魔人探偵脳噛ハルヒ
やっぱり、あの自己紹介が原因だったのかしら。 「ただの人間には興味ありません! この中に宇宙人、未来人、超能力者、魔人が居たら私のところに来なさい!以上!」 もちろん、そういうヤツらに会いたいって気持ちはあったわよ?でもそれは願望に過ぎない。そういうヤツらなんかいないってことぐらい、私だって分かってるわよ。だけどそしたら……目の前にいるコイツは、何? 「我輩は魔人、脳噛ネウロ。脳髄の空腹を満たしにここにやってきた。」 事の起こりは数分前。わたしはHR目が終わった後、部室へと走っていた。たまには最初についてみんなを待つのもいいじゃない?だけど突然、窓から手が伸びてきて引っ張られて、屋上に連れてこられた。 「な、なに!?」 目の前に居たのは長身でスーツを着てる若い男。ちょっと変わった髪形をしている。突然のことで頭がパニックだった。でもってその謎の男は、私を更にパニックに陥れる 「我輩は魔人、脳噛ネウロ。脳髄の空腹を満たしにここにやってきた。」 魔人?コイツ一体……何を言っているの? 「ま、まじん?アンタどっか、おかしいんじゃないの?」 私は言い返してやった。するとソイツ……ネウロという男は、右手を私の前にかかげた。そして…… 「ひいっ!」 その手は一瞬にして刃に変わった。私の顔のほんの数ミリ先に刃物がある。ちょっとでも動けば刺さってしまいそうだ。 「我輩は魔人。ここに来たのは、謎を食うためだ。」「て、手を戻しなさいよ……」「我輩は謎を食としている。悪意により作られたトリックを解くことで、謎というエネル ギーが放出されるのだ。」 聞いてないわ。ていうか、聞こえてるけど無視してるって感じね。どんだけサディストなのよ、こいつ。 「それで、なんでその魔人様がこんな平凡な高校に来たのよ。」「貴様が、それを望んだのだろう?」「え?」 確かにあたしは魔人に会いたいと思ってた。自己紹介でもそう言った。だけどそれとコイツがここに来たことと、なんの関係があるの? 「ふむ、自覚は無いようだな。貴様もなかなか稀有な能力を持っていて興味深いが…… 今回ここに来た理由は、ここに謎が生まれる気配を感じたからだ。」「気配って何よ。」「もうすぐ、貴様の近くで事件が起こるぞ。いや、既に起きているか……」「なっ!」 そう言うとネウロは私を引っ張って進み出した。 「ちょっ!離しなさいよ!」「貴様は我輩の奴隷だ。黙ってついてこい。」 引っ張られること数分、ようやく解放された場所は……部室の前。 「涼宮さん、遅かったですね。おや?その方は……」「なんだハルヒ。また誰か連れてきたのか?」「……だれ?」 ドアの前には、キョンと有希と古泉君が立って居た。そしてみんな後ろのコイツのことを聞いてくる。当然よね。まあみんなは、本当のこと話しても大丈夫よね? 「実はね、コイツまj……モガッ!」「僕はネットでSOS団のことを知りまして!身近に不思議な出来事があるものですから、是非団長様に相談したいなと思っていたのです!」 な……なにコイツ!私への態度とはまるで別じゃない!猫かぶりってレベルじゃないわ!! 「へ……へえ。物好きな人も居たもんだな……」「なるほど、把握しました。流石涼宮さんですね、一般の方も引きつけるとは。」「……そう。」 三人も一応は分かったみたい。でも、古泉君とかはまだ全然警戒してるみたいだけど。それよりも気になるのは…… 「みんななんでドアの前に立ってるのよ。入ればいいじゃない。」「それがですね、鍵がかかっていまして……」「職員室から鍵を取ってくればいいじゃないの。」「もう行ったよ。だが、鍵は既に無かった。つまり中に誰か居るってことだ。 だから朝比奈さんが着替えてるのかと思って待っていたんだが……」「……返事が無い。15分たっても音沙汰が無い。」 なるほど、確かにそれはおかしいわね。