決戦、SOS団VSコンピ研
それは唐突な話だった。SOS団の根城となっている文芸部室に長門とコンピ研部長が現れる。長門 「コンピ研で新しいゲームを制作した。そのテストプレイをかねて、勝負がしたい」キョン「へえ、また作ったのかよ。どんなゲームなんだ?」長門 「ロボットもの。機体や武器を自由にカスタマイズ可能」みくる「(驚いて)長門さんすごいですー」古泉 「(興味津々に)ほう、それは大変自由度の高いゲームになりそうですね」ハルヒ「(どうでもいいという口調で)えー、そんなものをやっている暇はないわよ。SOS団だって暇じゃないのよ?」キョン「(あきれた表情で)年から年中暇だろ。この謎の集団は」長門 「無理強いはしない。しかし、わたしが参加して制作したゲームは初めて。協力してもらえると助かる」部長氏「(得意げに)長門さんの発案・構成によるものなんだ。おもしろさや遊びやすさは保証するよ」キョン「また負けたら、パソコンを返してもらうとか考えているんじゃないだろうな?」部長氏「(首を振って)それはないから安心してくれ。確かに最新型PCとノートPC4台は大きな支出だったけど、長門さんの加入で帳消しさ」長門 「ただし一つ条件がある」キョン「何だよ?」長門 「わたしはコンピ研側で参加する。デバッグや性能調査でその方がデータを取りやすい」キョン「(腕を組んでうなり)……そりゃ、うちの負けは確定したようなもんじゃないのか? まあ負けても失うものはないけどな」ハルヒ「(長門を見つつ不満な目で)…………」長門 「回答を」キョン「どうせ暇だし、参加してもいいぞ」みくる「あ、あたしもこういうの苦手だけど構いません」古泉 「僕も構いませんが、涼宮さんの意見に従います」キョン「(ハルヒに振り向き)で、おまえはどうするんだ? 一応、お前の団だから最終決定権はお前にあるぞ」長門 「(無表情のままハルヒを見つめる)…………」ハルヒ「(やや怒ったように)――わかったわ! その勝負の申し出をSOS団は受ける! 絶対にバコバコにするから覚悟しなさい!」 ハルヒの了承により、長門と部長はちゃっちゃとSOS団のパソコンにソフトのインストールを開始していく。長門 「(無表情ながらどこか楽しそうに)…………」ハルヒ「(そんな長門にますますおもしろくなさそうに)…………」 長門と部長が引き上げた後で。キョン「(ハルヒの方に近づき)なんか不満そうだな」ハルヒ「(アヒル口で腕を組み)さっきの有希の表情見たでしょ? あの子はSOS団の一員なのに、あれじゃまるでコンピ研の部員じゃない!」キョン「(思い出しながら)ん……確かにすっかりコンピ研っぽくなってきたような気がするな。まあ長門の意志なんだからいいじゃないか」ハルヒ「(抗議のつばを飛ばし)いいわけないでしょ! 有希はSOS団の一員なの。これは絶対にして変更不可!」キョン「無理を言うなよ。ならどうして勝負を受けたんだ?」ハルヒ「決まっているじゃない! ここでコンピ研をぎったぎったにしてどっちが上なのか知らしめてやるのよ! そうすれば有希もどっちを優先するべきかわかるはずだわ!」 キョン「(疑う視線を見せ)そんなにうまくいくもんかね」ハルヒ「ほら! 時間がないわよ! とっとと今日から特訓開始! みくるちゃんと古泉くんもぼさっとしてないでとっとと用意して! 絶対に勝つんだからね!」古泉 「(肩をすくめて)了解しました」みくる「(驚きつつ)はっはいぃぃ!」キョン「(額に手を当て)やれやれ……」 ゲームの内容は以下のようになる。 オンラインで複数人が対戦可能な3Dロボット対戦アクションゲーム。 ゲームの内容は、2チームに分かれて相手の基地を破壊した方が勝ち。機体の残存数などは勝敗に影響しない。 プレイヤーの操作するロボットのほかに、CPUが操作するロボットが配置でき、簡単な指示が出せる。