~~第51話~~特別編
もしバカな長門に遊園地に誘われたら


長門「……」ゴゴゴゴゴ
キョン「おお、長門。どうした? 無表情のくせになんかすごい効果音出してるな」
長門「三日も……」ゴゴゴゴゴゴゴ
キョン「三日?」
長門「三日もいなくなったというのに、あなたはついに一度も思い出さなかった……」
キョン「何のことだ?」
長門「あなたはわたしの言うことをなんでも聞くべき」
キョン「な、なんでだよ」
長門「わたしの希望する所に連れていくべき」
キョン「図書館にでも連れてけっていうのかよ」
長門「今度の日曜日に遊園地行きたい」
キョン「突然だな」
長門「後楽園遊園地であいつと握手したい」
キョン「ヒーローショーが見たいのか?……ってかぶっちゃけ東京は遠すぎるから無理だ」
長門「そう、じゃあ手近なしょっぼい遊園地でいい」
キョン「しょっぼいゆーな」

~~そして日曜日~~

長門「ここが……」
キョン「まあ、うちの近所で一番近いとこだな」
長門「近代的なゴミ処理施設」
キョン「違う、遊園地だ」
長門「わあい、とっても、たのしそうな、ところだなぁ」
キョン「すげえ心がこもってない感嘆詞だな」
長門「ネズミの親玉はどこ?」
キョン「いねーよ。ディズニーランドじゃねえって言ってるだろ」

キョン「それとな、長門。こういうところに制服で来るなよ」
長門「じゃあ、裸で来いとでも?」
キョン「そうじゃない。他にないのか? これ以外の服」
長門「ある、スクール水着」
キョン「水着を服に入れるんじゃねえ!」

長門「入場料、高校生一人2000円と書いてある」
キョン「やっぱりここは俺のおごりになるのかな……お金大丈夫かなぁ」
長門「心配しないで」
キョン「いいのか?」
長門「わたしは今日は一円も持ってきていない。迷う必要は無い」
キョン「お前……」
長門「どんどん遊んで細かいことは忘れるべき」
キョン「俺がおごってやったということは忘れるんじゃねえぞ」
長門「わかった。おごるという単語を忘れることにする。情報操作開始」
キョン「ダメだ! ますますバカになる!」

~~~

長門「まずは定番のジェットコースターから」
キョン「おい、お前、大丈夫なのか? 仮にも絶叫マシーンだぞこれ」
長門「確実に死ぬことが無いとわかっている物で恐怖など味わえない」
キョン「ほーう、強く出たな」
長門「実はあなたが一番怖がっている。神に祈るなら今のうち」
キョン「祈らねえよ」
長門「遺書ならわたしのと一緒に預かっておくけど」
キョン「遺書って……お前そこまで怖いのか?」

キョン「高校生二枚ください」
受付「はい、そこに並んでね」
長門「ビッグバンコースター……見せてもらおうか。その宇宙的パワーを」
キョン「うーん、そんなに期待されると、このジェットコースターがかわいそうだ」

ゴトンゴトン、シュゴー!!
キョン「あははは、なんじゃこりゃ。ビッグバンというには結構しょぼくないか?」
長門「………!!……!?……!」
キョン「まあ、宙返りもなければ急降下も最初だけだしな」
長門「……!!…………?……!」
キョン「おーい、長門さーん……。なんかQみたいになってるけど大丈夫か~?」
長門「怖くはない……話しかけないで……魂が抜ける」
キョン「こんな速度で抜けるか」
長門「降りる。そう、わたしは実はブラリ途中下車の旅をしたかった」
キョン「待て待て、戻れ、危ないから」
長門「おやおやぁ、阿藤さん、おいしそうな匂いにつられて途中下車。たはーっ(cv.滝口順平)」
キョン「阿藤快は幻覚だ。だから暴れるな」
長門「今降りれば、料金も安くなるはず。これはあなたのため」
キョン「ならんならん。先払いだから。立ち上がろうとするな」
長門「死んだら化けて出る」
キョン「死なないから、座ってれば死なないから」


キョン「もう大丈夫だぞ」
長門「うぅ……地上だ。この一歩は小さいが人類には卑猥なインポだ」
キョン「大げさすぎる。あと『偉大な一歩』だからな」
長門「……」ガクガクブルブル
キョン「大丈夫か長門。吐きそうか?」
長門「責任者呼んで」
キョン「無理だ」
長門「まさかここまで超新星爆発を如実に表現した乗り物だったとは……」
キョン「こんな小さなジェットコースターでそんなに怖がるなんてすげえよ、お前は」
長門「……喉が渇いた」
キョン「じゃあ、そこで待ってろ。ジュース買ってきてやるから。何が飲みたい?」
長門「ドクターペッパー」
キョン「そんな微妙な飲み物ねえと思うぞ……」
長門「白くてドロッとした飲み物」
キョン「そうか、じゃあ、待ってろよ」
長門「軽くスルーされた……」

キョン「ほら、カルピス。ドロッはしてないけどこれでいいだろ」
長門「……ゴクゴク」
キョン「落ち着いたか?」
長門「……実はたいしたことは無かった。あなたこそ二本の足で立つのがやっとのくせに強がらないで」
キョン「お前はさっきからずっと四つんばいだが立てるのか?」
長門「これは生まれたばかりの小鹿の真似。元々わたしの得意技」
キョン「初耳だ」

