私の名前は朝比奈みくる。私には人には言えない秘密がある。
実は、私はこの時代の人間ではない。この時代の遥か先の未来からやって来た未来人である。
こういうと頭のイタい子と思われるかもしれないが、事実なので仕方がない。
それでは、何故こんな原子力で電気を発電している化石のような時代に
私がいるのかそれには深い、ふかぁ~~い理由がある。

今から少し過去のこと、あ、これは私のいた未来でのこと。
そこで起こりえない事が起こった。それは、今から3年前(これはこの時代)より
昔の過去にどうしても遡れなくなってしまったのである。
私たちは混乱し、原因を究明したところひとつの原因にあたる存在が浮き上がった。
それが、『涼宮ハルヒ』である。彼女は過去に遡れなくなった時間振動のその歪みの中心にいた少女だ。
私たちは驚愕した。それもそうだ私たちは今より更に高い科学力も持っているが、
それでも、一人の人間が時間平面に干渉できるなんて未だに解明できていないからだ。
しかも、涼宮ハルヒにその自覚がないにも関わらずだ。

そのような、難しい理由で私はこの時代にいるのだ。平たく言えば涼宮ハルヒの監視係としてである。


しかし、この監視係という仕事は実は一癖も二癖もあるやっかいな仕事であった。
私が所属している、これは禁則事項に触れるので詳しくは言えないが、
簡単に説明すると時空管理局のような所である。
私はそこの下っ端、柔らかく言えば研修生のような立場の人間である。
では何故私のような下っ端が最重要人物である涼宮ハルヒの側にいなければいけないのか。
これには、語るも涙の理由がある。

表向きの理由では、ターゲットの行動や感情パターンを見るには身近にいた方が有利であるという理由である。
そのため、ターゲットと同年代に近いものから選ばれなければならない。
うん、ここまでは納得できる。キモ豚ハゲのおやじが高校生やってても不審なだけだからな。
実際ここまでの内容なら私は進んで仕事をしていただろう。
一人の少女を女子高生のふりをして監視をすることなど大した労苦にもならないだろう。
しかも、これはとても名誉なことであり原因の解明をしようなら鰻上りの出世街道まっしぐらである。
実際、私と職場仲間は申し込んでも良いかもね、などと気楽に話していたものだ。

そして、私は説明会に申し込んでいた。今思えば、この時点で気付くべきだったのだ…。


私は驚いた。説明会となっている会議場には何故か私しかいなかったのだ。
おかしい、この仕事内容ならば、私と同年代の人ならばこぞって参加していてもおかしくないはずだ。
私が嫌な予感にさいなまれていたその時、この仕事の担当者であろうと思われる女が入ってきた。

「ようこそ、朝比奈みくる」

悪夢の始まりだった。

詳しいことは割愛するが、ようするに私は嵌められたのである。
担当者の女…面倒くさい、ばばあは私の不倫相手のうちの一人の奥さんであった。
ばばあは、私が夫をかどわかした犯人として復讐するつもりでこの計画を練ったらしい。
私の友人を使ってまで、まったく用意周到なばばあである。
ここまでは、よくあることだ。人の恨みを買うことには慣れている。

「それで、私をどうする気なんでしょうか」
ばばあは、私がまったく動揺していないことに多少いぶかしんでいたようだが、話を続けた。
「別に取って食うわけじゃないわ。安心なさい。あなたには、お仕事をしてもらうだけよ」
「仕事?」

私の顔色が多少変わったことに気を良くしたのか、ばばあは続けた。
「そうです。あの張り紙に書いてあったようにあなたには、
涼宮ハルヒの監視として高校生に扮装して潜入してもらいます」

私は拍子抜けした。それのどこが復讐なのだ。まあ、過去に行くことにより多少生活のリズムが
変わったりもするだろうが、問題ないだろう。むしろ、後々のメリットのほうがでかいではないか。

「ただし…私たちはサポートしません」
ばばあの、一言により私の時間が止まった。






ゆうに1~2分は固まっていた私に、ばばあは裁判官が判決を下すように冷やかな声で言った。
「聞こえましたか?私たちはあなたの過去時間つまり20**年上での生活のサポートを行いません」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんでしょう?」
くわぁ、むかつく顔で聞き返してきやがって!
「サポートがないって一体どういうことなんですか!?」
「言葉通りの意味です。あなたが向かう時間平面において、私たち当局は必要最低限の
ことを除き、あなたのサポートを行わないといっているのです」

ちょっと待て、ちょっと待てサポートがない?身寄りもいないような時間平面状で
サポートがないだと?そんなことが許されるのか?
いや、あのばばあは最低限のサポートはすると言っていた。
意外と悪くない条件になるかもしれない。私はすがる気持ちでばばあに問い詰めた。

