深夜というよりもう夜明け直前の寝室に人の気配がする


こんな時間に、そもそもこんな場所に
誰何しようとする声をさえぎるように

「おどろかしてごめんなさい」
なつかしいような声、だれだろう、おかあさん

女の人の声がつづく
「自己紹介はいらないでしょう、わたしはあなた、あなたはわたしなのだから」

訳が判らない、寝ぼけてるの私

明るさを増した空の気配は、その人物の映し出した

ぼけっとしてる私の顔がみえたのだろうか、その人は改めて話を切り出した

よく見れば私に良く似た人だった、でも、おかあさんよりはずっと若い

「わたしは朝比奈みくる本人です、あなたよりずっと将来の時間平面から今日は無理を
言って来ました、あまり長くはとどまれないの、私の話をよく聴いて・・・」

その人はゆっくりと 話をつづけた

「いまから数時間前に大きな時間震が観察されました。ただし、あたなはその時間震に
まきこまれたため、感知できなっかたと思います。調査の結果、その時間震の結果、
私たちのいる時空と今あなたのいる時空の接続は切れ、復帰できないだろうことが
判明しました。、詳しくは説明できないけれど双方の時空の接続が保たれるのは、
あと十数時間、明日にはおそらく、それぞれの空間を行き来することは出来なくなるでしょう

その時間震の影響は、以前涼宮ハルヒの引き起こした時間震の影響を取り消すかのように
作用しています、現在私たちの時空からはもっと過去の時空への跳躍も出来ようになりました
私たちの時空から、現在あなたのいる時空は無かったことになるでしょう、すでに公式記録では
私、いやあなたはこの時空に長期滞在している事実はありませんでした」

呆けた頭でその話を聴き始めた、禁則事項の制約もあっては、詳細はよくわからない
でも、話の流れ、なにより、話をするその人の表情から、なにか良くないことであるこは
伝わってきた、おもわず言葉を挟む

「それじゃ」

それをさえぎるかのように
「ええ、あなたには帰還命令がこの数時間のうちに強制コード付きで出されるように調整中です」

「でも、涼宮さんと彼 いや SOS団の皆は」

「現時点でははっきりとしたことは判りません、でもこの時空から分離した新しいそれには
涼宮さんはいらっしゃないようです」

「この時空の将来は」

「ごめんなさい、これも今時点でははっきりわかりません、この時空の未来を垣間見ることが
できない以上、なんらかの原因で時空自体が消滅している可能性も否定できません」

「それじゃ」

「これは規定事項です、私は現在、あなたの前に存在することが、なによりの証拠であること
あなたも理解できますね」

その声になにも答えることはできなかった。ただ唖然とした顔がそこにあったのだろう

「少し時間が必要だと思います、だから無理いってこのタイミングで来ました。 明日いやもう
今日か、夕方にもう一度、迎えに来ます それまでに」
それだけ言い残すとその人は来たときと同じように静かに消えていた

残された時間で、私は一体なにができるのだろうか

いづれは、皆と別れることになることは理解していた、でもこんなに急に、しかも、皆の安否が
わからない状態で別れることになるとは露にも思っていなかった
理由をつければまたこの時間平面に、彼と会えるとおもっていたのに

運命

私はすっかり明るくなった、空を見上げてそんなことを思い浮かべていた

街がいつもの喧騒を取り戻すまで、まだ少し時間があるだろう

ずいぶん呆けていた気がする
とにかく、今の自分にできることを考える
SOS団の皆に会う
3年になって、SOS団の活動もすべて参加してなくなった久しいけど
明日、いや今日は土曜日、きっとなんとかなる

とにかく、長門さんと古泉君とは状況を共有したい、
一体なにが起こっているのか、彼への連絡はその後

携帯電話を手にとって、まだ連絡をとるには早すぎる時間だと気がつく

そのときにいきなり 非通知着信


あんなことがあったせいか、あまり疑いもなく出てしまう

いきなり
「長門有希」
「長門さん !?」
「よかった、お願いがあります、今日あなたと古泉君と会いたい」
「了解した、今日のSOS団市内探索ツアーの午前中の組み分けを調整する」
「集合時間は9時、あたなの参加に関しては事前に情報操作を施す」
「あ ありがとうございます」
「ほかに」
「いえ、十分です、あ 話の詳細は、古泉君と一緒の時に」
「わかった」

