――キョン視点――
高校2年の初秋。放課後。特に変わったこともなく何もすることがない
暇な俺はいつもどおり文芸部室で朝比奈さんはのお茶を飲みつつ、古泉とオセロをしていた。
長門は指定席で分厚い本を読んでいる。ハルヒネット見てマウスをカチカチしている。
またとんでもないこと思いつかなければいいんだがな。被害を受けるのはいつも俺だ。
朝比奈さんを見ると、妙に真剣な顔で俺と古泉の勝負を眺めていた。
ああ…マイスウィートエンジェルの真面目な顔もいいもんだな。
「どうしたんですか?よそ見してると負けますよ?」
相変わらずのにやけスマイルが言ってきた。
おまえ相手にこの盤面から負けるほうが難しい。そうゆうことはもっと強くなってから言え。
むしろ2年になってから負けた覚えがないぞ。オセロでも将棋でも囲碁でも。
その後、当然のごとく古泉に圧勝(盤面真っ白)したところで長門が本を閉じ、今日の団活は終わりとなった。
平和な一日だったな。
「キョン君、また明日」
朝比奈さんの甘い声を聞いて、俺は部室をあとにした。

帰り道、肌寒さを感じる秋風をうけながら俺は考えていた。
朝比奈さんに対する気持ちは最初はアイドルを見るような憧れの気持ちだけだった。
だが、SOS団で一緒の時間を過ごしていて朝比奈さんの優しさ、
ちょっとどじっ子なことなどいろいろな一面を知りだんだん惹かれていった。
朝比奈さんのことばかり考えるようになっていた。
日に日に思いは強くなっていったが告白することはできなかった。
朝比奈さんは未来人だ。この時間の人と付き合うことはできないと言っていた。 
それにいまはハルヒの観察でこの時代にいるが、いつか未来に帰らなければいけない。
『かぐや姫』
朝比奈さんはまさに現代のかぐや姫とも言うべき人。必ずくる別れにあらがうことができない。
そんな人に俺が気持ちを伝えても迷惑なだけだ。


――みくる視点――
「また明日」
部室から出ていくキョン君に、みんなにむかってわたしは言う。
わたしはこの時代の人間じゃない。
いつかは未来に帰らなければいけない。
それは一年後かもしれない、一ヵ月後かもしれない。もしかすると明日かもしれない。
帰還命令がでたら未来に帰らなければいけないから
明日はもう会えないかもしれない。
だからわたしはまた明日も会えるように願いをこめて言う
「また明日」

わたしはこの時間平面で恋をすることはできない。
未来が変わることになるかもしれないから。
だけど、好きな人ができてしまった。
キョン君は優しい。
困っときにわたしことを助けてくれる。
いつもおいしそうにお茶を飲んでくれる。
好きになってはいけないから、あまり仲良くしないようにしようって決めたのに。
それでも、キョン君のことが好きになってしまった。
気がつくとキョン君のことばかり見ていた。


――キョン視点――
週末の土曜日。今日はSOS団の恒例行事となっている市内探索の日だ。
「キョン君、朝だよ~~!」「ぐおっ」
今日も妹の強烈な一撃で目を覚ました。妹よ、もうちょっとやさしく起こすことはできないのか?
あまり痛くはないんだが、心臓に悪いだろ。
「えへへ~」
……………まあいいか。いや、よくないがな。
ん? 時計を見てみると6時をさしている。早いな。集合時間に余裕で間に合う時間だ。
「今日はミヨちゃんと遊園地に行くの」
ああ、そういえば昨日そんなことも言ってたな。
だが、俺まで早くおこさなくてもいいんじゃないのか?眠くて仕方がない。
「キョン君、いつも遅刻してるんでしょ?ハルにゃんがこの前会ったとき言ってたよ、殴ってでも早く起こしなさいって」
ハルヒ……余計なことを。妹にいらんことを吹き込むな。
まあしかし、たまには他のやつに奢らせるのもいいか。できれば古泉とか古泉とか古泉に。
それからゆっくりと準備をした。人間、余裕を持って動くもんだぜ。俺が言えたことじゃないが。
一時間前にでれば最初につくだろ。いや、長門はすでにいるかもしれないが。
あいつは何時間も前から、本を読み待っている姿が容易に想像できて恐い。

しかし、予想ってものは裏切られるようになってるんだよな。
………おいおいおい、どうしてもう全員いるんだ?いくらなんでも早すぎるだろ。
「今日は、危険な気がしたから集合時間を一時間前にしといたのよ!」
意味がわからん……お前はなんの危険を感じ取ったんだよ。
しかも俺はそんな話聞いてないぞ。
「おい、俺は「じゃあキョンの奢りね」
抗議しようとした声もかるく無視された。いつものパターン。

