第3章-7 Near face
翌日の放課後、俺は速攻で生徒会室に向かい、中に入ると、すでに会長が来ていた。「会長!」「何かね?」
いつもどおり、無機質な目を向け、俺を見据えた。さあ、言え。俺が出した答えってやつを!「悪いが、俺の居場所はここじゃなかったみたいだ。生徒会を辞めさせてもらう」
「ほお……。君はそれでいいのか?」
「ああ。もう何も考えずに、立ち止まるのはやめたんだ」
「そうか。酔狂なことだな」会長は、驚いた様子を見せず、興味ないように言った。ああ、そうだな。俺もそう思うぜ。せっかく平穏ってものを手に入れたってのに、大馬鹿野郎だ。だけどな、妙に居心地がいいんだよ。そんなところが、居場所ってやつじゃないのか?だから、行くんだ。
俺は走った。あいつらに言うべきことがある。キョンと朝比奈さんは笑って許してくれる気がする。だが、涼宮と長門はマジで怒っているだろう。ひたすら謝るしかない。そして、事情を話して誤解を解くんだ。 古泉、勝手に俺をSOS団に入れて、勝手に止めさせるんじゃねえ。何もせず、人任せで元の世界に帰るなんてできるか。お前らばっかり迷惑をかけれるかよ。俺も一緒に考えさせろ。その変わりってわけじゃないが、俺ができる事があれば必ず力を貸す。涼宮の退屈しのぎだって、なんだってやってやる。世話になった分だけ恩返しって奴をしないと、気持ち悪いタチなんだよ。これなら、文句ねえだろうが!
文芸部の部室に到着し、ノックをした。こんなに緊張するのは、最初に来たとき以来だ。 しかし、返事がなく、さらに緊張感が高まる。数回深呼吸し、ドアをゆっくり開けると……、
「なんだよ、くそっ!」
誰もいなかった。 タイミングが悪い。今日は涼宮の思いつきかなんかでどこかに行ったのか?精一杯の勇気とノリだけでここまで来たってのに、萎えちまった。一気に力が抜け、数日前まで俺が座っていた椅子に座りこんだ。何やってんだろうな、俺は……。
俺を呼ぶ声が聞こえる。どこか懐かしい響き……いつだったか。少なくとも最近は聞いていない。「さっさと、起きなさーい!」「うわっ!」鼓膜が破れるのではないかと思うくらいの大声が聞こえ、驚いたせいで、椅子から転がり落ちてしまった。 頭が働かない。どうやら俺はいつの間にか寝ていたようだ。目の焦点が合ったかと思ったら、涼宮が俺の目の前に立ち、俺をにらんで腕組みをして立っている。「あんた、何やってんの?」 寝起きで心の準備ができていない。えっと、俺は一体何しに来たんだ?そうだ、言うべきことがあったんじゃないか。「涼宮すまなかった!俺をもう一度SOS団に入れてくれないか!」
涼宮は数秒黙っていたのだが、じっと俺の目を見て静かに「ということは見つかったのね」不敵な顔をした。何が見つかったって?「生徒会長の弱みを、握ってきたんじゃないの?」弱み?こいつは何を言っているんだ。だめだ、寝起きでぼーとする。
「まさか、あれだけいて、何も無かったっていうの?」
待て待て、手の骨を鳴らすな!えっと、そういや会長のことで、ちょっとした疑問があったんだ。
「ああ、そういえば不思議に思ったことがある。どうやら、会長ダテ眼鏡をかけてるみたいなんだよな。眼鏡なんて面倒なのになんで……、ぐわっ!」 涼宮は胸ぐらをつかみ、馬鹿力で立ち上がらせた後、
「いてえ!」
思いっきり、頭突きをした。
「おい、何すんだよ!」
「あはははは、そういうことね。あんた、でかしたわ!」さっきまで、冬眠中に腹が減って起きた熊みたいな血走った目をしていた癖に、今では満腹になったような上機嫌になっている。相変わらず、忙しい奴。
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