※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 
【第七話-12/09夜~12/10深夜】
 
 指輪の持ち主はハルヒ・朝比奈さんをさらった俺と瓜二つの男だった。
その男の言うにはハルヒたちはこの星にとってイレギュラーな存在らしい。
そしてハルヒたちを何らかの手段で今まさに消し去ろうとしている……。
一刻も早くそれを止めなければ、だが俺は自分の分身を見てただただ
呆然とするばかりだった……
 
・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・
 
 俺は今、俺の偽者と言われていた男と学校の屋上にいる。
 
「しかし、何で……俺の姿なんだ?」
「君が、いや俺が涼宮ハルヒに最も近づきすぎたからだよ」
「なんだって!?」
「涼宮ハルヒの力を常に受け続けた結果俺が具現化したのだ」
 
 この俺と瓜二つの男はハルヒの力によって具現化し、その存在を
表したらしい。
 
「なぜ……」
「ふふふ、君は、いや俺は果報者だな。涼宮ハルヒからこんなに
想われているとはな」
「なんだって?」
「涼宮ハルヒが最も愛し、力の影響を徐々に受けたもの。それが君だ」
 
 ハルヒが俺を愛している……そして俺はハルヒの力を無意識に受け
続けていた……それがこいつの存在を生み出したのか。
 
「あんたはハルヒの力のことを知ってるんだな?」
「ああ、知っている。具現化した”力”だからな」
 
 長門が書き残したメッセージの”力”とはこのことだったのか。俺は
更に男に問い続ける。
 
「一体あのハルヒの力は何なんだ?」
「涼宮ハルヒが得た力、それはこの星の傷口から飛び出した、いわば
この星の生命力だ」
「この星の……生命力?」
「君たち人間は自由に生きているように見えるが、それはこの星の意思に
よって左右されている。その星の意志の力が涼宮ハルヒの”想ったことを
実現する力”だ」
「この星の力……」
 
 ハルヒのトンデモな能力はこの星の力だったのか。なんともでかい力を
ハルヒは授かったものだ。
 
「3年前この星に大型の傷がついた。最もそれはこの星の生物には見ること
も観測することも感知することも出来ないが。そのとき、星の力が流れ出し、
偶然、いや必然だったのかもしれんが涼宮ハルヒに力が入り込んだ。その
とき、涼宮ハルヒが願っていた宇宙人・未来人・超能力者が具現化したのだ」
「じゃあ、未来人が3年前より前に戻れないというのは……」
「傷口から噴出した星の力が邪魔をするからだ。未来人は涼宮ハルヒのせい
だと思っているようだが。ちなみに、情報統合思念体などは涼宮ハルヒが
”実現する力”で宇宙人を作り出したときに作り出したものだ」
 
 何てことだ。今まで”昔からあった””未来からきた”というものまで
ハルヒが作り出していたとは。俺は更にハルヒに一番関係あることを聞いた。
 
「ハルヒが出現させている神人は、あれはなんなんだ?」
「あれも俺と同じようなものだ。涼宮ハルヒの力が無意識に具現化し暴走
しているんだ。もっともあれは倒されることでこの星に力が還元されると
いういい側面もあるがね」
 
 俺はここまで話を聞いていると、時計を見てみた。午前0時まであと
2時間程しかない。俺は男に尋ねた。
 
「とにかく、あと2時間でどうなるというんだ?」
「まずこの星の力を受け取った涼宮ハルヒが星の力に変換され星に
戻される。と、同時にその力から派生した宇宙人・未来人・超能力者も
また吸収される。そして世界はあるべき元の姿に戻る」
「ってことはハルヒ達が消えるってことか?」
「そうだ」
「やめろ!!」
「これは星の意思だ。やめるわけにはいかない。やめてしまえばこの
星の寿命は縮まる。」
「それでも俺は……愛する人を、大切な仲間を失いたくない!!」
「世界中でそう思っているのが君1人だとしてもか?」
「そうだ。俺は星の寿命よりハルヒを取る!!」
 
 そういうと俺に瓜二つの男は黙り込んだ。何かを考えているようだ。
長いとも思える沈黙がこの場を包む。俺としては早くハルヒたちを
救う手立てを知りたい。そう思っていると次の瞬間、指輪が少しずつ
光始めた。
 
「どうやら始まったようだな」
「始まった……ってまさか……」
「そのまさかだ。この星の力への変換が今まさに始まろうとしている」
「これを止めろ!!」
 
 指輪の光は徐々にその明るさを増していく。
 
「無駄だ。どうすることも出来ん」
「そんな……そんなことをいうな!!何か方法はあるんだろ!?」
 
 男はまた黙り込んだ。その間にも指輪の光は更に明るさを増す。
 
「……俺にはどうすることも出来んが君になら出来るかもしれんな」
「どうすればいいんだ!!」
「想え……指輪を握り締め指輪の中の大切な人を想え……もしこの星が
許したなら元に戻るだろう」
 
