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どうすりゃいいんだろうね?俺は。
この状況を。

顔から血がでてる古泉。
俺も似たようなもんだな。
ずいぶんと口の辺りがひりひりする。
こりゃ、口の中が切れてるかな?

「あなたに僕のことがわかるわけがない」
「あぁ、同意見だよ」

本当に、どう収拾つけるべきかね、この状況?

その日、些細なことで俺はハルヒと喧嘩した。
普段ならどうってことないことが、その日ばかりはなぜか許せなかった。
部室を飛び出していったハルヒ。

俺は深いため息とともに椅子に座る。
「閉鎖空間のでるような真似は慎んでくれませんか?」
こんなことを言うのはニコヤかスマイル・古泉しかいない。
普段なら同意する俺だが、まだカッカしている。
「知ったことか、そのための機関だろう」
ふう、と一つため息をつき古泉が言う。
「確かにそのための機関です」
ならいいだろう。
「けれどあなたは作らなくてもすんだはずの閉鎖空間まで作ってしまったのですよ?」
知ったこっちゃない。だいたい、俺はいつもいつもハルヒの機嫌を伺うような
高校生活を送るつもりはない。俺には俺の意思が認められていいはずだ。

「あなたが何も知らない人なら、その言い分は認められますが、あなたは既に
涼宮さんが世界に及ぼす影響のことを知っています。だから、」
「世界を優先しろと?却下だ。俺には何の義務もない」
「……確かに義務はありませんが、協力してくれてもいいでしょう?
あなたを初めて閉鎖空間に連れて行ったとき僕が言ったことを覚えていますか?」
覚えてられるか。

「僕たち機関の人間は涼宮さんのことを知ってしまった。
知ったからには行動しなければいけない、と言いました」
あぁ、そういえばそんなことも言ってたっけな。
「これは僕たちの決意であるとともにあなたに向けた言葉でもあったのです」
「なんだと?」
「あなたも僕や、長門さん、朝比奈さんに言われて、涼宮さんのことを知ってしまった。
ならば行動してください、そういう思いで口にしたのです」
知ったことか、俺には貧乏くじをひいたとしか思えん。
そんなのはお前らに任せるさ。
「……ッ」

気づくと俺は天井を見ていた。
顔の辺りがやけに熱いな。
そう思って体を起こすと、そこには拳を突き出した古泉がいた。
あぁ、俺は古泉に殴られたのか。
「何の真似だ?」
「何の真似だ、と?見た通り、感じた通りですよ」
それはわかってるさ。お前は本心隠してニコヤかに笑ってばかりだからな似合わないんだよ。
「僕が…好きで、本心を隠して、笑ってばかりいるとでも……思っているのですか?」
そんなふうには思ってない。思ってないが……。

今度は古泉が仰向けに倒れていた。
殴られておとなしくしてるほどお人好しじゃないんだ、俺は。
立ち上がった古泉の顔はいつものニコヤかな笑顔じゃない。目は怒気を帯びている。
かくして冒頭にもどる。

「あなたに僕のことがわかるはずがない」
「あぁ、同意見だよ。普段ニコニコ笑ってて何考えてるかわからないしな」
「だから、それを好きでやってるとでも思ってるんですか?」
「思わんさ」

「そうですよ!こんなことをやりたいわけじゃない!普通に生活していたかった!
あなたはさっき貧乏くじと言った。それは僕のような機関に所属する人にとっても同じことだ!
あなたは僕たちより気楽な立場にいるんですよ。
あなたは自分を装わずに生活していいんだ!
涼宮さんを不機嫌にしても、神人と戦わなくてもいいんだ!
あなたは誰に対しても義務を負っていない!
それなのに僕はどうですか?
自分の本音を隠して生活して、
僕のせいでもないのに神人と戦って、
優先するのは機関の命令……。
やりたいことも出来ずに、やりたくないことしか出来ない人生なんですよ、
この三年間はッ!」

