涼宮ハルヒの補習
俺が北高に入って早2年と5ヶ月、もう高校3年の秋だ。この坂道もあと半年ほど登ればサヨナラ、何だか秋風のせいか寂しい気分になる。教室に入ると、すでに受験色。皆、色んな情報を交換し合っている。勿論俺も母親の期待に応えるべく大学進学を考えている。まぁ、そうは言っても谷口と競い合った低空飛行のお陰で推薦入試なぞ、今の俺には無縁の話だ。ハルヒはああ見えて、勉強は出来るゆえに既に六甲大学への推薦を受けている。一般入試の受験先を考えていると、ハルヒがやってきた。3年になってからもこいつとは同じクラス、まさかこいつが俺と同じクラスを願ったなんて事は無かろう。国木田は3年から理系コースへ、谷口も何を思ったか理系に行った。「キョン、あんた大学はどうすんの?まさか行けないって事はないでしょうね?」なんだ、藪から棒に。その「行けない」って言い方は癪に障る。人に進学の事を聞くときは「行くの?行かないの?」でしょうが、やれやれ本当に毎度疲れさせやがる。「ねぇ、キョン、聞いてる?」ああ、聞いているとも。勿論俺も進学は考えている。将来はだな、ほら公務員にでもなるか、あわよくばどこかの上場会社にでも入れればと考えている。「はぁ?あんたね、そんな人生でいいの?ちっとも楽しくないじゃない。もっと面白い事考えた方がいいわよ。」 俺の人生が面白くなろうがならまいが、お前さんに何の関係があるというのだ。「SOS団から就職組や浪人は出さないから。団長命令として六甲大学に合格しなさい、わかった?」おいおい、そんな無理を言うなよ。先日の模擬試験の結果で偏差値が50しかないんだぜ。どう頑張ったところで、65以上の六甲大学なんか受かるわけが無かろう。天変地異でも起こらなければありえない話だ。今のレベルで合格出来そうな大学といえば、船で目下に広がる海を越えた阿波大学か背後に迫る山を5つほど越えた日本海大学ぐらいだな。しかし、下宿となると親にも負担が掛かる、あと少し頑張って甲陽園大学ぐらいには行きたいものだ。そんな事を考えているうちに、担任がHRにやってきた。 大学進学の基準にもう一つ気になることがある。SOS団の団員はそれぞれどこに行くかだ。古泉は近畿外大を目指すと言っていた。長門はやはり観察対象が行く大学、六甲大に入るらしい。まぁ、長門の場合、どこでも希望すれば入れるんだろう。一学年上の鶴屋さんも六甲大、やはり地元ではセオリー通りの進学コースなんだろうな。それはそうと今、同じクラスに朝比奈さんがいる。この朝比奈さんは朝比奈さん(大)でもなければ、朝比奈さん(小)でもない。朝比奈さん(妹)である。まぁ、同級なので敬称略でいいのだが、長年呼んだ「朝比奈さん」が抜けない。朝比奈さんが卒業と同時に、海外の大学へ行き、代わりに朝比奈(妹)が転校してきた。まぁ、俺は驚かなかったが、ハルヒは鳩が豆鉄砲食らったかのように驚いていた。もちろん、SOS団に連れ込まれたのは言うまでも無い。ただこの朝比奈さんはどの時間から来たのか、俺たちと過ごした2年間の記憶は無い。中身は変わらないのだが。そして今、俺が一番注目しているのが朝比奈(妹)、ああ、もう面倒だ朝比奈さんで統一。朝比奈さんが、どこの大学に行くのかそれが一番気になっている。 授業も終わり、いつものように部室へ向かう。下級生の団員がちらほら、まぁこいつたちの話はまた今度にしよう。朝比奈さんは先に来て、部室の掃除をしている。長門は2年以上居座った同じ場所で本を読んでいる。俺は朝比奈さんがお茶を淹れて、テーブルまで運んできたときに聞いてみた。「朝比奈さんは進学はどうするんですか?行くの?行かないの?」これが正しい質問の仕方だ。「えっとですね、ふふ、禁則事項です。」え?俺は口に含んだお茶を食道ではなく気管に流し込みかけた。「冗談です。六甲大学を受けようかと思っています。」それってやっぱ上からの命令?俺は廻りに聞こえないように聞いてみた」「それは本当に禁則事項なの。」そうか、みんな六甲大目指すのか。この朝比奈さん、my sweet angelと逢えるのも半年か・・・l 少しまどろっこしい悩みをしていると、いつものようにハルヒがドアを開けて入ってきた。団長席に座るや否や、俺に向かって言い放った。「いい、今日からSOS団は特別戦闘体制に入るから。目指せ六甲大よ!」はぁ?なんだそれは?俺に構うな、今から頑張っても六甲大は到底無理だ。「あのねキョン!やらずにウダウダ言っても仕方ないの。