デジモンアドベンチャー 0H(ゼロエイチ)
何だ。この状況は。「キシャー!」落ち着け。俺は誰だ?そうだ、キョンだ。あだ名が不本意だとか、この際どうでもいい。何をやっている?走っているんだ。何故だ?生命の危機をもたらすあいつから逃げているからだ。よし、状況把握はOK。「何?もしかしてあいつ例のアレじゃない!?こんな間近で見れるだなんて!」ええい!この危機的状況で、そう目を輝かせるな。あいつが友好的ではないことくらいお前にもわかるだろう。「これは困りましたねぇ、神人に勝るとも劣らない大きさと威圧感です。ふふ、恥ずかしながら、興奮してしまいます。」耳元で気色悪いことコソコソ呟くな。走りながらだから余計息が当たるんだよ!「何ですか~、あれ。わた、わたし食べてもおいしく なんかありませ~ん。」いえいえ、あなたがおいしくなければ誰がおいしいんだって話ですよ。例えばその豊満たる胸…って俺は何をこんな状況で考えてるんだ。自重しろ、俺「……………」なあ、お前の力でアレ何とか出来ないか?「無理。理由を説明してる暇はない。」そ、そうか。だけどそうなるとこちらに打つ手はないではないか。こんなワケの分からない場所であんなどこか見覚えのある怪物に殺されるなんて俺は御免だぜ。ああ、何でこんなことになっちまったんだろう。いや、原因はハルヒで間違いないな。他に理由があるなんてことになれば、かえって俺の心労がますます激しいものになりそうなので不本意ながらそう願っておこう。今回のこの騒動で俺が学んだのはこれだ。ハルヒにアニメは見せるな。ここは文芸部室。奇妙なるSOS団なる団体も、すっかりこの場違いな部室になじんでしまった。いや、寄生して取り込んだと言うべきか。何はともあれ、俺達は特にやることもなくいつもの行動を、半ばテンプレートにこなしていた。ガタン!「むげ~んだ~いな~ゆ~めの~あとの~」突如部室内に椅子が倒れる音と同時に、どこか覚えのある歌が大音量で響いてきた。俺達は、その音源に目を向ける。と、そこには仁王立ちし、耳にイヤホンをちらつかせながら、日に三回でも目にしたら確実に食傷しそうな程に眩しい笑顔を見せている我らが団長様。おや、どうした?うっすらと目に涙を溜めて。「イヤッッッバイわね、これ!ちょっと!キョン!こっちに来なさい!」やれやれ、大体予想はついてきた。つまり、そういうことなんだろう。ハルヒの見ているパソコンを見ると、列車の中でかわいいマスコット的なキャラ達に少年少女たちが手を振っている。ああ、やっぱり。パソコン脇のスピーカーには外れたイヤホンの端子。大方興奮しながら立ち上がった勢いで外れたんだろう。「IamTUBEでたまたま見つけたから久し振りに見たのよ!デジモンアドベンチャー!この最終回を超えるアニメは存在しないと言っても過言ではないわ!」まあ、それは俺も認める。子どもの頃の思い出は美化されると言うが、それを差し引いてもこれは名作だ。「何だ。あんたも知ってたの。」俺達の年代は皆みてたんじゃないか?というか、お前は何も知らない俺に最終回だけを見せようとしてたのか?「これは名作だから最終回だけでも十分感動出来るのよ!」「いや、それは違いますね。この最終回が感動出来るのは、選ばれし子ども達の成長を見てきたからではないでしょうか。」オセロの盤面の前で放置していた古泉が、珍しくハルヒの言葉を否定した。お前も見てたのか、デジモン。「我々の年代は皆見てる。あなたが言ったのではないですか。」まあ、そうだがお前はアニメを見てる印象がないんだよ。まあ、ハルヒもだが。そんなわけで俺達三人は団活が終わるまでデジモン談義に花を咲かせていた。そんな俺達を見て、長門と朝比奈さんはそれぞれの得意とするリアクションで精一杯頭の上にハテナマークを作っていたな。「あ~あ、どこかに落ちてないかしら、デジヴァイス。」この言葉を聞いた時に気付くべきだったんだ。気付いて絶海の孤島でも呪われた館でも何でもいいから、情報を提供して注意をそらすべきだったんだ。そうしておけば…こんな…こんな…「キシャー!!」翌日、デジタルワールドに迷いこむこともなかったのに…デジモンアドベンチャー0Hおかしいだろ。ハルヒが俺達をこの世界に引きずり込んだことではない。くやしいが、それに突っ込んでる暇はないんだそれよりも何でパートナーデジモンがいない?ハルヒの性格上自分達が主人公になるのは規定事項のはずだ。なのに俺達はデジヴァイスは持っていないし、パートナーデジモンもいない。これでは迷い込んだ時点でジエンドだ。「ひゃ!」しまった!朝比奈さんが転んだ。ヤバイ!これで終わりなのか…「みくるちゃんは!あたしがまもーる!!」迫りくるクワガタの化け物の前にハルヒが立ちふさがった。何でお前はそんな楽しそうなんだ。夢だと思ってるやつはいいよな。