってくる鶴屋さんはなんだかかわいかった。

「別に気にしないでいいわ!!
なんか気持ちが楽になったから。
ありがとね、鶴屋さん!」
これは気を使ったとかじゃなくてあたしの本音よ。

「ハルにゃん……」
鶴屋さんはあたしの名前を呟くと、アゴに手を当てて少し考えていた。

鶴屋さんには悪いけど、鶴屋さんにしてはすごく真剣な顔。

……どうしたんだろう?
あたしは疑問が溜りに溜って訊くことにした。

「あの…つる…」

「よ~し!!決めたにょろ!!」
あたしが言いかけた所で鶴屋さんが顔を上げ、決意表明をした。

「な、なにを決めたの?」
あんなに勢いよく発言したんだもん、気になるじゃない?

…次の鶴屋さんの返答により、あたしの疑問は困惑へと変わる……。

「この鶴屋さんが、全力を尽してハルにゃんとキョン君をしあわせにします!!」

「えぇ~!?」

困惑、混乱、戸惑い、動揺。
今のあたしを表すのにピッタリな言葉の数々…。

「そんなに不安がらなくていいっさ!!
必ずやキョン君をハルにゃんにメロメロにするからさ!!」

……別に不安にはなってないけど…。
「い、いいわよ!鶴屋さんに迷惑かけられないわ!」

あたしがそう言うと鶴屋さんは少しうつ向いて言った。

「ハルにゃんの純粋な恋心をモテ遊んだ責任があるから……」
目には少しだけど涙が浮かんでいた。

「で、でも……」

「…友達として責任取りたいの……」

悲しそうに言う鶴屋さんの言葉にはいつものおふざけな言葉は入ってなかった……。

…こうまで言われちゃ仕方ないわね……。
あたしは鶴屋さんに任せることを決めた。

正直、情けないけど、こういう機会がないと永遠にキョンに気持ちを伝えられないような気もしてきたし……
「…わかったわ!鶴屋さんに任せてみる!!」

あたしの言葉を聞くと鶴屋さんは顔を勢いよく上げ、
「任せるにょろ~!!」
とあたしに抱きついて来た。

…正直騙された感は否めないけど、まぁいいや…。

「ではでは第一回作戦会議を開始しま~す!!」
先程の涙が嘘のように笑顔で言う鶴屋さん。

…ちなみにここは人気のない公園で、更に言うなら周りは結構暗くなっていて、どこかの家からカレーの匂いがして来てるわ。

まぁ、いいけどね。

「ほんとはハルにゃんが素直に言うのが一番いいっさ!
でもいきなり素直になるのって、かなり難しいにょろ!
増してや好きな人となるとね!!」

うんうん
あたしは黙って頷いていた。
それができないから今の状況になっているのよね……。

「そこであっしは考えました!
押してダメなら引いてみろ!
揉んでダメなら揉ませちゃえ!
つまりハルにゃんの魅力でキョン君を虜にして、キョン君に告白してもらうにょろ!!」

鶴屋さんは自信に溢れた顔で言ったわ…。

「そんな簡単にいくかしら?」
もっともだと思う。
あたしが言うのもなんか変だけど、これが普通の意見じゃない?

「そんなこと無いっさ!
そんなにかわいいハルにゃんにアプローチされて、落ちない男なんてホモ以外ありえないにょろ!!」

あたしは何故か彼の顔が頭に浮かんだ。

「そ、そう?」

「もちろんにょろ!あたしが男だったら30回は告白してるよ!!」

…こんなに褒められて悪い気がする人はいないわよね?
…そう、あたしは鶴屋さんの作戦に乗ったの。

「やりましょう!!
キョンの奴を骨抜きにしてやるわ!!」

「その意気にょろ~!!」
鶴屋さんは拳を高らかと突き上げた。
あたしもそれに続く。

「「キョン(君)を落とすぞ~!!」」

二人の声は夜の公園に響き渡る………。

今この瞬間、プロジェクトT(鶴屋さん)が発足した。

翌日土曜日。天気晴れ

あたしはいつものように駅前でキョンを待っている。
ちなみに他の3人には休みって言っておいたからいないわ。

でもあたしは一人じゃないの。
なぜなら鶴屋さんがいるからね。
なんで居るかはわかるでしょ?
今日が作戦の決行日だからよ!