「さ、最低限のサポートとはなんでしょうか?」
ばばあは、にやぁと音がするような笑いを浮かべ言った。

「学校への入学の手続き、及び制服。そして、あなたの経歴の捏造です」

30秒待ってみた。ばばあは、何も喋らない。
私は恐る恐る確認する。

「他には?」
「ありません」
「生活の拠点となる住居は?」
「ありません」
「じゃあ、それを探すための金銭支給は?」
「ありません」
「そうだ!他に潜入する人はっ!」
「勿論いますが、あなたには教えません」

ブチンッ

私は耐えた。理不尽な命令によく今まで殊勝に耳を貸したものだ。誰か褒めて褒めて?
でも、もう切れます。

「ふっざけんなっ、ばばあぁあぁぁぁああぁ!!!!!」


耳をつんざく様な私の怒号。しかし、ばばあは顔色一つ変えやがらねえ。
それが、更に私の核融合を勝る怒りにさらに油を注ぎ込んだ。

「ふざけんな、ばばあ!そんな理不尽な指令受けるわけないだろがっ!」
「何故です?」
「ッッッ!!何故だあ!?お前脳みそにうじでも湧いてやがんのか!
そんな、理不尽な指令が通る訳ねぇだろうがっ!!」

私は言ってやった!これで、ばばあも心を入れ替えるだろう。

「通りましたよ」

「へっ?」

「だから、今あなたに言った指令は既に上層部に受理されています。
嘘だと思うなら、あなたのデバイスから確認しなさい」

私は、ばばあの言葉が終わる前に支給されている私専用のデバイスを取り出し指令を確認した。
その結果…

「…さ、最優先コード」
私の運命はこの時、決まってしまったのだ。


私は膝から崩れ落ちた。最優先コードつまり、絶対に完遂しなければいけない。
言うなれば、これは死刑判決のようなものだ、しかも最高裁。
だが、どうしても納得できないことがある。

「…何故?」
「はい?なんですか?」
「なんで、こんな馬鹿げた指令が通るんですか?」

私は顔を下に向けながら蚊の鳴くような声で、聞いた。

「情報統合思念体」
「えっ?」
「知っていますか?」
「は、はい。でも、それが何か?」
「話は最後まで聞きなさい。涼宮ハルヒ、ここからは彼女というけれど、彼女の周囲には
すでに、複数もの存在が介在しています」
「それが、情報統合思念体」
「そうです。その他にも、あの時代の非合法的な組織など多数が既に彼女の周りで、
彼女の動向を監視しています」
「それはわかりましたけど、どうしてそれがこの指令に繋がるんです!」
「わかりませんか?既に、情報統合思念体といった遥かに高次元な存在が介入してくる以上、
こちらも易々と手を出すわけにはいかないのよ」

ばばあの言うことはわかる、情報統合思念体については教本の中の知識としてだけだが、
それでも彼らの力は人智を超えていることを十分に理解しているつもりだ。
だから、余計なアクションを出来る限り起こさないように、このような無茶な指令が通ったのだろう。


そして、こんな勢力が密集する場所に好き好んで向かう猛者などいようはずがない。
言うなれば、目隠しをして地雷区域を散歩するようなものだ。自殺行為である。
これでは、誰も申し込まないだろう。
私は、嵌められたのだ。この目の前でにやにや笑いを止めないばばあの手によって。
しかも、最優先コードというギロチンまで用意されてだ。
もう私の言う言葉はこれしかない。

「わかったよ。やるよ、やればいいんだろ!こんちくしょうっ!!」
「はい、ありがとうございます」

まるで、宝くじの1等が当たったような笑顔で言いやがる。
どうせ、死の危険があるならここで殺すか?
いや、ここで手を出せば逃げれない。後でじっくりと計画をたてt

「出発は明日です。しっかりと準備しておいて下さい」
「ちょwwwwおまwww明日って」
「はい明日です。あ、衣服は持っていっても構いませんよ?
もちろんこれも最優先コードです」

私はもう言葉も発せなかった。
もう、いいだろ。さっさと部屋に帰ろう。

「あ、待ってください朝比奈みくる」
「なんだ、まだなんか用か?」
「TPDDの使用についてですが、これは申告制となります」
「どういうことですか?」

ここで、ばばあは今までで一番黒い笑みを浮かべて言い放った。

「つまり、あなたは私の許可なくしてもう未来には戻れないと言ってるんですよ」

今までで、最高のショックだ。ってことはあれか?私には未来という逃げ場もないと?
そういうことなのか?
死んだ。私は生まれて初めて神に祈った

「助けて」



―――――――
うぅ、朝か。また、あの時の夢か。
くそ、いつも忘れた頃にきやがる。これも、あのばばあの仕業じゃねえか?
ま、考えても仕方ないな。今日も仕事するか。

「あっ、今日の昼飯どうしよ」


私の仕事はまだ、終わらない

|