 そう男が告げると俺は指輪を両手で包むように握り締めた。
 
「ハルヒ……ハルヒ……そしてみんな……頼む答えてくれ!!」
   
 その瞬間俺の心のなかに”キョン……キョン!”というハルヒの声がした。
 
「ハルヒ!!そこにいるんだな、ハルヒ!!」
”キョン!!あたしはあなたと離れたくない!!”
「俺もだハルヒ!!だから、だから、戻ってきてくれ!!」
 
 そのとき、真っ赤だった指輪の宝石が最初のように真っ青になった。
と、同時に指輪は砕け散り跡形も無く消えた。そしてそのとき午前0時を
迎えた。
 
「どうなったんだ……」
 
 俺は不安げに男に聞いた。
 
「どうやら、この星は自分の寿命を犠牲にしてまで君たちの愛に答えた
ようだ」
「寿命を……犠牲にして?」
「今頃消えていた人たちは自分の家などで何事も無かったように寝ている
ことだろう」
「それじゃあ……みんな元に戻ったのか?」
「ああ」
 
 俺は心から安堵した。またハルヒたちがいる元の世界に戻ったんだ……
 
「よかった……しかし、なんで俺に開放する方法を教えてくれたんだ。
あれほど手回しをし、この星への力の還元を願っていたあんたが」
「さあな……いうなれば俺が君だからじゃないかな?」
「あんたが俺だから……?」
「俺は涼宮ハルヒの力によって具現化したお前、つまりおまえ自身でも
ある。お前が愛するものは俺も……というわけだ。」
 
 俺はハルヒを愛している。自分に瓜二つ、いや、自分自身に言われ
ようやく自覚した。だからハルヒたちを救うことが出来た。そしてこの
星から許してもらえた。でも、そうするとこの星の命はどうなるのだろう。
 
「今回こんな結果に終わってしまったら、この星の寿命はどうなるんだ?」
 
 男は安心しろといわんばかりの顔で言った。
 
「人間の寿命と違って星の寿命はその何倍あると思っているんだ?今回の
力を回収できなかったからって、明日すぐにこの星が死ぬってわけじゃない」
「そうか……よかった……」
「だが、忘れるな。人間は環境汚染などで確実にこの星の寿命を削っている。
それをいつまでも見逃してくれるほどこの星も甘くは無いぞ」
「ああ、肝に銘じておくよ」
 
 これからはエコロジーに勤めなきゃな……などと思ったりした。ハルヒ
たちを救うことが出来たんだ。そのくらいの代償なら安いものだ。
 
「さて、私はこの星に吸収され少しでも寿命の糧となろう。この7日間の
真実を知っているのはキョン、君だけだ。いわば、君はこの星を背負った
ことになるんだぞ。そのことを忘れるな」
「わかったよ。まあ何かを背負わされることにはもう慣れてるさ。お前が
俺ならわかるだろ?」
「はは、そうだな。それじゃ、ハルヒのことは頼むぞ。なにしろこの星の
寿命を犠牲にしてまで救ったんだから。そうそう、それから今回君に
話した情報のうちこの星の力に関わる事ついては君の頭からロックする。」
「どういうことだ?」
「君がこの星の力について人に伝えることを出来なくする。もちろん心を
読まれなくもなる。だが、君はその事実を知っている。この星でただ一人
真実を知るものになるのだ」
「それなら俺から記憶を消せば早いんじゃないのか?」
「それではだめだ。君は業<カルマ>を背負ったのだ。この星の命の。
背負った以上本質を知っていてもらわねば困る」
「なるほどね……」
 
 この星でただ一人真実を知るもの。まあそれも悪くは無いな。などと
思いつつ考え込んでいると、
 
「ではお別れだ。この星の期待を無にするなよ」
「ああ、わかった。任せておけもう一人の俺」
「まあ、実際には君では無いんだがな」
 
 笑いながらそう男が言ったと同時に俺はその場に眠ってしまった。男は
キョンを自宅へ転送すると、周りを、星空を見つめた後、足元から光の
粒のようにその体を消していった……
 
・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・  ・・・・・・──・・・・・・
 
 俺は気がつくとベットに眠っていた。ベットから飛び起きると、時間を
見た。午前0時をかなり回っていた。俺は頭の中にあったこの星の力に
関することをノートに書こうと思ったが、言われたとおり手に持った
ペンが進まなかった。俺はこれを見て今まであったことが夢でなかった
事を実感した。
 
 俺は時間が遅いと思ったが一刻も早くハルヒの声が聞きたかったので
ハルヒの携帯電話に電話した。電話はすぐにつながり懐かしい声が聞こえる。
 
『もしもし、キョン?今何時だと思ってるのよ』
「いやすまん、ちょっと寝つけなくてな……それでお前の声を聞きたいと
思ってな」
『何言ってるのよバカキョン!さっさと寝なさいよ!まあ……電話して
きてくれて嬉しかったけど……』
「わかったよ。おやすみハルヒ、すまなかったな」
『いいわよ。おやすみ、キョン』
 
 
 こうして俺はハルヒとの会話を終えて電話を切った。なんか怒鳴り声
の後、小声で何か本音を行っていたような気がしたが……。まあ、それは
ともかく、こうして俺は元の世界に戻ったことを実感した。そしてそれと
同時に俺が背負ったものの大きさも実感せずにいられなかった。
 
「星の寿命かぁ……ずいぶん重いもの背負わされてしまったな……」
 
 
───Missing Ring -失われる7日間- 第七話 終
 

|