「おっそいわね~キョンの奴!!」
まぁ、これもいつも通りなんだけど、早く来すぎたあたしと鶴屋さんは、もう20分ぐらい待ってる。

「あたしとハルにゃんが早く来すぎたんだね!
それにハルにゃん!?
今日は怒っちゃダメにょろよ?」

「わかってるわ」
…とは言ったものの、「罰金!」とか言ってしまいそうな自分がいる。

それからしばらくしてキョンがやってきた。


「悪い、遅れた!」
といつものように謝ったあと、
いつもと違うメンバーに気付いたみたいであたしに訊いた。

「あれ?あの3人は?そしてなんで鶴屋さんが?」

「あの3人は用事があって来れないみたいだから、鶴屋さんを呼んだの!」
…もちろん嘘よ?

「こんちは!キョン君!ひっさしぶり~」

「あ、おはようございます鶴屋さん。
今日も元気ですね」

即座に鶴屋さんがキョンに話しかけたから、
キョンは3人が同時に休むっていう、滅多にない事態をあまり気にする暇もなかったみたいね。

…なんて考えてるうちにあたしは鶴屋さんのビックリ発言を耳にすることになる。

「いや~せっかくのデートなのに邪魔しちゃってごめんねぇ?」

ちょっ!鶴屋さんいきなり!?
あたしは鶴屋さんの突然の発言に焦った。

「な、デ、デートじゃないですよ!!」
キョンはすぐさま返答したわ…。

あたしはうつ向いてたからキョンの顔は見なかったけど、デートじゃないって言われてちょっとショック……。
そんなに否定しなくてもいいじゃないの……

「ふ~ん。まぁいいか!
じゃあそろそろ出発するっさ!」
鶴屋さんは何やらニヤケながら言った。

「どこに行くんですか?」
「ん?あたしの家だよ?
キョン君も来たことあったよね?」

そう、今日の作戦は鶴屋さんの家で行われることになっているのよね。

こうしてあたしたちは鶴屋さんの家へ出発した…

あたしたちは結構な時間歩いていた。
本来ならこんな暑い日にこんなに歩いたら不快になること間違いなしなんだけど、
あたしの心は少し浮かれているから全然苦じゃないわ。

……なぜなら出発の時に鶴屋さんがあたしにこっそり教えてくれたから。

「あのデートの質問の時の反応は脈有りにょろ!!」

ほんとかどうかはわからない。
鶴屋さんから見た不確かな情報。
でも……、それだけでも……。

あたしの気持ちをうれしくさせるには十分なことだった…。

「やーっと鶴屋さんの家に到着だよ!!」
ずいぶん歩いたと思う。
でもあたしはあんまり会話に入った記憶がないわ。
ずっとキョンのこと考えてたから。

それにしても、いつ見ても大きな家ね…。
何回見ても圧倒されるほどの大きさ。
となりを見ると、キョンもあたしと同じような表情をしていた。

「さぁさぁ、ボーっとしてないで中入って入って!!」

あたしたちは鶴屋さんに導かれて豪邸に足を踏み入れた。

…外見通り中もも広いわ。
いつまで廊下が続いているのかしらね?

あたしがそんなことを考えていると鶴屋さんがある扉の前で立ち止まった。

「じゃじゃーん!!
ついに初公開!!ここがあたしの部屋にょろ~!!」

そう言い放つと鶴屋さんは部屋の扉を開けた…。

「「デカっ!」」

あたしとキョンの声が重なった。
それほどまでに鶴屋さんの部屋は広かったのよ。

「この前は人数が多かったから客間にしたけど、今回はあたしの部屋で十分足りるにょろ!」

「いや、10人くらい余裕で入れますよ…」

とても個人の部屋とは思えない部屋を、あたかもせまい部屋のように説明する鶴屋さんに
キョンが言ったけど、
聞こえなかったのか鶴屋さんは無視してあたしたちを部屋に招き入れた。

「じゃあ適当に座ってねぇ」
鶴屋さんが言ったとおり適当に座った。
適当って言われても困ったけどね。

「女の人の部屋に入るのってなんか緊張するな」

突然キョンが言った。

やっぱりそういうものなのかしらね?
あたしの部屋でも緊張するのかな?
あたしを一人の女の子として見ててくれてるのかな?