そういうなりいきなり電話は切れた、ひょっとして長門さん、私のこと覗いてません?
まあ、話は早くて助かったけど、こうゆうとこはやっぱり苦手だ

とにかく、9時の集合時間まで時間ができた

時間ができてしまうとろくでもないことを考えてしまう

あの人のことを考える
あの人は、SOS団を見棄てる選択をした私
あの人が存在するということは、私もいつかみんなを裏切るのだろうか

でも、私に一体なにができるのだろう、この世界が消え去ろうとしているというのに
でも、ここで私だけ、未来に自分の居場所に帰ることが出来ない
そんなことをしたら、きっといつまでも後悔する
たとえ、涼宮さんや彼を救えなかったとしても
最後まで供にありたいと思う
彼が振り向いてくれなくても、共に時間をすごした者として記憶してもらいたい
うらぎりものではなく

この世界は私にいろんなものを与えてくれた、教えてくれた
だから たとえ世界が救えなとしても、自分で後悔はしたくない

だから あの人は、このタイミングで私に会いに来た

んー あんまりぐるぐる考えるのか、性にあってない、自分でもなに考えてるのか
だんだん判らなくなる
とにかく後悔はしたくない、それだけを心にきめて、集合場所へ出発する

いつもの、駅前の集合場所、なぜか、ずいぶん懐かしく感じる
そんな感傷にひたっている場合じゃないのに

「ひっさしぶり みくるちゃん」
「朝比奈さんお久しぶりです」
今日は 彼も来ている
さすがは、長門さん、久しぶりに参加する私に違和感はまるでない2人

「あとは、古泉君だけね」
古泉君が遅れている、なにか起きているのだろうか

長門さんはいつもと同じ、私には表情の違いがわらない
彼は判るらしいのがちょっとくやしい

「みくるちゃん、またむねが 大きくなったんじゃないの」
涼宮さんがお約束のように、私の背後にまわってくる

「駅前ですよぉ、はずかしいですよぉ」
いつものじゃれあいもなんか懐かしい

「おい、ハルヒ、いいかげんしろ」
彼が、またいつものように、とめに入ってくれる

「遅くなりました、おや、僕が最後でしたか」
古泉君が登場し、SOS団メンバーがそろう
古泉君に罰金の宣言をしない涼宮さんに彼はくってかかっている
こんな時間がいつまでも続くと思っていたのに

午前中の組み分けは長門さんにお願いしたとおり、私、古泉君、長門さん
そして、涼宮さんと彼

涼宮さんはいつもにましてテンション高そうな声で、彼を引っ張っていってしまった

ここで私たち3人はいつもの密談用カラオケボックスへ

昨夜から集合時間の直前まで慌しくしていたのだろう、少し焦心した顔で古泉君が話の口火をきった
「さて、一体なにがおきたのですか、率直なところをお聞きしたいです、長門さん、朝比奈さん
我々機関では昨日夜半から現在に至るまで涼宮さんの力の確認ができないいます、今現在も
情報の収集と確認で機関内部は恐慌状態ですよ」

「情報統合思念体は昨晩、惑星平面上で情報爆発を観測した」

「涼宮さん ですか」

「ちがう、その情報爆発は、かつて、涼宮ハルヒは生んだそれとは違い、虚数空間上の拡散した」

「えっと、どうゆうことになるんですか」

「今回の情報爆発によって、かつて涼宮ハルヒの起こした情報爆発は打ち消されている
そのため、今涼宮ハルヒには力が無いように観測されているが、それは間違い
涼宮ハルヒの力を打ち消し、隠蔽するような力が新たに発生しているのが正しい認識」

私も昨日、いや、今朝か、の話をかいつまんで、未来から見て、時空震があったこと
今時空が分裂しはじめ、私たちのいる時空には未来がないことを 2人に説明する。

「つまり、神の子たる、涼宮ハルヒの力に神の鉄槌がくだる、そんなところですか」

「ちがわない」

「まあ、とにかく お2人の情報に感謝します、前に彼に言ったことがあるんですが、
もし機関を裏切ることになっても、僕は一度だけSOS団に味方しますと、状況によっては
どうやらこの約束を果たさなければならなくなるようです、残念ですが」

「あと、朝比奈さんに、これは多分に個人的なお願いでもあるんですが、
あなたには、帰るべき場所がある、この時空に未来がないとしても、
ですから、あまり自分に責任を感じないでください、長門さんはどんな状況になっても
元に戻れるでしょうし、僕に関しては、この時空と心中するほか選択肢は無いんですから
SOS団、いや、僕にとって、これ以上あなたをこの時空にお引止めする理由は無いんです
まあ 未来なんて命あってのものだねですよ」

