俺とハルヒが同棲を始めて二回目の夏が訪れようとした時のこと。
高校を卒業してからと言うもの、俺とハルヒは奇妙な関係にいた。
二人とも大学に進学せず、俺は某IT会社に勤め(今も長門の力を借りて、そこそこの立場には出世した)、ハルヒと言えば全くのプー太郎で、働くと言えば朝比奈さんのカフェをお手伝いしに行く時ぐらいだった。
まぁ女は働くものでもないからな。俺は別に構わないのだが。

そう、話は同棲の件に戻るが、
高校卒業してから間もない、俺がまだ就職活動に専念していた頃のことである。
ハルヒが突然アパートを借りたと思ったら、
「これからこの部屋があたしたちの城よ!」
とか高らかと言い出し、まだ職にも就いていない俺の正当な反対意見を、ハルヒはことごどく回避し、半ば強制的に同棲生活が始まることになったのだ。
前置き長かったか?まぁ気にしないでくれ。

初夏特有の蒸し暑い日、せっかくの休日ということでディ○ニーランドに行く予定だったのだが、朝からしとしとと雨が降ってきてしまっていた。
俺はハルヒをなんとか説得し、家でゴロゴロ過ごすと言うまぁ正しい休日の過ごし方を渋々と合意してくれた。
で、今はもう日が落ちかけている頃、ハルヒと言えば朝からずーっと拗ねてばかりで布団から起きようとしない。
俺はと言えば、なんだかよくわからない特集を組んだ夕方のニュースをぼんやりと見るしか時間を弄ぶ方法がなく、だらしなーい格好でぼんやり画面を見つめていた。
カチカチと時計の秒針が妙に部屋に響き渡り、見事に嫌~な空気の演出を果たしていた。
たまらず俺はハルヒに話しかける。

「なぁ、ハルヒ」
「・・・ナニ」

ハルヒはまるで屍のように目をつぶり、ほんの少し口だけを動かした。
こういう時のハルヒは拗ねているサイン。ったく・・・本当に子供みたいだな。
俺はそのまま話を続ける。

「俺たちが同棲初めて・・・どのぐらいになる?」
「何よ突然」
「いや、少し気になっただけだ」
「・・・もう三年ぐらい」
「そうか」
「・・・何よ?」
「え?」
「何か言いたそうじゃない?」

ハルヒはそう言うと、ゆっくりと上半身を起き上がらせ、俺を睨みつける。

「な、なんでもねぇって」
「何よそれ」
こういう時のハルヒは本当にしつこい。
じわじわと俺に近寄るハルヒ。まるで俺はジャッカルに狙われている小動物のように後ずさりするしかなかった。

「はぁやぁく・・・何言いたいのか教えなさいッ!」
「だ、だから何にも・・・おぶっ」

と、突然ハルヒが俺の腹の上に馬乗りをしてくる。
ガンッ
その際、俺は床に後頭部を強打、あぁ・・・絶対たんこぶできたな。

「~~~~っ!いってぇな!」
「あんたがモタモタしてるからいけないのっ!ほら早く言え!吐けっ!」
「いででっ!ほっぺたつねるな!」
「いいわ、言わなかったら・・・今月エッチ禁止。いいわね?」

ハルヒは小悪魔のように俺にささやく。
あ、それはちょっと勘弁です。いや、俺も男だしましてこいつに性欲を弄ぶ映像作品性的行為その他もろもろを目撃されてしまっては俺たちの関係は終わったも同然でありだからと言っ

「さぁ、はやくゲロッちゃいなさいよ」

くそっ・・・またもハルヒの思惑通りにことが進んでしまう。
俺は本当に何も考えず質問をしたので、ハルヒに何を言えばいいのか頭の中が様々な意見で錯乱している。

・・・あ、これなら良くないか?


いやでも待て、まだ早すぎる気もする。しかし、この状況を打破する為にはこの言葉しかなさそうだ。
まぁ俺も正直なところ、もうそろそろそんな時期かなとは思っていた。
それにこいつとなら・・・まぁ上手くやってけるだろう。うん多分。
俺は意を決してハルヒに話しかける。

「なぁハルヒ」
「何よ?言う気になった?」

「・・・結婚するか」

「・・・え?」
「だから、結婚しないか?」

ハルヒは目をまん丸にして俺の顔を見つめていた。

「な、何よ急に・・・きょ、今日はエイプリルフールじゃ・・・」

完全に戸惑っているハルヒ。
こんなハルヒ見るの久しぶりだな。

「いや、嘘でもなんでもないって」
「じょ、冗談でしょキョン?まったく、湿気に頭やられたんじゃな・・きゃっ!」

俺はたまらずハルヒを抱きしめる。少々キツイ体勢ではあったがな。
しかし、ハルヒの口をふさぐにはこの方法しかなさそうだった。

「・・・」

案の定、ハルヒは静かになり、俺の背中に手を回してきた。

「お前の返事は?」
「・・・」
「言わないとわかんねぇよ」
「・・・」
「やっぱり嫌か?」

おれは少し残念そうに呟く。いや、もちろん演技だぞ演技。

「そ、そんなんじゃ・・・」
「・・・じゃあどうなんだ?」
「・・・し、新婚旅行はヨーロッパがいい」
「うん」
「・・・結婚式はハワイがいい」
「うん」
「・・・や、約束よ!?」
「努力するよ」

俺はそう呟き、ハルヒにキスをした。

まぁそんなこんなでハルヒと結婚をすることになってしまったわけだが。
この先、俺は多分ハルヒに振り回され、多忙の夫婦生活を送ると思うが、まぁそれも全部俺の責任だな。
俺はハルヒを完全に好きになってしまった。ハルヒは俺のことをどう思っているか知らないが。
しかしなんだか俺は・・・うまくやっていけそうな自信はあった。

「よろしくなハルヒ」
「う、うるさい!」

そう俺に怒鳴るハルヒの顔は、耳まで真っ赤だった。

|