「今度あたしの部屋に来てもいいわよ?」

勇気を出してちょっと訊いてみた…。
これで少しでも慌てたら…
しかしキョンの返事は期待を大きく裏切るものだった……。
「…俺を拉致してどうする気だ?」

うわぁあぁあん!!!
キョンのバカァア~!!

あたしはショックで文句も言い返せなかった……。

言い返さないあたしを不信な目でみるキョン。

酷すぎるわ………

そんなあたしとキョンを笑顔で見ながら鶴屋さんは口を開いた。

「んじゃあ、あたしは飲み物持ってくるからね!」

「あ、あたしも手伝うわ!」

あたしはショックを受けつつも顔を上げて言った。

そう、これが一つ目の作戦の合図だからだ。

見てなさい、キョン!
絶対にあんたを落としてやるんだから!!

「ありがと、ハルにゃん!
じゃあキョン君はちょろんと待っててね~」

そう言って鶴屋さんとあたしは部屋を出た。

飲み物を取りに行くと言ったけど、
今あたしたちがいるのはキッチンじゃない。

一般家庭にはないであろう『衣装室』というところよ。
そこには山ほどの着物やらなにやらがキレイに並んでるわ。

ウェディングドレスなんかもあって、見ていて楽しくなっちゃう。
いつかあたしも着るのかなぁ……
できればキョンと……

……ってなに考えてんのよあたしは!?
まだ好きってことも伝えられてないのに!!

「ん~、じゃあこれにしよっか?」

と、あたしの一人ツッコミを中断するように言い、鶴屋さんが見せてきたのはいわゆる『メイド服』

「な、なんでそんなものがあるの!?」

あたしは驚いたわ。
確かに部室にもあるけど、あれはマニアックな店で買ったのであって、
その辺には売ってないもの。

…もしかして鶴屋さんの趣味なのかしら?
あたしは鶴屋さんに疑惑の目を向けた。

すると鶴屋さんは笑いながら、
「違う、違う!
これはみくるで遊ぶために買ったんだよ!!」
と否定してきたわ。

みくる『と』じゃなくて、『で』と言ったのにはあえてツッコまなかったけど。

「まず一つ目の作戦はこうにょろ!」

あたしは黙って聞いていた。

「時代は今や、『萌え』にょろ!!
だからメイドさんになってキョン君にご奉仕するっさ!!」

「そ、そんな露骨な!?」なんとなく予想はしてたけど、言わずにはいられない。

「いいから、いいから!」あたしの質問はスルーして鶴屋さんはメイド服をあたしに押し付けてきた。
「じゃあ着替えたら出て来てね~!」

バタン!

行ってしまった…

「しょうがない、着るしかないわね」

あたしは渡されたメイド服へと着替えた。

カチャ

あたしが着替え終わって部屋を出ると鶴屋さんが待っていた。
そしてあたしを見るなり、
「めがっさカワイイにょろ~!!」
と言い抱きついてきた。

…正直かなり恥ずかしい。
みくるちゃんもよく毎日着られるわよね?
まぁあたしが着させたんだけど。

「じゃあ後はキョン君のことを『ご主人様』って呼ぶだけにょろ!」
…笑顔で言う鶴屋さん。

「キョンのことをご主人様!?
無理よ、そんなの!
恥ずかしすぎるわ!!」

あたしは鶴屋さんに速攻で抗議したわ。
正直着てる段階で恥ずかしいもん。
絶対に言いたくないし、言えない自信があるわ!

しかし鶴屋さんは微笑みを浮かべて返してきた

「ハルにゃんのキョン君への想いは、所詮そんなもんにょろね……」

…言ってくれるじゃないの鶴屋さん。

ここまで言われてやらなきゃ涼宮ハルヒじゃないわ!