 古泉君の言葉に朝方の決意がぐらつくのが判る、変な顔してたんだろか 古泉君が
 言葉を続ける

「余計なことまで、お話してしまいました。 これから、僕は機関の方にもどります、長門さん午後の
フォローはよろしくお願いします」

 そういい残して、古泉君は店をでていってしまった。
 そして残るのは、唖然として顔の私と無口な長門さん これはきついよぉ

「わたしは、あなたの意思決定を尊重する 必要であればサポートを行う用意がある」

 長門さんの言葉にまたびっくりする

「涼宮ハルヒの力が観測レベルで無力化される状況が固定化されれば、情報統合思念体
は観測意義を失う、現在観測されている、時空の分裂は、あなたが思うほど、確実なものでは
ないと判断している」

 もう、みんな勝手なことばかり言って、
 朝の意気込みなんて、もう木っ端微塵である、

「午後、必要であれば、あなたと彼の時間を調整することは可能」

答えを躊躇しているうちに私の携帯に着信、もうお昼の集合の時間だ
えーい 後回し 長門さんと2人で集合場所へ

集合場所には、元気一杯の涼宮さんとかなり疲れている彼、
午前中いったい何してたんだろ、この人たち

長門さんがあの簡潔な科白で涼宮さんに古泉君の不在を告げている
よくあの分量の事情の説明が出来るもんかと思うが、最低限の意思疎通は
できているらしい、便利な人だ

そんなことを考えている場合ではない、後何時間あるんだろう、
あの人っていったい今日の午後何時に登場するんだ、聞いていないぞ

昼食後、午後は人数が4人になったので、涼宮さんのひと言で組み分けなし
なんで5人だと組み分けがあって、4人だと無いんだ、まあいい、でも
午後、彼と話をしたい

さて、その午後の行き先は、これも当然だが、涼宮さんの高いとこ行きたいって
ことで、展望スペースのあるビルへ

先ほどの3人での話しの内容を頭の中で繰り返す
実はわたしは、あの話をきいた今でも何が起こっているのか正確に理解していない
どっか、遠い国で起きた戦争、こうやって、SOS団のみんな、こめんね 古泉君は今いないけど
でいるとそんなことに思えてしまう
今朝のあれは、わたしは寝ぼけていただけ、そうだったらどんなにいいのか

いつものような陽気な涼宮さんの声が聞こえる
口ではなんだかんだと文句をいいながらも まんざらではない彼の声が続く
確かに、わたしがここにいて出来ることなど なにもないかもしれない
古泉君や長門さんのように彼らを護り戦う力はない
それより わたし自身が足手まといになる可能性も高い

どちらを選んでも わたしは後悔することになるだろう

そう思う

だとしたらどちらを選べばよいのだろうか

「なんか、おもしろそうな天気になってきたわね」
「不穏当な発言をする奴だなぁ」

さっきまで晴れていた空がにわかに曇ってきた、一雨きそうな按配
ここはやはりというべきか、雷までなりだした、舞台装置がそろいすぎじゃないですか
そもそも雷ってあまり好きになれないんですけど ひえぇー

「あ、かみなり、こっちも光った、なんか わくわくしてこない?」
「停電のほうが心配ではあるが」
「はりあいないわねぁ」

付き合いい切れないって顔で彼がこっちに来る

「朝比奈さん 大丈夫ですか?」
「はい、あっ、でもここ落ちませんよね」
何いってんだわたし

彼に面と向かってしまい なにもいえない わたしがそこにいた
多分彼に話を告げても、古泉君のように、私が未来に帰るべきだろうと
なんの根拠もないけど、そうゆうと思えた
そして、その答えを聞いてしまったら 帰らざるを得ないわたしがいることも明白だった

彼は、わたしが本気で雷を怖がっているのだと勘違いをしてくれたようだ

外は大雨、この雨の中さすがの涼宮さんも出てゆく気にならないのか、単に雷を眺めるのが
好きなのか、長門さんをお供に従えて、窓辺に張り付いている

長門さんは 雷、大丈夫なのだろうか?電磁波で誤作動とはしないのかしら
それはさておき

わたしには、あとどのくらい時間は残っているのだろう

ぼんやりしていた
涼宮さんの声でわれにかえる

「そういえば、みくるちゃんは、進学希望だよね、どこいくかきまったの?」
「ええ、一応、私立の4大を希望してます、まだ十分な成績でてないんですよ」
「東京とか考えてるの?」

なんかいつも以上に質問がするどい気がする、こっちの気のせいか

「いけたらなぁ なんて少しは、考えてますけど、ここを離れるのも」
これだとどっちの意味だ わたし

「可能性があるんなら、突き進むべきよね、SOS団とその団員は、常に そうありたいと
願っているわ チャンスがあるなら いいこと みくるちゃん、後悔なんてね 人生の最後
の3秒くらいで十分なの、そんな暇があるなら、じゃんじゃん突き進むべきなの 
そして 無事大学はいったら、SOS団卒業生としてじゃんじゃん遊びにきてね
卒業生は別格の待遇をかんがているから」
何を考えているのか今は聴きたいような、聴きたくないような

