第二次雪山症候群 エピローグ
エピローグ 雪山最終日、古泉。 「ふぅ」疲れた。『彼』から電話が掛かってきて、いきなり問題のの閉鎖空間の話。彼が今語った内容はかなり隠している部分が多い。その辺り彼はかなり分かりやすい。……隠しているのはお互い様なので別に非難するつもりは無いが、分かりやすいのはなんとかして貰いたい。いつ涼宮さんに感付かれるか──いや。きっと涼宮さんは僕達が普通ではない事に気付いている。ただ知らない振りをしてくれているだけだろう。誤解が多いが涼宮さんはかなり常識的な人だ。あれで常に周りの人の事を気にかけている。彼もそれは知っているはずだ。 彼は、去年涼宮さんに閉鎖空間に連れ込まれた時に何があったかは、決して言わない。今回についても同じだと推測される。まぁ大方の予想はつく。だがそんな事は言わない。もし言った場合彼がどんな顔をするかも大体予想がつく。 実は例の特殊閉鎖空間に関しても我々のような超能力者は感知していた。……嘘は吐いていない。閉鎖空間は『昨日』ではなく『今日』発生したのだから。我ながら見事な屁理屈だ。自分の嫌味に苦笑してしまう。 彼はきっと涼宮さんの元に向かっているはずだ。上手くやってくれるといいのだが。 「これで良かったんですか?……朝比奈さん」「はい。ありがとう、古泉君」彼女は、俗に言う朝比奈さん(大)だ。1週間ほど前に我々に交渉を持ちかけて来た。 「これで、未来はかなり安定しました。私達はあなた方にとても感謝しています」 そう、機関は無駄に雪合戦を手伝った訳では無い。より大規模な計画を立てる事で『彼』と涼宮さんの間を取り持とうとしたのだ。未来人の協力の元に。 「いえ、構いませんよ。こちらとしてもこれで涼宮さんに関してはもう懸案事項は無くなったはずですし」 「そうですね。これで後数年間機関は仕事が減ります。それは前に話した通りです」 「個人的には収入が減るのであまり喜ばしく無いんですがね……?」危うく聞き逃すところだった。「……数年間?」 「はい、数年間」 「どういう事です?」 「涼宮さんが持っている能力は、ある時を境に完全に消失します」 「……え?」涼宮さんの能力が消失?……まさか、死……? 「あ、彼も涼宮さんも二人とも仲良く天寿を全うしますよ。でもその能力は別の人に発現するんですけど」それは良かった。無駄に驚いてしまった訳だが。……ん?「その別の人って、……まさか」 「彼…キョン君と涼宮さんの娘さんです」 「……涼宮さんの能力が、遺伝するんですか?」 「はい。実は私がいた未来でもその子孫の人が能力を持っているんですよ。当然、あなた方の超能力も遺伝します」 「じゃあ、機関は…」 「あ、この話はまだ誰にも言っちゃダメですよ。古泉君なら大丈夫だと思って言ったんですから」 「……分かりました。気を付けます」はぐらかされた。 「うん、お願いします。……そうだな、能力の転移が始まる頃にはそっちの私があなたに言うはずです」 ……え?「……今この時間にいる朝比奈さんは、その頃まで、ええと、残るんですか?」 「はい。実は私もまだ残っているんです。だから少なくとも15年後までは残留するはずですよ」 なんとも喜ばしい話だ。正直な話、そうなる可能性は無いと思っていた。 「15年後か……」 「はい。その頃には機関の皆さんも涼宮さん二世に対して深い愛情を持っています。もう物騒な事は起こらないはずですよ」 それを聞いて、とても安心した。同時に笑いが込み上げて来た。「そう、ですか」 「?どうしました?」 やはり不審がられた。いきなり笑い始めたんだ、当たり前だろう。 「いや、彼らは幸せになれそうだ、と思うと、ね」 「ふふ、そうですね」 そのまま二人で笑い続け、──僕が気付いた時には時計の針は集合時間の8時を32分過ぎた時間を指していました。 ──完。
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