プロローグ  

天高く馬肥ゆる秋。俺はこれほど自分の無能さを嘆きたいと思ったことはないね。
なんせSOS団結成の一年生の五月より二年生も折り返しを過ぎた十月まで一年
五ヶ月もの間ハルヒに連れ回されているおかげで環境に対する適応力とかいうや
つはそんじょそこらの人よりは身についているはずである。閉鎖空間、雪山、過去、
一種の電脳世界のようなところで巨大カマドウマとも戦った。そんな俺が自分はま
だまだ世界を知らないとか言ったら谷口あたりは呆れ返るだろうね、うん。
そういうわけでちょっとやそっとの事態じゃ動揺しない精神を手に得れた俺である
がまさかこんな欠点があったとはな。
今俺はハルヒとともに街をさまよっている。ハルヒは不機嫌モード全開で騒いでい
る。
「ちょっと!キョン!ここどこなのよ!」
わかるならとっくにホテルに着いているんだがな。悪いが今の俺にはここがどこな
のか聞くことも見ることもままならない。


なぜならここは日本じゃないからだ。――――

―――― 一週間前

「キョン!遅い!こんな大事な会議に遅れるなんて。アンタ団員の自覚あるの?」
今日もわれらが団長涼宮ハルヒは絶好調のようだ。
「わりぃ、わりぃ。掃除当番だったんだよ。」
他の団員は全員そろっている。古泉はいつものニヤケ顔で俺のほうを眺めている
し、長門はいつものように本を読む置き物と化している。朝比奈さんはもはや制服と
なりつつあるメイド服を完璧にまといつつあっつあつの朝比奈印のお茶を淹れてくれ
た。
「ふん。まぁいいわ。今日は一週間後に迫った修学旅行について話し合いましょう。
まず、目標。これはSOS団支部をつくることね。」
これを話し合いと言うのだろうか?一方的な演説みたいなもんじゃないか。これが
話し合いになるのは北の某国くらいじゃないのか?あいもかわらず反論する団員は
いないので反論する役割は自動的に俺に回ってくる。
「待て。俺たちの修学旅行の行き先を知っていてそれを言っているのか?」
「当然よ。台湾でしょう?ついにSOS団も世界進出ね。」
「それはそれは。われらがSOS団がワールドワイドな組織になるのに微力でも貢献
できればいいのですが。」
古泉は部下の理想的な返事を返しているし長門はだんまりを続けている。

「えぇぇぇ~。今年の修学旅行は台湾なんですかぁ?去年は北海道だったのにぃ~。」
よく考えたら朝比奈さんは先輩だった。ということは朝比奈さんはこのSOS団台湾進
出計画に参加できないわけか。
「みくるちゃん、心配しなくてもいいわよ。お土産はちゃんと買ってきてあげるから。そう
ね~。チャイナドレスなんていいかもしれないわね。」
おいおい。マジか。それには賛成せざるを得まい。メイド服の似合いっぷりも完璧なの
だからチャイナドレスも似合うに決まっている。セクシーな朝比奈さんというのもいいか
もしれない。新境地だな。
「キョン!何ニヤついてるのよ。どうせまたみくるちゃんで妄想してるんでしょ?このエロ
キョン!」
う、図星だ。最近思うんだがハルヒには読心術があるんじゃないか?なぁ古泉。ってい
っても古泉も古泉で俺の心を読んでいるような気がするんだがな。って古泉よ、こっちみ
んな。ニヤつくな。
「自由行動はこの四人で行動しましょう。不思議探索IN台湾よ。世界は広いわよ。そこら
じゅうに不思議が落ちてるかもしれないわね。」
ハルヒは輝くような笑顔で待ちどおしそうに話している。願わくばこのままなにごともなく
すんでくれればいいんだがな。


                           ――――プロローグ Fin



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