言い終わると古泉は肩で息をしている。ものすごい目で俺をにらみながら。
「あなたは、自分の立場を正しく理解していない。あなたは涼宮さんに選ばれた『鍵』だ。
だから、朝倉涼子に身の安全を脅かされたとき、長門さんは助けに入った。
あなたが『鍵』じゃなかったら、僕は、あなたを、今、この場で、気絶するまでなぐっている。
あなたは、涼宮さんがいるから、彼女が力を持っているから、安全なんですよ」

いつもの古泉らしくない。いつものこいつの理論は少なくとも筋は通っている。まぁ、突飛すぎるが。
だが、今日のこいつの理論は穴だらけだ。俺でもすぐにそこを見つけられる。
「あいつが力を持っていなかったら俺は危険にさらされる心配はないはずだが?」
前に長門は言った。俺が「鍵」だから危機が迫ると。
だからあいつに何の力もなければ俺は「鍵」ではなくなり、
俺は非日常的な身の危険にさらされる心配はない。
「……!」
古泉の目がいちだんと鋭くなる。その目で俺を睨みつけながら古泉は部室を後にした。

やれやれ、だ。なんで今日は俺こんなにいらついてんのかな?
帰ったら牛乳を二リットルぐらい一気飲みした方がいいかもしれない。
後、シャミセン用の煮干しでも食っておくか。
……食わないか、食わないな。

「古泉の本音か」
あいつでも切れるんだな。意外だ。
「……君、キョン君?」
あれ?まだ部室に誰かいたっけ?
……って、待て待て、ハルヒと古泉が帰っただけで、長門も朝比奈さんも帰ってないぞ。
あれ全部見られてたのか。カッカしすぎだ、俺。
「大丈夫ですか?」
「ええ、まぁ。大丈夫です」
「びっくりしましたよ。それに古泉君少し怖かった」
「明日あたりに謝っときます。どうも駄目ですね。今日は虫の居所が悪いみたいです」
それに、本当は俺、貧乏くじひいたとは思ってませんから。朝比奈さんがいるんで。なんてな。
「ええ、謝っといてください。古泉君にも涼宮さんにも」
そうだった。ハルヒにも謝らないと。いや、古泉のためにも今から謝りにいくか。
「気をつけて」
とは、長門。何に気をつけろと?
「古泉一樹の精神状態は今とても不安定。先走った行動にでないとも限らない。
例えば……」
そのときノックの音。扉が開くとそこには。

「例えば、何ですか?」
そこにいたのは古泉だった。
「さっき僕は言いました。あなたが『鍵』でないなら気絶するまで殴ってると。
でも、もう一つあるんですよ、僕が本心のまま振る舞える方法が。
そうです。機関から抜ければいいんですよ。
僕はもう義務に縛られてないんです。世界なんて知ったことではありません」
あぁ、なんかものすごく嫌な予感がする。ていうかあいついつの間に角材なんて持ってんだ? 
「落ち着いて」
「落ち着いてますよ?今までにないほど。と言うわけでどいてもらえますか、長門さん?
これは僕と彼の問題ですので」
「あなたのその行動は世界を危機に陥れる」
「確かに世界は危機に陥ります。涼宮さんが閉鎖空間を作ってね。でもそれはあなたたち、
情報統合思念体にとってはいいことでしょう?涼宮さんの力を解析する機会が与えられるのだから。
それに僕はもう、世界のことなんて知ったことではないんです。さっきも言いましたが」
「どいてやってくれ、長門」
「承服しかねる」
何だその古風な言い回しは?
「しょうがない、おい、古泉、屋上行ってろ。俺も行くから」
「必ず来てくださいよ?」
わかってるよ。

バタン、ドアが閉まる。
「な、な、な、なんであんな約束しちゃうんですか?」
「いつまでも感情を溜め込んでるのはよくないですからね。喧嘩でもすればすっきりするでしょう」
「駄目。行かない方がいい。今の彼は本気。三年分の不平不満が溢れ出ている」
そうは言ってもな。何とかなるさ。俺には古泉がそこまでマジになるところが
やっぱり想像できないんだ。いくら凶器持っててもな。