「私はアイスコーヒーね。みんなは?」
結局、俺が奢ることになりいつものファミレスにきている。
やれやれ。奢らないつもりできたから財布の中身が貧しいんだけどな。
「僕もアイスコーヒーでお願いします」
「……メロンソーダ」
「あっ…じゃあメロンソーダにします」
朝比奈さんと長門はいいとしても、古泉に奢るのは不本意だ。

班分けの結果、午前は朝比奈さんと探索することになった。
今日はついてるな。朝比奈さんを見ると、天使のような顔でこちらに微笑みかけてきた。
「真面目に探しなさいよ!遊んでたら死刑だからね!」
ハルヒは不機嫌そうな顔をしている。たまには何か違うことを言って
みてもいんじなゃないか?第一、こんな近くに不思議が転がってるわけがないだろ。
ハルヒはフンッと鼻を鳴して古泉と長門をつれていった。
まったくなにを怒ってるんだか。


「あ、あの!買い物に付き合って…くれませんかぁ……?」
ハルヒ達がいなくなったあと朝比奈さんが上目遣いで遠慮がちに聞いてきた。
朝比奈さん…そんな目でみられて断る男なんていませんって。
谷口とかが見たら鼻血出して気絶しちゃいますよ。
「いいですよ。何を買うんですか?」
「本当ですかぁ!新しいお茶を買ってみようと思ってるんですけど、キョン君の意見も参考にしたくて…」
まあ、お茶のことなんて分からない俺に聞いても意味がないとおもうが

というわけで駅近くのお茶っ葉専門店というところにきているわけだがにきているわけだが。
………
うん、未知の世界だな。
来店している人は女性ばかり、ラフな格好でいる俺は明らかに浮いて見える。
売っているお茶はよく分からない難しい漢字の名前のお茶ばかりだ。しかもけっこう値段が高い。
俺はいつも部室でこんなお茶を飲んでいたのか……
朝比奈さんは試飲したりしながらお茶を選んでいる。楽しそうだなぁ。
たまに俺のところにお茶を持ってきて感想を聞いてくる。正直、味の違いがわからなかった。

30分ほどあれこれと見てまわっていた朝比奈さんはうんと頷くと2種類のお茶っ葉を買って、俺たちは店をでた。
朝比奈さんはお茶の入った袋を胸に抱いて持ちながらにこにこしている。
まだ時間はあるな。次はデパートでも行くか。ここからすぐ近くにあるし。

それからの時間はデパートで過ごした。小物を見てまわったり、ソフトクリームを食べたり……
ふと、デートしてるみたいだと思った。休みの日に2人だけで買い物……まわりの人からみればデートのシチュエーションだ。
心なしか殺意のこもった視線をたまに受けている気もする。
確かに、こんな可愛い人が俺みたいなの歩いてたら殺したくもなるよな。
まあ、現実は違うんだがな。朝比奈さんも班分けが俺とだったから俺を誘っただけだ。
俺がそんなことを考えていたとき朝比奈さんがポツリと言った。
「……なんだかデートしてるみたいですね」
言ってから顔を真っ赤にして慌てて口をふさいでいた。
俺は朝比奈さんの突然の発言に頭がついていけず朝比奈さんの顔を見て、
人間ここまで顔を赤くすることができるのかなんてことを考えていた。
「ご、ごごごめんなさい!変なこと言っちゃって」
「い、いや気にしてませんから。落ち着いて。あ!そ、そろそろ時間だから戻りましょう!」
ようやく頭がおいついてきて、話題をそらすように言った。
実際、いそがないとないと間に合わない時間だった。遅れたらまたハルヒに文句を言われる。


――みくる視点――
毎週恒例の市内探索の日。午前はキョン君と探索することになりました。
今日は良いことがありそうです。
そういえば最近、駅の近くにお茶の専門店ができたんですよ。
今日はキョン君をつれてお茶を買いにいきたいな。やっぱり部室ではキョン君の好きなお茶をだしたいですよね。
お茶の専門店のなかはお茶のいい匂いでいっぱいでとってもいい雰囲気です。
良さそうなお茶をキョン君のところに持っていって飲んでもらったけど、
キョン君は全部おいしいと言うのであまり参考になりません。
結局、わたしの気に入ったお茶を買いました。
そのあとはデパートにいきました。デパートには未来にはない珍しいものがいろいろあるからよく出かけてます。
「なんだかデートをしているみたいにですね。」
言ってしまったあと慌てて口をふさぐ。考えていたことがおもわず口にでてしまっていました。
キョン君とわたしがデートをすることなんてありえないのに。
わたしはキョン君のことが好きになってしまった。だけど気持ちを伝えることはできない。
この時代の人と付き合うことは禁則事項だから。
それに……キョン君はたぶん涼宮さんのことが好きなんだと思うから。