総勢50機配備可能。 今回の対戦ではプレイヤー4機+CPU機46機となる。 ロボットと搭載される武器はプレイヤーが好きにカスタマイズすることができる。操作コマンドも好きに設定できるため、自由度はかなり高い。 使用するロボットはテンプレートのものが用意されている。基本的な武装はライフルとヒートソードのみ。カスタマイズで追加可能。 プレイ中は音声チャットで味方や許可すれば敵とも会話ができる。キョン「(マウスを動かしながら)自由度が高いから複雑と思ったら、結構簡単にカスタマイズできるな、これ」古泉 「ですが、機体バランスの調整が微妙ですね。上手く設定しないとまともに動かない機体ができるだけですから」キョン「確かに設定自体は簡単だが、望んだ機体を作るには結構頭を使うことになりそうだ」みくる「ふええ~、全然わからないですぅ~」ハルヒ「バランスなんて関係ないわ! スピード、耐久度、運動性、パワー全部最強よ! もちろん飛行形態に変形もね! そうでなきゃおもしろくないんだから!」キョン「……ハルヒは戦力になりそうにないな」 機体設定が終わった後、練習ステージに入ってテストプレイしてみる。キョン「(キーボードを叩きながら)け、けっこう操作が難しいな……もうちょっとバランス調整が必要か?」古泉 「(ちゃっちゃとマウスを動かし)あまり操作は難しくしない方がいいみたいですね。機体を使いこなせなくては意味がありません」みくる「(練習ステージの陸上をちょこちょこ歩かせ)よいしょ、よいしょ。動きました~」キョン「(と、空を暴走して飛行するハルヒの機体を見つけ)おい、何やっているんだよ」ハルヒ「(ディスプレイとにらめっこしながら)何よこれ! 全然言うこと聞いてくれないわよ、このロボット!」キョン「(呆れながら)お前の機体調整がめちゃくちゃなんだよ」 2日目から戦闘訓練開始。相変わらず機体をもてあましているハルヒを尻目に、キョンと古泉は練習に励む。キョン「(ライフルを撃ちながら)以外と当たらないものだな。自動で照準調整してくれているんだが」古泉 「(キョン機と距離を取りながら)遠距離では無駄な撃ち合いになりやすいですね。ならば――」キョン「(急接近してきた古泉機に)うわっ!」古泉 「このように接近戦に持ち込んだ方がいいのかもしれません」キョン「(古泉機を殴り飛ばし)顔が近いんだよ、気色悪い」ハルヒ「どいてどいてー!」キョン「(突然暴走飛行してきたハルヒ機に)おわ! あぶねえ!」ハルヒ「(頬を膨らませて)あんたがそんなところでぼさっとしているのが悪いのよ! ああっもう! また勝手に飛んでいるし!」キョン「(空を飛び回るハルヒ機を見つめ)でも、昨日よりは動かせているような……」みくる「(みくる機を地面を走らせ)あはっ、キョンくん走れるようになりました~」 3日目から、ハルヒがキョンに対して直接対戦による訓練を求める。キョン「その前に機体を使えるようになったのか?」ハルヒ「少しは動かせるようになったわよ。もちろん、機体調整は最強のままでね」キョン「(感心しながら)あんなむちゃくちゃスペックをよく動かせるな……しかし、それだと古泉の相手がいなくなるぞ」古泉 「(みくるを差し)大丈夫ですよ。僕なりに作戦を考えたいですし、朝比奈さんにもそれなりの役割を持っていただきたいと思っていたので」キョン「そうか。ならいいぞ」ハルヒ「(キーボードを叩き)いっくわよーキョン!」キョン「(いきなりハルヒ機に体当たりされて)何だ、お前の攻撃はこれか!?」ハルヒ「(すねて)仕方ないじゃない。間合いを詰めるだけで大変なんだからね!」キョン「(ライフルをハルヒ機に数発撃ち込みながら)そんなんじゃただの的だぞ、ほれほれ」ハルヒ「痛い痛い! 何すんのよ、キョン!」