~ある日の放課後~
今日は団長自らコスプレ衣装を買いに行ってしまったため部活はない
一人いつものように部室で読書を終えてから帰ろうとする長門の前に
女子A「やぁ長門さん♪」
長門にとってはよく知る顔が三つならんでいた
女子B「ちょっとプレゼントがあるんだけどぉ」
女子C「長門さんってすごい臭いからね~はい石鹸、食べて」
長門「・・・」
彼女たちはどうやら極端に表情に乏しいこのインターフェイスが気に入らないようだった
(実を言うとそのインターフェイスの整った顔に不満があるらしいが)
ちょくちょくこういう陰湿なイジメをしてくる
たまにハルヒが助けてくれるのだが今日は期待できないだろう
長門「・・・」
女子A「オラなんとか言えよ」
女子B「いただきます、でしょ♪」
何故わたしは朝倉涼子のようにできないのだろう
わざわざ敵を作ってまで
異様な存在にしてまで何故わたしの対話能力のレベルは低く設定されているのだろう

だが長門にとってそんなイジメはさしたる苦痛でもなかった
彼女たちを満足させるため渡された石鹸を口に近付ける
とそのとき

教師「おいおまえらっ!何をしてるっ!」
女子A「チッ・・・なんでもありませーん」
女子C「長門さんと話してるだけでーす」

いきなり現れた体格の良い教師に威圧され散っていく女子ABC
彼はたしか長門のクラスの副担任

教師「おい、大丈夫か長門?」
長門「・・・はい」
教師「・・・あいつらに虐められてるのか?」
長門「・・・」
教師「・・・先生がいつでも相談にのってやるからな?」

ふと何かを思いついた表情をつくる教師

教師「そうだ、あいつらが待ち伏せてるかもしれないな、車で家まで送ってやろう」
長門「・・・いえ」
教師[「遠慮するな、なんだか雨も降ってきそうだしな」
長門「・・・」

下駄箱まで付いてきながらしつこく言い寄る教師
空模様をみるかぎり雨が降る様子なんて無い

長門「・・・いいです」
教師「いいって、長門のマンションけっこう遠いだろ?」

強引に、まるで連れ込まれるかのように助手席に座らされる長門

長門「・・・」

~車内~

教師「なあ、他の女子とうまくいってないのか?」
長門「・・・」
教師「何か困ったことがあったらいつでも先生に相談してもいいんだぞ?」
長門「・・・」
教師「ほら、俺も教師として生徒には信頼してほしいんだよ」
長門「・・・」
教師「俺もけっこうたくさんの生徒をみてきたが有希のことは少し心配なんだよ、なあ?」
長門「・・・」

運転中だというのに気を遣うような仕草で長門の肩に手を置く教師
だが端から見ればとても気を遣ってるようには見えない

教師「おまえの担任の○○先生なんてそーいうゴタゴタに無関心だし・・・」
長門「・・・」

一方的に話し続ける教師
しかしその異常さに本人はまるで気が付いていない
どんどん語調が早くなっていく
目に焦燥の色がうかぶ

長門「(この人・・・様子がおかしい・・・それに)」

もうマンションについてもいい頃だというのに
一向に雨が降りそうもない車の外に広がるのは見なれない風景
教師が乾いた笑いとともに言う

教師「ハハハ・・・いやすまん、大事な書類を学校に届けなくてはいけないんだ」
長門「・・・」
教師「いったん俺の家に寄るぞ?ハハハ・・・悪いなァ」

普通なら長門を送ってからでいいだろう
普通なら事前にそう言うだろう
普通なら・・・

長門「(・・・彼は異常)」

長門の思考に判断がくだる、教師に見えないように携帯電話を取り出す
最近、「彼」が連絡を取るためにと長門に持たせたものだ
以前二人で選びに行った記憶が脳裏に浮かぶ

「どうせ金は自由にできるんだろ?最新機種でもいいんじゃないか?」
「・・・そう」
「おお・・・最近のはすごいんだな・・・でもキャッチホンっつーのは使わないよな」
「・・・」
「どーする?どれがいい?」
「・・・あなたの好きにして」
「・・・(いや長門さん?その台詞はまずいんじゃあ)」