――キョン視点――
「遅い!!」
他の3人はもうきていた。ハルヒが腕を組んでにらんでくる。
「まったく、どおしてあんたは一日に二度も遅刻するのよ!」
待て!朝に遅れてきたのはハルヒが時間変更を伝えなかったのが原因だろ!
「ん?みくるちゃんどうしたの?顔赤いわよ。まさか、キョン!!みくるちゃんに変なことしたんじゃないでしょうね?」
「するわけないだろ」
ハルヒが探るような視線でみてくる。古泉、その気持ち悪い笑顔をやめろ。にやにやするな。
「………まあ、いいわ。午後の班分けしましょう」


古泉、長門、朝比奈さんが印なし。てゆうことはハルヒとか。
俺がくじを引こうとしたらハルヒが慌ててくじをひっこめた。
決まったんだから引かなくてもいいでしょ!だそうだ。
「じゃあ古泉くん、有希、みくるちゃん!しっかり探すのよ!」
「キョン!いくわよ!」
おい、そんなにひっぱるな。袖がのびる、袖がのびるって。そしてなんでそんなにハイテンションなんだよ。

時刻は5時をすぎていた。古泉達は先に帰したらしい。
まったく、こいつは疲れるということを知らないのか?
数時間も動きまわっているのにまったく疲れた様子がない。
「なあ、休まないか?」
「もう疲れたの?だらしないわねぇ」
こんだけ歩いて、つかれないお前がおかしいんだろ。俺は人並みの体力はあるつもりだ。
「じゃあ、そこの公園いきましょ」


俺達は公園のベンチで自販機で買った飲み物を飲んでいる。いや、生き返るね。「ねぇ、みくるちゃんと何かあったの?」
俺が疲れた体を休めているとハルヒが突然聞いてきた。
「なんか、いつも恥ずかしがってるときと少し様子が違った気がしたんだけど」鋭い。女の感ってやつか
「い、いや、そんなことはないと思うぞ。」
そんなにじっと見るな。恥ずかしくなってくるだろ。 
「……じゃあ、私のことはどう思ってるの?」
「ぶっ!!」
飲み物を口から吹いてしまった。い、いきなり何を言いだすんだよ。
落ち着け、落ち着くんだ俺。
「いきなりどうしたんだよ?熱でもあるのか?」
。俺は動揺する気持ちをおさえてそう言った。
「バカ!私は真面目に聞いてるの!いいからはやく答えなさい!」
「あー、…………そのだなあ」
そんなこといきなり聞かれてもなかなか答えられないだろ。
「はっきりしないわねぇ!私はキョンのことが好きなの!あんたはどうなの!?」


…………これは告白されてるのか?されてるんだよな?
これが告白っていうのか?ハルヒらしいといえばハルヒらしいが。
普通は恥じらいながら『まえからあなたのことが好きでした』とかいうんじゃないのか?
告白されたのは今回が初めてだから知らないが。
公園にいた人が驚愕の表情でこっちを見てる。こんなことを大声で言ってるやつ見たら驚くよな。普通。
俺は朝比奈さんが好きだ。ハルヒのことは……どう思ってるんだろうな?
高校にはいってからハルヒとは多くの時間を過ごした。
ハルヒのおかげで普通の人ができないような体験をたくさんできた。
ハルヒがいなかったら俺はここまで充実した高校生活をおくれていなかっただろう。
ハルヒのことは俺にとって特別な人だと思っている。
でも、それは恋愛感情があるからではない
かけがえのない仲間ってところか。

「俺はハルヒのことを大切な仲間だとおもっている。」
思っていることを正直にハルヒに伝える。
「だけど……恋愛感情は持っていない」
ハルヒは俺の言葉を聞くと泣きだした。
「どうして?どうして私じゃだめなの?私はこんなにキョンのことが好きなのに!」
俺はハルヒの隣で黙っているしかなかった。こんなハルヒを見ているのは辛かった。