あんたは六甲大に行かなくちゃならないの!」何ゆえに?何ゆえに俺が六甲大を目指さなければならんのだ。そりゃ確かに女子にもモテるし、就職も良いかもしれん。だがなハルヒ、人間には身分相応って言葉がある。背伸びしても届かないものは届かないんだぜ。「キョン、あんた本当にそれでいいの?みんな六甲大行くのにあんただけ片田舎の三流大で満足なの?」勝手に三流大に決めないでくれ。「それにね、あんたが六甲大に来なければSOS団が作れないじゃないの!」what?大学でSOS団だと。何を言ってるんだ、こいつは。大学に行ってまでお前と馬鹿やりたくねぇよ。大学に入ったらな、遊びサークルでも入って、夏は海、冬はスキーでも行って学園祭は出店でもやってだな・・・・・あれ?なんだ?今と変わらないな。「つべこべ言わず六甲大にあんたが受かる学力が付くまで、毎日ここで補講するから、わかった?」「それから下級生は今日からキョンが六甲大に受かるまでコンピ研の部室を占拠すると良いわ。じゃ、今から開始!」ハルヒの号令とともに下級生はコンピ研の部室へと移動した。 それから毎日、俺はハルヒとの受験勉強が始まった。11月の終わりにはハルヒと長門、朝比奈さんまでもが推薦入試で六甲大に合格した。初雪が降る頃、全国模試で俺の偏差値は60ぐらいまで上昇していた。もう少しか・・・大森電気店で貰った電気ストーブが今日も悴んだ手を緩めてくれる。入試過去問題を解き終え、ハルヒがそれを採点してくれる。そして、俺を見つめて嬉しそうに「キョン、この点数なら去年の合格点よ。あと少し頑張れば確実に六甲大にいけるわよ」それから、来週から冬休みになるから、部室はやめて自宅で勉強ね。キョンの家は妹さんが居て気が散るから、学校が始まるまで私の家でやるから、毎日9時にくる事。」ハルヒは嬉しそうに解答用紙を俺に付き返した。 終業式も無事終わり、明日からハルヒの家で朝から猛勉強か・・・そういえば、俺はハルヒの家に行ったことが無い、どこにあるんだ?「あんた来た事無かったっけ?あのね・・・」ハルヒは丁寧に地図を書いてくれた。翌朝、吐息も凍るような寒さの中、俺は参考書をカバンいっぱいに詰め込み、家を後にする。歩いて30分、ハルヒの家に到着。奇抜な家を想像したが、どこの町にもある普通の家であった。しかし、何か嫌な予感がする。一呼吸おいて、呼び鈴を押す。直ぐに勢い良くドアが開く。「さぁ、上がって。あんたの為に特別に部屋を用意してあるから」ハルヒは嬉しそうに俺を家に招きいれた。通された部屋は机以外何も無い。時計すらない。カーテンは閉じられ、いや、きっとその窓の向こうの雨戸も閉まっているのではないか?電気を点けなければきっと真っ暗なはず。「いい、キョン。今日から2週間ここで頑張るのよ。それとあなたの行動は全て私の管理下に置かれているから勝手に人の家をウロウロしない事。トイレも許可を受けてからね。あと、携帯は没収。」 おい、俺は刑務所に入った覚えは無いぞ。それに時計すら無いとはどういう事だ?「時計が有ったら、昼飯とかお茶とか言い出すでしょ!だから無くしたの。私の時間配分どおりやれば良いから。」 予感は的中した。が、この怪力女から逃げられない事は既に学習済み。俺は嫌々ながらもこの状況を受け入れざるを得なかった。ハルヒの言うままに、問題を解いたり、解法を聞いたり。何時間ぐらい経ったのだろうか、時間概念を消されたこの部屋では己の腹具合だけで全てをさとらなければならない。ハルヒが一旦、部屋から出て行った。問題を黙々と解く俺。ふとペンを止め、考え込んだ。 俺はこれで良いのか?ハルヒに半強制的に針路を決められている。もしかすると、他の大学に行くと俺の人生の伴侶が居るかもしれないというのに。大学に入って、就職までハルヒに言われるがまま・・・まてまて、そんな事は絶対にありえん。俺の自由意志はどこに行った?俺は一体何者なんだ?いや、者ではなく物なのか?段々と自閉的な思考の渦にはまっていったその瞬間、ドアが開いた。ドアから顔だけ覗かせたハルヒは「キョン、その問題が解けたら休憩にしましょう。」と。おお、昼飯か。腹も減ってきていた、腹時計は正確だった。「今日はオムライスね」何度かハルヒの作った飯を食ったことがあるが、こいつの飯は美味い。そこらの定食屋顔負けの美味さである。問題を解き終え、テーブルを片付ける。ハルヒがトレーを持って再び入ってきた。余程腹が減っていたのであろう、特盛サイズのオムライスを余すことなく食べきった。