下衆谷口の聖夜2
<<前回のうらすじ>>
┌──┐ ↓ │ 鶴 屋 │ ↓ │ 古 泉 │ ↓ │ ハルヒ │ ↓ │ キョン │ ↓ │ みくる │ │ │ └──┘
(※以下エンドレス)
谷口「聖夜をいろどるイルミネーションにかまけていちゃつくアベックたち」
谷口「天より舞い降りる純白の白雪と一緒に溶けてなくなればいいのに」
谷口「タニーです」
長門「………今はそんなことを言っている場合ではない」谷口「おっとそうだった」長門「………それに少子高齢化が叫ばれる昨今、これはこれで日本としては助かる現象といえる」谷口「夏の終わりから秋にかけてが誕生日の子供たちで溢れかえる世界に乾杯」
長門「………本当にそんなことを言っている場合ではない。みんなを追わないと」谷口「おっとそうだったぜ! すんでのところで忘れるところだった!」
谷口「とうとう文芸部室を飛び出して夜の町へ繰り出してしまったSOS団を追いかけなければ!」
ハルヒ「あはは」キョン「うふふ」みくる「えへへ」鶴屋「やん」古泉「うふふ」
谷口「あの弛緩しきった、見るからにだらしない顔はどうだ。あきらかに非物質性情動師走言語の末期症状。早くなんとかしなければ取り返しのつかないことになる」長門「………非物質性情動師走言語のサーキットに入ってしまったが最後、各人の望みは永遠にかなうことはない。その反面、各人の相手を求める願望は際限なく肥大化していく。そしてその巨大化した願望が個人の限界を超えた時、制御心は完全に失われて暴走してしまう。俗にそれを痴情のもつれという」 谷口「何年も前のことだが、棚橋○至が当時つきあっていた女優に刺されたのが有名か?」長門「………伏字にするくらいなら最初から言わなければいいのに」
谷口「それにしても奴らはなにをしているんだろう。さっきからネオン街をうろうろと」長門「………みんな意中の人と2人きりになれず、また2人きりになるためどう切り出して良いか分からず困っている状態」谷口「各自の脳内で作戦会議中ということか」長門「………今が非物質性情動師走言語を解消する最後のチャンス。この機を逃せば後はなすがまま」」
キョン「朝比奈さん!」みくる「きゃっ!? ど、どうしたんですかキョンくん」
キョン「聞いてください、朝比奈さん」
キョン「俺、俺ずっと前から朝比奈さんのことが……!」
谷口「まずい! そうこうしている間に、キョンがいった!」長門「………私にまかせて」
ピポパポピ プルルルル プルルルル ガチャ
長門「………もしもし。そう、私。例の件で。そうそう。はいはい。そう、よろしく」 プツッ谷口「どこに電話したんだ?」長門「………デリバリーラヴァー」谷口「デリバリー? 宅配恋人?」
ブルン ブルンブルン バババババババババ キキー!
橘「呼ばれて飛び出て~~~、こ ん ば ん は ! イヴの夜にも電話ひとつでバイクに乗ってどこへでも駆けつます! デリバリーラヴァー橘をご指名、ありがとうございま~す!」 長門「………電話を切ってから28秒で到着。新記録達成」橘「ついに30秒の壁を乗り越えられました! 毎度どうもです!」
谷口「長ちゃん、この人は?」
橘「ひとりぼっちで人恋しい夜に! なんとなく誰かとお話しした~い! そんな時に! ピッポッパ!っと電話一本ですぐさま駆けつけあなたの恋人に早変わりする宅配屋!」
橘「それがこの私。橘京子なのです!」谷口「ははあ。それはなんとも素晴らしいご職業でございまするな」
橘「ハイこれ。営業用の名刺。私用でかけちゃノンノンだめだめダメダメよ。ノーセンキューよ」谷口「ぱいぱい」
橘「それで、今日の私の彼氏はどこのどなた?」長門「………あそこで朝比奈みくるの肩をつかんで神妙な顔をしている人」橘「ふふん。なんだか修羅場ってるみたいだけどぉ、ちょっとワケありって感じ?」長門「………そう。実は、かくかくしかじかという訳」橘「あっら~。それは大変ね。ま、クリスマスのイヴにはよくあることですよ。んじゃ、ちゃっちゃと行ってちょちょいと片づけてくるからねん♪」
キョン「朝比奈さん! 俺、ずっと前からあなたのことが……」橘「キョンく~~~~~~~~ん! つっかまっえた! きゃは☆」キョン「え? あ? なに?」
橘「やっと見つけたよ~。んもう、京子ずっと待ってたんだゾ!」キョン「な、なんだ、突然なんのことだ??」橘「とぼけちゃってぇ! みんなの前だからって照れなくてもいいのに。で、今日はどこに行く? まずは、食事? その前にカラオケかどっかで遊んでく? それとも……わ・た・し?」 キョン「待て待て! だから何のことだよ!?」みくる「キョンくん、確かその人は……。その人、キョンくんとそういう仲だったんですね」キョン「ごご誤解です! これは何かの間違いです!」橘「だから~、恥ずかしがらなくったっていいですよ~。なんなら、いっそこの場で公表しちゃいましょうよ!」