~~~~~

長門「あの無限ループは何?」
キョン「ああ、メリーゴーランドだよ」
長門「こんなところにミッキーが閉じ込められて……」
キョン「だからディズニーランドじゃねえって言ってるだろ」
長門「同じところをグルグル回ってて何が楽しい? 子供だましもほどほどにするべき」
キョン「まあ、そういうなよ。じゃあ別のところ行くか」
長門「何事も経験という言葉がある。百聞は一見にしかず。はぐれメタルは経験値10050」
キョン「素直に乗りたいと言え」
長門「あなたが乗りたいなら一緒に乗ってあげる」
キョン「かわいくねえな……」

~ぐるぐるぐるぐる~
キョン「あー、なんだか恥ずかしいな。こんなところ誰かに見られたら勘違いされそうだ」
長門「いい」
キョン「ん? なんだって?」
長門「なんでもない」


キョン「どうだった?」
長門「全然怖くなかった。むしろこの程度かと拍子抜けした」
キョン「あれは恐怖を味わうものじゃねえんだぞ……」
長門「こういう乗り物をもっと増やすべき」
キョン「最初と言ってる事が違いすぎだ」

~~~~~

長門「あのティーカップのようなものは何?」
キョン「そのものずばり、ティーカップだろ」
長門「知ってる。つまりあそこに注がれた大量のコーヒーの早飲み競争。ついに得意分野登場」
キョン「ちげえよ。あれは乗り物だ。中に乗って回って遊ぶんだよ」
長門「でもあれでは火傷する」
キョン「しねえよ。別にあそこにコーヒーが注がれるわけじゃない」
長門「なら安心。命の無事が保障された」
キョン「基本的に遊園地の乗り物でそこまで危険なものはねえよ」
長門「コーヒーは好き?」
キョン「ん? ああ、別に嫌いではないが」
長門「ならあなたは当然、なんとしてもあれに乗りたいはず」
キョン「お前が乗りたいだけだろ」

~ぐわんぐわんぐわんぐわん~
長門「周りすぎ。止めて」
キョン「バカ! これはお前がそのハンドルを回すからだ。止めたきゃもう回すな」
長門「やめられない止まらない」グルグル
キョン「う、うげ、こいつ何気に横回転に強いのか……き、気持ち悪くなってきた」
長門「勝った……。だが勝利と代償にいろいろなものを失った」
キョン「な、なんだよ……」
長門「吐く。ゲロゲロ」
キョン「や、やめろおー! 周りに飛び散る!」
長門「止めて……涼宮ハルヒの暴走を止めて……ゲロリ」
キョン「暴走してるのはお前だ! ハ、ハンドルを放せ! この! くそっしっかり握ってやがる!」
長門「目が回る……手が回る」
キョン「う、うげ、俺もつられて吐きそうだ」
長門「早くあなたもこちら側の世界に来るべき。きっと明るい未来が待ってるゲロゲロ」
キョン「し、死んでもいかねーぞ!」


長門「うぷ。くぱぁ……けろけろけろけろ」
キョン「ハァ……ハァ……。吐く前に止めろよバカ」
長門「違う。吐いてない。あれは蛙の真似、ハァハァ……」
キョン「蛙は口から嘔吐物をださねえ!」
長門「蛙は間違って変なものを飲み込んだときに胃袋ごと吐き出す。それを表現してみた」
キョン「お前は変なところだけ頭が良すぎなんだよ!」