なにも聞かされえていない涼宮さんのセリフが耳に痛い
ってか、涼宮さん、すべてわかったいたりしません

刹那
轟音とともに照明が消えた

「なに」
「落ちたか」

どうやら、本気でどこかに落雷したらしく、ビルの電気系統に異常が生じたようだった
また午後の早い時間とはいえ、この悪天候、室内はかなり暗くなっている

不意に空間がゆらぐ、何がおきたの 一体

眼の前にあの人がたっている

「さあ 帰りましょう あなた いや わたしの本来の時間へ その時が来ました」

やはり朝の出来事は夢でのなんでもなかったんだ

「さきほどの落雷の影響か時空分離の速度が速まっています、いそいで
あなたは わたし わたしである あなたが帰還するのは規定事項、いわば運命」

その言葉を聴いて、わたしの中のなにかがはじけたような気がした

「いいえ、わたしは帰りません ここでなすべきことをします わたしはきっと
なにも出来ないでしょう、でも、何かが出来るからここにいるのではなく
わたしが ここにいて、皆と同じ時を過ごしたいから 」

「それは重大な規則違反」

そういわれれば、たしかにそう、でもそしたらなんで強制コードがでないの

「かまいません、事実過去にも、事故により元の時間平面に戻れなかった者も
いたはずです、わたしも同じ」

「ちがうわ、救う手段を持ちそれを看過することは罪、あなたはこの時間平面で彼らを
救うことはできないけれど、わたしは、今あなたを救うことが出来る その違いは大きい」

なにも出来ないこと、それが規定事項だっていうの、そしたらわたしのこれからって一体

「そんな」

「急いで、今限定的に時空のゆがみを利用した、ここは、わたしと あなただけの空間
でもこの処理はそう長くもたない」

本当に時間がないのだろう、その人に表情は次第にあせりの色を濃くしていた
でも なぜ、強制コードを利用しない
でも なぜ、事前にわたしに考える時間をくれた
でも なぜ、

「あなたは、後悔している ちがいますか?」

返事はない
わたしはくりかえす

「涼宮さん、SOS団の皆を見棄てる形で未来に帰ったあなたは、後悔している、ちがいますか
決まった運命なんて、ありません、わたしは微力ながら、この時間平面でせいいっぱいのことを
します、なにもしなかった、あなたと わたしは違う 運命なんてないんです わたしは、涼宮さんと
SOS団のみんな、いや彼と共にある道を選択します そう 同じ後悔をするのなら」

「そう」

しずかにその人は、つぶやくように

「時間です、もう後戻りはできないと思います 最後に言っておきたいことがあれば」

「おとうさん、おかあさんによろしく」

その人にそれだけを告げる
いってしまった、取り返しのつかないことをしてしまった
そんな思いが頭の中をめぐる

ふたたび空間がゆらぐ

「大丈夫ですか 朝比奈さん」
彼の声


「どうやら近くの変電設備に落雷したようです、復旧まで少し時間がかかるとさっきアナウンスが
あ、今はビルの自家発電で最低限の明かりは戻っています」

どうやら、わたしは、落雷のショックで少しの間、気を失っていたことになっているらしい

「朝比奈さんだけですね、まっとうな反応なのは、変な言い方ですが、安心します」
彼が不思議なことを言う

「ハルヒは、SOS団に対するテロだ、妨害工作だって騒ぎ出して、落ち着かせるのに一苦労、
長門にいたっちゃ、まるで無反応 古泉でもいれば、また違ったのかもしれないですけど まあ
そんなこんなで、後回しになっちゃってもうしわけないです、あ、もうハルヒも落ち着いてますんで
大丈夫です」

「こらぁ キョン、みくるちゃんとなに内緒話なんでしているの、こっちへきなさーい」

彼を怒鳴りつけている、涼宮さんの声を聴きながら、
わたしの選択が間違っていないことを信じて
わたしはゆっくりみんなのほうに歩き出した

間に合ったか
事前にセットしておいた強制帰還プロトコルによって わたしは わたしの時空に

そう、あの時のわたしがせめたように、わたしは、SOS団の皆を選ばない選択をした
自分の時間平面にもどってからのわたしは、有る意味抜け殻のようだった、人を見限ったわたしには
人を信じることも頼ることもできなくなっていた、冷たい人 それが今のわたしの評価だ
わたしに同じ道を歩ませてはいけない
その結果として今のわたしにどんな影響があるかはわからない
ひょっとしてこのまま、本来の時間平面に戻れないかもしれない
そしたら、あの時のわたしの伝言は伝えられないなぁ

自分に嘘はつかずに精一杯生きて
それだけを願って

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