僕は、あれからずっと神人さんの傍を離れる事は無かった。
あってもトイレや風呂の時ぐらいだ。
家が違うという問題は解消されているので大半はどうにかなる。
なんでそんな大きそうな問題が解消されたかって?
そんなこと、決まってじゃないですか。
「いっくん、ご飯出来たよー」
「ありがとうございます。おや、ハートマークですね」
「えへへ~」
一緒に住んでるからですよ。二人、同じ屋根の下で。



キミがキミで居られるように 

第二話「転校生・進藤」

「起立!礼!着席ッ!!」
「え~ホームルームだが伝達事項は無い。ただ、転入してきた生徒を紹介したいと思う」
朝のホームルーム。突然、担任の先生はそう言った。伝達事項は無いって、十分伝達事項ですよ、それ。
僕としては今頃なんの転入生だ、という感想なのでどうでも良いんですが。
まぁ、一つ不安材料があるんですけどね。時期が時期なので。
「進藤さんだ。みんな仲良くしてあげて欲しい」
がらがら、と扉を開けて入ってきたのは女子生徒だった。
見た目はとても寡黙な人形で、高校生にしてはやや幼い気がする。それでもって日本人離れの容姿。でも小さい。
「今日から、この学校で・・・・・」
「・・・・・」
「・・・お世話になります、薔薇す・・・じゃなくて進藤日和です・・・・・」
なんですか、今の間は。クラス全体が息を揃えてずっこけましたよ。先生も含めて。
「えっと・・・アメリカの飛び級制度で高校生に上がったので、今まだ14歳です。よろしくお願いし・・・ます」
どうりで、幼いと思いましたよ。
「よし、お前は神人の後ろの席にいけ」
「はい・・・」
神人さんの後ろ。正しくは、僕と神人さんの間の後ろという位置でしょうか。微妙な場所に空席があります。
そこに彼女は座った。その途端だった、
「・・・古泉一樹、および神人に告げることがある」
「!?」
名乗ってもないのに突然名前を言われて慌てる。
これはもしかして、という一つの想像が浮かぶ。
「私は機関から送られてきた・・・神人の保護は異例中の異例だから・・・観察しろ、って」
「ああ、、やっぱりそうですか」
「あと、私は好きなものアッガイ。これ、機関にも秘密」
アッガイ・・・ガンダムですか。なんか、見た目にそぐわないような気がしますね。
僕は笑いを浮かべた。それが苦笑いなのは言うまでもありません。

「まぁ、よろしくお願いします、進藤さん」
「よろしくね!日和だから・・・ひーちゃん!」
「ひーちゃん、か。・・・ん。よろしく・・・」

で、その後。学校での時間は案外普通に過ぎていった。

進藤さんに涼宮さんは興味を引かなかったらしく、何も無くて終わったからだ。
どことなく、それが残念そうな顔をしている進藤さん見えた。ご愁傷様です。
帰りは階段の踊り場でうさぎ跳びしながら「ぴょんぴょん」言ってる進藤さんに、
「一緒、帰る」
と、言われ三人で帰る事になった。
僕達は、同じマンションに入る。『機関』の一員であるのだから当然のマンションに住んでいるわけだ。
「私、ここ・・・」
「おや、進藤さんは隣の部屋ですか」
「ん。隣」
「じゃあ、また明日会いましょう」
「・・・今日の夜、この部屋に引っ越してきた記念にシュウマイパーティーやる。貴方達以外は誰も読んでない。呼ぶから来て」
「解りました。じゃあ、その頃にまた会いましょう」
僕達は自分の部屋に入った。途端に、玄関に座り込む。
「やっぱり機関から観察者が来ましたか・・・」
こうなることは、何となく予想がついていただけにいつ来るかと緊張していた。
その緊張による心理的疲れがどっと沸いたのだ。
「大丈夫、いっくん?」
心配そうに神人さんが僕の顔を覗き込む。
「ええ、大丈夫ですよ。貴女の安全は保障します」
「そうじゃなくて、いっくんが!」
「僕ですか?大丈夫ですよ。神人さんのせいで何かあっても、『機関』がどうにかしてくれますし」

それは、真っ赤な嘘だ。
もし、神人さんのせいで何か悪い影響が出た場合、僕は処分されるのだ。
『機関』をやめさせられる、というわけではなくこの命の処分。
本当は内心怖い。もしかしたら、駄目なんじゃないかと思うと怖くてたまらない。
そんな心であっさり嘘をついてしまう僕自身さえも怖くて仕方が無い。
でも、別に良い。
僕は、神人さんが好きなのだから。これぐらいのリスク、背負っても別に良い。
「・・・ねぇ、早く家に上がろう?」
「え・・・あ、はい、そうですね」
彼女の笑顔に急かされる形で僕は立ち上がる。
靴を脱いで、靴収納に入れると現在自分の家として使っている家に上がる。
自分の部屋に荷物を置いて制服を脱いで着替える。
居間に出ると私服姿の神人さんが居た。
「あ、いっくん。今日の夕飯はどうする?」
「そうですねぇ・・・進藤さんがシュウマイパーティ開くって言ってますし、それが終わった後にお腹の調子を見て考えましょう」
「そうだね。どれくらい出てくるか解らないし、最初に食べていったら入らなくなっちゃうかもしれないもんね」
結果として、その選択は正しかったと言える。
シュウマイパーティが、凄まじく恐ろしかったからだ。
普通のシュウマイ、シュウマイカレー、シュウマイシチュー、シュウマイサラダ・・・etc
美味しい分には美味しいのですが、量が多すぎて大変でしたよ。
お腹が膨れた僕と神人さんを尻目にバクバク食べてましたからね。よく太らないですね、本当に。
「シュウマイ好きだから、食べられる。だから、食べて。私、食べるから」
この人、どうやら日本語はあまり上手じゃないようですね。
そんなこんなで、なんかシリアスになるかと思った一日は、案外普通に終わったのでした。

嵐の前の、静けさとして。



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