突然だが、俺だって、れっきとした男である。
いつだったかハルヒは、

『私も健康な若い女なんだから、体を持て余したりもするわ』

なんてことを言っていたが、俺だって同じだ。
健康な若い男なんだから、こうやって、怪しいAV屋に来たりもするのだ。
勿論準備は万端だ。
まず、年齢確認が甘い店を探す。
これは、こっそりと谷口に聞いたら教えてくれた。
『こういう情報は校内の男子生徒全員で共有すべきだ』とする有志たちが居るらしく、
この学校では、年齢確認が甘い店だけでなく、値段とか、品揃えのよさとか、
はたまた置いてあるジャンルの偏りまで、あらゆるデータが集められている
データベースが存在しているというのだ。
俺は、その有志たちに、心から礼を言いたい。ありがとう、と。

そのデータを元に、俺は自分の趣味に合う店にやってきた。
そう。

『髪型にこだわったAVの多い店』

だ。

俺は店のドアを開け、外に出た。
はっきり言おう。俺は、今猛烈に感動している。
正直、ここまでフェチズムの分かっている店だと思わなかった。
ショートか長髪か、なんていうこだわりのレベルじゃない。
俺の大好きなポニーテールは当たり前のように存在し、
おかっぱ、ボブカット、黒髪ロング、お団子、なんでもある。
ポニーの縛る位置でも細かく分けられてるってのは何だ。
サイドポニーなんて名称は初めて聞いたぞ、俺。

まあいい。今日はあまり時間がなくてちゃんと選べなかったが、また来れば良い。
今度は休日の昼に来て、ゆっくりと、数時間かけて選ぶとしよう。
この店には、それだけの価値が―――

「やあっ!そこにいるのはキョンくんじゃないかいっ?」

しまった、俺としたことが。
浮かれていて、辺りに知りあいが居るかどうか確認してから外に出るという、
AV店巡りの基本事項を忘れてしまうとは。

「んっふっふっふキョンくん、面白いところから出て来たねぇー?
ただの店じゃない、マニア御用達と言われてる、その筋には有名な店から…」

あの、鶴屋さん。このことは他の人には、特にハルヒとか朝比奈さんとか長門には…

「わぁってるって!私もそこまで暇じゃないっさ!
ただ、ちょっと中身が気になるかなっ!」
「なんですとー」

いかん、予想外の発言に、思わず変な声を出してしまった。
あわてて咳払いをして、

「…えーと、見ても面白いもんでもないですし、そもそもセクハラ臭いんですが…」
「面白いかどうかは、見てみないと分かんないよっ!
それに、私がセクハラだと思わなかったらそれはセクハラじゃないっさ!
私は気にしないよっ!」

正直、鞄の中には、この人にはかなり見られたくないモノが入っているのだが、
今の俺に鶴屋さんに逆らうことは不可能だ。
バラすよ、の一言で一発KO。
俺はそんな悪あがきはせず、素直に鞄の中身を渡す。

「んっと、一つはポニーもの…もう一つは…長髪?
うっわ、これ私と同じくらいの長さあるじゃん!」

公共の道路で、まじまじとAVのパッケージを見る鶴屋さん、やはりただもんじゃない。
そして、そのAVの借主である俺はなんなんだろう。人間的に小さい事は間違いない。
鶴屋さんが、(ありえない)長髪モノAVのパッケを裏返す。

「…あー、なっるほどー、こういうことか。
これはあれだね、髪を使って色んなことしたいが為のビデオなわけだねっ?」
「…そういうことです」

パッケの裏には、自分の髪を使って、男優を攻め立てる女優の図。
正直、俺はそのビデオを手に取って、そのシチュを見た瞬間に脳に電撃が走り、
気がついたときには、カゴの中にそのビデオを放り込んでいた。
それほどの破壊力だった。

「んっふっふっふー。キョンくんも、なかなかアブノーマルな性癖をお持ちだ。
とんだ変態さんだねっ!」

その後、俺は鶴屋さんに延々と数十分いじくられまくった後、ようやく解放された。
あれは、公開レイプに等しい行為だったと思う。
公共の道路の上で、同年代の少女に、AV片手に延々といじくられるの図。
道ゆく人の7割は笑ってたよこんちくしょう。
自分の部屋に戻った俺は既に精神的にボロボロで、借りてきたAVを見る気は起きない。
ひでえ。ひでえよ鶴屋さん。
俺は、ベッドの上で一人しくしくと泣いた。

そんな傷ついた俺の心を癒す為に救世主が!
じゃない、俺の頭の中に、唐突にナイスな考えが浮かんだ。
ふっふっふ、覚悟しろ鶴屋さん。
現実世界では絶対に敵いっこない先輩だが、妄想の世界では、そうはいかないんだぜ…?
俺はズボンをトランクスごとずり下げ、ベッドの上のティッシュを数枚抜き取って準備完了。
俺は目を閉じて、今日数十分間もの間、ずっと見ていた顔を脳内に鮮やかに浮かび上がらせた。

終わり

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