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~前回までのあらすじ。~
・第一話
神人が変化しそうになった時に古泉にぎゅうってしてもらう。
そのままぎゅ~の体勢で突如告白。
・第二話。
外国の飛び級で高校生に上がった薔薇s・・・進藤日和(14)転入。
物語は急転直下・・・は、まったくしなかった。


キミがキミで居られるように

第三話「I'm yours. You're mine.」

いっく~ん。起きて~。朝だよ~。起きないとほっぺにちゅ~し
カチッ。
「・・・・・・」
毎朝鳴る恥ずかしい目覚ましを慌てて止めて慌てて起き上がる。
声は神人さん。少女漫画で間違えた知識を覚えてしまったようです。
今日は休日。いや、しばらく休日の一日と言った方が正確ではありますね。
もう学校は冬休みに入っているのですから。
別に早く起きなくても良いんですが、それでも僕が目覚ましを仕掛けているのは理由がある。
ガチャ。
そっと、音を立てないように神人さんの部屋に入る。
ベッドの上ですやすやと寝ている華奢な少女。その姿に思わず苦笑する。
「こんな冬場におへそを見せてたら風邪引きますよ」
僕はパジャマを直すわけにはいかないので、そっとふとんを掛けなおす。
早起きする理由。それは神人さんの寝顔を見る為。
これが幸せなんです。まぁ、趣味が悪いと思われるかもしれないですが。
だけど、いつ終わるかも解らない幸せの上に立っている。
もし神人さんが明日にでも巨人に変わったら。
その時はこの光景を見られなくなるわけですから。
ひ~らりひひらりひひらりら~は~るがきたきたふくが~♪
カチッ。
僕よりも十分遅い目覚ましが鳴り、神人さんが目を覚ます。
ちなみに今の目覚ましは、彼女が希望したので僕が歌ってあげたやつです。我ながら恥ずかしいです。
「んぅ・・・いっ、くん?」
物凄く眠そうな目をこすって僕を見る。
「目が覚めましたか?」
「うにゅ・・・ふぁ~、おはよう」
「おはようございます、神人さん」
そんな、のんびりとした休日。


で、今進藤さんの部屋に居る。
あちらこちらにアッガイのポスターやプラモデルが並んでいる。
ソファーにはシュウマイのクッション、ベッドにはシュウマイ柄の布団が見える。
「今日、貴方を呼んだのは他でもない彼女の事」
「神人さんですか」
朝ご飯を食べてる最中、僕は進藤さんに呼ばれた。
「話の前に。シュウマイいる?」
「遠慮しておきます」
テーブルの上に山積みにされたシュウマイが視界に入って気になる。
それを気にしないように進藤さんの顔を真っ直ぐに見つめる。
・・・進藤さんの顔が赤くなってきたような気がします。
「話に入る。反機関のある組織が色々と行動しているという話は知ってる?」
「聞きました」
「その目的が解った。その後、『機関』からそれを貴方に伝えるように言われた」
進藤さんはやっぱり日本語が弱いようです。
「その目的とは?」
眼帯をしていない方の目で僕を真っ直ぐに見つめ返してくる。そして、
「・・・神人の捕獲」
と、静かに告げた。
「神人さんの・・・捕獲?何の為にですか?」
「彼等は神人を研究して擬似的閉鎖空間を作るつもり」

「それは・・・間違いなく問題ですね」
閉鎖空間は拡大すると現実世界と入れ替わる。
もし、巨大な閉鎖空間が複数出現したら、世界はバラバラに分解されてしまう。
いや、引き裂かれると言うべきでしょうか。
とにかく、そうなってしまうわけである。
「そう。それは問題。だから、貴方には彼女を守ってあげて欲しい」
「大丈夫です・・・言われなくても守りますから」
「うん。偉い偉い」
進藤さんは僕の頭をよしよしと撫でた。もう、そんな年じゃないんですけどね。
「私はこうされると嬉しい。貴方も嬉しい?」
「えぇ、まあ、嬉しいって言ったら嬉しいですけど・・・」
「良かった」
進藤さんはにっこりと笑った。まるで、可愛い部下を見る上司のように。
・・・機関内で見たら、僕の方が上司なんですけどね・・・。
「話はこれだけ」
「そうですか。じゃあ、僕は戻りますね」
「・・・シュウマイいr」
「いえ、結構です」
僕は丁重に断ると自分の部屋へと戻った。
・・・玄関の扉をほんの少しだけあけて、進藤さんが僕を見ていた。

