第2章-3 Thought to arrive
裏側に回っていたときのことだ。そろそろキョンと合流するころだと思っていたのだが、どういうわけか向こう側からやって来たのは、女の子だった。 髪が長いので、涼宮かと思ったがどうも違う。目の前で見ると、年は俺と同じくらい、髪が腰くらいまでの長さで、目がぱっちりとし、整った顔をした、見るからにお嬢様っていう美少女だった。 誰だろうと不思議に思っていると、その女の子は俺に「こんにちは」と元気よく、清楚な笑顔を俺に向けた。やばい、もしかしてこの洋館の持ち主か?「えっと、君は?」「あたしは、詩織って言います。この屋敷に以前住んでいて、たまに屋敷の様子を見に来ているんですよ」 やっぱりこの洋館の関係者か。勝手に入って怒られてしまうな。ああ、そういうことか。すべての謎は解けた。この女の子がこの屋敷にいるところを見た人が、幽霊だと勘違いしたんだろう。 みんなに説明してくるか。涼宮はがっかりするだろうが、本当に幽霊じゃなくてよかった。もし幽霊がいたなら、涼宮が捕まえろとか無茶を言うに決まっている。魔封場は一度使ったら死んでしまう危険な技である。涼宮のわがままのために、死んでたまるか。すまん、どうしても説明したかったんだ。
「すみません、すぐに出て行きますから」 俺が、みんなのところに戻ろうとしたところ、突然、後ろから腕をつかまれた。振り向いてみると、女の子は「いかにも困っていますよー」っていう顔を俺に向ける。「あなたにお願いがあるんです。実は、不良が屋敷をたまり場にしているみたいなんです。追い払ってくれませんか?」「そうなんですか?でもそういうのは警察に言ったほうがいいんじゃ……」「警察はちょっと……。いろいろと都合が悪くて……」 何か理由があるみたいだ。どうしたもんかな。「だめでしょうか?」 捨て猫が助けを求めるような、うるうるした瞳を俺に向けた。こんな顔をされて、断れる男はいないだろう。「……わかりました、どうしたらいいですか?」「ありがとうございます!できれば、あなただけに来て欲しいんです。屋敷の中に人を入れるのは、本当は禁止されているので……」 俺は喧嘩などしたことがなく1人でどうにかできる自信はなかった。でもやるしかないよな。美人の頼みはどうも断れない体質らしい。
俺は詩織さんと別れ、涼宮達が待っている正面出入口前に戻ったのだが、キョンが俺の顔を見るなり「どこ行ってたんだ?」不思議な顔をして聞いてきた。俺の方こそキョンに、どこに行ってたんだと聞きたい。一周したにもかかわらず、すれ違わなかったんだから。そうか、キョンは適当に回ってきたんだな。そりゃそうだ、涼宮に迷惑をかけられている分、手を抜きたくもなるよな。「涼宮、開いているところなんてなかったぞ」 俺が涼宮に言うと、キョンから聞いたんだろう「わかってるわよ!」明らかに不機嫌そうな顔をした。ここはひとつ諦めてくれ。「しょうがないわね。見た感じ普通の洋館みたいだし、ぱっと見で幽霊なんていなさそうだからもういいわ。残念だけど帰りましょう」 俺達は駅まで戻り、その場で解散となった。
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