橘「キョンくんと私は、深く深~く愛し合った仲ですって!」
谷口「なんだあれは? ただ橘京子がキョンにジャレついているだけじゃないか」長門「………非物質性情動師走言語の無限ループは、サーキット上に障害物のない状態だからこそ循環できるもの。しかしそこに異物を障害物として混入すれば、サイクルは崩壊する」 谷口「???」
長門「………蛇口にホースを取り付けて水を流している場面を想像して。水道にゴムホースをかませて蛇口をひねれば、ホースの先から水が出る。これはホースの内部に空洞があり、そこが一直線に出口までつながっているため。しかしホースを足で踏んで、完全に中の空洞を塞いでしまうと」 谷口「水が逆流して、蛇口からあふれ出すということか」長門「………サイクルを止めるには、それがもっとも手っ取り早い方法」
ハルヒ「ちょっとキョン。その女の人、誰? 確か前にあんたの中学の友人と一緒にいた人よね?」キョン「あ、いや、これは、ちがうんだ。俺も何だかよく分からないが、ちがうんだ!」ハルヒ「ちがうって、何が違うのよ」橘「なんにも違いませんよ~。キョンくんと私は、アツアツホヤホヤのカップルなので~す!」キョン「なっ!? おま、事態をややこしくするようなことを! 何なんだよ!? 何の陰謀でこんなことを!?」橘「陰謀だなんて……そんな……私はただ、キョンくんとイヴの夜を楽しく過ごしたかっただけなのに……クスン」
ハルヒ「キョン……あんた、これでもまだ知らぬ存ぜぬを通すつもりなの?」キョン「だ、だから! 俺はなにも知らない! 無実だ! 今一番混乱しているのは間違いなく俺なんだ!」
古泉「まあまあ、落ち着いてください涼宮さん。彼が誰とつきあっていようが関係ないじゃないですか。それよりも、僕と今冬の合宿の件についてゆっくり話をしましょう」 ハルヒ「うっさいわね。古泉くんはちょっと黙ってて!」鶴屋「ちょっとハルにゃん、古泉くんに対してそんな言い方はないんじゃないかな」ハルヒ「大きなお世話よ。私はキョンに話をしてるの!」鶴屋「そんな言い方はないんじゃないかな!?」みくる「皆さん喧嘩はだめですよ。話し合えば平和的に解決しますよ」鶴屋「話し合いじゃ済みそうにないから、みくるは今日はこれで帰っときなよ。また明日ね」みくる「そ、そんなぁ……」キョン「ちょ、ちょっと待ってください、朝比奈さん、これは違うんです、朝比奈さん!!」古泉「こういう修羅場は朝比奈さんには不得手でしょう。早々に帰宅されるのが最善かと」キョン「なんだと、こいつ!」
橘「怒ったキョンくんもス・テ・キ」
橘「ちゅっ☆」
キョン「あ……ああ………」ハルヒ「あ────────────っ!!」みくる「す、涼宮さん!? おちついてください~」キョン「あああ朝比奈さん、これはちがうんですなにかの手違いですよ!」鶴屋「手違い物なにも、現行犯じゃないのさ!」
キョン「俺はなにも知らないんだああああああ!!」
~~~~~
橘「っとまあ、さてさてこんなもんでどうです? んふふ。後は自然分解するだけって感じ?」長門「………さすがデリバリーラヴァー業界の若きルーキー。良い仕事をしてくれる」谷口「なんというラヴァー。これはまさに第三種ベンチャー産業」
橘「さて、そんじゃ私はこれで。次の仕事が入ってますから。はい、これ請求書。報酬はいつもの通り口座振込でよろしく!」長門「………了解。おつかれさま」
ブルン ブルンブルン バババババババババ
ハルヒ「ふんっ! もう、キョンなんて知らない! 勝手に繁華街でも魔境でもどこにでも行っちゃえ!」みくる「うぅぅ……今日は私かえります……」キョン「あ、ちょ、待って、朝比奈さん! 誤解だハルヒ! おーい!」古泉「待ってください、涼宮さん!」鶴屋「古泉くん待ってよ~!」ハルヒ「さようなら!」キョン「さよならって言うな!」
谷口「ふひひ。見ろ、まるで人がゴミのようだ」長門「………これで非物質性情動師走言語のサイクルは崩壊した」
長門「………世界の平和は守られた」
谷口「めでたしめでたし」
ハルヒ「lllorz」キョン「lllorz」みくる「lllorz」古泉「lllor2」鶴屋「lllorz」
古泉「…………」
古泉「終わった……」
古泉「僕の人生は、この舞い落ちるひとひらの雪の結晶のようにはかなく散ってしまいました」
古泉「……………」
古泉「このまま冷たい部屋の中で、孤独に朽ちて行くのも一興ですね」
