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    ―――― 二日目 2 ――

それにしても台湾に着てからのハルヒの機嫌というのは不安定である。いつもなら
とても機嫌がよく俺たちに迷惑事を振り掛けるか完璧にメランコリーで話しかけても
うっさいわね。バカ。アホ。マヌケ面。と言われるかの二つに一つのはずである。そ
のはずがどうだろう。台北101では急に女の子になってみたり、かと思えばいつも
のように傍若無人っぷりを遺憾なく発揮してみたりと忙しい。まったく修学旅行って
いうのはこれほどまでも人を変えるとはね?クラスに一人はいるんじゃないのか?ソ
コ!いないのか?
ホテルを出発して一時間が経とうとしている。今、俺とハルヒは繁華街の中にいる。
俺とハルヒは土産物屋や服やに立ち寄り妹へのお土産や朝比奈さんへのお土産となる
チャイナ服などを物色していた。
「ねぇ、キョン?これなんかみくるちゃんにぴったりじゃない?」
と、ハルヒが差し出したのは背中がパックリと開いた真っ赤なチャイナドレスであ
った。うん、悔しいがこれを着た朝比奈さんを見てみたいな。
「こら!エロキョン!変なこと考えてるでしょ」
最近思うんだが俺は思ったことが顔に出やすいタイプなのかね?誰か教えてくれ。
結局お土産は荷物になるから最後ということで、俺とハルヒは再び町へ出た。台北
の市街地は中心地は東京と比べても見劣りしないほど近代的であったが、少し路地へ
入ると中国文化の香り漂う趣深い町並みが並んでいた。テレビのブラウン管を通して
しか見たことのないような屋台が立ち並び、そこで生活する人々の活気がひしひしと
伝わってくる。まさかこれほどすばらしい街だとは思いもしなかったぞ。いつかSO
S団のみんな、朝比奈さんを連れてもう一度来るのも悪くないかもしれないな。

出発してからというもののハルヒは修学旅行を楽しむ普通の女子高生を続けている。
本来であれば普通というものを一番嫌うハルヒであるから考えられないことであり、
俺自身も驚くべきことであった。そんなことを考えながら街を歩いているとおもむろ
にハルヒが口を開いた。
「ねぇ。キョン?台北101に行きましょう」
ハルヒの口から放たれた言葉は思いもよらないものだった。
「台北101?昨日も行ったじゃないか。あそこになんか不思議はないぞ?」
「うるさいわね!団長に黙ってついてくればいいのよ!」
「なぁ、ハルヒ。修学旅行に来てからのお前、なんかおかしいぞ?」
「おかしいって何がよ?」
「わからんがいつものお前でないことだけは確かだ。」
「こっのバカキョン!!アンタはどこまで鈍感なのよ!」
「ハルヒ、言ってることがめちゃくちゃだぞ?」
「うるさいうるさいうるさ――――い!あんたはねぇ、あたしのことをぜんぜんわかっ
てない!キョン!耳の穴かっぽじってよく聞きなさいよ!あたしはねぇ、アンタのこと
がs・・・・!!」


   そのとき、世界が崩れた。

しばらくの間、俺は目を開けることができなかった。世界が『崩れた』瞬間、俺は無
意識にハルヒを抱きしめていた。目を開けると怯えたハルヒが俺の腕の中にいた。あた
りに目を配ると周りにあったはずの屋台や店がなくなり代わりに瓦礫の山があった。こ
のとき初めて地震に遭ったという事を理解した。修学旅行先でまさか地震に遭うとはな。
これもハルヒの力か?
「ハルヒ、怪我はないか?立てるか?」
俺はハルヒの手をとり立ち上がろうとした。
「ほら掴まれy・・・!」
足が震えて立てなかった。情けないね。自分の足に拳で渇を入れ俺は何とか立ち上が
る。ハルヒに手を差し伸べる。ハルヒは俺の手につかまるが足が震えて立ち上がること
ができない。俺は震えるハルヒを抱きしめた。
「キョン・・・」
弱々しいハルヒの声。・・・みんなはどうなったんだ?
「ハルヒ!みんなを探さないと!立てるか?」
「立てるわけないじゃない・・・・。おぶりなさい!団長命令よ!」
震える声を絞り出すハルヒ。俺はハルヒをおぶり、ホテルへ向かうことにした。台北
の街はあちこちで建物が崩れ人々が救助活動に奔走している。谷口や国木田、阪中はど
うなったのだろうか。早くみんなに会いたい。

どれほど歩いただろうか。日は暮れ、灯の消えた街は不気味だった。あちこちから人
のすすり泣く声や悲鳴、安否の取れない家族を呼ぶ叫び声などが飛び交っている。昨日
台北101から眺めた街とはとても思えない。あれほど美しかった街は
「キョン!ちょっと?まだホテルに着かないの?」
「・・・・・。すまん。実はな、ここがどこだかわからない。」
「えぇ?キョン!道に迷ったっていうの?」
「認めたくないがそのとおりだ。」
「まったく使えないわねぇ。」
俺の背中でずっと寝てたお前に言われたくはないんだがな。ハルヒは俺の背中から飛
び降りると俺をズバッと指差し、
「ちゃんとあたしのことを守りなさい!わかったわね!」
と言い放った。いつものハルヒに戻ったようだ。
「わかったよ。ハルヒ。」
「わかったならホテルに向けて出発するわよ!」

こうして冒頭に戻るわけであるが、いつまで歩いてもホテルに着きそうもないのはな
いのはなぜだろうね。やっぱり暗いからか?とりあえずホテルに着かなきゃにっちもさ
っちもいかないんだがな。
「ちょっと!キョン!ここどこなのよ!」
わかっていたらさっさとホテルについているんだがな。それにしても地震というもの
はひどいものである。建物をなぎ倒し人の命を奪っていく。まったく人間というのは非
力なもんだね。
腕時計をみると時刻はすでに午後10時をまわっていた。月の見えない真っ暗な空が
閉鎖空間をイメージさせる。いっそのことここが閉鎖空間であったらどれだけ気持ちが
楽だったであろうか。ハルヒにキスするだけで・・・、いや楽でもないか。それはそれ
で気疲れしてしまう。
「ねぇ。世界の終わりって今みたいなものなのかな?」
ハルヒが口を開いた。
「さぁな。そのころは俺たちは生きちゃぁいないさ。」
「でもね、あたしが何かしようとするたびにこの世界を壊しているような気がするの。」
「・・・・。」
「もし、わたしがSOS団なんて作らなければ、あたしやキョン、有希や古泉君、みくる
ちゃんがもっと楽しく暮らすことのできた、『壊れていない』世界があったのかもしれな
い。そう考えただけで・・・」
「それは違うんじゃないか?ハルヒ。俺は今、ハルヒとこうしている世界が『壊れていな
い』世界だと思っている。それは長門や朝比奈さん、古泉も同じだと思うがな。」


「でも・・・。もし・・・」
「『もし』は無しだ、ハルヒ。俺からしてみたらお前のいない世界こそが『壊れた』世界
なんだ。」
俺はそのことを去年の12月に思い知らされているからな。
「ハルヒの世界もそうだろ?俺や有希、朝比奈さん、古泉がいない世界なんて考えられる
か?」
そこまで言って気がついた。ハルヒは涙を流していた。


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