『God knows』

~2章~

何故この場面で俺はデートに誘われてるんだ?
確かにおいしい誘いだ。
北高生の憧れの的、朝比奈みくるにデートしてくださいなんて言われたら……なぁ。
それでも疑念が出るわけだ。
「や、やっぱりダメ………ですかぁ?」
朝比奈さんは涙ぐみながら上目遣いで俺を見てくる。
正直、騙されても悔いはないと決めた。
「いえ!いいですよ!じゃあ次の土曜は団活があるから、日曜でどうですか?」
朝比奈さんの顔がパアッと明るくなった後、安堵の表情を浮かべた。

「ほ、ほんとですかぁっ!?よかったぁ……です…。」
真意はわからんが、俺が出来る範囲で、この笑顔を無くさないように努力するか。
「あ、でも……詳しい予定はまたメールで決めませんか?わたし、長門さんにいろいろ……相談したいん…です。」
それもそうか、こう見えてショックは大きいはずだ。
「長門、出来るだけ、朝比奈さんの力になってやってくれよ?」
と俺は言った。
長門は小さく頷き、
「わかった。」と一言。
俺はその場で2人と別れた。

家に帰り、俺は悩んだ。
「謎だな……。」
朝比奈さんが俺を?まさかな。
いや、でも……。
と、考えていると、まだマナーモードのままだった携帯が震えだした。
「誰だよ、大した奴じゃなかったら無視するぞ。畜生」
と独り言を言い、ディスプレイを確認する。

《着信・涼宮ハルヒ》
……珍しいな。
あまり待たせるとまた『罰金!』とか言われそうなので取る。
ピッ。

「遅いわ!あたしが電話したら1コール以内に取りなさい!じゃないと次から罰金だかんねっ!!」
「お前……1コールってなぁ。それよりどうしたんだ?団活動についてか?」
「違うわ、みくるちゃんの事よ。」
そうか、あんな質問をされたのはハルヒだからな。心配なんだろう。
「朝比奈さんが……どうしたんだ?」
「うん……。あんた、あたしの事好き?」
俺は携帯に向かって噴き出した。
「お、お前いきなりなんてことを聞いてんだ!!」
「あ、ごめ~ん!勘違いしちゃった?あははははっ!」
……反撃するか。

「………ったく。お前は俺のことを一番大事な友達って言ったらしいな。恋人とかより、もっと、もっと大事なんだっけか。」
今度は電話口からハルヒが噴き出す音が聞こえた。
反撃成功。
「あ、あ、あんた!それどこから聞いたのよ!!」
「まぁ詳しい話は明日会う時だ。……俺もお前のことを思う気持ちは大体一緒だ。かけがえのない、《親友》と言い換えてもいいが、な。」
「そっか!安心したわ……。ねぇ、キョン。みくるちゃんね、多分あんたのこと好きだわ。」
………マジか?
と思う気持ちを抑え、冷静にハルヒに話した

「……そりゃないだろう。アレだけ人気のある人だぞ?俺なんかを相手にするわけ…「いい?キョン。」
ハルヒが割り込んで来た。
まったく勝手な奴だ。
「あんたはね、唯一あたしに認められてる人間なのよ?あんたには、他の人に無い妙な魅力があるの。」
……珍しくハルヒに誉められてるぞ。
明日は雨か……。
「多分SOS団にいる時にみくるちゃんもその妙な魅力に惹かれたのよ!!あたしが言うんだから間違いないわっ!!」
どんな理論だ。
とりあえず、今日デートに誘われたことは黙ってよう。
「それでねっ!」
ハルヒがさらに続ける。

よく喋る奴だ。
「あんたが誰を好きだろうがいいわ。有希が好きだとしても、ミヨキチちゃんだとしても!!ただね、それならそうとみくるちゃんに伝えなさい。自分の気持ちに、正直に……ね?」
ハルヒ……。
「あのな、ハルヒ。まず断っておくが、俺は小学生は専門外だ。そして、俺はきちんと朝比奈さんに対応するよ。自分の気持ちがわかったら、それを絶対に伝える。約束するよ。」
俺がそう伝えると、ハルヒは安心したようだ。
「よかった……。みくるちゃんは良い娘だからね、あんたにもきちんと向き合って欲しかったのよ。」

「ははは、お前も優しい奴だな、ハルヒ。俺はお前に認められてるんだから心配するなよ、な?」
とからかってやった。
「う、うるさいわね!それは忘れなさい!だ、団長命令よ!!」
「りょ~かいだよ、団長。それじゃ、また教室でな?」
忘れそうにないがな。
「うん、おやすみ。キョン。」
プツッ。


俺はハルヒとの電話を終えると、ベッドに寝転び、再びいろいろ考えを巡らせた。
どうやら、俺の思考回路はまだ答えを出しかねているらしい。

「まぁ……デートが終わってからだよな。全ては。」
と呟く。
妹が食事という事を伝えに来た。
俺は妹を抱きかかえ、階段を降りる。
「キョンくん、何か嬉しそうだねっ!」
「まぁな、いろいろ嬉しい事があったんだ。明日が楽しみだよ。」
そう、まずは明日学校に行ってからだ。明日………な。

~2章・終~


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最終更新:2021年01月09日 17:34