なんてバカなことを考えてたのがいけないんだろうな。
屋上に立っていた古泉は銃を持っていた。
おいおいおい、俺はどちらかと言えば殴り合いを想像していたんですが?古泉君?
先の角材はフェイクですか?そうですか。
「ほんとにね、機関てのは便利屋ですよ。涼宮さんの機嫌を良くすること意外は何でも出来る」
古泉は自嘲的に笑っている。
「ほんと木偶の坊ですよ。本来の目的の方がうまく言ってないんですから。
まぁ、僕にはもう何の関係もありませんが」
「そうか」
なんで俺こんな諦観してるんだ?まだ人生終わりにしたくないぞ?
「あなた僕が本気でないと思っているんですか?」
「思ってるんだがな、現実感がない」
「それは、僕が本気だと思ってないってことです」

そう言うと古泉は引き金を引いた。

最初に感じたのは衝撃だった。
その後激痛が走る。どうやら腹の辺りをうたれたらしい。
心臓とか、頭じゃなくてよかったと言うべきか。
「あなたにはこれくらいでいいでしょう。本当のところ僕はあなたに親近感を感じていたのですよ?
同じ涼宮さんに選ばれた人として。もっとも僕の場合は十数人のうちの一人として偶然選ばれただけですが」
古泉がなんか語っているが最後の方は俺の耳には入らない。
問題は最初だ。こいつはんて言った?
『あなたには』
つまり、俺以外にも標的がいると?
……。ハルヒか。当然そうなるな。
「では僕はもう一人のところにいかなければなりませんので」
畜生、やっぱりか。
止めないといけない。
何かないのか。
あたりを必死に探している俺の目に、さっき部室で古泉が持っていた角材が目に入る。
俺は角材を引き寄せて立ち上がる。
「待て……古泉」
古泉は無視して屋上の入り口を開けようとしている。
畜生。重い体をひきずって古泉に近づいていく。
「おかしいですね?鍵が開かない。あぁ、長門さんですか、なるほど……」
古泉は扉に向かって銃をぶっ放す。
鍵が壊れる。
「古泉っ!」
最後の力を振り絞って叫ぶ。
「何でしょうか?さっきからうるさいですよ?せっかくやめておいたのに、とどめをさしま……」

嫌な音がして目の前には古泉が倒れていた。
俺もそろそろ限界らしい。頭がくらくらする。薄れていく意識の中で
俺は屋上の入り口のところにいる長門と朝比奈さんを見たような気がした。

次に目を覚ますとそこは白い天井があった。
多分、病院だろう。
そう思って辺りを見回しても誰もいなかった。
ふむ。ハルヒあたりが寝袋で寝てるんじゃないかと思ったんだがな。
かたりと扉が開く。
そこには長門がいた。

どうやらあの後、俺と古泉は病院に運ばれたらしい。
長門の情報操作で俺は通り魔にうたれ、古泉はそいつを取り押さえようとしたが返り討ちにあった、
ということになっているらしい。
はっきり言えば今回古泉を責める気はさらさらない。
あいつも長門ばりに本心出さないやつだからな、溜まってた感情が溢れ出ちまっただけだろう。

長門が出て行ったのと入れ替わりに朝比奈さんが来た。
「もう、大丈夫なんですか」
「ええ、なんとか」
「長門さんのいうこと聞いてればこんなことにならなかったのに……」
それをいわれるとつらい。
「まぁ、起きちゃったもんはしょうがないですよ。ところで古泉の容態は?」
「二日くらい前に目を覚ましました」
よかった。打ち所悪くて死んでるんじゃないかと思ったからな。
「でもなんか考え込んでるんです。怖くてあんまり話しかけられないんです」
また変なこと考えてなければいいんだが。