記憶を閉じる
情報統合思念体にとっては驚くほど「アナログ」なその端末を操作する
電話帳を開くまでもなく・・・完璧に記憶している「彼」の番号を押す
一度だけ呼び出し音を鳴らし、切る
非通知にはしていなかったはずだ

車が着いたのは男の一人暮らしにしてはやや大きめの家だった

教師「ほんとーにすまん。ちょっと探し物してくるからさ」
長門「・・・」
教師「・・・中で少し待っててくれ」
長門「だが断る!」
教師「!?」
長門「なんでもありません・・・遠慮します」

一瞬ふざけた台詞がでたのは俺が空気嫁てないと感じたからだろうか
日曜日の朝、一人真面目に文章を打ち込んでいる俺は滑稽だろうか
ちなみに自宅にジョジョは全巻持っている、一番好きなのは4部
最近ではリンゴォ戦を読むたびテンションを上げている
あそこで真に格好いいのはむしろジャイロの方だよな
閑話休題

教師「ん?どうしてだ?大丈夫だ、変なことはしないぞ」
長門「・・・」

笑いながら早口で言う、しかし、目は決して笑っていない

長門「・・・あなたは信用するに足らない、帰る」

教師「・・・なあ、有希をいつも助けてくれる、涼宮ハルヒ」
長門「・・・」
教師「 い つ で も 退 学 に で き る ん だ ぞ ? 」
長門「・・・!」

長門の目が一瞬驚愕と、わずかな恐怖に見開かれる

教師「どうする?守ってくれる人間がいなくなるなぁ?」

教師はどうやら勘違いをしているようだ
自分のいじめはどうでもいい、別に殺されたってバックアップがいる

だが涼宮ハルヒの退学?それだけは絶対に阻止しなければならない

教師「注意してもバニーガールの格好で校内をうろついていたな・・・」
長門「・・・」
教師「学校側が認めていないのにゲリラのように部活を作っている」
長門「・・・」
教師「映画の撮影だとかで屋上で花火で遊んでいたり」
長門「・・・」
教師「それに噂じゃあパソコン研究部のパソコンを恐喝し、奪ったらしいじゃあないか?」
長門「・・・」
教師「いままでは成績の良さでうやむやになっていたが、これらはすべて校則違反だ」
長門「・・・」
教師「俺が問題にすれば、退学だ」

