後ろにハルヒをのせ、ハルヒが指し示す歯医者の方向へと俺は自転車を押して公園内を移動した。
自転車に乗らないのは自転車に乗るなという公園の注意書きに従ってのことだったりする。
そしてさっきから何かいいたそうにしていたハルヒがやっと口を開いた。

「ねぇキョン」
ん、なんだハルヒ。
「キョンは何色が好きなの?」
さっきいわなかったっけか、青だな。しかしハルヒの声なんだか上ずってないか?
「青以外でよ、例えば黄色とかピンクとか白だとどれが好き」
おいそれってさっき俺がSOS団のみんなを例えた奴じゃ…
ハルヒお前はなんてわかりやすいんだ?
たしかハルヒが黄色で朝比奈さんがピンク、長門が白だったよな。

それにしてもさっきスーパーで言いかけてたのはこれだったのか。
ここで黒とか答えるほど空気が読めないわけではない俺だが
さてなんて答えたものか……。
ハルヒの様子を伺うと不安と期待が入り混じったような様子でこっちを見ている。
そんなハルヒを見ていたら正直に答えようかとも思ったが
さぁどうする、俺。
「キョン?」
あっあぁ色の話だよな、色、黄色だ、うん黄色がいいな。
「ホントに?」
嘘じゃないさ、黄色だ。俺はとっさに自分の正直な気持ちを答えていた。
そしてハルヒの表情が笑顔に変わり、それにつれ俺は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
それを悟られまいとして俺は更にハルヒに話しかけた。

そっそれにハルヒだって黄色が好きだろ?
今日だって黄色いのだし、と俺はハルヒのカチューシャを見ながら答えた。
「うんあたしも好き……えっ今日が黄色って、ちょっとなんで知ってるのよ?」
なんでって見ればわかるだろ?
それにしてもなんでハルヒはこんなに血相を変えてるんだ?

「みくるちゃんは毎日みてるけど大抵ピンクだし、合宿やプールの時の有希はいつも白だわ」
すまんハルヒ話が見えないんだが……。というかテンション高すぎないか?
「古泉君はしらないけどあんただって今日青だったじゃないのよ、しらばっくれないでよ!」

朝比奈さんは大抵ピンク……、長門はいつも白、そして俺は今日青?
ハルヒがいった言葉が俺の記憶を呼び覚ます。

部室をノックする習慣が無かった頃、幸運にも目に飛び込んできた着替え中の朝比奈さん
彼女が素肌に身に着けていたのはピンク色のそれだったような……。

次は教室に横たわり上履きに書かれている「長門」という文字を眺めていたとき
そういえば寝ころがった俺の視界の片隅でスカートの奥に白いものがチラチラしていたような覚えが……。
そして俺が今はいているのは青のトランクス。
つまりハルヒがいっているのは俺が彼女達の下着の色を……。

するとハルヒ、お前今日は黄色(ゴンッ!)、ハルヒにグーで殴られた。
「なっなんてこというのよ、このスケベ!」
おいハルヒ落ち着け誤解だ、俺にはそんなつもりはない。
「うるさいわね、このエロキョン!変なこと想像しないでよね」
だから誤解だってハルヒ、俺の話をきけ。
俺ともみ合っているうちにバランスを崩したのかハルヒは自転車の荷台から落ちそうになった。
そして冷静さを欠いていたためか運動神経抜群のハルヒにしては珍しく隣の芝生へと倒れこんだ。

芝生の上にうつ伏せに突っ伏しているハルヒをみて、あぁ確かにハルヒは今日黄色なんだなと俺は確認した。
つまりそのなんだ小学生あたりがよく言う「パンッ、2ー、○、見え」な状態、それが今のハルヒだった。

俺は自転車を置き倒れているハルヒに近づきとりあえずハルヒのスカートの乱れを直した。
まわりに人が見当たらないとはいえどこから人がくるかわからないからだ。
「ちょっとキョン! 変なところ触んないでよ!」
おっハルヒ大丈夫か? 怪我はないか?
「平気よ、芝生がクッション代わりになったから」
そうかハルヒが無事でよかったな。しかし真っ赤だなコイツ、まぁ当然といえば当然か?