朝比奈さんが帰ってからしばらくするとハルヒが寝袋引きずって入って来た。その顔は心なしくらい。
「よう、ハルヒ」
「へ?あ、あんたいつの間に目、さましたの」
「ついさっきだな。ところで今度は俺と古泉の病室に交互で泊まり込みか。忙しいこった」
「違うわよ!あたしはいつもあんたの所で寝て……ッ!」
それは、嬉しいね。
「忘れなさい!聞かなかったことにするの!」
わかった、わかった。首が絞まってるから。
「でも、古泉君が沈んでるのよね。話しかけても上の空だし」
朝比奈さんもそんなこと言ってたな。少し気になる。
「まぁ、あんたも目、さましたことだし、そのうち治るでしょ。じゃ、あたし帰るから」

しかし、古泉のやつが沈んでるってのはものすごく不気味だ。
この間の行動が一時の気の迷いならいいんだが、もしまだ収まってなかったらどうすんだ?
その可能性も怖いがもっと怖いのは責任取ろう、なんて考えてる時だな。
俺が目を覚ましたからその線はなくなるだろうが。

コンコン、ドアがノックされる。
開いたドアのところに立っているのは古泉だった。

その手にはナイフを握っている。

おい、おい。何ですかこれは。ひどいこともあったもんだ。
「やあ、目を覚ましたみたいですね。よかった」
よかったって思うならその危なっかしいのどっかに捨ててくれないか。
下手したらもう一回眠れそうなんですけど。永遠に。
「あぁ、大丈夫ですよ。あなたに危害を加えるつもりはありませんから」
その時の古泉の顔はヤバかった。目は明後日の方向を向いていた。
「ああ、これで安心して……」
そしてナイフを振り上げて……。

「やめろ!」
突然後ろの扉が開いてどっかで見たような青年が飛び込んで来た。
そして古泉を押さえた。
「やあ、裕さん。何しに来たんですか?」
「見ての通りだ」
「止めないでくれませんか?僕なりのけじめですから。いくら苛立ってたとはいえ、あそこまでしては……」
いやいやいや、俺が無事なのにお前が責任とって死ぬって何だ?どんなコントだ。
お前は俺の人生に『古泉一樹』なる少年の陰をつきまとわせたいのか?
そんなのこっちから願い下げだ。却下だ、却下。
俺は、率直に古泉に告げることにする。今のこの状況に対する俺の本音を。
「アホか、お前は」

その後、裕さんと俺による説得の結果、どうにか思いとどまらせることが出来た。
「では、今回の件はあなたに借り一ということで」
それも却下だ。あのとき俺がハルヒと喧嘩しなければこんなことにはならなかったしな。
「お前は俺を殴って、銃で撃ったな。で、俺はお前を殴って、頭部強打だ。
というわけで貸し借りゼロだ」
古泉のやつは虚をつかれたような顔をしていたが、弱々しく笑った。
男にそんな顔見せられても嬉しくない。えぇい、虫酸が走る、帰れ!この怪我人!
……俺もだがな。

病室から古泉が出て行ったのを見届けた後しばらく裕さんと話し込んでいた。
目が覚めてからの様子がおかしいということで、機関の人間がいつも古泉を監視していたらしい。
それと、どうやらこの一件で古泉が処罰されることはないらしい。
「やっぱり若い子にはこの生活はつらいんだろうな。君たちぐらいの年頃はもっと感情を出すべきなんだがな。
そうもいかない。かわいそうなことだよ」

その後、俺と古泉の退院記念パーティーが開かれた。
古泉はなんか申し訳なさそうな顔してるし、朝比奈さんも複雑な顔をしている。
当然長門はいつも通りの無表情だ。
そんな中ハルヒが口を開く。
「そう言えばまだ捕まってないのよね」
「誰が?」
「犯人!あんたを撃って古泉君を昏倒させた」
捕まるわけがない。てか、捕まったらそれは嘘だ。
「許しがたいわ。副団長と団員その一を傷つけておいてまだ社会的制裁を受けてないとは……。
決めた!今度の土曜日の市内パトロールは中止!代わりに犯人を捕まえるわ!
キョン、古泉君。人相書きの手配よろしく」
勘弁してくれ、捕まるわけがないだろう。
しかも、人相書きをかいたら俺と古泉が捕まっちまう。

俺が古泉の方を向くとそこには微苦笑スマイルの古泉がいた。

「「やれやれ」」

fin.
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