「いいわ!やってやろうじゃないの!!」

あたしは鶴屋さんに向かって宣言した。

「さすがはハルにゃんだよぉ!
じゃあこの猫耳もつけちゃおっか!?」
心の底から嬉しそうに言う鶴屋さん。
…でもね………

「それはさすがに無理」
あたしは即答した。

鶴屋さんは少し残念そうな顔をしたけど、諦めたようで、
「よーし!いざ戦場へ!!」
と声を発してキョンの待つ鶴屋さんの部屋に向かった…。

長い廊下を歩いて部屋の前に来た。
歩いてる途中あたしはGメンにマークされるくらい壁に張ってある絵をキョロキョロみてたわ。

「おっ待たせ~!!」

鶴屋さんはそういうと自分の部屋のドアを豪快に開けた。

「いえいえ、気にしないでください。
…あれ?ハルヒは?」
キョンの声が聞こえた。
あたしを気にかけてくれてて少しだけ嬉しかった。

ちなみにあたしは恥ずかしかったから、鶴屋さんとは一緒に入らないで入り口付近で待ってたの。

「ハルにゃんならもう来るにょろよ!
ハルにゃーん!入ってきなよ~!!」
鶴屋さんに呼ばれたのであたしは覚悟を決めた。
手にはジュースの乗ったトレーを持っている。

スッ
死角から体を出して中に足を踏み入れ、キョンの顔を見た。


喜んでくれてるかな?
もしかしてニヤケてたりして。

なーんていうあたしの淡い期待を見事に裏切る男キョン。

うん。キョンは固まってたわ。

なによ、なによ!
もうちょっと反応してくれたっていいじゃないの!!
あたしは怒りと悲しみの混じった複雑な感情を抱きながら鶴屋さんとキョンにジュースを渡した。

「ありがと、ハルにゃん!」
鶴屋さんは笑顔でお礼を言ってくれた。

しかし肝心のあいつの方はジュースを手に持ったまま無反応ね……。

「こら!キョン君!
メイドさんが持って来てくれたんだから言うことあるでしょ?」

みかねた鶴屋さんが声をかけると、
キョンは、ハッとした顔をして
「あ、ありがとう……」
とだけ言ってまた黙った。

・・・・・

その後5秒ぐらいの変な間が生まれた。
鶴屋さんは、あたしにアイコンタクトをしてきた。

鶴屋さんの言いたいことはわかった。
たぶん『ご主人様』をまだ実行してないから、
きっとそのことね…。

でもどう切り出せばいいのかしら?

なんて考えていたら、いきなり鶴屋さんが……

「うぉっと、体全体がスベったにょろ!!」

バシャ

キョンの服にジュースをぶちまけた。

かけられたキョンの方は、
「うえぁっ!」
なんてマヌケなリアクションをとった。

きっとボーっとしてたからね。
座ってるのに『体全体がスベる』という有り得ないアクシデントに疑問は抱いていないわ。

「ごめんにょろ!すぐに着替えを持ってくるっさ!!
あとはメイドさんに任せるからね!」
と言い残し部屋を後にした。

なんて無茶苦茶な人なんだろう…。
あたしは素直にそう思った。

だけどせっかく作ってくれたチャンスだもん!
無駄にはできないわ!
キョンもなんか可哀想だしね。

「だ、大丈夫ですか!?」
あたしはキョンに近付き、持ってたハンカチでキョンのシャツのしみぬきをする。

「冷たくないですか…」
一瞬間を置いてから…

「…ご主人様……///」

うわあぁ~~!!
言っちゃったわよ!?
メチャメチャ恥ずかしい!!

キョンの顔を見ると少し赤い顔をしていた……

……わけではなかった。

「大丈夫か?なんか変だぞお前?」

うわあぁぁあ~~ん!!
キョンのバカ~!!

