機械知性体たちの即興曲 第五日目/夜・前編
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□第五日目/夜・前編マンション1F。エレベータホール――ちーんにゃがと 「カサすげー」にゃがと 「……たしかにあちゃくらりょうこが、そう評価するのも理解できる」にゃがと 「こうまであっさり外に出られるとは」にゃがと 「(キョロキョロ)」にゃがと 「管理人もいない」にゃがと 「……白い悪魔(訳注:例の白いネコ)もいない模様」にゃがと 「……仲間を求めて、れっつご」(ボテ)にゃがと 「…………」(キョロキョロ)にゃがと 「転んだところは、誰にも見られていない。問題ない」(ムクリ……トテトテ)
あちゃくら 「あ、あはは……起きたんですか、キョンくん」ちみどり 「ずいぶん……お早いお目覚めで」キョン 「なにいってるんだ。もうこんな時間じゃないか……六時か。我ながらよく寝たもんだな……」あちゃくら 「(ヒソヒソ)……どうしましょう」ちみどり 「(ヒソヒソ)……可能なかぎり、ごまかすのです。適当に」あちゃくら 「(ヒソヒソ)……無駄な努力な気もするんですけど」キョン 「なにをこそこそ話してるんだ? ……お。荷物届いてたのか」あちゃくら 「え、ええ。そうなんですよ! ほら、お洋服まで!」ちみどり (……たいして時間は……稼げないでしょうねー……)マンションの外にゃがと 「暗くなってしまえば、この小さい体で活動するのは比較的容易」にゃがと 「……人もあまりいない」(コソコソ)にゃがと 「……静観派端末でなくても、わたしがこの状態のまま外に出ているのは探知されているはず」にゃがと 「向こうから来てくれるのが、もっともてっとり早いのだが」(コソコソ)路地裏 「……まさか、その姿のまま外に出てくるとは思わなかった」にゃがと 「…………(ピク)」
路地裏 「とりあえず、こちらへ。その姿のあなたと話していると、人目を引きすぎる」にゃがと 「……わかった」(コソコソ)路地裏???? 「……ずいぶんな強行策を選んだもの。接触を求めてこのように動く可能性は検討していたが」にゃがと 「そちらがまったくといっていい程、支援してこないせい。 その理由も知りたいが、それ以前に現在の状況、その正確な情報がほしい」暗闇から。光陽園学院の制服を着た女性 「今から、それを説明する」
にゃがと 「……あなたか」思索派端末 「お久しぶり、というべきだろうか。それとも”この世界”では、はじめましてと?」にゃがと 「どちらでもいい。あなたという存在が、そのままであるなら」
思索派端末 「なるほど。では、簡単な状況説明から。
問題のイントルーダの動きは、まったくといっていいほど捉えられていない。
周防九曜。彼女が物理的にこの世界と正確に同期していないためと考えられる」にゃがと 「情報統合思念体の考える、彼女の最終的な目的は?」思索派端末 「総体の方では、ほぼ断定している。統合思念体製インターフェイスのコア。それを確保したいのだと考えられている」にゃがと 「やっぱり、そう」
思索派端末 「今回のあなたのその幼児化についても、そうせざるをえない、という状況に追い込んだのが彼女であることは、ほぼ間違いない。
あなたを構成する余分なものを、すべて廃棄しなければならない状況を仕組んだ」にゃがと 「こちらの考えと一致している」
思索派端末 「その結果、今のあなた、朝倉涼子、喜緑江美里は、構成に必要な最低限度の部分。つまりコアしか残されていない。 ごくわずかな、入出力素子だけが残された状態で」にゃがと 「それで?」思索派端末 「広域帯宇宙存在。現在では、天蓋領域のその端末は、周防九曜の一体しか確認されていない。 その一体にせよ、人間の偽装という意味においては、我々インターフェイスの足元にも及ばないレベル。 不完全で、お粗末なものといっていい。それでも苦心の上に、ようやく作り出した、我々のまがいモノのような存在だ」にゃがと 「…………」
思索派端末 「理解はしているだろう。あれはおそらく、あなたのデッドコピーというべきもの。 表層上、可能な限りあなたを模倣して作り出したのだろうが。その完成度は比較する以前の問題といえる」にゃがと 「それは、薄々理解はしていた」思索派端末 「名前からしてもそうだ。この球状列島にかつて存在していた長門国に対する周防国。 そして、地球の気象現象から選んだというあなたのパーソナルネームは、雪。 対する彼女の名前は九曜紋から採られた。これもまた、雪の結晶を意味している。 このように名前から推察するに、あなたに対抗して作られた、というよりは、相似体として生み出されたものなのだろう」
にゃがと 「……それで、わたしを?」思索派端末 「そう。あなたを形作る上でどうしても足りないもの。もっとも根本的で、根源的で、彼らがまったく理解できない、中枢システム。 彼らはそれを、彼らにとって効率のいい形で得たいと考えている」にゃがと 「彼らにとって、不要な部分をすべて取り除いた……今のこの状態……」
思索派端末 「そうだ。彼らが欲しているのは、我々情報端末群が永い時を経て、少しずつ獲得していった人類に対する知識。 または接触用のすべてのノウハウが集積された、コア部分にあると推定されている」