「・・・もしかして、待っててくれたんですか、神人さん」
部屋に戻るとテーブルの上にまだ食べかけの朝ご飯を残した神人さんが座っていた。
「うん。いっくんが居ないと朝ご飯が美味しくないんだもん」
「ご飯冷えてしまいますよ。っていうか、もう冷えてますね」
「大丈夫。いっくんが居れば温かく感じるから」
聞いてると恥ずかしくなるような事を平然と言ってくれますね。
嬉しいので構わないんですけど。
「じゃあ、あらためて、いただきます」
「いただきます」
冷えた白ご飯は、確かに温かかった。神人さんの笑顔があると。
「んふふ・・・いっくん、ご飯粒付いてるよ」
「え、どこにで――」
ちゅっ。
「唇に・・・ね?」
なるほど。これが幸せというものなんですね。理解できました。これは確かに喜ばしい事ですね。温かいです。
と、進藤さんの部屋から何か音楽が聞こえてきた。
「・・・ンコ!!C!H!I!N!K!」
僕は何も言わずにテレビを付けてその音楽を打ち消した。
まるでそれに対抗するかのように音楽の音が大きくなる。
「・・・コ!Welcome to the chin――」
だが、それがぴたりと止まる。そして、ベランダに何かの音が鳴る。
窓の外を見ると、進藤さんがこっちを覗いていた。
「何がしてるんですか、貴女は・・・」
「暇だからストーカーごっこ」
「意味が解りません」
「あ、ひーちゃん、おはよう」
「おはよう」
まぁ、神人さんが嬉しそうなのでよしとしましょうか。
結局進藤さんは昼前まで神人さんと猫ごっこという謎の遊びをしてベランダから帰っていった。

「今日の夕飯何にしますか?」
「何でも良いよ。いっくんが作るご飯なんでも美味しいもん」
「そうですか・・・じゃあ、カレーでよろしいでしょうか?」
「うんッ」
夕方。
僕達は夕飯の買出しにデパート・マルエツンデレに来ていた。
夕飯のメニューが決まれば早い。食材を籠に入れてレジに行けばいいわけですから。
途中、神人さんは三階の洋服売り場でパジャマを買いに行った。
食材を選び終わったらレジに向かう。
ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっ・・・。
バーコードを読み取る機械音が鳴る度に値段が表示される。
牛肉五千円。
ワイン二万円。
その他諸々。
合計は・・・九万六千円ですか。カレーって案外安いですね。
「また来てねなんて思った無いんだからね!でも、また来ても良いから・・・」
さて、三階に迎えに行くとしますか。
僕はエスカレーターに乗って神人さんを迎えに三階へと行った。
女性者の服売り場を見る。でも、そこには居なかった。
ちょっとだけ不安になって、早歩きでフロアーを見回る。
そして、見つけた。
「ねぇ、俺達と遊ばない?」
「い、いえ結構です・・・一緒に来ている人が居るので」
「いいじゃない、先に帰るって言えば。いいところ知ってるよ?」
・・・ナンパ、ですか。いかにも柄の悪そうな人たちですね。
人数は三人ですか。まぁ、これなら万が一の場合でも大丈夫そうですね。

「神人さん、帰りますよ」
僕は神人さんのところへと向かう。
「なんだ、お前」
「連れですよ。そろそろ帰ろうと思ったので彼女を呼びに来たんです」
「なんだ、その笑顔。気持ち悪い」
「そうですか。さて、じゃあ帰りましょうか」
「何受け流してるんだ、お前。調子乗ってんじゃねぇよ」
「いえいえ、調子に僕は乗ってません。貴方達はともかくね」
思わず、挑発してしまう。
「んのやろー・・・」
両手はカレーの材料で塞がってますが、この程度なら足だけでどうにかなりそうですね。
片手でレジ袋を持ってしまえば良いんですけどね。
ハンデあげないと立ち上がれない状態にさせてしまいますからね。
機関で鍛えてますから普通の人間には負けないんですよ。
まず、一人目の飛び掛りを足払いで倒す。
次に来るのは胴体ががら空きなのでそこに回し蹴りを入れる。
後ろから来るのは、後ろ回し蹴り。そして、立ち上がろうとする一人目を再び足払いを入れる。
「すいませんね。では、失礼します」
僕は軽く会釈すると、その場から離れた。後ろから、神人さんがついてくる。

