ある日、僕は目覚めると見知らぬ場所に居た。
正確に言えば、そこは自分の部屋だった。
しかし、部屋は真っ暗で窓の外から見える景色も色が消えたようだった。
部屋には妙な空気が漂い、まるでこの部屋を刳り貫いて保存したかのようなところだった。
僕はまだ夢の世界に居るのかと思い、頬を抓って見た。痛い。
何かがおかしい、僕は親を呼びに行く事にした。
しかし家の中には人一人居なかった。どの部屋を探しても父も母も誰も居ない。
家の外に出ても歩いている人はおろか、どの家にも人の気配がしないのだ。
とにかく誰か人を見つけようと辺りをく歩いていると、ドスン、と地響きのような音がした。
それはだんだんと数を増して行き、自分に近づいてくるようだった。
とつぜん、僕の目の前に巨大な影が現れる。
慌てて振り返るとそこには巨大な物が立っていた。数にして3匹。
それが僕を見下ろすように立っている。
僕は声を出し、逃げた。助けて、助けて、助けて。誰か助けて。僕を、僕を助けて。
巨大なそれは家々を踏み潰しながら僕を追いかけてきた。
僕は全力で走った、でもそれらの大きさは異常で、一歩踏み出すたびに僕に近づいてくる。
逃げても逃げてもそれらは僕の視界から消えず、僕を執拗に追いかけてきた。
僕が何をしたんだ、ここはどこだ、父と母は、みんなは、あれはなんだ。なんだなんだ。 

うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
どうして僕がこんな目に合うんだ、誰か助けろ、助けろ。だれか

  誰   か   、  僕   を   助   け    ろ   。

僕は道にへたり込み、泣いた。足が疲れて、動かない。
巨大なそれらはどんどん近づいてくる。逃げなければいけない、踏み潰されてしまう。
でも、腰が抜けて立ち上がることさえままならない。
なぜ僕がこんな目に合うのだろう。昨日母に夕食の文句を言ったから?心の中で父を卑下したから?学校で良い成績を取らなかったから?
僕は罰を受けているのか?そう、なのだろうか。
思い出せば僕はろくな人間じゃないように思えた。褒められないような事も何度かした。その報いが今僕に降りかかっているのだろうか。
だとしたら、あの巨大なものは神の使いで、僕に罰を与えて殺そうとしているのか。
死にたくない。嫌だ、死にたくない。死にたくない。死にたくない。殺されたくない。
ごめんなさい、ごめんなさい。謝ります。罪を償います。
良い子になります、だから僕を許してください。こんな世界からは出してください。お願いします。
必死に祈った。だが神は僕の願いを聞き届けてくれなかった。
巨大なものは僕の目の前来て巨大な足を上げ、今にも振り下ろそうとしている。
そして、風を切る音を立てて、足が振り下ろされた。

僕が到底出来そうも無い死の覚悟をしようとした、途端。赤い球体が突如として表れ巨大なものの足に突っ込んだ。
足の動きは止まり、逆に赤い球体に押されて後ろ倒れこんだ。物凄い音と、突風が吹き、僕は吹き飛ばされた。
僕は住宅の塀にぶつかり、頭を強く打ち付けた。一瞬意識が遠のく。
朦朧とした視界の端で、いつくもの赤い球体が巨大なものを取り囲んでいるのが見えた。
それらは巨大なものに弾丸の様に突っ込んだり、攻撃をしていた。
集中的に攻撃を受けていた一匹の巨大な物が倒れこむ、すると巨大なものは崩れるように消えた。
僕は助かった。そう思った、すると頭の痛みが思い出したように僕を襲い、僕は意識を失った。

僕が目を覚ますともう巨大なものは居なかった。その代わりに赤い球体がいくつも僕の真上を漂っていた。
今度はそれが僕を襲うのか?あ、あ、あ・・・。と恐怖の余り声にならない声が出る。
もう、駄目かもしれない。そう思って目をつぶろうとすると球体の1つが降りてきた。
それは僕に地近づくにつれ人の形を模していく。僕の目の前に降り立つと赤い人型は纏っていた赤い光をはじけさせた。
すると、そこには若い女性が立っていた。いや、まだ少女と言っても良いかもしれない。
僕をどうするつもりなのだろうか。女性はしゃがみこんで、手をばっと繰り出す。
僕はビクっと目をつぶると。顔に暖かい物が当たる。耳元では、

「大丈夫」

と女性が何度も優しく呟いている。それは僕に諭しかけるように、そして自分自身にも納得させる様な声音だった。
僕が目を開けると女性は僕の頭を撫でながら、僕の体をぎゅっと包んでいた。

僕は女性に抱きしめられ、その体の温かさに心の平穏を取り戻すと共に沸々と怒りが沸いて来た。
どうして、もっと早く僕を助けてくれなかったんだ。怖かった、死ぬかと思った。
それに行き成り現れてなんだよ。何が大丈夫だよ、ここはどこだよ。あんたは誰だ。
僕は女性の腕を振りほどき、睨みつける。

「もう怖がらなくても良い、大丈夫よ」

女性は言う。
どこが大丈夫なんだ、未だに辺りは真っ暗だし、真上には変なのが飛んでいるし。訳が分からない。
女性は僕が真上の球体を怖がっている事に気付いたのか、球体達に合図をする。
すると球体は点滅し、どこかへと飛び散っていった。

「さ、もう出られるわ」

女性の言葉と同時に、辺りが一瞬明るくなった。
空を見上げると幾つものひびが入り、そのひびから光が漏れ出していた

ひびは見る見るうちに空を広がっていき、ひびが空の全てを覆った、その瞬間。
辺りは完全に明るくなり、周りを見渡すとつぶれた家は元に戻っていた。僕は、元の世界に戻ってきたんだ。
車が一台やってくる。その車は僕と女性の前に止まりドアが開く。

「乗って」 

僕は女性に無理矢理車に乗せられた。まだ体はフラフラとしていて抵抗できなかった。
運転席には白髪の男性が乗っている。女性は「出して」と命令口調で言う。
女性は僕の隣に座って、僕の頭を撫でている。

「着いたら、全部話してあげる」

何を、話してくれるのだろう?

・・・
・・・・・・

「古泉、古泉、おいおきろ」

トランプを持った彼が僕の名前を呼ぶ。・・・昨日も神人退治をした疲れでうとうとしていたようだ。

「すいません、ちょっと疲れてまして・・・。では、僕はこのカードを引かせてもらいましょう」

カードはジョーカーだった。彼は僕の手札からカードを引き、上がった。今日も僕の負けだ。
それにしても懐かしい夢を見た。言うなれば、僕はあの時ジョーカーを引いたようなものだったかもしれない。
だが、それがあって僕はここにいる。夜中起こされる事もあるが、ある意味充実した日々を送っている。

おわり

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