鍵が無い以上入れないし……と悩んでいたら 「ドアに手をかざせ。」 いきなりネウロが耳打ちしてきた。なんなのよもう。 「こう?」 あたしは素直にドアに向けて手をかざした。そしたら…… ――ドカァン!! 一瞬でドアが吹き飛んだ。な、なにこれ…… 「流石団長ですね!人間離れしたパワーをお持ちだ!」 コイツまた変な力を使ったわね!人間離れしてるのはアンタでしょうが!!見なさい、他の三人も唖然としてるわよ。中に居るみくるちゃんも……って…… 「みくるちゃん!?」 みくるちゃんはやっぱり中に居た。だけどいつもと違うのは、頭から血を流して倒れていることだ。 「あ、朝比奈さん!!」 古泉君が駆け寄った。みくるちゃんの脈を取っている。 「まだ息はあります!救急車を!」「あ、ああ!!」 急いで携帯を取り出して電話をするキョン。あたしは、ただ呆然と立ち尽くすだけだった。ま、まさかコレがネウロが言っていた『事件』なの……!?ネウロの方を振り向くと、ネウロは……よだれを垂らしていた。そして誰に言うワケでもなく、一人呟いた。 「この謎はもう……我輩の舌の上だ。」
「見てください!」 古泉くんが指差したのは、みくるちゃんのメイド服のポケット。その中から出てきたのは……部室の鍵! 「まさか、それじゃあ……」「ええ、この部屋は密室だったということになりますね。」「だとしたら、誰かが殴ったという線は薄くなるな。きっと着替えてたら転んで頭を打ったんだろう。 朝比奈さんの普段のドジっぷりを考えると充分考えられる。」「ですね。きっとそのまま気絶してしまったんでしょう。」 キョンと古泉くんの二人で推測している。まああたしも二人の言う通りだと思うわ。でもみくるちゃん、流石にドジやりすぎよ…… 「いえ、それは違うでしょう。」 ネウロ!? 「と、団長はおっしゃっております。」「ちょ、ネウロ!何言ってるのよ!あたしは……」 反論をしようとしたけど、ネウロのでかい手で口を封じられる。そして耳元でささやいてきた。 「もが!」「貴様は黙って我輩に身を委ねればいい。そして叫べ。『犯人はお前だ。』とな。」 身を委ねるって一体……。……え!?何コレ、勝手に右手が上がって…… 「団長は既に犯人の正体を見ぬいておられます。さあ団長、指差してください。」 そして高く上がった指が振り下ろされる。ある人物の元に向かって。 「は、犯人は……お前だっ!」 「す、涼宮さん?」 振り下ろされた指の先に居たのは……古泉くんだった。ウ、ウソでしょ? 「まさか涼宮さん、僕が朝比奈さんを殴ったとでも?」「そこから先は僕が説明しましょう。」 ネウロが呆然とするあたしの前に立った。 「まず始めに、この部屋の密室がどのように作られたか。それは簡単です。外から鍵をかけたのですよ。」「か、鍵を?だが、鍵は確かに朝比奈さんのポケットから……」「果たして本当にそれは、朝比奈さんのポケットにあったのでしょうか?」 ネウロは古泉くんを見てニヤッと笑った。あれは間違いなく、サディストの目だ……でも古泉くんも負けてはいない。いつものすました笑顔を崩さずに反論する。 「おかしな話ですね。実際にあそこにあったでは無いですか。」「それが、あなたによってでっち上げられた事実なのですよ。思い出してください。あの時、彼女に真っ先に駆け寄ったのはどなたでしたか?」 駆け寄ったのは……そうだ、古泉くん! 「そして鍵を見つけたのもどなたでしたか?」 それも……古泉くん。まさか…… 「全てはあなたの自作自演だったのですよ。真っ先に駆け寄り、朝比奈さんのポケットに鍵を忍ばせる…… あとは、あくまで始めからそこにあったかのように発見すればいい。それだけで架空の『密室』の完成です。 それが可能だったのは、あなた一人だけ。あなたは朝比奈さん自身の事故を主張されていましたが、警察で調べればすぐに殴られたと分かります。 