暗い。周りには何もない。上も、下も、右も左も何もない。真っ暗闇だ。ここは何所なんだ?
 
「ここはあなたに選択肢を与えるために私が作った精神移動空間。」
 
何もない空間。俺の前に1人の少女が立っていた。
 
「長門!なんなんだこれは?」
「貴方は不慮の事故によって死んだ。そして涼宮ハルヒは貴方を失ったことを悲しみ、もともと現実にいなかったことを望んだ。」
「なら今ここにいる俺は何なんだ?死んでるどころか存在が無いんじゃないのか?」
「無くなる前に私がこの空間へ残りの精神のみを移した。選択をさせるために。」
 
さっきも言っていた。"選択"とは何のことだろうか。
 
「その選択ってのはなんなんだ?」
 
……
 
「貴方はまた元の世界に戻りたい?」
 
そういうことか。
 
「ああ、またSOS団であいつらと一緒に馬鹿やりたいしな。何より、あいつに会いたい。」
「そう。」
その返事を最後に俺の感覚は無くなった。その時の俺には意識というものは無かっただろうしな。
 
…………
………
 
「・・・・ン・・・」
誰だ?
「・・・ョン!」
俺のことを呼んでるのか?
「キョン!起きなさい!」
 
「・・・んん?」
「部室に来ないと思って探してみれば教室で寝てるなんて!」
「あれ?ここは?」
「寝ぼけてないでさっさと行くわよ!あ、それとあんたのアホズラはばっちり撮らせてもらったから!」
 
あれは・・・夢・・・・だったのか?
まぁ長門に聞いてみればいいだろう。
 
「みんな~!キョンいたわよ~!」
「あれ?長門はいないのか?」
「長門誰それ?そんなことよりキョン!明日は不思議探しに行くからね!」
 
長門のいるであろう椅子には長門はいなかった・・・そしてハルヒは長門のことを知らないようだった・・・。
 
それからいつものように朝比奈さんのお茶を飲んで古泉とボードゲームをした・・・。
だけど誰も長門がいないことは気にしていない。
 
「今日はもう終わり!帰るわよ!」
 
そういってハルヒはすぐに出て行ってしまった。
「では僕もお先に。」
 
古泉が出て行くころに長門椅子の上に本が置いてあることに気が付く。
着替えるから先に行ってという朝比奈さんに一例してその本を持って帰路につく。
 
家に帰ってから本を開く。何か挟まっていないかとみると・・・あった、小いさな手紙がはさまっていた。
 
”貴方はこの世に生存することを望んだ。涼宮ハルヒもそう望んだ。そして私もそうであって欲しいと望んだ。
だから私の存在情報と引き換えに貴方の存在するための情報を操作した。”
 
何だって!?じゃあ長門は!
 
”今、貴方がこの手紙を読んでる場合は私はこの世界には存在していないことになる。
そして存在が無くなった私の変わりに新しいインターフェースが現れるはず。
できたらそのインターフェースとコンタクトをとって欲しい。それが私の願い
                                 YUKI.N”
 
…俺が戻りたいなんていわなければ長門は・・・クソ!
熱いものが頬を伝った。
 
…私は貴方に生きて欲しい。だから、泣かないで。・・・
 
長門の声が聞こえた気がした。
そうか。
 
長門のために。長門に貰ったこの命のために後悔なんて事が無いように・・・。
 
---fin---

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最終更新:2020年03月15日 18:21