キョン「(ハルヒ機のダメージ状態を見て)さすが耐久性も最強だ。これだけ撃ち込んでもこんだけしかダメージを受けないのか」ハルヒ「(得意げに)ふふん、最強だから当然じゃない」キョン「(いたぶるように撃ち続け)でも、そのうちやられるだけだぞ。いっそ、長距離ライフルでも持って砲撃台にでもなった方がいいんじゃないか?」ハルヒ「いやよ! そんなのおもしろくないじゃない!」キョン「やれやれ」古泉 「(みくるに指導しつつ)補給装置をつけましょう。他の人と接触すればエネルギーを回復してあげられますよ」みくる「あ、それならあたしにもできそうですね」 4日目。なんだかんだで機体を使いこなしつつあるハルヒ。キョン「(高軌道で動くハルヒ機に苦慮しながら)そういやお前、マウスは使わないのか? こないだからキーボードだけで操作しているみたいだが」ハルヒ「(機敏な動作でキョン機を追い詰めながら)あんた、有希のキーボード操作見たことあるでしょ?」キョン「ああ。あれはマジでキーボードが壊れそうだったが」ハルヒ「あれを相手にするのよ。マウスなんてちまちま動かしていたら勝てないわ。それっ、いっただき!」キョン「(自機をハルヒ機のヒートソードで一刀両断されて)……いつの間に!?」古泉 「(武器開発に没頭中)…………」みくる「(自機を走らせて)よいしょっとこれで回復……です……ねっ~」 5日目。すっかりキーボード操作が長門級になったハルヒ。キョンは全くついて行けず。ハルヒ「(キョン機をライフルで撃ち抜き)はい、これで本日6回目の撃破っと」キョン「(ため息をつき)おいおい、少しは手加減してくれよ。これじゃ俺の練習にならねえじゃねえか」ハルヒ「いいのよ、あんたはあたしとこうやっているだけで十分なんだから。いざとなったらあたしが一人で全滅させてやるわ」キョン「勝利条件は相手の基地を叩くことだぞ。マップには廃墟とか渓谷とかあるんだから、拡散されて動かれたら一人じゃどうにもならん」ハルヒ「どうにかするわよ。そんなの。とにかく勝てばいいのよ勝てば!」古泉 「(ハルヒの元に近づき)涼宮さん、僕なりにゲームを分析してみて、それなりの作戦を立ててみましたので聞いてもらえますか?」ハルヒ「いいわよ。どんなやつ?」古泉 「(ニヤケスマイルで)旨くすれば、開始5分で勝てるかもしれません――」 そして、決戦当日。開始5分前。みくる「(緊張した顔つきで)ふえ~、なんだか怖くなってきましたぁ」キョン「大丈夫ですよ。朝比奈さんは補給に専念してくれればいいですから。呼ばれたら動けばいいだけです」古泉 「(ハルヒの方を向き)予定通り、CPU機30機はお借りしますね」ハルヒ「(目を閉じ集中したまま)いいわよ。残りも好きにしちゃって」古泉 「ご厚意感謝します」キョン「(古泉の作戦を思い浮かべつつ)作戦通りいけば楽勝だが、相手には長門もいるしそう上手くいくかね」古泉 「味気ないかもしれませんが、勝つためには手段を選ぶ必要はないかと」キョン「(ハルヒをみて)大将は予定通り基地から動くなよ? どこから敵が襲ってくるかわからないからな」ハルヒ「わかっているわよ」 全員、マイク付きヘッドフォンを装着し、準備万全。 対戦開始時刻。ゲーム画面が起動し、マップにログインする。 マップは両陣営の基地の間に廃墟が並び、その周辺を険しい山岳地帯が囲んでいるものだった。 ~~SOS団サイド~~キョン「練習マップと変わらないな。これなら作戦にも支障を来さないだろ。古泉、任せたぞ」古泉 「わかりました」みくる「あたしはキョンくんのそばにいますね」古泉 「(飛行型CPU機30機をコンピ研基地に前進させ、自分は渓谷に入り)では、行ってきます。そちらはお任せします」 ~~コンピ研サイド~~部長氏「(30機の機影が基地に一直線に来るのを確認し)動き出したな。