~~~~~

長門「あれは何? あとあれは?」
キョン「……なあ、長門。もうそろそろメシにしないか? 俺疲れたよ」
長門「もう12時……主観時間の経過が大幅に短縮されている。何者かによる情報干渉があった模様」
キョン「時間がいつもより短く感じたくらいで人のせいにするな」
長門「熱くて太い長いいつものあの肉棒がしゃぶりたい」
キョン「フランクフルトだな。いい加減この単語覚えろ」
長門「あと、あそこで売ってる熱々のおいしそうな太くて長い棒もしゃぶらせて」
キョン「チュロキーか」
長門「他に喜緑江美里の髪の毛のような食べ物もあったら買ってきて」
キョン「焼きそばね」
長門「もしあったらあなたがよくオナニーに使うインスタント食品と、
 オナニーに使うやわらかい食べ物の味噌味を」
キョン「カップめんとみそ田楽か。それといいか、使ってねえからな! わかったけど使ってねえからな!」
長門「それにクラムチャウダーとペディグリーチャムと……」
キョン「食いすぎだ! 俺の財布は四次元ポケットじゃねえ!」
長門「ごめんなさい……つい……」
キョン「ん、ああ、ウソだよ。そんなに気にするなよ。全部買って来てやるって」
長門「ついうっかりデザートのことを忘れてた。クレープも買ってきて」
キョン「増やすな」

~~~~~~

長門「あそこで乗客がさっきからキャーキャー言いながら、上下運動を繰り返している乗り物は何?」
キョン「フリーフォール。ジェットコースターのときみたいになるぞ」
長門「同じ過ちを二度繰り返すほどバカではない。二度あることは三度ある」
キョン「格言のつかいどころを完璧に間違ってる」
長門「きっと今度はあなたに勝つ」
キョン「やめといたほうがいいと思うけど……まあ、一瞬だからいいか」

ゴウンゴウン……
キョン「うぉっ、たけえ! 結構ヤバそうだ」
長門「これのどこが怖いの? もしやこの乗り物の方がわたしの存在に怖気づいたか」
キョン「いや、まだだから。怖いのはこれからだから」
長門「高いところは全然平気。これならいつも登っている通学路の坂の方がよっぽど高い」
キョン「あんまりしゃべると舌噛むぞ」
長門「窮鼠猫を噛む。で、ネズミの親玉はどこ?」
キョン「だからここはディズニ───。」ガクン
シュゴーーーーー!! キャー!!


キョン「舌噛んだ……」
長門「舌切れた……」

長門「もう二度とフリーと名の付く物には近寄らない。フリーマーケットも行かない」
キョン「よっぽど怖かったんだな……」
長門「フリー雀荘も行かない」
キョン「行くな!」

~~~~~

長門「怖くない乗り物を教えて」
キョン「あの小さい車みたいのなら大丈夫だぞ」
長門「強姦と……」
キョン「ゴーカートだ」

キョン「これがアクセルで、こっちがブレーキ」
長門「これがアリアスで、こっちがズレータ」
キョン「違う。右がすすむで、左がとまる」
長門「宮尾すすむで、死骸がおさる」
キョン「もういい。とにかく乗って覚えろ」

ブルルンブルルンブッブー
長門「遅い」ゴン
キョン「お、おい、あんまり後ろからぶつけるな」
長門「わたしはフェラの十姉妹だ。何者にも前を行かせない」ゴン
キョン「フェラーリのシューマッハはもう引退したから」
長門「見よ、このドラフトテクを」キキキキー
キョン「ドリフトだろ。あー、すごいすごい」
長門「……マシンがわたしのテクについてこれなかった。パンスト」プシュー
キョン「エンストだろって……おいおい! ほんとに壊しやがった! ど、どうすんだよ!」
長門「さっさと素直に謝るべき」
キョン「お前が壊したんだろうが」
係員「どうしました」
長門「彼が弁償しますから、許してやってください」
キョン「なんで俺が悪いみたいになってるんだよ」
長門「じゃあ、わたしも悪いことにする」
キョン「違う! お前が全部悪いんだ!」
係員「あー、大丈夫ですよ。鍵が抜けてただけです。エンジンもかかりましたよ」ブルルン
長門「こうなることは最初から予見できた。それなのにあなたの慌てぶりときたら……フウ」
キョン「てめぇ……」

~~~~~

長門「あのプールの上に飛び込んでるゴムボートは何?」
キョン「ウィーターライドか……濡れるから俺はあまり好きじゃないんだけどな」
長門「濡れるのはわたしのほう。あなたは硬くなるだけ」
キョン「何を勘違いしてやがる」
長門「大きくもなる」
キョン「ならんならん」
長門「あ……でもあなたも少しは先端が濡れ」
キョン「いい加減下ネタから離れろ」

長門「あなたが嫌なら乗らない」
キョン「いや、別にお前が乗りたかったら乗ってもいいんだぞ?」
長門「あ、待って……あそこにいるのは……」
キョン「え? 誰かいた?」


喜緑「か~いちょうっ! アレに乗りましょうアレ!」
会長「ウォーターライドか。わたしは濡れるのはあまり好まないんだが」
喜緑「濡れるのはわたしだけですよ。会長のは硬く大きくなるだけ……」
会長「ば、ばか! よせ! 触るんじゃない!」

キョン「あいつらも来てたのか……」
長門「……こっちに気づかないほど仲良くしてる。ほっとこう」

喜緑「ねえ、乗りましょうよ~、乗せて乗せて~」
会長「君がどうしても乗りたかったら乗ってもいいが……」
喜緑「じゃあ、乗りまーす。えいっ!」ドスン
会長「私に乗るな! おい、人前でズボンを脱がそうとするのはやめろ! おい!」

キョン「……」
長門「……」


キョン「結局乗らなくていいのか」
長門「いい。制服濡れると明日から着る物が無いから」
キョン「いい加減、私服買えって」
長門「水着で来ればよかった」
キョン「それで来てたらもう俺帰ってたからな」