しばらく泣き続けたあと、ハルヒはようやく落ち着いてきた
「キョンはみくるちゃんのことが好きなんでしょ?」
ハルヒの発言にまたも取り乱す。なぜこの場面で朝比奈さんの名前がでてくる。
「やっぱりそうなのね……いつも部室でみくるちゃんばっかり見てるし」
俺のキョドった様子を見たハルヒは勝手に決め付けている。
ハルヒは普段のハルヒからは考えられないほど沈んだ顔をしていた。
「……ずるい。」
ん??なんだって?
「団長である私が告白したのに、雑用が本当の気持ちを隠してるなんてずるいわ!キョン!あんたみくるちゃんに告白しなさい!」
はぁ!?何言ってるんだこいつは?
「なんでおまえが告白したからって、俺まで告白しないといけないんだ?それに俺は朝比奈さんのことが好きなわけ
「なに?あんたは私に告白させておいて、自分は告白する勇気もないの?」
人の話を聞くきがないな。朝比奈さんは未来に帰ってしまうんだ。告白なんてできるはずがない……
「だから、朝比奈さんが好きなわけじゃないって言ってるだろ。
それに……もしそうだとしても、朝比奈さんほどの人に告白して上手くいくはずない。」

バシン

俺はハルヒに殴られていた。しかもグーで
「あんたなにあきらめてんのよ!やる前から失敗することばっかり考えて!
あとのことなんてかんがえないで好きなら好きって伝えればいいじゃない!
私はあんたにはっきり伝えたのに!あんたがそんなんじゃあ、告白した私がバカみたいじゃない!」
ハルヒはそう言って走っていった。ハルヒはまた泣いていた。
最後に見せた複雑な表情が印象的だった。

俺は……どうすればいいんだ?
ハルヒは自分がふられたのになんでこんなことを言うんだ?
それにしても痛いな。殴られた頬っぺたがひりひりする。

古泉には………話しといたほうがいいだろうな。神人と戦うことになるのは俺のせいだ。
俺はポケットから携帯をとりだして、古泉の番号を押した。
「はい、何でしょう?」
「古泉。今、大変なことになってないか?」
「何がですか?」
「例の閉鎖空間ってやつだ」
「閉鎖空間は発生していませんよ。」
発生していない?まさか?
「本当か?また特殊な閉鎖空間で発生してるのがわからないってことはないのか?」
「そんなことはないと思いますが……。
去年の閉鎖空間のように入れなくとも、発生はわかるはずですから。どうかしたんですか?」
「ハルヒに……告白された。」
俺は古泉に告白されたときのことを話した。古泉に驚いた様子はなかったが、
電話の向こうで古泉の雰囲気が変わった気がした。
「………そうですか。あなたはどうしたんですか?」
「断った。驚かないのか?」
「いえ、いつかこうなると思ってましたから。」
なんだ?実は超能力者には予知能力もあるのか?
「いつかこうなると思ってたってなんだよ?」
「涼宮さんを見ればあなたのことが好きなのは明らかでし
たから。気付いてなかったのはあなたぐらいですよ?」
全然気付かなかったな。ハルヒが俺のことを好きな様子を見せたことなんてあったか?
「じゃあ閉鎖空間が発生してないのはどうしてなんだ?」
………ハルヒは泣いていた。あの様子だと世界崩壊の危機になっていてもおかしくない。
「それは……おそらく涼宮さんもあなたに断られるとわかっていたからではないしょうか。
あなたの気持ちが自分に向いていないと気付いていた。
それでも、あなたに自分の気持ちを伝えたかったのでは?
涼宮さんもこの一年間でだいぶ大人なりました。覚悟はできていたのでしょう。」
覚悟か…‥
「あなたはどうするんですか?このまま自分の気持ちから逃げ続けるのか、それとも覚悟を決めるか?」

古泉との電話が終わったあと、俺は朝比奈さんに電話をかけていた。
ハルヒは自分が辛くなるにもかかわらず、俺のために朝比奈さんに告白しろと言ってきたんだ。
そんなハルヒの覚悟を俺が無駄にしたらだめだろ。だから、俺も覚悟を決めることにした。
「朝比奈さんですか?」
朝比奈さんの携帯なんだから朝比奈さんがでるに決まってるんだがつい聞いてしまう。
「キョン君?こんな時間にどうしたんですかぁ?」
「ちょっと話したいことがあるんですけど、今から会えませんか?」
「い、いまからですかぁ?」困惑したような声がする。
「はい。だめですか?」
「だ大丈夫ですけど……今日じゃないとだめなんですか?」
思い立ったら吉日とかって言葉もあるしな。
「今日、話しておきたいんです。」
「わわかりました!どこに行けばいいんですか?」
………
……