あたしはなにも言わずに逃げるように部屋を出た…。

何回か迷いながらも試着室へ行くと鶴屋さんがシャツを選んでいた。

「あ!うまくいったのかい!?」
鶴屋さんはうれしそうに訊いてきた。

「ダメよ、全然反応がなかったわ!!」

あたしはキョンの反応とコメントをそのまま鶴屋さんに伝える。
そしていかにあたしが傷ついたかを……

「うーん………。
キョン君にはメイド属性はなかったか……」
鶴屋さんはそういうとナースの衣装を渡してきた。

「え?なに、これ?」

あたしは思ったことを素直に言葉にしたわ。

「次はナースさんにょろ!」
さっきのキョンの反応が頭をよぎり、
「い、いやよ!」
あたしは文句を言ったけど、
「ハルにゃんのキョン君への想いは……略」

「やればいいんでしょ!?
やってやるわよ!!」

……結局この流れでまたやることになったわけ…。

……うん。ダメだった…。
反応は皆無だったわ…。

何回かいろんなのに着替えてキョンを落としにかかったんだけど………
自分がかわいそうになるので成績表にするから見たかったら見てちょうだい。

1回目メイド:効果無し。

2回目ナース:媚薬を注入しようとしたら拒否された。

3回目ウエイトレス:料理は褒められた。

そして今は4回目の関西弁に挑戦中なの…。

なんかよくわかんないんだけど関西弁の勢いを利用して告白するらしいわ…。
告白“させる”というのはもうなくなってきているのよね。

あたしはキョンの前に正座して座っている。
「あ、あんな?
う、うちは、あんたのことが………す……」

「…す?」
キョンはあたしの顔をみながら訊いてくる。

うぅ……
鶴屋さん、関西弁全然意味ないよ………
メチャメチャ恥ずかしいよ……。
「な、なんでもあらへん!!」

結局あたしは4度目の逃走をした…。

バタン!!
あたしは衣装室にいた鶴屋さんを見つけて言ったわ。
「鶴屋さん!
あれじゃただの告白と同じよ!!
それが出来たら苦労してないのよ!」
あたしは鶴屋さんを少しだけ責めた。

「ごめんにょろ~。
でも次のは絶対的自信があるから、大丈夫!!」

鶴屋さんは自信あり気にそう言った。

「信じていいの?」
あたしは正直鶴屋さんを信じられなくなってきている。

すると鶴屋さんはあたしの手を取った。

「……もしこれでダメだったら、あたしはもう『にょろ』を封印するにょろ!!」

「……そこまで言うなら、やってみるわ!」

実際大したことないと思う人もいるでしょうけど、
鶴屋さんが『にょろ』の封印をかけてくるなんていうのは、
鶴屋さんや鶴屋さんのファンにとっては死活問題だからね。

あたしは最後に鶴屋さんを信じることにした。

「それで作戦ってのは、どんな感じなの?」
そうよ、これが問題なのよ!
鶴屋さんの言動から察すると、たぶんこれが最後の作戦だからね。

「その作戦とは………」

鶴屋さんはやたらもったいぶってる。
しかしその表情はいたって真剣だわ…。

あたしも鶴屋さんの真剣な眼差しにつられるように、心臓の高鳴りを感じながら作戦の発表を待った…。

そして長い沈黙(実質5秒程)を破り鶴屋さんが口を開いた……

「………ツンデレにょろ」
「…は?」

「だからツンデレにょろ」
……別にあたしは耳が遠いわけじゃない。
言葉の意味を知りたかったのよ…。

あたしがその旨を伝えると鶴屋さんは未知の言語『ツンデレ』について説明をし始めた。

「ツンデレというのは、インターネット上で生まれた言葉で、ふだんはツンツンした態度をとるが、稀にデレデレした態度、またはそれを行う人のことを言うにょろ!」

「………さっぱりわからないわ……」

あたしはそれがどういうモノなのか、それのどこがイイのか分からなかった…。
「あたしもよくはわからないっさ!
でもこれの効果は絶大だと聞いたにょろ!!」

なんて無責任な…
「やり方がわからないんじゃ、やりようがないじゃない!?」

そりゃそうじゃない?
どんなにおいしいラーメン屋があるって聞いても場所がわからなきゃ食べれないじゃない……。

「だいじょぶ!!
今回はあたしがドア付近で隠れてるから、
ツンデレが成功してたらサインをだすにょろ!」

「でも……」

「実践あるのみ!!
本当の戦いの中での1分は、練習の何倍も学ぶものが多いにょろ!!」

鶴屋さんはシブるあたしの背中を押して鶴屋さんね部屋の前まで連れていくと、
無理矢理部屋の中にあたしを放り込んだ。

ちなみに扉は半開きだわ…。

強引に部屋に押し込まれたあたしはなにをすればいいかわからなかったから、
とりあえずキョンの前に正座した。

やたらかしこまって座っているあたしを見るキョンの視線が痛かった。

いったいどうしろっていうのよ!?
ツンデレなんてわかんないわよ!!