って、んなことどうでもいい!逃げろ!マジで殺されちまう!その瞬間、俺達の腰辺りが光りだした。「ベビーフレイム!!!」どっかで聞いたガラガラ声と共に火の玉が勢いよくクワガーモンに当たった。クワガーモンは体勢を崩し、よろめく。ハルヒは……見なきゃよかった。こいつの笑顔は今まで何回も見て来たが、ここまでWAT数の高い笑顔は始めてだ。いかん、早くも胃もたれが…「さいっこうのタイミングじゃない!」「プチファイヤー!!!」「マジカルファイヤー!!!」「プチサンダー!!!」「エアーショット!!!」何かすごい勢いで炎やら雷やらが飛び交い、クワガーモンは崖の下に落ちて行った。アグ「ハルヒには」ガブ「キョンには」ピヨ「有希には」テント「一樹はんには」パタ「みくるには」「「「「「指一本ふれさせない!!!」」」」」アハハ、壮観だな、おい。古泉もさすがに顔が引きつっている。朝比奈さんは新たに表れた異形の怪物達を前に、涙目だ。さすがの長門も目を見開いてる。んで、ハルヒは………「ん待っっっってましたぁぁぁぁ!あんた達来るのが遅いのよ!確かに今のシチュエーションは最高だったけど、それとこれとでは話が違うわ!キョンだったら罰金なんだからね!!そうだ、進化する所見せてくれたら許してあげる!ほら、アグモン!あんた何ボケッとしてんの!!さっさとウォーグレイモンにワープ進化しちゃいなさい!」アグ「いい?!そ、そんなの僕出来ないよ~」アグモンを揉みくちゃにしてた。「出来ないってどういうことよ!ほら、この腰のデジヴァイスが目に入らないの!?ってあれ?いつのまに…」他四人も同じように腰にデジヴァイスが付いていた。ガブ「取り敢えず今は安全な所に行こう!多分すぐクワガーモンの奴戻ってくるよ!」テント「わてら成長期のデジモンじゃクワガーモンを倒すのは至難でっせ。
仲間が他の人間を迎えに行ってるさかい、まずはそっちと合流しまひょ!」パタ「大変だ~」ピヨ「クワガーモンが上ってくるわよ!」いつの間にか偵察に行ってたピヨモンとパタモンが皆に警告を促す。ガブ「行こう!キョン!!」「倒せないって、究極体になれば一撃よ!あんな奴!」こらハルヒ!無茶言うな!取り敢えず逃げるぞ!「む~~~~!」ブーたれるハルヒをアグモンと俺で引っ張っていく。「あ!あ、あれ…」震えた声で朝比奈さんが指差す。パタ「どうしたの?みくる…ああ!」指差す方向を見ると、大量のクワガーモンが群をなしていた。
ガブ「クワガーモンだ!」パル「皆!下がって!」クワガー「キシャー!!」ピヨ「一匹だけみたいよ!」テント「せやけどのんびりしてたら仲間を呼ぶかもしれんで!」ゴマ「勝てる気はしないけど…やるしかないよね!」パタ「みくる達は僕達が守る!」アグ「いくぞ!みんなぁ!」その時、あたしは確かに感じた。ついさっき見知ったばかりなのに関わらず、何年も一緒にいた気がする、かけがいのない大切な仲間が消えていく、予感。決して夢なんかじゃない、目の前の異形の生物に似つかわしくない限り無いリアリティ。あたしは知らないうちに叫んでいた。「行っちゃだめ!!」「ハルヒ!?」突然のあたしの態度の変わりように、キョンは驚いている。パル「ポイズンアイビー!!!」テント「プチサンダー!!!」パルモンが動きを封じ、テントモンの電撃がヒットしたけど、クワガーモンは全く意に介さない。こっちの番だと言わんばかりにクワガーモンはデジモン達に突撃しようとしている。アグ「ベビーフレイム!!!」ガブ「プチファイヤー!!!」クワガー「キシャー!!!!」
アグモンとガブモンの攻撃も虚しく、デジモン達は吹き飛ばされる。「キョン!何ボケッとしてるのよ!やめさせないと皆が…」「ハルヒ、何言ってるんだよ。アニメ見たろ?あいつらはクワガーモンを倒してたじゃないか。」「違う!これはテレビとは違うのよ!アグモン達が…死んじゃう!」キョンは気付いたように目を見開いた。「おい、お前達!もういい!逃げるぞ!」クワガー「キシャー!!」アグ「く、う…わぁぁぁ!!!」クワガーモンが角でアグモンを締め上げる。ガブ「アグモン!プチファイヤー!!!」ピヨ「マジカルファイヤー!!!!」ガブ「くそぅ、全然聞かない!」アグモンを締め付ける角はどんどん力強さを増していく。「話しなさいよ!このくそ虫!アグモン…アグモーーーン!!!」アグ「ぼ、僕は守るんだ…!絶対に!!!は…ハルヒィィィ!」その時、腰のデジヴァイス が光った。それと共にアグモンも光に包まれていく。アグ「アグモン、しんかぁぁぁぁ!!!」グレイ「グレイモン!」テント「し、進化しよった…」アグモンが進化した…次第にあたしの心は明るくなっていった。
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