七〇八号室キョン 「それで、黙って行かせたのか」あちゃくら 「……ごめんなさい」ちみどり 「キョンくんにこれ以上迷惑かけられないと思って……」キョン 「迷惑とか……まぁ……ほんの少しは思ってはいたがな」あちゃくら 「あう」ちみどり 「……ぐすん」
キョン 「だが、こうなった以上、迷惑とかそんなこと考えてどうする。 あいつ、狙われてるんだろ? ひとりきりになんてなったら――」あちゃくら 「そのこともあって、外に出たんですよ……」キョン 「? どういうことだ」ちみどり 「仲間に、直接救援を依頼しに行ったんです。にゃがとさんは……(はっ)」キョン 「……喜緑さんまで」ちみどり 「(うう……ついにわたしまで)……このように、幼児化はさらに進行中です。 このままでは回復どころが、どうなってしまうのかもわからないのです」あちゃくら 「当初は、七日間待っていれば自然と修復されると思っていたのですけど……」キョン 「……探しに行くぞ」あちゃくら 「へ?」キョン 「パーカーは……これか。よしふたりとも、ここに入るんだ」ちみどり 「え、え?」(無理やりフードに放り込まれる)キョン 「とにかく、連れて帰る。おまえらの仲間と会ってるんだったら、それも連れて帰ればいいだろ」あちゃくら 「い、いやそれは……わたしたち以外は、キョンくんたちに接触することは許可されていな――」キョン 「なんでもいい。とにかく長門を連れ帰るんだ」
マンションへの道みくる 「ふんふーん♪」みくる 「結局、三冊も買っちゃった」みくる 「わたしも読んだことないからわからないけど、イラストも綺麗だし」みくる 「読んで聞かせてあげよっと……?」みくる 「……なんだろ。ネコ?」みくる 「暗くてよくわからないけ……ど」みくる 「……長門さん?」にゃがと 「…………」(路地裏から出てくる)みくる 「どうしたんです! こんなところを出歩くなんて!」にゃがと 「……朝比奈みくる」みくる 「……どうしたの? ほんとにひとりなんですか?」にゃがと 「だいじょうぶ。問題はない」みくる 「顔色が……」にゃがと 「……心配ない。それより、マンションまで連れて帰ってほしい」みくる 「それはもちろん!」にゃがと 「……助かる」
一方その頃、マンションを出たキョンたち
キョン 「……で、アテはあるのか。長門の行き先の、アテは」あちゃくら 「(フードの中から)さあ……」ちみどり 「(フードの中から)行き当たりばったりというか……」キョン 「……マジか、それ」あちゃくら 「もともと、キョンくんや涼宮さんなんかに接触していい端末はすごく限られてるんですよ。 わたしもそのひとりだったわけですけど」キョン 「なんで」ちみどり 「……キョンくんはともかく、超能力者や未来人は、ありていにいって対抗勢力です。 あまり姿を見せたり、内情を観察されるのは得策ではないと考えられていたから」キョン 「……俺は別に問題ないじゃないか。敵とか、そんなのは」あちゃくら 「本気でいってます? どうしてわたしが、以前、キョンくんを亡き者にしようとしたかとか、その理由は説明したじゃないですか」キョン 「……さあね。忘れた、そんなの」あちゃくら 「……優しいんですねー」ちみどり 「その時の急進派……というかあちゃくらさんという個体ですけど、その、キョンくん排除行動の最大の理由は、 キョンくんがいなくなることで、涼宮さんの反応を見る、というものだったはず」キョン 「そう、だったかもな。だがそれが?」あちゃくら 「にぶちんですね。つまり、それだけ、涼宮さんの中でキョンくんの占める位置が大きいってことなんですよ」ちみどり 「あなたのこと、わたしたち”鍵”とか呼んでるんですよ? それくらい、重要度が大きいって認識なんです」キョン 「……ほんとかよ」あちゃくら 「これだから、いろいろ周りの人が大変なのです」ちみどり 「……それくらい鈍いからこそ、今の状況でもなんとかなってる、ともいえるのかも」キョン 「それだけ人のことをとやかくいって……」
どこかの雑居ビルの中で――森 「古泉くん?」古泉 「遅くまでご苦労さまです……森さんひとりですか。座っても?」森 「どうぞ。たいして美味しくないけど、コーヒー飲む?」古泉 「それは、どうも。いただきます」森 「はい」古泉 「ありがとうございます。それと……今日の件もふくめて」森 「いいのよ。仕事だから。それよりも」古泉 「……? なにか?」森 「今日、中河くんもいろいろあったようよ」古泉 「あれですか。今日の話に出てきた「別のTFEI端末からの接触」の件」森 「そう。それが少しややこしい話になりそうでね……」古泉 「――というと」森 「中河くんが接触したのは、彼女たちがいうところの革新派に所属する端末みたい。ずいぶん先鋭的な考えの派閥のようね」古泉 「考え……? すると、なにか、向こうから提案でもあったのですか」森 「その内容について、今、上の方で検討中なんだけど」古泉 「どのような内容なんです?」森 「それが……」森 「……今の、あの状態の長門有希たちを、我々『機関』が、鹵獲する手助けをしたい、というのよ」―第五日目/夜・後編につづく―
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