俺は川沿いのベンチにきていた。朝比奈さんに未来人であることを打ち明けられた場所。
あのときは本当に驚いた。長門の例があったとはいえいきなり『私はこの時代の人間じゃありません』だもんな。
朝比奈さんに告白するのならここ以上にふさわしい場所はない。

しばらくすると走ってくる朝比奈さんが見えた。かわいらしい走り方で
ゆっくりとこちらに向かってくる。やばい、緊張してきた。
「はぁ……はぁ、ご、ごめんなさい!遅くなっちゃって!」
「ぜんぜん待ってませんよ!いきなり呼び出した俺が悪いんですから、そんなに謝らないでください!」
「そう…ですか?」
朝比奈さんはそれでも申し訳なさそうな顔をしていた。

とりあえずベンチに座る。緊張で心臓がドクンドクンと鳴っているのがわかる。俺は朝比奈の息が整うの待ってから話しはじめた。
「今日……ハルヒに告白されたんです。」

「ええ!?ほほ本当ですか?」
朝比奈さんが驚きの声をあげ、潤んだ目でこちらを見つめてきた。
頭がクラッときた。その目は反則ですよ、頭の中が全部吹っ飛びそうだ。
朝比奈さんはすぐに俯いたからなんとか耐えきれたが。
「じゃあ……キョン君と涼宮さんは付き合うことになったんですか……」
「ハルヒとは付き合ってません」
朝比奈さんがまた驚いた表情でこちらを見つめてくる。その目からは涙が流れていた。


「え!?キキキョン君?」
俺は思わず朝比奈さんを抱き締めてしまっていた。
「ど、どどうしたんですか?」
「朝比奈さん!好きです!!」
「えええ!?」
もう考えていた台詞なんて全部忘れていた。
シンプルイズベスト。とにかく自分の思うままに気持ちを伝えるだけだ。
「今まで、朝比奈さんは未来人だってことを考えると告白することができなかった。
だけどハルヒに言われて気付いたんです。
俺はあとで後悔したくない。自分の気持ちに嘘をつくのはもうやめることにしました。
俺と付き合ってください!」
朝比奈さんを抱き締める力が自然と強くなった。

「わ、わたしもキョン君のことが……」
朝比奈さんは口をぱくぱくさせて、喉をおさえている。
朝比奈さんの涙が首筋落ちてくる。
禁則事項か……
それ以上、聞かなくても朝比奈さんの気持ちは伝わった。
朝比奈さんは小さな手を俺の背中に回して抱き締めてきたから。
「ご、ごめんなさい……ヒック…ど、どうしてもキ、キョン君のこと……って言えなくて……」
「大丈夫です……わかってますから」
朝比奈さんの泣き声がいっそう大きくなる。
「わたしも…ひぐっ…この時代に生まれてきてればよかったのに…ヒック…そうすればもっと……普通にキョン君と……」
朝比奈さんの気持ちは痛いほどよくわかる。俺はもう一度強く抱き締めようとして腕に力をこめた。

「え!?」
当然腕のなかの感触が消えた。
そこにいたはずの朝比奈さんがいなくなっていた。


――みくる視点――
集合場所にはもう涼宮さんたちはきていました。
涼宮さんがさっそくキョン君に何か怒っていたけど、わたしは
さっき言ってしまったことが恥ずかしくてよく耳にはいりませんでした。

午後は長門さんと古泉くんとですか。
涼宮さんはさっきまで怒ってたのに、今はすごくいい笑顔をしています。
やっぱり涼宮さんもキョン君のことが好きなんですよね……

「さて、どうしますか?」
涼宮さんとキョン君と別れたあと古泉くんが聞いてきます。
「とりあえず、この辺りを歩いて見ますか?」
「そうですね」
「…………」
長門さんが何も言わないのは肯定してるってことですよね?

それからは古泉くんと話ながらその辺を歩いていました。
長門さんはどこからか取り出した本を読みながら歩いています。
本を読みながら歩いているのに、誰ともぶつからないのってすごいですよね。
わたしなんて普通に歩いててもぶつかったり、転んだりするのに。
古泉くんは隣でいろんなことを話しています。
おもしろい話ばかりで自然と話に聞きいってしまいます。
小泉くんの機関では話し方の訓練もしているんでしょうか?