~~~~~

キョン「お、ヒーローショーやってるぞ。こういうの見たかったんだろ?」
長門「しょせん子供だまし。中に入ってる人もテレビとは違うただのバイト」
キョン「変身戦隊ドゴレンジャー? 知ってる?」
長門「知らない」
キョン「やめとくか?」
長門「何をしている。早く行かないと席がなくなる」
キョン「なくならねえよ……」


ナレーターのお姉さん「やあ、会場のよい子のみんな~、
 今日はドゴレンジャーのヒーローショーに来てくれてありがとね~
 みんなは毎週、変身戦隊ドゴレンジャーを観ていてくれてるかな?
 もし観ている子がいたら恥ずかしがらずに手を上げてみて~」

キョン「やっぱり席もまばらだな」
長門「……」

お姉さん「う~ん、少ないな~、地方のローカル限定のヒーローだからみんな観てないのかな~。
 でも、きっと最高のヒーローだから、気に入ってくれたら、
 毎週水曜の午後5時30分の放送を必ず観てね~」

キョン「楽しいか?」
長門「……わからない」

お姉さん「もうまもなく、正義の味方ドゴレンジャーがみんなのために来てくれる予定になっていま~す」
長門「性技の観かた……ゴクリ」
キョン「違う。正義の味方だ」
長門「つまりソフトバンク。おそらくドゴレンジャーはハゲ」
キョン「孫正義じゃねえ」
長門「泰蔵?」
キョン「だからハゲから離れろって」

お姉さん「じゃあ、みんなでいっせいにドゴレンジャーを呼んでみましょう~」
ジョーカー「待ていぃ! そうはさせんジョー!」
ジャンジャカジャジャーン!!

お姉さん「キャー大変っ! 悪い宇宙人のジョーカー達がこの会場にぃ」
ジョーカー「こいつらかぁ! あのドゴレンジャーに味方する正義に目覚めた子供達は~!」
キョン「うわっ、ベタベタだな」
長門「……」
ジョーカー「この会場の子供達はきっと将来、俺達の敵になるだジョー。
 おい手下ども。ここの子供達を誘拐してくるんだジョ!」
手下「キキーッ」
長門「……!」ササッ
キョン「安心しろ。お前はターゲットにならねえから」

お姉さん「キャー大変大変。みんなの前に現れたジョーカーが会場を占拠してしまいました。
 この後私たちはいったいどうなるのでしょうか」
キョン「ここは別にナレーションいらねえんじゃねえか? 見たとおりだろ」
長門「あったほうがいい。臨場感が出る」

お姉さん「こうなったらドゴレンジャーを呼んでみるしかありません」
キョン「まずは警察とかはダメなのか」
長門「ダメ。ジョーカー達は警察に裏金を渡してここには来ないようにしている」
キョン「勝手に決め付けるなよ」

お姉さん「さあ、みんなで大きな声をだして~、ドゴレンジャーを呼んでみましょう!
 諸々の都合によりレッドしか来れないかもしれないけど……、せーの!」

長門「 ド ゴ レ ン ジ ャ ー ! 」
キョン「うわっ、お、お前……」

シーン……

お姉さん「あれあれぇ? 声が小さかったのかなぁ? ドゴレンジャーまで声が届かなかったみたいだよ~」
長門「……何をしている」ゴゴゴゴゴ
キョン「なにって……」
長門「あなたも叫ぶべき」ゴゴゴゴゴゴゴ
キョン「や、やだよ……」
長門「宇宙人であるわたしが地球の為に助けを呼んでいるのに、この星の住人であるあなたがなぜ呼ばない」
キョン「マジかよ……」
長門「マジ」
お姉さん「もう一回呼ぶよー! せーの! ドゴレンジャー!」
長門・キョン「 ド ゴ レ ン ジ ャ ー ! 」

