『God knows』

~10章~

3人に事情説明と飯を奢り、今に至る。
「あんたら……同棲は早いんじゃない?さすがに。」
「まぁ…な。だが親もいるし、俺がヘタレなのはお前もよく知ってるだろ?」
「……ま、そうよね!心配したらお腹空いたわ、メニュー取ってちょうだい!!」
おい、まだ食うのか。
とは言えずに、俺は黙ってみくるさんを見てみた。
「ふぇ?ど、どうかし……か、顔にな、何かついてますか?」
「え!?あ、いや…見とれてました。」
「ちょ……キョ、キョンくん!は、は、恥ずかしいですよっ!」

「おやおや、僕達は居ようが居まいが関係ないようですね。」
「………邪魔に…なってる?」
これがSOS団のノリだ。
弱みを見せたら一気に来るんだよ。
「「やれやれ」ですか?」
古泉……お前何度目だ、畜生。


とりあえず、この日は開放された。
別れ際にハルヒが、
「みくるちゃ~ん!今日の夜の感想文、書いてきなさいよ~!!」と叫んだ。
ふざけんな、なんの感想文だ。
……一人想像し過ぎて固まったじゃねーか。
「あ~、みくるさん?帰りましょうか?」
「………は、はいぃっ!!か、かか帰りましょう!」
まったく、どうしたもんかね。


家に帰ると、食事は出来ていた。
まぁそこからしばらくは食事をしながらのみくるさんへの家族の質問が続いていた。
「しっかし……いきなり二人で寝るなんて、若いって良いわねぇ~。」
ブフッ!
俺はご飯を噴き出した。みくるさんは何も口に入れてなかったようだが噴き出した。
「な、なにいってんだよ!別にいいだろ!」
「あっははは!キョンくんも、みくるちゃんも顔、あっかーい!!」

妹よ、お前にやる菓子は無くなったぞ。
「~~~~っ!もう飯はいい!ご馳走さま!」
俺は上に上がって行った。

一人で二階に上がった俺は、ベッドに寝転がった。
…しばらくすると人の上がって来る音が聞こえてくる。
「キョ、キョンく~ん……お、おいてかないで………。」
しまった。
そういえば完全に放置してしまった。
「あ、すいません。みくるさん。ちょっと、恥ずかしかったもんで……。」
みくるさんは俺の腕を枕にして、俺の横に寝転がった。
顔が近い、顔が近いよ。
「もう……、わ、わたしも…は、恥ずかしかったんですよぉ?」
みくるさんが近付いて、俺を横から抱いてくる。
と、吐息が当たっております。
「み、みくるさん…。そんなに近いと……襲っちゃいますよ?」
「あ……え?………あのぅ…ど、どう…ぞ…。」
はい?
今、この人なんて言いました?
「み、みくる……さん。意味…わかって言ってます?」
「あぅ……は、はい……。キョ、キョンくんに…なら……大丈夫、です……。」
顔が真っ赤だ。たぶん、俺も真っ赤なんだろうな。
俺はみくるさんに覆い被さった。

「う……あ……。」
みくるさんは顔を真っ赤にしたまま、ギュッと目を瞑っている。
……こんな顔見せられたら出来ないよな。
「んっ…………えっ?」
俺は上からキスをした。
短くて、唇を重ねただけの幼稚なキスを。
「あ、あの……キョン…くん?」
「そんな顔したら、出来ないですよ。……俺も人並みの理性はありますから、へへへ。」
みくるさんは少し安堵の表情を浮かべている。
「あ……、ご、ごめんなさい。……ほんとはね、こ、怖かったの…。」
「無理はしないでいいですよ。…俺は、ずっとみくるさんを好きでいますから。」
「キョ…キョンくん……大好き…です……。」
それから、30分程、俺達は喋りながらキスをしたりした。合計12回くらいだったかな。