その後は歩くのも疲れてきたので、図書館に行くことにしました。
わたしはキョン君ほど長門さんの表情に詳しくはないけど、
それでも長門さんが生き生きしてるような気がします。

本を読んでいると、涼宮さんから先に帰っていいとメールが来たので、その場で解散することになりました。

「ふぅ……」
家に着いて、ベッドに腰をおろす。キョン君たちは今、何してるのかな……
………
……


携帯が鳴る音がする。寝ちゃってたみたいですね。
「朝比奈さんですか?」
携帯にでるとすぐにキョン君の声が聞こえてきました。
あれ?涼宮さんと一緒にいるはずじゃなかったのかな?
「今から会えませんか?」
い、今からですか?何かあったのかな?

キョン君がもうベンチに座って待っている。
川沿いのベンチ。
わたしが未来から来たことをキョン君に伝えた場所。こんな所で話って何だろう?

やっと息が整ってきたときにキョン君が話をはじめた。
「今日……ハルヒに告白されたんです。」
頭の中が真っ白になった。涼宮さんがキョン君に………
そっかぁ……そうだよね……涼宮さんもキョン君のこと好きなんだもんね…
やっぱり二人は付き合うことになるんだよね……
気付くとわたしは泣いていた。涙が流れてくるのを止めることができない。
ああ……わたしは本当にキョン君のことが好きなんだなぁ
「ハルヒとは付き合ってません」
わたしまた困惑した。
だって涼宮さんが告白したんならそうなるんじゃないんですか?

一瞬何があったのかわからりませんでした。
突然キョン君が抱きついてきていて……
「朝比奈さん!好きです!」
夢に見ていたような光景が現実に目の前にひろがっていることが信じられませんでした。
キョン君が……わたしのことを……
キョン君のことが好きでした。キョン君のことが好きで好きでたまりませんでした。
このときは自分の役目を忘れて、とにかくキョン君に気持ちを伝えたくでしょうがありませんでした。
でもどうしても好きって言うことができなくて…かわりにわたしはキョン君を思いっきり抱き締めかえした。
声にだすことできないけどキョン君はわかってくれた。
キョン君の温もりが伝わってくる。それだけでわたしは幸せだった。

え??突然TPDDに強制命令がくる。同時に時間移動が始まる.
久しぶりに見る部屋。TPDDを確認する。どうして?なんで?わたしはもとの時間に戻って来ていた。

わたしは訳がわからないまま呆然としていました。上司がわたしに近づいてくる。
信じられない説明をされた。
規定事項。あのときにわたしが未来に帰ることが決まっていた。

まわりから慰める声が聞こえる。こんなことをしておきながら同情するんですか?
「……お願いだから一人にしてください」


私もキョン君と同じ時代に生まれてればよかったのに。
キョン君と遊んで、デートして……結婚して幸せに暮らしていければ……。
未来のことになんか縛られずにキョン君といることができたら……。
後ろから近づいてくる足音が聞こえた。一人にして欲しいのに
「ごめんね」
すごく馴染みのある声がしました。毎日聞いている声。同時に睡魔が襲ってくる。
わたしは何があったのかわからないまま眠りについた。


――キョン視点――
目の前で起ったことが信じられない
何が起ったんだ?朝比奈さんが消えた?さっきまでここにいたのに?
そして俺はすぐに一つの考えに辿り着く。

時間移動か……。でもどうして今このタイミングで?
この答えもすぐにわかった。もしかして俺のせいなのか?
朝比奈さんが今日未来に変える予定はなかったはずだ。
あの人のことだ。未来に帰ることになったら絶対にいつもと違う様子をみせる。
でも、そんな様子はなかった。
とゆうことはなにか緊急で帰らなければいけない理由ができた。
あの状況でいなくなる理由なんて一つだけだ。
俺のせいで禁則事項を破ることになったんだ。
この時代にいないはずの朝比奈さんがこの時代の人と付き合うことになるのは重大な違反のはずだ。
それを俺のせいで……。
禁則を破ることになるとは思ったが、まさかすぐに未来に帰すなんて

くそっ!未来人達はどうしてこんなことができるんだ!
このまま終わらせることなんて絶対できない。
もう未来なんて関係ない。このまま朝比奈さんと会うことができない未来なんて、俺は認めない。
でもどうすればいいんだ……未来にいるんじゃあこちらからは手をだせない。

そうだ!長門だ!あいつなら何か知ってるかもしれない!
あまり誰かに頼るようなことはしたくないが、何の力もない俺ができることなんて限られてる。


長門の部屋の前に着く。同時に部屋のドアが開いた。
「入って。」
中から長門の声がする。
やっぱり長門は全部お見通しってわけか。
中に入る。
この一年間、ハルヒは長門の部屋が殺風景すぎると言って、
部屋にくるごとにいろんな物を置いてったから
中はいかにも女の子のといった感じの部屋になっていた。

