一人芝居
すずみやさんはSOS団の団長さんです。
古泉くんはにっこり笑ってすずみやさんに言いました。
「こんにちは、すずみやさん」
すずみやさんは表情を変えずに答えました。
「こんにちは、古泉くん!」
ながとさんは無口な宇宙人さんです。
古泉くんはにっこり笑ってながとさんに言いました。
「こんにちは、ながとさん」
ながとさんは表情を変えずに答えました。
「…こんにちは」
あさひなさんはSOS団のメイドさんです。
古泉くんはにっこり笑ってあさひなさんに言いました。
「こんにちは、あさひなさん」
あさひなさんは表情を変えずに答えました。
「こんにちは、古泉くん」
『 』はSOS団の雑用係さんです。
古泉くんはにっこり笑って『 』に言いました。
「こんにちは、『 』」
『 』は表情を変えずに答えました。
「よお、古泉」
しゃっ、と、まるではさみが布を切るような音がしました。
するとどうでしょう。『 』の肩から綿が飛び出しました。まっしろの。
古泉は人形を取り落とした。
慌てて屈むと、タイルの上に水滴が落ちる。
自分は涙を流しているのだと、彼は初めて気付いた。
――あれ、どうして僕は泣いているのでしょう。
何もかなしいことなんてないのに。
『がんばって作ったのよ!ほら、この間抜け面、『 』にそっくりだと思わない?古泉くん!』
ああ、あのときの彼女は、本当に幸せそうだった。
誰もいない文芸部室で、彼はひとり、笑う。
「好きです、涼宮さん」
人形は、答えなかった。
(この綿が血であったなら、どんなに良かったことでしょう!)
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