その場合、犯行が可能なのはあなただけということになります!まだ続けますか?」 古泉くんは反論しない。てことはやっぱり……事実なの?気付いたらあたしは叫んでいた。 「どうしてよ古泉くん!なんでみくるちゃんを殴ったの!?」 それでも古泉くんは笑顔を崩すことは無かった。だけど…… 『アダムとイヴですよ。』 何故か声にエコーがかかり始めた。そして、古泉くんの身体が赤く光り始める! 『まあこの場合、アダムは僕でイヴはキョン君なのですけどね。』 赤い光になった古泉くんの身体がどんどん変形して、小さな球体になった! ●<ふふふふ……ふんもっふ! な、なにこれ……あたしは豹変した古泉くんの姿を見て、ただ呆然とするしかなかった。 ●<全てはあの女がいけないのですよ!僕の愛しのキョンたんに色目を使うから!「な、……何を言ってるんだ古泉!正気に戻れ!あと人間の姿に戻れ!」 ●<僕が1番キョンたんを愛しているのです!だけどあなたはいつも女のことばかり…… ならば邪魔な女共を消せば!キョンたんのアナルは僕のものです!!さあキョンたん、僕のテトドンを……「まったく、くだらないですね。」 ネウロ!?ネウロはいつの間にか球体化した古泉くんの前に立っていた。 ●<なんですかあなたは!……ウホッ、あなたもなかなかのナイスガイですね。 いいでしょう、あなたも僕のテトドンの威力を味……「生憎だが我輩、その手の趣味は無い。そもそも我輩に性欲など皆無だ。あるのは無限の食欲のみ。 貴様自身に興味は無いが、貴様が作り出した謎には多いに興味がある。 ……まずは大人しくさせようか。魔界777ツ道具……」 イビル アナリスト魔 王 の 尻 穴……!! ●<う、うわああ!!!魔界道具だけは!魔界道具だけはアッー!!「おやおや、よかったではないか。なかなか快感だろう? では……」 一瞬だけ見えた。ネウロの頭が、人間の顔から魔人の顔に変化するのを。 「い た だ き ま す ……!」 次の瞬間、古泉くんは普段の姿に戻っていた。でも……何故か全裸になっていたけど。 ~~~~~
結局その後警察が来て、古泉くんは逮捕された。……全裸のままで。みくるちゃんは一命をとりとめたらしい。良かった……そしてキョンと有希は今事情聴取を受けている。と言っても、あの出来事を話しても信じてもらえなさそうだけど……そしてあたしは…… 「ふむ、所詮は高校生ごときの作る謎か。せいぜい間食程度しか腹は膨れんな。」「あ、あのさネウロ……」「なんだ、ゾウリムシ。」「……なによその呼び方は。でも……ありがとね。事件を解決してくれて。」「構わん。これが我輩の食事なのだからな。人間がどう思おうと知ったことでは無い。」「それで、あんたこれからどうするのよ。」「ふむ、この近くで再び謎が生まれたようだ。我輩はそこに行く。我が脳髄の空腹を満たすには、この程度の謎では足りぬからな。」「じゃあ、ここでお別れね。」「そうだな。貴様を探偵役としてこき使っても良かったのだが、どうやら貴様は、我輩と同じ『使う側』の人間のようだな。」「あら、わかってるじゃない!」「そのような者を使うのもそれはそれで面白いが、やはり純粋な『使われる者』を利用した方がスムーズに事が進む。貴様の能力にも興味をそそられたが……」「能力?って何よ。」「フハハハ……」 ネウロはあたしの問いには答えず、窓をこじあけた。 「貴様が自覚するにはまだ早い。せいぜい無自覚のまま楽しむことだな。いずれ知るその時まで。」 そしてネウロは姿を消した。何よ、能力って……だけどあたしはなんとなく、またコイツと会うような気がしていた。その時はもう1回ぐらい、探偵役をしてやってもいいかな。そう思った…… 終わり
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