子供「ねー、ママー。あの人たち……」
ママ「しっ、見ちゃいけません」
キョン「うぅ……」
長門「あの子供は叫ばなかった。きっと将来あなたのような変質者になるに違いない」
キョン「俺は叫んだんだから変質者扱いしないでくれ」

バーン!!
レッド「とーぅっ!」
デンデレッデレデテーテレッテテテレーー♪

お姉さん「な、なんとー! みんなの呼びかけにドゴレンジャーのリーダー、レッドが来てくれましたよ~」
長門「なんとー」
キョン「なんとー、じゃねえ」

レッド「君達か! 正義への想いをビンビンに感じたぞ!
 諸々の都合により私しかこれなかったが、私が来たからにはもう安心だ!」
キョン「都合が悪いとメンバーが一人しか来れなくなるところに、ものすごい不安を覚えるが」
長門「リーダーが来てくれただけよかったと思うべき。これでイエローだったら泣く」
キョン「まあ、たしかに……でも一人なら中の人もレッド選ぶと思うぞ?」
長門「中の人などいない」
キョン「さっきいるって言ってたくせに……」

ジョーカー「また俺たちの野望を邪魔しに来やがったジョ! ドゴレンジャーどもめ!」
キョン「ドゴレンジャー『ども』って……どうみても一人です」
長門「ここにはいないけど、おそらく遠くから仲間がパワーを送っているという設定」
キョン「深読みしすぎ」

レッド「悪い宇宙人どもめっ! 懲らしめてやるぞっ!」
長門「なにぃ……!?」ガタン
キョン「よせ、お前のことじゃない」

ジョーカー「こしゃくなー、おい、手下どもっ! やってしまえジョ!」
手下「キキー! キィー!」
長門「……レッドが危ない。多対一では展開が不利になる」
キョン「お前が出て行ったらレッドが出番なくなって困るだろ。バイト代もでなくなる」
長門「で、でも……」
キョン「いいからおとなしくしてろ。たぶんレッドは半端なく強いから」

レッド「とうっ!とうっ!ていっ!」
手下ども「キキー、キキキー!」
キョン「レッドの攻撃……すっげえ適当……。ほとんど触ってないのに吹っ飛んでるぞ」
長門「きっとレッドが強すぎてそう見えるだけ」
キョン「お前の目はすごいフィルターがかかってるな」

ジョーカー「くっ、こんなはずでは……こうなったら……」
レッド「どうした、ジョーカー。姿を見せろ! お前の力はこんなものか!」
長門「あぁ! 後ろー! レッド後ろー! 後ろにジョーカーがー! あぶなーい!」
キョン「おい……、目立つから立ち上がって大声出すのはやめてくれ……」
長門「あー、すぐ後ろ! 6時の方向! 北北西! 宇宙座標156GH03A-13K6572ー69H70!」
キョン「聞こえてるから聞こえてるから。やめてくれやめてくれ」

レッド「ぐ、ぐわぁ! 後ろからとは卑怯なりぃー!」
ジョーカー「ぐわはははー! ケンカに卑怯もクソもあるかジョ!」
長門「卑怯者ー!」
レッド「ぐ、ぐぼぁ!」ガクッ
ジョーカー「げえっげっげえ! レッドは死んだ! もう俺様の邪魔をするものはいないんだジョー!」

長門「レ、レッドーーーーー!!」ガタン
キョン「お、おい、立つなって」

お姉さん「ついに悪の力の前に倒れてしまったレッド。
 正義は悪の前に屈してしまうのでしょうか。
 いいえ、そんなはずは無いのです! さあ、みんなの力でレッドを助けましょう!
 良い子のみんな大声でー、いつもの掛け声をー」
キョン「いつものって……」
お姉さん「せーの!」
長門「 ギ ガ ス ト ロ ー ン ! 」
キョン「なぜ知ってる」

レッド「集まってくる……みんなの正義を願う力が……地球を守ろうとする強い意思ギガストロンが……」
キョン「死んだはずなのになんでしゃべってるんだよ」
長門「これはレッドの心の声。あなたも正義に目覚めたおかげでテレパシーが使えるようになった」
キョン「いや、俺はちっとも目覚めたつもりは無いが……」

お姉さん「ギガストロンの力がレッドに集まっています! もう少しです」
キョン「なんでこのナレーターのお姉さんがそんなことわかるんだ?」
長門「愛の力。それより次こそはあなたもギガストロンと叫ぶべき」
キョン「またかよ……」