いきなり突撃するとはさすがあの団長と言ったところか」長門 「(ディスプレイを見つめ)油断は禁物。それにこれは高い確率で涼宮ハルヒによる作戦ではないと推測できる」部員A「それはどうして?」長門 「彼女が作戦を指揮しているなら、真っ先に本人が突撃してくる――こちらの射程に入った。基地周辺のCPU機の対空砲火で迎撃を」 ~~SOS団サイド~~古泉 「(次々と撃墜される飛行型CPU機に)やはり基地周辺を固めていましたね。それもこちらの想定内ですが」キョン「そっちは大丈夫なのか?」古泉 「ええ、予定通りポイントに到着できそうですよ」 ~~コンピ研サイド~~長門 「(突撃してきたSOS団CPU機の8割の撃墜を確認後)おかしい」部長氏「どこが?」長門 「プレイヤー機が一つも動いてこない。さらに攻撃も淡泊。無駄に損害を出しているように見える」部長氏「それは向こうの作戦ミスなだけだと思うけど」長門 「涼宮ハルヒだけではない。古泉一樹など綿密な作戦を立てられる人もいる」部長氏「(ついに突撃してきたSOS団CPU機をすべて打ち落とし)そうは言ってもこれで終わりさ。さて次はこっちの――」 ~~SOS団サイド~~古泉 「(コンピ研基地へミサイルを発射し)ところがぎっちょん!」ハルヒ「……ぎっちょん?」 ~~コンピ研サイド~~長門 「基地南東10kmよりミサイル発射を確認。計4発」部長氏「ミサイル!? まさかさっきの突撃はこれを隠すためだったのか?」部員B「でも4発だけなら楽に迎撃が――」部長氏「(4発のミサイルから無数のクラスターが放たれ)……まずいやられた! 一発でも落ちたら基地は終わりだよ! こんな武器を作るなんて反則じゃないか!?」 長門 「(高速でキーボードを叩き)任せて。一つ残らず撃ち落とす」部長氏「でも、全部で100発以上はあるよ!?」長門 「狙撃モードをフルバーストへ移行。敵クラスター爆弾すべてにロックオン。狙撃開始」部長氏「(基地落下前にすべて撃墜した長門に)嘘ぉ……」 ~~SOS団サイド~~キョン「(仰天し)おいおい! 全部撃ち落とされたぞ!」古泉 「(驚愕し)これは……参りましたね。おそらくやったのは長門さんでしょう。チートの可能性はないと考えても彼女の能力なら十分に可能かと」ハルヒ「(なぜか誇らしげに)ふふん、これくらいできないとSOS団団員はつとまらないわ」キョン「今は対戦相手だ。そんなことより次はどうするんだ?」古泉 「さっきの突撃で6割以上の戦力を失いましたからね。次は向こうの出方を見るしかないでしょう……おっときましたよ」キョン「(古泉機目がけて接近する25機のコンピ研部隊を見て)手近な奴を大戦力で叩くつもりか……」ハルヒ「(残ったCPU機16機を古泉の支援に向けて)古泉くん、援軍を向かわせるわ。みくるちゃんも補給に向かって」 ~~コンピ研サイド~~長門 「敵の大半の戦力が移動開始。向こうの基地周辺にはプレイヤー機は二機しか存在していない」部長氏「これはチャンスだね。僕が交戦地域の反対側から向こうの基地に向かうよ。ミサイルを撃った奴は任せる」部員A「了解」部員B「任せてください」 ~~SOS団サイド~~ CPU機同士の乱戦。しかし、長門の超長距離狙撃でSOS団CPU機は次々と撃墜されていく。古泉 「やはり長門の力は強大ですね……」みくる「古泉くん、補給にきました~」古泉 「ありがとうございます。さて……どうやらあの手しかないようですが」みくる「(補給を終えてSOS団基地に帰還しようとし)じゃあ、あたしはもどります……きょえええっ!」キョン「朝比奈さん、どうしましたか!?」みくる「(部員A機の攻撃で自機を破壊されて)ふええ、やられちゃいましたぁ~」ハルヒ「ああっ、もう何をやっているのよ!」キョン「(レーダーに敵機を捕らえたの見て)ん? 