困り果てたあたしはキョンの顔を少し見た……

ヤバイ!!

キョンと目があってしまったので即座に再び視線を床に向けた。

ツンデレツンデレツンデレツンデレ……………

その言葉がまたあたしの頭を埋め尽す……。

ツンデレツンデレツンデレツンデレ……………

その言葉がまたあたしの頭を埋め尽す……。

「なぁ、ハルヒ」
突然キョンが話しかけてきた。

うるさいわね!今考えてんだから邪魔しないでよ!!

「おい、ハルヒってば!!」
しつこいわね……!!
何度も話しかけてくるキョンに少しイライラする…。
考え事してるときに話しかけられるのは好きじゃないのよ!!
たとえそれが大好きなキョンであっても!!

「なぁ、ハルヒ。聞いてるか?
今日はなんかおかしいぞ?」

……『おかしい』ってなによ!!
キョンが好きだからやったのに!!
もう我慢できないわ!
キョンなんて知らない!!

「別にあんたの気を引こうと思ってやったんじゃないんだから!!」

ヤバ………
あたしは言ってから気付いた…。

ごめん鶴屋さん……
今までの全部台無しになっちゃった………。

あたしは扉をみた。
正確には扉に隠れてる鶴屋さんを………

……!!
あたしは驚いたわ…
だって扉から出る鶴屋さんの手は親指を立ててその他の手を握る……
いわゆるグッドのサインだったから……

え!?待って!?
どういうことよ!?

あたしの言葉にはしない質問に答えることなく、
鶴屋さんは扉から離れて歩いていくのがわかった…。

なに!?どういうことよ!?
誰か説明しなさいよ!!

あたしは答えてくれる相手もいないのに、
頭の中で何度も疑問を誰かにぶつけた…。

……!
あたしは気付いた
そうだ、キョンの反応を見ないと………

しかしあたしが前を向くとそこにいたはずのキョンがいなくなってた………

キョンはどこに………!?

あたしがそう思った刹那。
まるであたしの疑問に答えるかのようにあたしの体は暖かい何かに包まれる………。

キョンがあたしを抱き締めてた………

どこかへいなくなったと思ったキョンは、
その真逆で、近すぎて見えなかったんだ……

抱き締められてる理由はわからないけど………

キョンの体はすごく暖かくて、気持ちよくて……

意思とは無関係にあたしもキョンの背中に腕をまわす。

あたし………
今、しあわせかも………

それだけを考えていると、キョンが抱き締めたまま声を発した。

「……俺、頭よくないから勘違いしてるかも知れないけど………。
……勘違いじゃなければ今のは俺のこと好きって捉えていいのか?」

ほんとにキョンはバカね……。
なんであの台詞を好きって捉えられるのかしら……。………でもキョンがバカでよかったわ。
勘違いとはいえ、あたしの気持ちは伝わったみたいだから……。

さて……返事をしないと。
勘違いで伝わったんじゃ嫌だもん。

大事な大事な初恋なんだからね………。

あたしは一息ついてから話し始める……

「………好きよ。キョン。
あたしはあんたが好き。
この気持ちに気付いたのは最近のような気もするし、
ずっと前からだったような気もするの……。
ただ、これだけは言えるわ。
これは気の迷いでもなければ精神病の一種でもない。
あたしはキョンが大好き!!」

やっと素直になれた…。

やっとキョンに気持ちを伝えられた…。

キョンの返事は聞かなくてもわかるわ…。

あたしが今感じてるこの暖かさと優しさがキョンの返事だから……。

「俺もハルヒが好きだ……」

ほらね?