コンコン。
ノックの音がする、誰だ?
「キョンく~ん!みくるちゃ~ん!遊んで~!!」
妹か。
「おう、入っていいぞ。」
「えへへ~、みくるちゃんもシャミと遊ぼ!?」
「え……は、はい!遊びましょう!!」
と、まぁここからは俺を無視して2人と1匹で遊んでいたわけだ。
しかし、妹よ。
ちゃんとノックをする辺り、最低のマナーは知っていたんだな。兄ちゃんは嬉しいぞ。

一通り遊び終わった2人と1匹。
妹はみくるさんと風呂に行き、俺はシャミセンと部屋に取り残された。
「なぁ、シャミセンよ。お前はいいな、悩みが無くて。」
「……ニャア。」
やはり、都合よく喋りだすなんてのは無いか。
「あ、あの~……。」
「のわっ!!み、みくるさん、いつからそこにっ!?」
「つ、ついさっきから……です…。シャ、シャミセンさんは…し、喋りましたか?」
聞かれていた、ハズい。
「あ、あ~……俺、風呂入って来ますっ!」
と言って、逃げた。
しかも風呂に行く直前、親に、
「みくるちゃんはアンタの部屋で寝てもらうわね。昼間も一緒だったから問題無いでしょ?」と言われた。
この親は俺をなんだと思ってるんだよ。

風呂から上がり、俺の部屋に行くと……何故かみくるさんが泣いていた。
「ちょっ……どうしたんです!?」
「あ、キョン……くん。な、なんでもないです……。」
これだけ泣いてて何もないことはないだろう。
「大丈夫、大丈夫ですから、なんでも話してください。」
俺はみくるさんを抱き寄せながらそう言った。

まったく関係無いが、うちに来てから触れ合うことが多くなったな。
……いや、ただそれだけだ。
「い、いまですね……わたしが卒業だなぁって……ぐすっ、思ってたら…うぅっ、え、SOS団のみんな…ぐすっ…会えなくなっちゃ……えぐっ…。」
…要約すると、卒業することでSOS団に会えなくなるから悲しくて泣いてるってことだろうな。
「わ、わたし……ど、どうしよう……ぐすっ、は、離れたく…ひぐっ……ないぃっ!!」
「みくるさん……。」
俺はしばらく、泣きやむまで頭を撫でてやった。
《離れたくない》……この言葉に答えを出してやることが出来ない俺を、ふがいなく思った。

「も、もう…大丈夫です。お、落ち着き…ました……。」
みくるさんは顔を上げて微笑んだ。
「わ、わたしって……ワガママ、ですよね?ぜ、全部…手放したくない……なんて、えへへ……無理、なのに。」
俺はみくるさんを強く抱き締めた。
「すいま…せん、俺、なんの役にも立たないから……こんなことくらいしか出来ないです。」
言い終わると、俺はキスをした。1分程続く、長い、大人のキスを。

「ん、ぷはぁっ……。ほんと、すいません……全部手放さない方法、これから一緒に探しましょうか?まだ、卒業までは時間があります!」
「はい……。で、でも、もう3分の2は……離さないように、掴まえた気がします……。」
言い終わるや否や、みくるさんが俺にキスをしてきた。
たどたどしい、子どものような、大人のキス。
俺も、3分の2は掴まえたよ、《幸せ》を。
「ぷはぁ……。キョ、キョンくんに話したら、全部、楽になっちゃった…。ふふふ…不思議な人、です。」
「そうですか。ま、俺より不思議な人はたくさんいますよ。……俺達の近くにはね。」
「うふふふふ、そうですよねぇ。みんな、不思議です。」

と、まあこんな夜を過ごして、俺達は1つの布団で寝た。
……まだやっていない、断じてやってはいないぞ。


それからの毎日は去年の如く休みの無い夏休みを過ごし、
秋の文化祭では映画とバンドの二足の草鞋を履いた。……さすがに無理があったな。

俺達は、まるで、みくるさんが卒業する事を認めないかのように遊び続け、冬休みを越して……3学期を迎えた。

~10章・終~



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