お姉さん「さあ、もう一度ー、大きな声でー! せーのっ」
キョン「 ギ ガ ス ト ロ ー ン ! ! 」
長門「……」
お姉さん「……」
キョン「おいっ! てめえらぁ! なんで叫ばないんだよーぉ!」
長門「二回目は心の中で叫ぶ。そういう決まり」
キョン「お姉さんもっと説明してくれえぇ!」

レッド「むむっ!? ち、力が湧いてくる……正義の心はあふれ出す! うおーっ!」
お姉さん「さあ、みんなの祈りが届いたようです! ついにレッドが復活しました!」
レッド「とーうっ、正義の味方、ドゴレンジャー! 復活!」
長門「一度死んだのに復活した」
キョン「復活したな」
長門「ドゴレンジャー復活ッ!!ドゴレンジャー復活ッ!!ドゴレンジャー復活ッ!!ドゴレンジャー復活ッ!!」
キョン「静かにしてください、烈先生」

レッド「みんなの送ったギガストロンパワー! ビンビンに受け取った!
 これでいつもの3倍にパワーアップしたぞ! 宇宙に正義のある限り、私は不死身だ!」
キョン「いちいち説明がくどすぎる。ビンビンが口癖かこいつ」
長門「だがそこがいい」

レッド「とうっ! とうっ! でりゃー!」
手下「キキー! キー!」
長門「死んだはずのザコがまた復活してる。なぜ?」
キョン「そこは目を瞑ってやれ、人件費関係だ」

レッド「覚悟しろ! ジョーカーめ!」
ジョーカー「ぬぅぅ! お前など俺様一人で十分だジョー!」
長門「ジョーカーは覚悟したほうがいい。この展開になって生き残ったボスはいない」
キョン「基本的にヒーローは無敵だからな」

レッド「無駄無駄無駄無駄無駄無駄~! オラオラオラオラオラオラ!」
ジョーカー「ぎえ~、あべしっ、たわばっ、うわらばっ!」
キョン「……いいのかこれ?」
長門「普段はやらない攻撃。この会場だけのサービス」

お姉さん「さぁ~、一方的な展開になってきたけど、そろそろトドメよ~!」
キョン「すげえ投げやりなナレーションだな」
長門「だがそこがいい」

レッド「いまだ! とどめだ! スペシャルアターック!」
長門「正式名称スペシャルドゴレンアタック」
キョン「さっきからお前めちゃくちゃ詳しいな」
長門「偶然」
ジョーカー「ぐわぁぁああ! お、覚えとけジョ~!」
パンパンパンパパパラパパパ!! ボーン!!モクモクモク……

キョン「なんだ? 最後はただの回し蹴り?」
長門「本当は五人の合体攻撃」
キョン「うわぁ……すげえ手抜き」
長門「違う、これこそ小さな会場でしか見れないレアな攻撃法と取るべき」
キョン「マニアックすぎる」

レッド「ありがとう良い子のみんなっ! みんなの声援のおかげで悪を追い払うことが出来たぞ!
 特に一番大きな声で応援してくれたそこの女の子! 本当にありがとうっ!
 では正義のためにっ! デュワ!」
お姉さん「みんなもドゴレンジャーにお礼を言いましょう~
 ありがとう、ドゴレンジャー! さようならドゴレンジャー!」


長門「よかった……少しでも力になれた」
キョン「ああ、よかったな。さて、おわったし行くぞ」
長門「まだ」グイ
キョン「なんだ」
長門「きっとこのあとサイン撮影会がある。それとグッズ販売も」
キョン「ほんと詳しすぎだぞお前……」


レッド「ありがとうっ! きっと君も将来正義の人間になれるだろう!」
キョン「うわっ、子供がたくさん並んでやがる……時間かかりそうだな」
長門「早くしないとレッドが人間に戻ってしまうかもしれない……」
キョン「それはないから安心しろ」