反対側から一機接近してくるぞ」ハルヒ「とっとと迎撃に行きなさぁい!」 ~~コンピ研サイド~~長門 「(古泉機の異変に気がつき)今すぐ全軍撤退すべき」部員A「どうして? こっちが圧倒的優位なのに」部員B「そうだ。あと数分で全滅に追い込めるはず」長門 「(古泉機から発する異常エネルギーを見て)うかつだった。味方ごととは」 ~~SOS団サイド~~ハルヒ「(古泉機の状態に気がつき)ちょっと、古泉くん! 何をするつもりなの!?」古泉 「最初の作戦失敗は僕が長門さんの力を過小評価したのが原因です。ですから、その埋め合わせを」ハルヒ「(古泉の覚悟を悟り)……わかったわ。あなたのSOS団に対する貢献はさらなる二階級特進で評価させてもらうから」キョン「全く……格好つけやがって」古泉 「(キーボードを叩きながら)これはこれでおいしい役目ですよ。では、一足先に退場させていただきます――」 ~~コンピ研サイド~~部員A「(古泉機の自爆に巻き込まれ)うわあああああ!」部員B「(同様に)やられたっ!」部長氏「(驚愕し)まさか味方ごと自爆するなんて……機体内部にどでかい爆弾を仕込んでいたとは。こっちの交戦中だったCPU機もすべてやられたか」長門 「損害は大きかった。しかし、これで向こうはプレイヤー機二機のみ。こっちはCPU機だけでも21機残っている。圧倒的優位に変化はない」部長氏「(キョン機を視認し)おっと……どうやらこっちにもお客さんのようだね」 ~~SOS団サイド~~キョン「(敵機を発見して)おい、見つけたぞ。どうやら基地に向かっていたみたいだな」ハルヒ「味方機ももうあんまりいないんだから、ちゃっちゃと片付けちゃいなさい」キョン「CPU機じゃなくて、プレイヤー機だぞ。早々楽に――ん、敵からの通信?」部長氏『やあ、どうも。ここは臨場感を出すために、お互い通信したまま戦わないかい? 一対一だから隠すこともないしね』キョン「(相手の余裕ぶりにむっとして)随分こっちを低く見られたもんだな。わかったよ、やってやろうじゃねえか」部長氏『(キョン機に急接近し)では、行かせてもらう! キミたちにはやられっぱなしだったからね! ここで因縁を晴らしておきたいのさ!」キョン「(部長機と距離を取りつつ)見た目は俺と同じ標準ロボットと同じだが、なんか右腕がでかいのが気になるな……なんか仕込んであるのか?」部長氏『(キョン機を追いかけ)はっはっは、どうしたどうした! 逃げるだけじゃ僕には勝てないぞぉ!』キョン「(うんざりしつつ)なんかただならぬ怨念を感じる……まあ無理もないか。だが、こっちも無様にやられたらハルヒに何を言われるのかわからんのでね!」部長氏『(キョン機に一瞬で背後に回り込まれ)早い!?」キョン「(部長機の動きがやたらとスローに見えて)なんか思ったより動きが遅いな。これもハルヒとの特訓の成果か? まあいい、これで頂きだ!」部長氏『(急旋回で振り返り)甘い!』キョン「(斬りつけたヒートソードを部長機右手に掴まれ)なんだ!?」部長氏『(右腕に仕込んだ物質膨張機構を起動させ)これで終わりさ!」キョン「(膨張していくヒートソードを投げ捨て)あぶねえっ!」部長氏『(爆砕させたキョン機のヒートソードを投げ捨て)ちいっ、つかんだままだったらそのまま機体も膨張させられたってのに」キョン「(間合いを取りつつ)あんなもんを隠していたのか……こいつはうかつに近づけねぇ」部長氏『(一気にキョン機に近づき)そんなに離れていたら決着がつかないよ!』キョン「(その動きをことごとくかわし)見える……俺にはお前の動きが手に取るようにわかるぞ」部長氏『なんて運動速度だ。こっちの方がスペックは上回っているはずなのに!』キョン「(ライフルを撃ち、部長機に命中させ)スペックだけが機体性能を決める訳じゃないってことだな!」