償い~中編
頭をなでられている感触にわたしは目を覚ます。どうやら治療後に疲れて寝てしまったらしい。目を開けると長門さんの顔が目に入った。不思議に思った。治療後に気が抜けたわたしは床に死体のように転がっていたはずなのに。今のわたしは長門さんに膝枕をしてもらっている状態だ。
「起きた?」長門さんが微笑みながらわたしに問いかける。その問いに答えようとしたとき、額に冷たい感触がしてわたしはびっくりする。景色が一変して、目の前にあった長門さんの顔が無くなり変わりに天井が映し出される。
「お目覚めのようですね」わたしにそう言葉をかけたのは長門さんではなく、喜緑江美里だった
喜緑江美里が何故ココに?
いつの間にかわたしはベッドに寝かされ、額には濡れたタオルが乗せられている。さっきまで長門さんがいたのに急にいなくなって、代わりに喜緑江美里がいる。
わたしは上体を起こし、周りを見渡す。長門さんの姿はどこにもない。
わたしが見た長門さんはただの夢だったらしい。考えてみれば、長門さんの微笑む表情など見た事が無い。
「少々混乱しているようですね…別にとって食おうなんて思ってませんよ?」笑顔でわたしに言う江美里。その笑顔にわたしは背筋が凍る感覚を覚えた。
そして、江美里の言葉にわたしは恐怖した。
「でも…少しだけいじめさせてください」そう言って江美里はわたしに何かを押し付ける。次の瞬間、わたしの体中に電流が走った。
「あ゛ああぁぁぁぁぁ!」脇腹に押し付けられた何かから流れ出す電気。全身を駆け巡る電流と激痛にわたしは悲鳴を上げた。
押し付けられていた物が体から離れると同時にわたしは倒れる。しかし、気は失わなかった。
「んふふ…可愛い声で鳴くんですねぇ…」江美里がわたしの顔を覗き込みながら微笑む。
「これ、スタンガンです。ほら?こうやってスイッチ押すと電流が流れるんですよ?」江美里は手に持ったスタンガンをわたしの顔に近づけてバチバチと電流を流す。
「どう…して…こんな…ことを…?」途切れ途切れにわたしは江美里に問う。わたしが江美里に何をしたと言うのだろうか?わたしには江美里に何かした覚えは無い。
「ん~?そうですねぇ…ストレス解消でしょうか?」江美里の言葉にわたしは耳を疑った。ストレス解消?コレが?
「長門さんは好き勝手に振る舞い、それの後処理をいつも私がしているんです」江美里は無表情で淡々と語る。「最近は主の意思に反して行動し、観察対象である涼宮ハルヒとたびたび衝突しているようですし、都合の悪い事は私に押し付けてるんです」それがわたしと何の関係があるのだろうか?「わたしは…関係…無い…!」弱々しくも強く、江美里にわたしは言った。
わたしの言葉に無表情だった江美里の表情が怒りの表情になる
「関係…無い!?貴女は長門さんのパートナーでしょう?関係ないはすがありません!」そう言って江美里は乱暴にわたしの胸倉を掴む。
「ふふ…そうです…貴女は長門さんのパートナーなんですよ…」江美里の表情が怒りから笑みへ変わる。
「長門さんにぶつけれないのなら!貴女にぶつければいいのですよ!」江美里はそう叫んでスタンガンを手に取り、わたしに押し付けてスイッチを押した。
「うあ゛ああああぁぁぁぁ」わたしは陸に上げられた魚のように跳ね上がる。体中を電流と激痛が駆け巡り、意識が飛びそうになる。でも、意識は飛ばない。
江美里がスタンガンをわたしの体から離すと同時にわたしは床に倒れる。
「ふふふ…情報操作で意識が飛ばないようにしました。まだです…まだ終わりませんよ?」再度わたしの体にスタンガンが押し付けられる。
そしてまた、わたしの体に電流と激痛が駆け巡り、体がビクビクと痙攣する。「あ゛ああああああああああああ!」
数秒の間押し付けられ、離される。そしてわたしは死体のように床に倒れる。激痛に耐えながらも、この拷問のような行為から逃げ出そうと必死に床を這いずろうとする。
でも、体に力が入らなかった。
「うふふふ…痛いですか?意識を失えばそんな事考えなくてもいいのに、それが出来ない苦しみはどうですか?」
狂ってる。普通の神経じゃこんな事出来ない。江美里がそういう趣味を持っていたか、あるいはこんな風になってしまうほど追い詰められていたのか。
「ふふ…アザや傷がなければとても可愛いのに…」わたしの顎を掴み、笑いながら言う江美里の目は淀んでいた。
江美里はわたしの服を乱暴に掴み脱がしていく。わたしはそれを止められる力など残っていなかった。そして次々と服を脱がされたわたしが身に着けているのはショーツのみとなった。恥かしくて顔を両手で覆いたくなる。でも出来ない。
「綺麗ですよ…朝倉さん…」そういいながらわたしの体を優しく指でなぞる。くすぐったくてビクッとなるが、その度に痛みが走る。
「ゆる…してぇ…」たった一言喋ることにさえ力を振り絞らなければならなかった。裸を見られるよりも、体中のアザや傷を見られるのが、今のわたしには何よりも耐えられなかった。
「ふふふ…今の朝倉さん凄く可愛いですよ」江美里はそう言って服を脱ぎ始めた。
「痛いのはもう嫌ですよね?次は気持ちよくしてあげますよ…」
痛みと疲労で動けないわたしは江美里の行為を黙って受け入れるしかなかった。江美里は行為が終わった後、情報操作でわたしのアザや傷を治してくれた。その後、江美里は黙って帰ってしまった。
「お風呂入ろう…」江美里が帰った後、暫く床の上に座って呆けていたわたしはお風呂に入る事にした。時計を見ると午後8時をまわっていたが、長門さんは帰って来てはいない。心配になったけど、今のわたしとは比べ物にならないぐらいしっかりしているのだから大丈夫だろう。浴槽にお湯が溜まるまでの間、わたしは部屋を片付けて着替えを用意した。
「長門さん…江美里…」湯船に浸かりながら今日一日あったことを思い出していた。
「うう…うぅ…」無力な自分に、変わってしまった二人に、わたしは泣いていた。
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