レッド「さあ、正義の握手だ!」
キョン「あ……俺はいいです。こいつに……」
長門「握手……」
レッド「ああ、君の正義のために! 固く握手だ!」ブンブン
長門「……やっぱり宇宙人は嫌い?」
レッド「え……? あ、ああ、悪い宇宙人が来たらきっと私がまた追い払ってやるさっ」
長門「……くっ!」ガタッ
キョン「お、おい、やめろ」
長門「に、偽者め! レッドはそんなこと言わない!」
キョン「すいません、なんでもないです。忘れてください」
長門「誰にでも平等がモットー! それがドゴレンジャーじゃなかったのかぁ!」
キョン「お前、自分のこと悪いやつだと思う癖やめろ。バカは別に悪いことじゃないから」

~~~~~

長門「ハァ…ハァ……偽レッドめ……」
キョン「よし、観覧車に乗ろう。な? これなら怖くないし、一度気持ちを落ち着かせるのに最適だ」
長門「この横になったUFOみたいな乗り物?」
キョン「えーっと、上まで行ってだいたい55Mだそうだ」
長門「高いところほどバカと煙が好き」
キョン「逆だ」

長門「これに乗ったら話したい事がある」
キョン「なんだ?」
長門「乗ったらと言ってるのに、乗る前に聞くのはバカ」
キョン「てめぇ……」

ゴウンゴウンゴゥン

キョン「おー、結構遠くまで見渡せるものだな。あ、お前んちのマンションもしっかり見えるぞ」
長門「あなたの家は小さすぎて見えない。しょせん安い一軒家」
キョン「うるさい」

ゴゥンゴゥンゴゥン

キョン「ほら長門、見ろ、人がゴミのようだ!」
長門「あぅぅ……先に言われた……」
キョン「ははは、やっぱりこれを言いたかったのか」
長門「もう一つある」
キョン「なんだ?」
長門「……」
キョン「……」
長門「やっぱいい……」
キョン「そうか」

ゴゥンゴゥンゴゥン

キョン「なあ、長門」
長門「……」
キョン「お前、最近ずっといなかったみたいだけど、どこ行ってたんだ」
長門「……ちょっと遠くまで」
キョン「そっか」
長門「そう」
キョン「……」

ゴゥンゴゥンゴゥン

キョン「もう地上についちまったな。10分なんてあっという間だな」
長門「……」
キョン「もうそろそろ閉園時間らしいぞ」
長門「……そう」
キョン「そういえばあらかた乗り尽くしたなぁ……小さい遊園地だから半日で全部乗れちまうな」
長門「あっちの端っこの方はまだ行っていない」
キョン「そうだったか、でも次で最後だぞ」

~~~~~

長門「あれは……ゴミ屋敷?」
キョン「違うオバケ屋敷だ。知らないのか」
長門「オバケ屋敷要」
キョン「最後の一字はいらん」
長門「入る」
キョン「オバケだぞ? 怖いかもしれないぞ」
長門「あなたは怖い?」
キョン「怖くねーよ」
長門「嘘、心臓が動いている」
キョン「動いてなかったらそれこそオバケだっつの」
長門「男は度胸、なんでも試してみるもの。きっといい気持ち」
キョン「お前好きだなぁ、ホモネタ」

キョン「でも本当にこれに入りたいのか? やめといたほうがいいぞ。絶対後悔するって」
長門「しない。ここは陸」
キョン「航海じゃねえー……まあいいか。高校生2枚ください」
長門「うっ……ビクッ」
キョン「チケット売り場のお姉さんにビビるな。普通の巫女さん衣装だろ」
長門「あまりに綺麗な人だったから人間ではないと思っただけ」
お姉さん「あら、お上手」
キョン「こんなところがお上手でどうする」
長門「これで妖怪対策は万全」
キョン「そういうものなのか」

~~~オバケ屋敷~~~

長門「へっちゃら……全然平気」
キョン「なあ、長門、そろそろ入り口から動こうぜ。後から来る人も困ってる」
長門「何を言う。わたしは秒速30キロ近い速度で移動している」
キョン「地球の自転公転速度を持ち出すな。さ、奥に行くぞ」
長門「……金縛りにあった。わたしはそっちに行きたいんだけど行けない」グイ
キョン「あー、わかったわかった」グイグイ
長門「うぅ……」

長門「ビクッ お、お札に……人の影が!」
キョン「あれはな、【非常口】って読むんだ」
長門「異常口!? たしかに異常を感じる……」
キョン「感じるな感じるな」

長門「う、ううぅ……ビクビク」
ペチャッ
長門「ゔわ゙ぁぁん、なんが当たった当たった! ほっぺにペチャッって当たったー!」
キョン「なんだこりゃ……今どき、こんにゃくかよ」
長門「あなたがこんにゃくを粗末にするからそんなオバケがでるのー! バカー!」
キョン「粗末にしてねえから!」

キョン「長門……あそこの井戸からおそらくオバケが出てくるから、気をつけろ」
長門「なぜそんなことがわかる」
キョン「まあ、こういうところはそれが定番なんだ」
長門「急用を思い出した。帰る」
キョン「ま、待てよあんまり勝手に動くと……」

骸骨「バァー!」
長門「ぎゃー、ゔわ゙あぁぁぁん、もうやだあぁぁぁ!」
キョン「うわっ、抱きつくなって! こら、離れなさい」
長門「うわ゙あ゙ぁぁぁん、ごわ゙いよ~、ゔわ゙ぁぁぁん」
キョン「あー、もう……すいません、こいつもう先に進めなそうなんで抜け道教えてもらえますか?」
骸骨「いやぁ、いい子だねぇ……。君みたいに怖がってくれると、うちらもやりがいがあるよ」
長門「ゔわ゙ぁぁぁあ! びえ~ん、じぬぅぅ~! やぁだぁぁぁ!」
骸骨「山口くん、この子を案内してやって」
ゾンビ「こっちです。足元暗いんで気をつけてくださいね」
長門「近づくなぁ山口ぃぃぃ! やめぇぇでぇ! ゔぁぁん、もゔ帰るうぅぅ~!」
キョン「すいませんすいません」


長門「ひぐっ、ひぐっ……ブルブル」
キョン「怖かったもんな。あれは仕方ないな」
長門「違う。西洋のオバケだと思ってたのに、東洋のオバケばかりで驚いただけ」
キョン「そういうものか? どちらにしてもやっぱりやめとけばよかったな」
長門「ううん、すごく楽しかった。また行こう……ブルブル」
キョン「お、おいおい。無理すんな。……凝りねえヤツだな」
長門「そうじゃない。オバケ屋敷じゃなくて……遊園地」
キョン「あ……ああ。そうだな。また二人で一緒に来ような」
長門「……うん」