「まぁいいわ、一回だけあんたの言い訳を聞いてあげる、下らない言い訳だったら死刑よ死刑!」
俺に恥かしい格好を見られたのを誤魔化すかのようにハルヒは唐突に話を変えた。
但し立ち上がったハルヒの顔は赤いままなのであまり効果はなかったが。

まぁいい、よし俺の話を最後まで聞いてくれ

まず俺が黄色いといったのはお前の頭にのってるカチューシャのことでそれ以外の意味はない。
「えっ黄色ってこれのこと?」
そうだ、それに朝比奈さんがピンクってのも彼女のイメージをそのまま口にだしただけだ。
お前だって朝比奈さんを色にたとえるとピンクだと思うだろ?
「それはそうだけど……」
長門の白だってさっきもいった通り有希=雪って連想からだ。
「そっそうなの?」
そうだ全部お前の早とちりだ。
「でもさっき見たでしょ、あたしのその……、そっちはどうなのよ」
あれは不可抗力で偶然の事故だ、誰の責任でもない。
「それでもキョンに見られたのには変わりないわよ、キョンが悪いに決まってるわ!」
トコトン理不尽な奴だな、まぁショックだったというのはわからんでもないが……。
仕方が無い奥の手を使うか。

まてまてハルヒ逆に聞きたいんだが
ハルヒはなんで俺の今日のトランクスの色を知ってるんだ?
「しっ知らないわよそんなこと、話をそらさないで」
嘘をつくな、さっき青っていってただろ。いつみたんだ?
「……午前の時よ、保健の自習が退屈だったんで外を見たら男子は体育でラグビーしてて
そしたらアンタがタックルされてジャージが半分脱げてそれで……」
それで俺のトランクスが見えたと……。
「そっそうよ、悪い?偶々よ偶然、別にずっとキョンを見てた訳じゃないわよ」
ハルヒはかなり照れてるようだ顔を真っ赤にしながら答えている。
まぁ偶々ということにしておこう、俺だって体育のときのハルヒを目でおってしまうことがある。
もちろん偶々で偶然にだ、そこっ笑うな。

なんだ結局ハルヒだって俺の見たんじゃないか。
「ちょっとくらいいいじゃない、見たって減るもんじゃなし!」
そう来たかこいつめ、よしわかったお前も俺のを見たんだよな?
だからこれでおあいこだ、いいな?

「えっおあいこって駄目よ、キョンのとあたしのとじゃ引き合わないわ!」
俺の一回じゃ足りないのか? じゃぁ明日も俺のを見るか、多分赤いトランクスだが。
なんだったら明日といわず今週一杯見せてもいいぞ。

「ちょっとキョン莫迦なこといわないでよ」
ハルヒはちょっと笑いながら俺に話しかける。機嫌が直ったようだ。
「でもいいわ許してあげる、さぁ歯医者にいくわよ!」

笑顔を取り戻したハルヒを自転車の後ろに乗せ俺達は歯医者へと向かった。

「あらここみたいよ」
あぁそうらしいな。
一見するとごく普通の歯科診療所だが実は機関御用達。
だが外見に惑われてはいけない、油断は禁物って奴だ。
インターフォンを押し来意をつげると、歯科衛生士と思しきひとが俺達を中に招じ入れた。

「とりあえず受付をしましょう、この問診票に記入してください」
渡された問診票に記入する俺達。
えぇと住所、氏名、性別、生年月日とそれとアレルギーはないよな。
痛みありでと痛みは急にと……。

なんだ?妊娠中若しくはその恐れがあるか? ってのは、あぁなんだ女性だけへの質問か。
俺には関係ない、が……まさかハルヒは妊娠とかそんなことないよな?
少し不安を感じた俺はそれとなくハルヒの様子を伺った。
「ちょっと何のぞいてんのよ、やらしいわね」
コイツは相変わらず勘が鋭いな、あぁハルヒ書き終わったのか?
「キョンこそどうなのよ、どれ見せて頂戴」
こら人のを勝手にとるな。相変わらずハルヒは行動が素早い。
「いいじゃない、見たって減るもんじゃなし」
またそれかよ……。

すると「書き終りましたか?」と後ろから声をかけられた。
服装から判断するにこの人が歯医者さんのようだ。
いかにも日本のお母さんって感じの先生、この人なら任せても大丈夫そんな安心感があった。
機関の人選も中々のものだ、歯医者が怖いハルヒでもこれなら安心して治療を受けられそうだ。
とはいえ腕の方も超一流に違いない。
意外と大学のエライ先生だったりするんじゃないだろうか。

二人してお母さん先生(と勝手に呼ばせてもらうが)に挨拶をし
「終わりました、よろしくお願いします」といってハルヒは俺の分の問診票も合わせて
お母さん先生に渡してしまった。
ハルヒがなんて書いたのか気になったがいまさら見る訳にはいかない。

お母さん先生は俺達の問診票を確認し俺達に話しかけた。
「……お二人ともアレルギーは無しで投薬の制限も無しと……」
薬の制限無しか、するとハルヒは心あたり無しに○か……、まぁそうだよな。
わかってはいたことだがおれはちょっとだけほっとした。
「それでは二人一緒に診察します、お二人ともこちらに来てください」
ハルヒの表情がちょっとだけ曇ったが俺はハルヒに声をかけ一緒に診療室に入るように促した。

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