マルエツンデレから出ると、ぎゅっと裾を神人さんが掴んできた。
そのままで帰り道を歩く。少し邪魔になるけど、振り払うことはしない。
そして、部屋に戻るや否や、ぽつりと神人さんが呟く。
「ごめんね・・・閉鎖空間の外じゃ、私無力だから・・・」
「いえ、気にしないで下さい。貴女を守るのが僕の役目ですから」
ちょっと、騎士を気取ってみた。そんな僕から神人さんは視線をずらす。
いつものような陽気ではなく、とても思いつめた雰囲気だった。
「気にしないようには出来ない。だって悔しいから。何も出来ない私が居るんだもん」
「神人さん・・・?」
「貴方達を、襲う事は出来るのに・・・私は、守る事は出来ないんだから・・・自分自身さえも・・・・・」
そう言う顔は、とても暗かった。涙の堰が崩壊し、今にも泣きそうだった。
そんな表情でただ、俯いて僕を見ようとしない。
「普段の生活だってそう。家事も何もかも、世話してもらってる。私は何もしてないのに。迷惑者だよね」
「そんなことはありませんよ!」
「ある!じゃあ、私が何をしてるの!?何かしてる!?してないよ!!これのどこが迷惑者じゃな――」
バチン。
僕は、思わず彼女の頬を叩いた。多少の手加減はしたつもりでした。
が、激昂した感情のおかげで結構予想外に強く叩いてしまった。
罪悪感が多少ある。けど、怒りがそれを食らって、胸を蝕む。
「いっくん・・・?」
呆然とした顔で僕を見つめる。その神人さんの姿が、余計にいらいらさせる。
「いい加減にして下さいッ!僕がいつ迷惑者だといいましたかッッ!?
 貴女は何もしないで良いんですッ!傍に居れば十分なんですッッ!!」
窓に、進藤さんがちらりと見えた。だけど、気にしない。
そんなもの気にしている程、理性に余裕は残っていない。
「僕には、貴女が必要なんですよッッ!!」
しばらくの沈黙。

その後に、神人さんがぽつりと呟いた。
「・・・・・ごめんなさい」
「・・・いえ、僕の方こそ叩いてすいませんでした。痛かったでしょう?」
「ううん。おかげで目が覚めたから。ありがとう。それに、心情も聞けたし」
神人さんは、にっこりと笑う。僕はその笑顔の中に無理を見出した。
何かに必死に耐えているような顔。
「だから、大丈夫だよっ・・・!」
「まさか・・・閉鎖空間ですね!?無理して平静を装わないで下さい!!」
「大丈夫、だよ・・・っぅ・・・私、取り込まれたりしない・・・から・・・っあ!!
 いっ、くんには・・・私が居るって言った、みたいに・・・わた、しには・・・いっくんが居るから・・・
 だから・・・いつも、みたいに・・・抱き、しめてて・・・っ!!」
言われた通り抱きしめる。
「えへへ・・・いっく、んが・・・抱きしめててくれる、と、少しだけ、楽、か、な・・・っっ!!」
神人さんから苦痛の顔が消えて、力なくその場に倒れこむ。それを慌てて受け止める。
彼が、涼宮さんをどうにかしたか、同僚がやってくれたか。どちらにせよ、今回は早くて助かりました。
力無く僕の腕の中でぐったりしている神人さんはぼそりと呟いた。
「ずっと、こうして、一緒に居られたらいいな・・・」
「ええ・・・ずっと一緒ですよ」
「えへへ・・・ありがとう」
「貴女は僕の大切な人ですから・・・」
「うん。私は、貴方だけのもの。」
そこで僕達は、窓をコンコンと叩く音に気付いた。
「あ、ひーちゃん居たんだよね」
「進藤さん・・・どうしましたか?」
「シュウマイ・・・いる?」
さっきから見てたはずなのに、何事もないかのように訊いてくる。
思わず、苦笑いが漏れる。
「ええ・・・じゃあ、”少しだけ”貰っておきます」
その日、夕飯の食卓にはカレーと少しだけ・・・の個数らしいシュウマイ100個が並んだ。

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