長門「………あなたは、まだ朽ち果てるべきではない」
古泉「長門さん? どうも、こんばんは。負け犬の家へようこそ」
長門「………自虐的になるのはよくない。ネガティブな思考は建設的な方向への行動を遮る」古泉「ふふふ。結局、僕は意中の人の心を射止めることはできませんでした。キューピットの構えた弓に矢がつがえられていなかっただなんて、誰が予想していたでしょう」
長門「………あなたには、まだやるべきことが残っている。それは、あなたにしかできないこと」古泉「僕にしかできないこと? ふっ。こんな惨めな敗残兵になにができますのやら」長門「………このままでは、あなたが愛したSOS団は分裂したまま霧散し、完全に消滅してしまうだろう。それを阻止できるのは、あなただけ」
古泉「どういうことですか?」長門「………古泉一樹になら分かるはず」
古泉「………」
古泉「……………なるほど。そういうことですか」
古泉「今の僕にそんな大役をふるなんて。長門さん、あなたも罪な人です」
長門「………できるのか、できないのか。それだけが聞きたい」古泉「できない、とは言えませんよ。プランナー古泉の名において」長門「………わかった」
長門「………では。さあ、いこう」
谷口「ジングルッベー! ジングッベー! ヒーヤッハーヒューヒュー!」藤原「YO,YO,YO! そこ行く兄さん&お姉さん! 今夜いっちゃうの? え? やっちゃう?」
女「ちょっと、なによあんたたち」中河「おうおうおう。ホテル街に腕組んでやってくるなんて、目的はひとつじゃないのさ。ねえ同士諸君」谷口「いかにもたこにも。姉さんなかなか安産タイプの尻型してるからして、きっと来年の秋には立派な3500gの男子or女子をご出産できることと存じまするよ。おめでとうございます! お下衆とうございます!」 男「なんなんだお前らは!? 警察よぶぞ!?」藤原「警察? ふはは。何故キミたちが公僕の世話になろうとしているのか。まったくもって理解不能だな。我々はただ、この少子高齢化の時代の荒波に敢然と立ち向かって行く若きカッポーを応援しようとしているだけなのに!」
中河「ふれー! ふれー! カッポー!」藤原「がんばれがんばれ日本! がんがれがんがれヤングメーン!」谷口「メリー! 栗とリスー!」
女「いやー! 変態ぃ!!」男「あ、ちょっと待って!」
藤原「ふっ。たーいもない。しょせんはクリスマスのジングルベルに浮かれたポンチどもよ」中河「拙僧たちの敵ではなかったということでござるな」谷口「しかし、こういっては何だが。寂しいのうwww寂しいのうwww」
中河「なにをおっしゃる谷口氏。我ら3人が集まれば鬼に綿棒。寂しいことなどありはすまい。女人の下着をふところに入れておけば、この寒さでも問題にならないくらいの暖かさでござるよ」 藤原「左様。しんしんと降り積もる雪の中にたたずんでいるからマイナス思考になってしまうのでござる。表通りへ出てケンタ君フライドチキンでも食べようじゃないか」 谷口「まったくもってその通りでゲスなwww」
鶴屋「街の真ん中のツリーがきれいだなあ」
鶴屋「はあ。……寒い」
鶴屋「友達たちと明日の朝までパーティーしてくるって言って家を出てきた手前、今さら自宅には帰りづらいし」
キョン「あ。鶴屋さん」鶴屋「キョンくん。どうしたのさ、不景気な顔して」キョン「お互い様ですよ。それに、一緒にいたんですからワケは分かってるでしょう」鶴屋「まあね」
鶴屋「ねえキョンくん。このまま帰るのもシャクだし、どっかで食事でもしてかない? キミも外食してくるって家族に言ってきてるクチっしょ?」キョン「そうですよ。だから家に帰る前にどっかで時間をつぶそうと考えていたところなんです。ご一緒させていただきますよ」
鶴屋「ま、傷心の者同士。仲よくやろうよ」
古泉「レディース&ジェントルメン!」
長門「………ハッピークリスマス」
キョン「なんだ、今のスピーカー越しの声は!? 古泉と長門の声のように思ったんだが……?」鶴屋「キョンくん! あれ見て、公園の巨大クリスマスツリーの上!」
キョン「ツリーの上に古泉と長門が!? 何やってんだあいつらは!」
古泉「白雪の舞いふるホワイトクリスマスの良き日。皆様におかれましては大変ご清祥のことと存じます」
古泉「そんな特別な12月の一夜を、私、古泉一樹がトータルプロデュースさせていただこうかと考えております」
古泉「私のことは是非、プランナー古泉とお呼びください」
キョン「何を始めるつもりなんだ、あいつは」
~つづく……といいな~
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