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先に外に出て行ったハルヒを追って、俺も玄関の扉を開けた。
自転車出すから、ちょっと待ってろ。

「ふふん、なに?後ろに乗ってほしいの?」

なぜか得意そうな顔をしたハルヒが俺に問いかけて来た。
歩いて帰ったらもっと遅くなるだろ。家遠いんだろ?いいから早く乗れ。
「なによ、キョンのくせに偉そうね」

とか言いつつも、しぶしぶ俺に従うハルヒ。
荷台に横座りし(ロングコートにワンピースだからな)
倒れないように俺の背中の服を右手でちょこんとつかむのを確認して、俺はペダルに体重をかけた。


最初は何気ない世間話をしていた俺達だが、ハルヒがふと思いついたようにこう言った。

「あんたの妹ちゃん、モテるのね」
あんな話、俺は初めて聞いたんだが。
それにしても、最近の小学生ってマセてるんだな、いくらなんでも早すぎるだろ。
「あら、じゃあいつからならいいわけ?」
「中学生くらいからじゃないか?」
「じゃあ中学生になったら、妹ちゃんに好きな人ができてもいいわけね?あ、そこ右」
「できるとは限らないさ」
「答えになってないわよ」

…いざそのときにならんとわからん。ただ、おもしろくはないかもしれんな。
それに、たまたまそいつの好みだっただけかもしれないだろ。
未来の事はなんて誰にもわからんさ。…1人を除いてな。

「じゃあ逆に、あんたに好きな人ができたら、妹ちゃんはどう思うのかしらねぇ?」
「ちっ、余計なお世話だ」
「みくるちゃんとかなら、喜びそうよね」
なんでそこで朝比奈さんが出てくるんだ。関係ないだろ。
まぁ確かに憧れではあるが。

「はっきりしなさいよ」

「───好きとかそういうのはよくわからん。それに、恋愛は妹の為にするんじゃないだろ?
そういう人ができるかどうかもわからんし、それは俺の自由なんじゃないか?」

やけにつっかかってくるハルヒに、思わず熱く答えてしまった。
肩越しに後ろを見るが、ハルヒも後ろを向いてしまっていて、表情が見えない。

「ふぅん、そっか」
そう言って黙ってしまった。
「お前だって、好きな人なんてできるかどうかはわからんだろ?」
「…そうね」

会話が止まった。やれやれ、なんで気まずいムードになってしまうのかね?
ハルヒはその後、後ろでぶつぶつ1人でつぶやいていた。
俺に聞こえないくらいの小さな声で。


「ここでいいわ」
あれから15分ほど経っただろうか、自転車を止めるようにハルヒが促してきた。
ん?もうここまで来たんだし、家まで送るぞ?

「もうすぐそこだからいいわよ」
そう言って自転車から飛び降りる。

「そうか、わかった。気をつけて帰れよ」
「あんたもね」


またそこから言葉が途切れた。お互い目を見る。コイツからさよならも言わないし、どうしたものか。

───それじゃあまた学校でな
「…そうね、おやすみなさい」
ハルヒはほんの少しだけ複雑そうな顔を一瞬だけ見せ、踵を返して家のほうに向かって行く。


俺はまだハルヒに何か言ってない、何か言わなきゃいけないだろ、俺。

「ハルヒッ!!」

やれやれ、空は真っ暗だというのに、思わず大きな声を出してしまった。
ご近所さん、すみませんね。

「なによ」
ハルヒが振り向く。そうだ、こんな時くらい、素直にちゃんと言えよ、俺。

「───服、選んでくれてありがとうな。大事に着るよ」

それは約2秒間くらいだったうか、ハルヒは目を見開き、そして、
その大きな瞳を輝かせて

「あったりまえじゃないっ!!」

そう言ったハルヒの顔は、とても嬉しそうであった。


今日2度目の心のモヤモヤに俺自身が気づいたのは、
ハルヒがすっかり見えなくなってからのことであった。


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