~~~~~~~

………
……

《おい、長門! 長門!》
YUKI.N>……あれ? ここは……誰?
《俺がわかるか、長門》
YUKI.N>あ、あなたは……ここはどこ? なぜここに?
《いや、こっちが聞きたいよ。さっき降ってきた雪を見てたら、
 なぜか突然お前のこと思い出したんだよ。なんで俺がお前のこと忘れちまってたのかすごく不思議なんだがな。
 それで古泉に聞いたらこのパソコンで連絡が取れるって言ってたもんだからな。
 ビックリしたよ。みんながお前のこと忘れてるみたいなんだ。それでお前は今どこにいるんだよ》
YUKI.N>遊園地は……?
《遊園地? 何のことだ?》
YUKI.N>あ……そうか、わたしはまだ情報制限を解かれていない状態。
《どうしちゃったんだよ、いったい》
YUKI.N>ここは情報統合思念体の作り出したデータを一時的に保管する領域。
  情報としてのみ存在しているため、現在そちらの時空にはわたしという固体は存在しない。
  わたしに関する情報は現在全て情報操作を施され、そちらにほとんど干渉できない状態になっている。
《珍しく言葉が全部まともだな》
YUKI.N>おそらくわたしの所有する記憶データと、情報処理デバイスが別々に隔離されているため、
  余計なデバイスを介さない分だけ、伝達情報に誤差や情報損失が
  生じにくくなっているものと考えられる。
《どうすりゃもどれる? 俺はなんとか思い出したけど、みんなはお前のことを完全に忘れてるぞ》
YUKI.N>大丈夫。この制御は自動的に発動される防御プログラムの一種で、一時処置としての暫定制裁。
  審査が通り、一定時間が過ぎれば制限領域が狭められる。
  もうすぐ条件付きではあるが制限が解かれるものと思われる。
《そうか、ならいいんだが》
YUKI.N>それよりもわたしのことを思い出してくれたことに感謝する。
《いや、こっちこそ……お前のこと忘れるなんてどうかしてた。ごめんな》
YUKI.N>無理はない。そもそも思い出すことのほうが不思議。

《こっちに戻ってきたら何でもおごってやるよ。
 そうだ、カレーの大食い出来るお店知ってるぞ》
YUKI.N>いい、今回は全てわたしの責任。自業自得
《そういうなよ。いいんだよ気にしなくて。
 おごらせてくれないか。
 俺はまたお前に会いたいんだよ。いなくなって3日しか経ってないのに、
 なんかもう何年も会ってないような気分なんだ》
YUKI.N>そう
《でもお前は元のままでよかったよ。
 最初お前の様子がおかしかったから、俺らのことも忘れちまったと思ったからな》
YUKI.N>さっきわたしが一瞬自分を見失っていたのは不思議な現象があったせい。
  ただの情報端末でしかないわたしが幻覚を見た。
  おそらくこの情報保管領域という、情報の海の中にいたせいだと思われる。
  初めての体験だったが、おそらく人間の睡眠時に見る夢というものに酷似していたものと思われる。
《へ~、そんなこともあるんだな。その話、詳しく聞かせてくれないか》
YUKI.N>恥ずかしいから嫌
《なんでだよ》
YUKI.N>駄目



YUKI.N>戻ったら……
《なんだ?》

YUKI.N>また遊園地に……

~~おしまい~~

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