そしてあたしとキョンはどちらから求めるでもなく唇を重ねた……。

なんで伝わったのかはわかんない……

でも確かにキョンはあたしを見てくれてる……

今この時はあたしだけに愛を与えてくれている……

そっと唇を離す………

「あんなことしなくても俺はいつでもお前を見てたんだからな……」

「……ごめんね」

再び重なる唇……

バカはあたしの方かもね?
キョンはこんなにあたしを見ててくれたのに……。

一筋の涙が頬を伝う……
うれしくて泣くことなんてないと思ってた……

永い永いキス……

たぶんあたしが今まで感じてた退屈や憂鬱はこのしあわせの代償だったんだよね……。

あたしはその代償の分を取り返すため、
キョンとのしあわせを感じていた………

ずっと抱き合って、キョンを感じていたかったけど、そうもいかないわ…。
名残おしいけどあたしはキョンと体を離した。


その後あたしは今回の一件について少しだけキョンに話すことにした。

「気付いてるかも知れないけど、今回の一件は鶴屋さんに少し手伝ってもらったの。」
プロジェクトの内容については恥ずかしいから言わなかった。

「そうか。鶴屋さんにお礼を言った方がいいかもな」
キョンもそう言ったからあたしは鶴屋さんに電話をした。

「……うん。ありがとう。
今から部屋に来てね」

ピッ

あたしは鶴屋さんに部屋に来てくれるように言って通話を切る。

「今から来るって」

「家の中なのに携帯とはな…」
キョンが笑いながら言った。
あたしが床に携帯を置くと、キョンが上から手を重ねてきたの。

なんだか本格的な恋人みたいで恥ずかしくなるわね。
でもこれからは毎日がこんな感じなのよね……

ガチャ

「おっめでと~~!!!
お二人さん!!」

扉が開くと同時に鶴屋さんが言った。

そしてあたしとキョンを交互に見て言う
「さすがのキョン君もハルにゃんの完璧なツンデレにはかなわなかったみたいにょろね!!!」

この言葉であたしは鶴谷さんに訊きたかったことを思い出したの。

「そのことなんだけど…」

「ん?ハルにゃんどしたの??」
鶴屋さんは笑顔のまま言う。
「結局ツンデレってなんだか分からなかったからやらなかったのよね」

「……え?
キョン君はハルにゃんのツンデレに落ちたんじゃないのかい?」
鶴屋さんが真面目な顔に戻る。

その質問に対してはキョンが答える。

「いや、俺は朝からハルヒの様子がオカシイのが不安だったんですよ。
でも急に“いつもの”ハルヒに戻ってて、
俺の気を引くためにやってくれてたのがうれしくて……」

「あ、あんたのためじゃないって言ったじゃないの!!」

あたしは恥ずかしくなってキョンに言った

「はいはい。」
なんかバカにしたみたいに言うキョン。

「ほ、ほんとにほんとなんだからね!?」
ムキになるあたし。

「………うれしかったんだけどな……」
どこか悲しそうにキョンが言う。

「………ごめん…うそついた…///」
なんか悪いことしたみたいであたしは素直に白状した。

鶴屋さんはと言うと何故かうつ向いているみたい…。
「あ、そうだ!」
キョンが何かひらめいたみたいで、
鶴屋さんに話しかけた。
「よかったらメイド服とか色々貸してもらえますか?
ハルヒが着てるとこもう一回見たいんで」

「な、なんであたしが着なきゃいけないのよ!?
あんた何着ても反応なかったじゃないの!!」

実はあたしはあのときのキョンのリアクションにまだ根に持ってた。

「あのときはお前が心配だったからよく見なかったんだよ。
だから今度はちゃんとみたいんだ………ダメか?」
あたしの頭にポンッと手を置いて言う。

そんなに心配してくれてたんだ………
改めてキョンがあたしを大切にしてくれてるってことを痛感した。

「……いいわ。
好きなだけみなさい!!
そして好きなだけ興奮すればいいわ!!」

大好きなキョンのためだもんね。
恥ずかしいなんて言ってられないわ!