「飲んで」
長門がお茶を持ってくる。俺はそれには手をつけずに聞いた。
「長門。わかってると思うが……朝比奈さんのことだ。」
長門は無表情のままでこちらを見ている。
「俺は朝比奈さんを未来に帰したくない。朝比奈さんも
こんなかたちで未来に戻りたいなんて思っていないはずだ。」
そうだ。朝比奈さんだってこんな結果になることを望んでいるはずがない。
「何か朝比奈さんを取り戻す方法はないか?」
期待をこめて長門をじっと見る。
「………私には何もできない。」
唯一の希望がなくなっていく……長門ができなかったら誰ができるんだ。

「本当に何もないのか!?何かできることは!?」
「………」
長門は黙ったまま何も答えない。待てよ…ハルヒの力があるじゃないか!
あの力を使えばなんでもできるはずだ!
「そうだ!ハルヒに力のことを話して、朝比奈さん
がこの時代で暮らせるように改変することはできないのか!?」

「それは推奨できない。それに危険すぎる」
「どうして!?」
「涼宮ハルヒの改変は本気で望まないと起らない。この場合、涼宮ハルヒが
本気で朝比奈みくるが戻ってきてほしいと考えることができるとは思えない。
また、改変能力を知ることで何が起るかわからない」
都合がよすぎるか……好きな人に他の人と一緒にいたいから
そう願ってくれって言われて素直にはいそうですかって思えるはずがないよな……
「……いきなりおしかけてきて悪かったな」
「いい」
長門は相変わらず表情に変化を見せない。
「……じゃあな」
長門ができないんだったらあとは……古泉の機関か。
だが長門が何もできないんだったら機関も無理だろう。
そもそも機関は閉鎖空間外では特殊な力は何も持ってないない。


帰り道、俺は泣いていた。自分の無力さにどうしようもなく情けなくなった。
俺にできることはないのか……いや、まだ何かあるはずだ

「キョン君お帰り~」
家に帰ってくる。自分の部屋に入りベッドに倒れこんだ。
「あ!そういえばポストにキョン君へって書いてある手紙が入ってたよ」
勝手に部屋に入ってきた妹が一枚の手紙を見せる。
その便箋には見覚えがあった。
妹の手から手紙をひったくる。中には可愛い丸文字で
"長門さんをつれてベンチにきて"とだけ書いてあった。
見間違うはずがないこれは朝比奈さんの字だ。
「なになに?ラブレター?キョン君もてもてだね」
「誰がポストに入れてったか見なかったか!?」
「わかんな~い。どうしたの?」
俺の尋常じゃないあせりっぷりに妹が心配そうな顔をする。
「ちょっと出かけてくる」
家から飛び出る。後ろから母親がなんか怒鳴っていたがスルーした。すまん。今だけは許してくれ。
自転車をフルスピードで走らせる。信号を無視してい
けば長門のマンションまで15分ほどで着くだろう。

長門はマンションの前に立っていた。最初からわかってるなら先に行ってくれてたら楽なんだが……。
とりあえず後ろに乗ってもらう。
「しっかり掴まってろよ」
またも自転車をフルスピードでとばす。

ようやくベンチが見えてきた。ベンチの横に人影が見える。
女教師のような服。遠目にもわかる完璧なプロポーションに長い髪。
予想どおり、そこには朝比奈さん(大)がいた。
そしてベンチに寝かされてるあの小柄な人は……
「朝比奈さん!」
ベンチには朝比奈さんが寝かされていた。もう会えないのではないかと
半ばあきらめていたのに……喜びがこみあげてくる。
「キョン君!」
朝比奈さん(大)がこちらに気付いた。俺はベンチに寝ている朝比奈さんに駆け寄る
「まだ起こさないであげてください。私を見ると面倒なことになるので」
「朝比奈さん!朝比奈さんは大丈夫なんですか!?」
ややこしいな……二人そろっているからどちらも朝比奈さんと呼ぶと変な感じがする。
かといってみくるさんなんて呼ぶのは恐れ多い。
「大丈夫です、心配しないで。あまり時間がないので手短に話します。」
朝比奈さん(大)が話しだす。
「この過去の朝比奈みくるからTPDDを消します」
は?TPDDを消す?TPDDは脳内に無形であるものなんだろ?消すことなんてできるのか?