目の前の男は世界の危機だと解っているのだろうか?
涼宮ハルヒの退学、SOS団の解散。
それが何を生むか解っているのだろうか?
いや解っているはずがない

長門「・・・愚か」

瞬時に長門の口が校則で動く
目標の情報連結の解除の準備をする
だが・・・

教師「なあ有希、もういいだろ。中に入れ」
長門「・・・」

強引に腕を取られ、部屋のなかへ連れ込まれる長門
情報連結の解除は・・・しない

ただ・・・電話を待つ

~室内~
長門は乱暴にベッドに押し倒される
汗臭くて汚い、男のベッド
華奢なその体に教師がのしかかってくる

教師「ハァハァ・・・いい子だからな?抵抗するなよ・・・」
長門「・・・」

血走った目で長門を睨む
興奮してか涎が長門の頬に垂れる

教師「有希は本当に大人しいなぁ・・・どこまで無表情でいられるかなぁ・・・」

大柄な体を密着させながらスカートの中に手を滑り込ませ、尻を弄る

長門「・・・ッ」

その嫌悪感に僅かにヒューマノイドの顔が歪む
反応に気を良くした男がその手にさらなる力をかけたとき

無機質な携帯のバイブレーションが鳴り響く
スカートにしまったその端末の光る画面には「着信中」の文字が浮かんでいる

無視して行為に及ぼうとする教師、だが
教師「(親が心配して電話してきたのかもしれない)」
教師「(放置するのは・・・怪しまれるか)」

仕方がなく

教師「出ろ、なんとか誤魔化せ。ただし妙なことを言ったら・・・殺す」

本気で殺しそうな切羽詰まった目、しかし長門はその言葉を半分も聞いていなかった
素早い動作で携帯を取り出すと、通話ボタンを押す
相手が喋るより速く、喋る

長門「許可を」

沈黙。
教師も、電話をかけてきた相手も状況が飲み込めない様子。

長門「情報操作能力使用の許可を」

かまわず長門が続ける
明らかに「妙なこと」を喋っているが、教師が予測したような助けを呼ぶ声には聞こえない

電話の向こうで誰かが話している
慌てているような、心配しているような、でも真剣な声

長門「いや、涼宮ハルヒとは直接関係ない」
教師「おい・・・誰なんだ?親じゃないのか?」
長門「・・・わたしの問題」

長門が話す

長門「教師に性行為を迫られている」


一瞬場が凍り付き



教師が携帯を奪おうと手を伸ばす
それより速く、携帯から声が響く
教師にもハッキリ聞こえる


『やっちまえ!!!!』
長門「・・・そう」

教師「おまえっ・・・ふざけるなっ!」

激昂し携帯を奪おうと長門に掴み掛かる教師、大柄な体が震えている

教師「誰だ、誰に言った!そいつもお前もブッ殺して・・・!?」

そこで長門の異変に気づく
さっきまで思う存分引きずり回していたその矮躯が
体重なんて自分の半分ほどしかなさそうな小柄な少女が
まるで鉄の塊にでもなったかのように動かない

長門「ブッ殺す・・・?」

違った
幾ら力をかけても自分の体が動かなかった
金縛り、なんて陳腐な表現しか出来ない現象が教師を襲う

長門「ブッ殺すと判断した・・・そのときスデに」

行動は終わっていた
朝倉涼子のようなインターフェイスではない、
何の抵抗も出来ないその有機体の塊は一瞬でその場から消え失せていた

長門「・・・終了した」

今だ通話中の携帯に話しかける

~通話中~

『そうか・・・そいつはどうした?』
長門「刑務所、性犯罪で逮捕、懲役六年」
『そっか、別に俺はいなかったことにしてもよかったと思うんだが?』
長門「生きてきた痕跡、関わった人間すべてを操作するのは多少面倒」
『そうか、トーチとは反対だな』
長門「・・・トーチ?」
『・・・妄言だ、忘れてくれ』
長門「・・・そう」


『でもわざわざ俺の許可を待つこともないだろ?』
長門「・・・」
『状況は解らないが・・・結構、ピンチだったんだろ?』
長門「・・・涼宮ハルヒに関すること以外での情報操作能力は自重するよう」
『・・・』
長門「・・・あなたの頼みだったから」

長門「・・・何?」
『今度からは・・・ハルヒと同じくらい自分を大切にしてくれないか?』
長門「・・・何故?」
『・・・頼む』
長門「・・・そう」

弱々しく聞こえた「彼」の言葉が、何故だかひどく嬉しくさせた
何故だろう?

『じゃあ話は変わるが』
長門「・・・何?」
『あ~長門のクラスにABCって女子がいるだろ?』
長門「・・・」
『是非「転校」させてやってくれ』

声の主はもう笑っている

長門「・・・記憶の消去、記憶の植え付け。両方やらなくちゃあいけないのが」
『・・・』
長門「・・・SOS団、団員のつらいところ」
『・・・なあ長門』
長門「何?」
『・・・最近へんな本でも読んだか?』
長門「・・・別に」

宇宙人が、その場で一人
声色は完全に普段の調子から変えず
だが、たしかに微笑みながら言った。






お わ り 。

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