「……と言うことなんで借りていいですか?
洗って返しますんで」

キョンがそう言うと、うつ向いてた鶴屋さんが顔をあげて言った。
いや、正確には叫んだの。
「勝手にするにょろ!!
このバカップル!!」
…という言葉を残し部屋から走り去って行った……。

「どうしたのかしらね?」

「わからん……」

鶴屋さんの出て行った理由はよくわからないけど…

「バカップルだって」

「そうだな」

バカップルって言われて少し嬉しかった…。

「………キョン」

「………なんだ?」

「大好き。愛してる。」

「俺もだ、ハルヒ」


そして二人は今日3度目のキスをする………


『プロジェクトT』大成功!!



~おまけ~

うわあぁ~ん!!
ヒドイにょろ~!!

あたしはハルにゃんとキョン君から逃げ出した。

近くのコンビニまで走っていくと見たことある女の子がいた…。

「長門っち~!!」

そう、ハルにゃん達のお友達の長門有希ちゃんだったっさ。

実際あんまり話したことないけど今はこの悲しみを誰かに打ち明けたかったから話しかけてしまったにょろ。
「ちょっと聞いてほしいにょろ~!!」

「………」
長門っちは相変わらず無口。
それでもかまわずあたしは長門っちに打ち明けた。

「……………なのに…………ハルにゃんが…………
だと思ったのに………………実は………で…………
つまり………………あわよくば………
……いかんせん………………察するに……………よしんば……………」

あたしは5分くらい話し続けたけど、
その間長門っちは黙って聞いてくれた。

「……わかってくれた?」
あたしが訊くと長門っちは軽く首を縦に振った。
「…………つまり」

…!!!
あたしは正直びっくりしたにょろ。

長門っちなら頷いて終わりかと思ったから…。

「つまりあなたは涼宮ハルヒと彼を恋人関係に結び付けようとした。
数々の計画を実行し、失敗を重ねながらも『ツンデレ』という非常に男性の行為を惹き付ける策にたどり着いた。
涼宮ハルヒがそれを実行した結果、二人を恋人関係にすることに成功した。

そしてあなたは彼に自分の考えた策への感想を求めた。
しかし彼の返答は“いつもの”ハルヒだった。
よって彼の発言から考えると次のことが言える。
  • 涼宮ハルヒは元からツンデレ
  • 彼はそんな彼女が好きだった。

以上のこととそれまでのプロジェクトの過程を考えると、あなたは次の結論に達した。
  • 自分のやったことは無駄なことであった。
よってあなたは悲しかった………。
ということ?」

「その通りです………」

実にわかりやすくまとめられたにょろ……。

そう、長門っちの言ったとおりさ……。

「あたしのやったことは無駄………」
あたしが言いかけると、それを遮断するように言った。

「ではない。
あなたの後押しがなければあの二人が恋人関係に至る可能性は8%以下だった。
だからあなたはいいことをしたと考えるべき…」

「長門っち………」
あたしはいつも無口な長門っちの励ましがとてもうれしかった…。

「ありがとにょろ!」
あたしは長門っちに抱きついた。

長門っちの体はとても冷たい。

「人をしあわせにすることができる人はすごい……」
でも言葉の一つ一つに優しさを感じた……

そっと腕をあたしの背中にまわしてくれた。

「それは私にはできないことだから…」
長門っちが悲しそうに言った…。
なんだか小さい長門っちが更に小さく見えて、思わず腕に力を込めた。

「……できるよ!」
「………え?」
小さな声で長門っちが声を漏らした…。

あたしは長門っちの大きな目を見つめて言った。
「あたしは今長門っちといてしあわせだもん!!」

長門っちは顔をほんのわずかだけど赤くして……
「………そう…」とだけ言った。

あたしが抱きついていた手を外すと、長門っちは
「…じゃあ」
と言って自分のマンションの方(たぶん)に歩き始めた…。
「ねぇ!」
あたしが呼ぶと、長門っちは振り返った。
「有希ちゃん今度遊びに行っていいかな!?」

「……今からでもどうぞ…」
あたしはうれしくて有希ちゃんに付いて行った。

新しい友達はとっても無口だけどとってもやさしいにょろ!!

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