部長氏『(次第に蓄積するダメージに)くそっ、ならばこれならどうだ!(右手を地面につけて、爆砕させ、その勢いでキョンに飛びかかる)」キョン「(唐突な特攻に反応できず)しまった!」部長氏『(キョン機を押し倒し、馬乗りの姿勢に持ち込んで)ふはははははっ! つーかまえたぁ! 今キミの命運は僕の手の中にぃ! これが裁きだ!」キョン「くそっ!」部長氏『(右手を突きつけ)ふふっ、何か言い残すことはあるかい?」キョン「(レーダをちらりと見て)ああ、一つだけある。訂正だけどな」部長氏『ほうぅ? 聞いてやろうじゃないか?』キョン「このゲームは一対一じゃなくて……チーム対戦型ってことだよ! やれハルヒ! 俺に構うな!」部長氏『(背後の上空を飛行するハルヒ機に気がつき)なんだって!?(そのままキョン機ごとハルヒ機のライフル狙撃で貫かれる)』キョン「さすがに――訓練しただけあって腕は最高だよな……」部長氏『ひ、卑怯だ! 男の決闘に水を差すなんて!』ハルヒ「ケンカに卑怯もへったくれもないわ。勝てばいいのよ、勝てば」部長氏『(爆発する自機を見ながら)く、くそぉぉぉぉぉぉ!』キョン「あとは任せたぞ、ハルヒ……」ハルヒ「……キョン、あんたの死は絶対に無駄にはしないから。必ず勝利で返すわ」 ~~コンピ研サイド~~長門 「(悔しがる部長を尻目に)これで向こうのプレイヤー機は一機のみ。撃破の必要はなく、全方位からCPU機で基地への攻撃を仕掛け、破壊する」部長氏「ふんっ、こっちはまだ21機も残っているんだ。これを一機で全滅させるなんて無理だろうから、勝ちは決定的だな」長門 「(CPU機をSOS団基地周囲へ展開させ)まだ油断は禁物」部長氏「(SOS団基地前方の5機のCPU機が消滅し)もう5機? 早すぎる、何かインチキを……」長門 「違う……これは」 ~~SOS団サイド~~ハルヒ「(超高速移動と100発100中のライフル攻撃でコンピ研CPU機を撃ち落としまくりながら)行かせない! 一機足りとも! 死んでいった団員のために!」 キョン「(ちょっと笑みを浮かべて)ハルヒ……」 ~~コンピ研サイド~~長門 「(包囲していたCPU機の機影がすべて消滅したのを確認して)こちらの戦力はすべて消滅。残っているのはわたしだけ」部長氏「(驚愕し)なんてことだ。一機も基地にたどり着けないなんて。時間にして3分も経っていないぞ。相手はいったい何なんだ!?」長門 「(ゆっくりとレーダを見つめ)残っているのは涼宮ハルヒだけ。こちらにまっすぐ向かってくる」部長氏「ふん、基地を無視して長門さんと真っ向勝負とは無謀にもほどがある。ん、通信許可要請?」長門 「(ハルヒからの通信許可要請をOKにして)通信を許可した。話は」ハルヒ『本当にもう一対一だからね。話しながらの方がやりやすいわ。このままにしておきましょう』長門 「了解」ハルヒ『あと、最初に宣言しておくけど、ここまできて相手の基地を破壊して勝とうなんてチャチなことは考えないわ。有希を倒して堂々と勝利をつかませてもらうから」 長門 「そう」ハルヒ『悪いけど――有希! 行くわよ!』長門 「来て」部長氏「(長門機の正面からつっこんでくるハルヒ機に)はっはっは! 狙撃で外したことのない長門さんを見くびりすぎなんじゃないか? 一発で終わりさ」長門 「目標固定。狙撃する(狙撃ライフルを発射)」ハルヒ『(皮一枚で狙撃を回避し、無理なキーボード操作で指がつりそうになりつつ)くうっ!』部長氏「(仰天して)長門さんの狙撃をかわした!?」長門 「(少し表情を硬くして)…………」ハルヒ『(猛烈な勢いでキーボードを叩きながら)人呼んでハルヒスペシャル!(ライフルを長門機目がけて乱射)』長門 「(ショルダーシールドで攻撃を受けつつ、再度狙撃体制に入り)次は外さない(逃げ場がないように二発発射)」ハルヒ『(これまたぎりぎりでかわし)甘い! 