「TPDDは本来消すことはできない。だけど長門さんの情報操作を
使えば消すことができるはずです。長門さん手を」
それまで黙って立っていた長門が手を差し出す。朝比奈さんがその手にそっと触れた。
「長門さんにTPDDに関するデータを送りました。これで消すことができるはずです。長門さんお願いします」
長門がコクッと頷き朝比奈さんの頭に手をかざす。
「TPDDの消去を完了した」
朝比奈さんがホッと胸をなでおろす。
話の流れが速過ぎてさっぱりわからない。結局どうなるんだ?
「それでTPDDを消してどうするんですか?」
「この私をこの時代で普通に暮らせるようにします。」
朝比奈さんがこの時代で暮らせるようになる!?
「本当ですか!?」
「はい。TPDDがなくなれば強制的に帰還させることはできなくなります。
あとの未来のことは……私がなんとかします」
朝比奈さんが……ん?でもまてよ。そうすると朝比奈さん(大)はどうなるんだ?
朝比奈さん(大)は未来にいるのだから朝比奈さんが未来に帰るのは規定事項であるはずだ

「でも……あなたはどうなるんですか?これは未来を変えることになるんじゃないですか?」
朝比奈さん(大)は一瞬俯いたが、すぐに顔をあげて言った。
「私はキョン君と別れたままになってしまった未来からきました。
あれから私はずっと辛い思いをしてきた。私は私に同じ思いをさせたくないんです。」
そのためなら未来が変わってもいい。
朝比奈さん(大)は今の朝比奈さんからは想像がつかないくらい強くはっきりと言い切った。
「朝比奈さん……」
俺は何も朝比奈さん(大)にかける言葉が見つからなかった。
「……じゃあ私はそろそろ行きます。長門さん協力ありがとうございました」
長門に向かって深々と頭を下げる。長門はほんの少しだけ頷く。
「それから…キョン君」
いつかの文芸部室での時のように朝比奈さん(大)が抱きついてきた。
「私を幸せにしてあげてね」当たり前じゃないですか!何があろうとも絶対に幸せにします!
それを聞くと朝比奈さん(大)は離れ、男なら誰もが悩殺されそうな笑顔を見せながら光とともに消えていった。

朝比奈さん(大)は未来でどうなるんだろう?少なくとももう未来人達の
組織にいることはできないだろう。でも……朝比奈さん(大)の目に迷いはなかった。
俺が彼女のためにできることはこれから朝比奈さんを誰よりも幸せに過ごすことだな。

朝比奈さん(大)が未来に帰ったからもう起こしてもいいだろう
「朝比奈さん!起きてください!」
朝比奈さんの肩を掴みゆっくりと揺らす。朝比奈さんは丁重に扱わないといけないからな。
「ふぇ……」
可愛らしい声をだしながら起き上がる。俺と目があった。
目を擦る。俺を見る。また目を擦る。
「ふぇぇ!?キキキキョン君!?どどどうして未来に……あれ?ここどこですか?」
手を胸の前にだして震えている姿はまさに小動物といった感じだ。
こっちがビックリするぐらいの驚きかた。まあ、状況を理解
できないのもしょうがないか。辺りをキョロキョロと見回している。

「ここは未来じゃありませんよ。もう未来に帰る必要もありません」
そう。朝比奈さんはこの時代の人間として暮らしていくことができる。もう未来に縛られなくてもいい。
朝比奈さんはキョトンとした表情になる。あたまの上に疑問符が10個くらい浮かんでそうだ。
「えっと……それって……どうゆうことですか?」
「ずっとこの時代にいられるってことですよ」
頭の上の疑問符が数えられないほどに増えたな。間違いなく。
「で、でも未来のことは?」
朝比奈さん(大)はきっとうまくやってくれるだろう。
「問題なしです」
説明を省いてる俺が悪いのだが、朝比奈さんは疑問を続けようとする。
「でも、でもどうして……」
最後まで言わせずに抱きよせる。いきなり抱き締めるのは今日、二度目だ。
あったかい。朝比奈さんの体温が伝わってくる。
「大丈夫です……大丈夫ですから」
それ以上何も言わせなかった。

しばらくすると啜り泣く声が聞こえてきた。
本当に朝比奈さんはよく泣く人だな。涙でその素敵なお顔がくしゃくしゃになってますよ。
「だって…ひぐっ…もう…ヒック…会えない思ってたのに……それに…ヒック…キョン君だって……泣いてるじゃないですかぁ」
これは不覚だ。俺も人のことを言えないな。
今の朝比奈さんの魅力はどんな比喩を使おうとも表現することはできない。
ただ単純に可愛く、綺麗だった。
「キョン君……大好き」
朝比奈さんがゆっくりと顔を近付けてくる。そのまま俺たちは唇をかさねあわせた。

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