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今日は暇だな。
何故かって?そりゃ俺のゲームの相手がいないからさ。
放課後に部室に行ったのはいいが、まぁなんということか、女しかいないわけだ。
谷口ならハーレムだとか言って喜ぶだろうが……生憎、俺にはハーレムとは思えないわけだ。
ぶっ飛んだ発言をするヘンテコ団長に、読書マシーンの宇宙人。それに、かわいいが未来人な3人に囲まれてるからな。
一人暇潰し相手がいないと俺は暇すぎる存在なんだな……。
なぁ、ハルヒ。たまにはオセロでもしないか?
「遠慮しとくわ。あんた弱そうだもん。それより!副団長の古泉くんは!?サボりなんて許されないんだから!」
……まぁ、こんな扱いだよな。弱いのは否定出来ないかもしれないが、古泉よか強いんだがな。
古泉は学校終わってすぐに出て行ったらしい。何か用事でも……「すみません。遅れました」
噂のニヤけ面がそこに立っていた。ハルヒをイライラさせるなと言ったのは貴様だろう。
「古泉くん……理由によっては罰金だけじゃ済まないわよ?」
幾分も困った様子のない笑顔でそいつは口を開いた。

「実はですね、インフルエンザの予防接種に行っていたのですよ」
……あぁ、あったね。そんなやつ。
「神聖な団活動を休まないためのちょっとした努力ですよ。どうです、みなさんも受けてみては」
おい、俺達を巻き込むな。
「……ふ~ん、いいかもね。じゃあ、いまから行きましょう!」
おい、勝手に決めるな。そもそも金はそんなに無いぞ。
「その点は心配ありません。僕の知り合いに……」
やれやれ、またそのパターンか。聞き飽きたぜ。
とりあえず残り二人の様子を伺うとするか。
長門は……まぁ、いつも通りだ。
そもそも予防接種なんて必要ないだろうが、一応付き合いとしてついてくることであろう。
もう一人、朝比奈さんは……震えながら俺に近付いてきた。
「キョ、キョンくん……あ、あの、予防接種って……針、で、ですかぁ?」
針以外に何があるんですか?……って聞いてもダメですね。未来は針じゃないんですか?
「あ……その、禁則事項です。だけど……針は怖いよぅ……」
本当に怖がっている朝比奈さんもかわいいな……。なんて思ってる内に行くことは決定したらしい。
「ほらっ!みくるちゃん、さっさと着替えなさい!キョンと古泉くんは部室の外で待ってなさい!」
……やれやれ。寒い中を予防接種を受けに外へ、か。やってらんねーぜ。
みんなで坂を降り、ゆっくりと歩きながら病院へ向かう途中、俺はずっと朝比奈さんが震えているのを見ていた。
「怖いよぉ……怖いです」
ハルヒにもこれくらいのかわいさがつけば、もう少し人気も出るだろうに。
「大丈夫ですよ。取って食われる訳じゃないですから」
そんなことを言いながら、肌寒い冬の道を歩いて病院に向かった。
「着きました、ここです」

古泉は何かのガイドかのように病院を手でさした。……予想はついていたが、やはり俺が入院した病院か。
「知り合いの方に開けてもらうようにしたので、裏口から入りましょう」
まったく……手筈のいい奴だ。


「さぁ、みんな引きなさい!」
何を引くかって?そりゃクジさ。
二か所でやるってんで、二人ずつ入る時の組み合わせをクジで決めるらしい。
早く終わらせりゃそれでいいんだが……。
とりあえず引いてみた。
印あり:俺、朝比奈さん
印なし:ハルヒ、長門
まぁ……ちょっとうれしい組み合わせだったりするな。
「うふふふふ……面白い反応を期待してるわよ、みんな!」
一応注射に反応するほどの年齢ではないことを伝えておくか?……いいか、さっさと済まそう。

朝比奈さんと並んで部屋に入ると、綺麗な白衣を着た女医さんがいた。
「どちらからなされますか?」
自分の隣りを見ると、俺を見上げて涙目でフルフルと首を横に振る天使がいた。
……しょうがない、先にやるか。
椅子に座り、左手をまくる。久しぶりだなぁ、注射なんてよ。
消毒用の脱脂綿で腕を拭かれ……いざ突貫!
「ひいぃっ!」
俺じゃないぞ。断じて俺の声じゃない。

口を抑え、涙を流しながら震える朝比奈さん。まるで殺人現場を見たかのようだ。……見たことないがな。
「はい、終わりました。しばらく押さえててくださいね」
お決まりのセリフを聞き、俺は席を立った。
さぁ、朝比奈さんの番ですよ。
「むむむ無理です!……ダメ、死んじゃうよぉ……」
女医さん苦笑い、俺は溜息。……やれやれ。
ほら、一瞬ですから。
朝比奈さんのやわっこい背中を押して、椅子に半ば無理矢理に座らせた。
「やめてやめてぇ!ダメ、いやぁ~!」
女医さん爆笑。
このままじゃ本当に警備かなんかが飛び込んで来そうだな……もちろん捕まるのは俺。強姦容疑で逮捕。
しょうがない……か。
俺は朝比奈さんの手を握って、目を手で覆った。
「大丈夫ですって。俺がついてます。俺の手にだけ感覚を集中させてください」
親が妹に言っていた言葉だが……こんなセリフ二度と言えないな。ハズいから。
「うぅ~、キョンくん……」
「はい、終わりましたよ。自分で押さえててください」
さすがはプロだな。朝比奈さんが止まった瞬間には針を刺してしまっていた。

朝比奈さんの腕を押さえてやりつつ、俺は溜息をついた。
「あ、あれ?終わり……ですかぁ?」
えぇ、終わりです。よく頑張りましたね。
「……キョンくん、ありがとう」
そんなやり取りを見てからか、女医さんが笑顔で口を開いた。
「うふふ……優しい彼氏さんですね?」
いえいえ、彼氏だなん……
「は、はいっ!ありがとうございます!」
おいおい。……まぁ、いいか。いつから彼氏になったのかなんて問わないでおこう。
この笑顔を見れただけで俺は充分さ。


結局、誰からも面白い反応は得られないまま予防接種は終わった。
ハルヒに見つかったらヤバいかな……まぁ、いいよな。
今日だけは世界も何も考えないで、朝比奈さんと一日カップルを堪能させてくれ。
二人で手を繋ぎつつ、いつもの喫茶店へゆっくり、ゆっくりと歩を進めた。


おわり


番外編~ハルヒと長門の予防接種~


「有希、あんたから早くやっちゃいなさい!」
「わかった……うっ」
「今!今「うっ」て言ったわよね!」
「……言ってない」
「いえ、言いましたね」
「だよね!古泉くん!珍しいもの見たわ……」
「……次は、あなた」
「オッケー!任せなさい……あれ?針ってこんな大きかったっけ?」
「はい。長門さんとまったく同じサイズですね」
「あ、あ~……ちょっと!痛くしたら死刑だからね!絶対よ!……あ~!」
「……お互い、彼には秘密に」
「うぅ~、わかってるわよ!……古泉くん、絶対言っちゃ駄目よ!」
「もちろんですよ、お二人とも」


おわり
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