甘いわよ有希!』部長氏「長門さんの狙撃が通じないなんて……何者なんだよ!?」ハルヒ『あえて名乗らせてもらうわ――あたしは涼宮ハルヒ! SOS団団長よ!』長門 「……くっ」ハルヒ『(長門に密着しヒートソードで斬りかけ)もらったぁ!』長門 「(すんでの所で自機のヒートソードでそれを受け止め)…………」部長氏「(あごが外れそうなほど驚き)長門さんに接近戦をやらせるとは!」ハルヒ『予想通り、狙撃砲台として重装甲で固めているわね。その機体じゃ、あたしには追いつけないわよ!』長門 「超高機動、超高スピード、超重装甲――これらをすべて取り込んだ明らかにバランスが狂った機体を使いこなしている。驚愕に値するとしか言えない」ハルヒ『ほめてくれるのはうれしいけど、今は敵同士よ。そんなことをしている間に!(長門機のショルダーシールドを切り裂く)』長門 「(超高速キーボード操作を始め)ならば、こちらも相応の機体で相手する」部長氏「まさか、戦闘中に機体データを書き換えるつもりかい!? た、確かにルール上は可能だけど……」長門 「問題ない。完了した(重装甲がすべてパージされて、ハルヒに似た高機動タイプに変化する)」ハルヒ『うそっ!?』長門 「(長門機の脇にしまってあった短ライフルを取り出し)反撃する」ハルヒ『くっ、このぉ!(ブースターをフル稼働させて、長門機から一気に距離を取る)』部長氏「(半ば呆れ気味に)あっちもこっちも化け物対決になってきた」長門 「(ハルヒと同等の速度でハルヒ機に接近し)逃がさない」ハルヒ『(ライフルを構えて)来ると思ったわ!』長門 「(一歩早く長門機がそのライフルを蹴り飛ばす)…………」ハルヒ『(逆の手に持っていたヒートソードを取り出し)それも予測通りよ!(長門機の右腕を切り落とす)』部長氏「やられた!?」長門 「(左腕でヒートソードを構え)まだ――戦える」ハルヒ『(長門機の肩をつかみ、衝突させ)片手でどこまでできる!?』長門 「これなら条件は同じ(足から鋭利なカッターが飛び出て、ハルヒ機の左腕を切り落とす。さらに右足膝の切断する)」ハルヒ『くうっ! でも飛べるんだから、足なんてなくなったって関係ないわ!(小さく機体を浮かせ、ヒートソードで長門機の左腕も切断する)』長門 「…………っ!」部長氏「両腕を失った! もうだめだ!」ハルヒ『(長門機にブースター全開で飛びかかり)終わりよ、有希!』長門 「……まだ手は残っている(長門機の背中からヒートソードが握られた手が現れる)」ハルヒ『(それに機体の急所を貫かれ)そ、そんな……っ! 隠し腕なんて……』長門 「これを使うつもりはなかった。あなたがそこまで追い詰めた賞賛に値する」ハルヒ『(爆裂四散するハルヒ機とともに)それはほめていないわよ、有希……』 部長氏「やったー! 勝った! 勝ったぞー!」部員A「バンザーイ!」部員B「コンピュータ研は永遠だぁ!」長門 「(複雑な表情で)…………」 ~~SOS団サイド~~キョン「負けちまったな」ハルヒ「…………」キョン「別に失うものもないし、いいじゃないか。俺はそれなりに楽しめたぞ」ハルヒ「……まっ、いいか。あたしもおもしろかったしね。あとは有希がもうちょっとSOS団優先してくれれば……」長門 「(文芸部室に入ってきて)ただいま」キョン「ん? 長門、コンピ研の方はもういいのか?」長門 「あとは既存部員でできる作業だけ。わたしは本来こちらにいるべきだから戻ってきた」ハルヒ「(100Wの笑みを浮かべて長門に抱きつき)有希!」キョン「(そんな二人を見て)だから言っただろ。お前の考えすぎだって」 ~おわり~
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