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 忘年会を31日にやろう、と言い出すハルヒにツッコミを入れるような気は無いのだが、話がどういう風に転がったらそれが俺の家で、ということになるんだろうか。
 反論する間もなくあっという間に予定が決められ、俺の親もあっさり承諾したって辺りが何とも言えないよな。まあ、この時期に秘境探索へ、とかいうことになるよりは良いけどさ。
 というわけで今俺の家にはハルヒ以下SOS団+準団員扱いの鶴屋さん、谷口、国木田、そして俺の妹という総勢9名が居る。何時ぞやの悪夢のような野球大会の時と同じ面子だな。
 ちなみに両親は親戚の家に出かけていて不在だ。
「そろそろ飽きてきたわね」
 持ち込まれた、というか主に古泉が持ち込んだゲームを延々やっていたわけなのだが、似たような事をやり続ける状況に飽きてきたのか、ハルヒがそんな事を言い出した。
「飽きるも何も、さっきから負け続けだからじゃねーのか」
「そんなんじゃないわよ」
 谷口の軽口にハルヒが反論する。
 まあ、負け続けというか、さっきから長門が連続で一位を取っているのは確かなんだが。それにしたってハルヒは大体2位か3位をキープしてはいる。ブービー争い常連の谷口にそんなことを言われたくはあるまい。ちなみにここで言うブービーは本来の意味じゃなくゴルフとかのブービー賞に該当する方だ。本当のブービーが誰かは八割型決まっているのでわざわざ言う必要も無いだろう。
「何か無いかしら……」
「はいはい、あたし、しりとりがしたい!」
 空気を呼んでいるのか居ないのか、妹が唐突にそんな事を言い出した。
「しりとりね、じゃあそれで良いわ」
 ハルヒがあっさりと承諾し、こうして、俺達はしりとりをする事になった。
 ハルヒから順に右回り、ハルヒ、長門、古泉、鶴屋さん、俺、谷口、国木田、朝比奈さん、妹って順番だ。
「んじゃあたしからよ。そうね、先ずは『雪』。次は有希よ」
 どういう始め方なんだそれは。
「……『喜緑江美里』」
「人の名前? んー、まあ良いか。じゃあ次は古泉くんね」
「『理屈』ですかね」
「んじゃあたしは『鶴屋』だねー」
 名前がOKということで、自分の名前を答える鶴屋さん。
「や……『山根』」
 深い意味は無い、名前がOKということで思いついただけだ。
「誰それ?」
「去年のクラスメイトだ」
「ふうん。まあ良いわ。じゃあ次は谷口ね」
 ハルヒの『雪』は『有希』でもありじゃないかって考えると、ここまでの時点で古泉以外の誰も名前以外の単語を口にしてないってことになるな。いや、そんなことはどうでもいい事のような気がするが。
「ね、ね……『鼠』」
「じゃあ『宮本武蔵』」
 別の方向に行きそうになったのに国木田があっさりと修正しやがった。
 おいおい、このまま名前しりとりになるんじゃないだろうな?
「ほえ、宮本武蔵って誰ですかー?」
「あらみくるちゃん、そんなことも知らないの」
「あ、はい……」
「ふうん。まあいいわ、あとで教えてあげるから、今はとりあえずしりとりよ。『し』だからね」
「ええっと『し』ですか……。うーん。あ、じゃあ、『清水』です。そういう苗字の人が居るって聞いた事があるんです」
 いやだから名前でしりとりじゃ……、もう良いか。
「『ず』えーっと、『す』でも良いのー?」
「OKよ」
「『す』……んー、『好き』!」
 こうなると誰が空気を読んでいて誰が読んでないのかすら分からない気がするな。
 とりえあず妹の回答は誰の名前でも苗字でもなかったわけだが。
「き、き……」
 まだ二周り目だというのに、何故か考え込むハルヒ。
 何だ何だ、どうしたんだ。
 古泉と鶴屋さんがにやにや顔のまま顔を見合わせているし、国木田と谷口も似たり寄ったりなんていう状態だが……、一体何がどうしたって言うんだ?
「どうしたんだ、ハルヒ?」
「な、なんでもないわよ。……そ、そうね。『キョン』よ!」
「……『ん』が着いたからお前の負けな」
 どういうわけか顔を真っ赤にして叫んだハルヒに対して、俺は出来るだけ冷静な振りをして切り返してやった。
 なあハルヒ、まだ二周目なんだぞ。
 というか名前はともかくあだなってどうなんだよ……。
「あっ……」
 ハルヒが滅茶苦茶恥ずかしそうな顔をしている。
 そりゃあ、この時点での自爆だもんな。さすがのハルヒでも恥ずかしいか。
「で、どうする、もう一回やるのか?」
「……」
「おい、ハルヒ」
「……い、良いわ、しりとりはもう良いわ! それより年越し蕎麦よ年越し蕎麦! あ、あたしは準備してくるからね、みくるちゃん、手伝ってちょうだい」
「あ、はーい」
 勢い任せに話を切り替えるハルヒと、連れ去られていく朝比奈さん。
 何かまあ、何時も通りというか……。
「さっきのハルにゃん、真っ赤だったね~」
 突っ立ったままの俺に真っ先に話し掛けてきたのは、鶴屋さんだった。
 まあ、後ろに居る俺以外の男性陣も全員似たり寄ったりな感じだけどさ。
 お前等なあ……。
「……あだなってのはどうかと思いますけどね」
「それだけ恥ずかしかったという事なんでしょう」
「だろうねえ」
 割り込んできて混ぜっ返すな古泉! 鶴屋さんも頷かない!
 大体ネタが尽きた辺りならともかく、二周目で『ん』で終わる単語を言い出すなんて、完全な自爆もいいところじゃないか。
「ねえねえキョンくーん」
「何だ?」
「じゃあキョンくんは、他の人の名前でも良かったの?」
 そういや、ハルヒに『き』で着く単語を振ったのは妹だったな。
 こいつ、もしかして分かってやっていたのか?
 いやいやまさか……、まさか、なあ?
「……別に名前でしりとりしていたわけじゃないだろ」
「ふうん……」
 妹は珍しく微妙な表情でそう言うと、それ以上のことは何も言わず俺から離れて台所で準備をしているハルヒ達の所へ行ってしまった。
 何だ何だ、一体何なんだ。
 ハルヒの行動も良く分からないが、妹の行動パターンも謎過ぎるぞ。
「キョンくんも罪作りな男だよねえ」
「ええ、本当に」
 鶴屋さんが妙なことを言い出し、古泉が頷く。
 二人とも何が言いたいんだよ。
「別に、何もー。ねっ、一樹くん」
「そうですね、鶴屋さん」
 二人は俺の訴えを無視し、しりとりの前までにやっていたゲームで散らかりっぱなしのこたつの上を片付け始めた。何なんだよ……。
「まあキョン、お前も頑張れよ」
「そうだね、頑張ってよ」
 谷口と国木田でさえこれだ。
 俺は仕方なく何時も通りだんまりモードの長門の方を見てみたが、長門はといえば
「……迂闊」
 という謎の一言を呟いただけだった。
 ……本当にわけが分からないな。


 そうそう、ハルヒと朝比奈さんが用意してくれた年越し蕎麦は滅茶苦茶美味かった。
 美味い物を食べたら余計な事は忘れるってわけでも無いが、わいわい良いながら年越し蕎麦を食べていたら、さっきまでのことはあんまり気にならなくなってきたな。
 まあ、恥ずかしそうな顔をしたハルヒってのも、案外悪くなかったし……、まあ、そういうことにしておこう。


 終わり

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