まぁ何も期待してなかったといえば嘘八百どころか嘘八億になるというもので
そりゃあもう期待しまくりで文芸部室もといSOS団の部室のドアノブの捻ったんだが。

俺がなにをそんなに期待してたのかというと
普段俺はドアをノックしてから部室に入る。
なぜならばあの朝比奈さんが衣の着脱の真っ最中である可能性があるからだ。
確認してから出ないとそりゃあ紳士として失格ってものだ。
だが今日の俺は違った。たまにはノーノックで入ってもいいだろう、不可抗力ってヤツさ。
もしかしたら朝比奈さんの裸体が拝めるかもしれないしな。
一度くらい、そんなヘマしたっていいはずさ。
「すいません!ノック忘れてました!」とでも言やぁいいのさ、一度くらいそんな破廉恥なことをしてもバチはあたらんだろう。
まぁ朝比奈さんが着替えのさなかである可能性はかなり低いが、たまにはそんな夢も持たせてくれよな。

とまぁこんな思考をめぐらした上で俺はノック無しでドアをあけたわけだ
だがまさかドアノブだけでなく自分の頭も捻らなくてはならなくなるとは予想外だったぜ。
朝比奈さんの土俵というか、彼女をそんな「土俵」などという汗臭い名詞と組み合わせたくなんかはないが
普段の朝比奈さんが着ているべきもの、メイド服を違う人物が着用しているのだ。

どうやらこの部屋には俺とソイツしかいないようだ。
キチガイハルヒもホモ古泉も妖精朝比奈さんもいない。
となるとあとは一人だけだ。

無口で本好き、谷口曰くAマイナーランクの美少女長門が朝比奈さんのメイド服を着用して立っていた。

古泉とのオセロではあまり俺の思考は働かさずとも勝てるのだが、今俺はかなり頭を回転させている。
だが答えなんか出るはずも無い。なぜ長門が華やかなメイド服を着飾っているのかなど。俺が答えを見出せるわけが。

「なにをしてるんだ長門」

ドアをあけてからこの言葉が出るまで5秒ほどか。俺にしてははやく混乱から抜け出せたんじゃないか?

「興味をそそられた」

「メイド服・・・にか?」
意外な返答。てっきり俺はハルヒに無理矢理着せられたのかと思っていたが、どうやら長門は自分からメイド服を着てみたくなったようだ。
こりゃ今日は雪が降るか?有希なだけにな。

「この本」

そういって長門は俺に一冊の本を手渡した。長門にしてはめずらしく、旅行先などでしか読んでいるところを見たことがないハードカバーでない文庫本だ。
俺はその小さな文庫本をパラパラとめくって挿絵を見てみた、そこにはメイド服を着た小女が描かれていた。
絵を見る限りだが、どうやらそのメイド服の少女は明朗で快活な人物らしい。なんとなく鶴屋さんを思い出す。長門とは対照的なキャラクターだ。

「このキャラにあこがれたのか」
俺がそう言うと長門はいつもの無表情で、だがどことなく訂正を求めるような趣で

「同様の衣装を纏う事で少しでも同期ができないかと考えた」
そう言い放ち、メイド服を脱ぎだした。そうだな長門、その服はお前には胸の部分が余りすぎてる。
メイド服のしたに何も着てないんじゃないかと思ったがちゃんと制服の上に着用していた。部屋を出る手間が省けたぜ。
メイド服をハンガーにかけ、長門は何事もなかったかのようにパイプイスに腰掛け、本棚から選んだ分厚い本を読み出した。

「同期ってのはできたか?」

「できない」
できるはずがないさ。いくら宇宙人でも、情報ナンタラっていうすごいやつでも実在しない、空想のキャラクターと同期なんかでいるはずがない。そんなこと、お前でもわかりきってるだろ?

「この本、借りていいか?」
俺は先ほど長門に渡された本を指して言った。
「いい」

「そうか、ありがとう」
俺が長門にそう言うやいなやドアが開き、妖精のような笑顔が顔を出した。朝比奈さんだ。

「ごめんなさい遅れちゃって。進路相談があって・・・」
朝比奈さんはハルヒがいないことに気づき
「あれ?涼宮さんはまだなんですか?あ、まっててくださいね、今お茶を淹れます。」

朝比奈さんはメイド服を手にとり俺の方を見て微笑んだ。
着替えるから外にでてろというこですか。部屋を出る前に長門の方を見てみた。チラリとだが。

長門いつものように静かに本のページをめくっていた。

単純に着てみたかったんじゃないのか。長門。
いつかお前にお茶を淹れてもらうことにするよ。そうだな、アールグレイがいいか。
グレイなだけにな。うん、つまらん。


終わり

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