いつもならココから気だるい気分で、昼寝をする訳だが、今はそうもいかない。何せ目の前にハルヒが居るわけで・・・ 「キョン、ご飯が済んだら少し休憩して続きを始めるわよ」また囚人の始まりだ。そう考えると同時に問題が配られる。それをまた黙々と解く。人間の思考というのは不思議なもので、必死に問題を考えているにも拘らず、瞬間的に他の事を考えたりする。そういえば、さっきからハルヒ以外の声や足音が聞こえない。親は居ないのか?しかし、この事を尋ねたら、きっとハルヒは集中力が足りないと俺を批難するだろう。俺は再び、問題に集中した。途中、一度だけトイレに経ったが、トイレは部屋の前にあり、窓は暗幕で閉ざされていた。「開けるな」ご丁寧にも俺に太陽を拝ませないつもりの様だ。廊下もこの場所からは日は差さない。淡い黄色を発色する電灯だけが俺の存在を明らかにしている。そして廊下には俺を閉ざしたかのように椅子が置かれている。単調ながらも次から次へと襲い掛かる英単語や数式、年号をバッサバッさと切り倒しLVが上がる音が聞こえそうなぐらい俺は打ち込んだ。 さて、今何時だ?昼飯で満たされた腹はまだ空いていない。夕食は家で食べられるんだろうな。このまま監禁なんてまっぴら御免だぜ。そんなことを考えたのがいけなかったのか、ハルヒが俺に問いかける。「晩御飯はパスタでいい?」本当は別のことを言いたかったのだが、何故か二つ返事してしまった。そして昼飯と同じくハルヒが大盛パスタを運んできた。ハルヒも一緒に食事を取るのだが、今日は物静かだ。何も語らない。こうもハルヒが静かだと気味が悪い。「何?足りない?おいしくない?」いやいや、このパスタは絶品だ、俺は久しくこんなパスタを食った覚えが無いとゴマをする訳ではないが、本音じみた事をこれ以上は無理というぐらいの笑顔で答える。 「あっそ、ならもっと美味しそうに食べなさいよ」少し不機嫌なハルヒ。覚られたのか?俺がパスタを平らげて少し安穏とした時を過ごしていると、遠くでチャイムが聞こえる。ハルヒは直ぐに部屋を飛び出して行った。親でも帰ってきたか?数分後、俺はドアから入ってくる奴に驚愕する。いや、人に驚愕したのではなく、俺が置かれた状況に驚愕したのだった。 「どうも、元気そうで何よりです」、ドアの向こうになんと、古泉が居た。古泉は大きなバッグを二つ携え、部屋に入ってきた。「涼宮さんに頼まれて、あなたの家まで行ってたのですよ。」何をだ?何しに俺の家に行ったんだ?俺の家が神人にでも潰されそうになったか?「いえいえ、実はこれあなたの荷物です。お母様に頼んで着替え用意してもらいました。」おい、なんで着替えがカバン二つも必要とする?「さぁ、それは涼宮さんに聞いていただかないと何とも・・・・」目を細め、溢れんばかりの笑顔で古泉は答えた。そして、コーヒーカップを3つトレーに乗せたハルヒが入ってくる。「古泉君にキョンの家から着替え貰ってきた。とりあえず1週間分ぐらい。お正月は帰ってもいいから」なんですと?何故俺は今日からお前ん家に泊まらねばならんのだ?答えろハルヒ。「行き帰りの時間が無駄でしょ。往復で1時間、そんな時間が有れば問題10問はこなせるわ。だから今日からキョンはここで勉強よ」おいおい、これって軟禁だよな?古泉、俺の人権はどこに隠した?「あなたには是非、六甲大に行って貰わなければならないのです。分るでしょう?」何故だ?「決まってるじゃない、SOS団の為よ!」とコーヒーを啜りながらハルヒが横槍を入れる。すかさず古泉が「まぁ、そういうことですね、あなた自身が一番分っている事です。」 ハルヒの機嫌を損ねないためにも俺は六甲大へ行かなければならなくなった。 色調の存在する閉鎖空間で俺は問題と格闘している。一体、今が何日の何時か分からない。多分、6日目のはず。何故多分とかといえば、俺が5回眠ったからである。太陽が恋しくて堪らない。しかし、ここから出てゆくことは許されない。脳のバックグラウンドでそんな事を考えつつ、問題を解く。ハルヒが切り出した。「キョン、模擬試験するわよ。いっとくけど、模擬だけど実戦だとおもってやるのよ。」今からかよ!飯はどうした?お茶は出ないのか?ここに軟禁されてから俺の楽しみはそれしかない。「試験が終わったら食べさせるわよ。だから頑張って。」そうハルヒは俺を見据えて呟いた。 「いい、今から60分づつ3教科のテストよ。休憩は15分づつ。もし、これで合格点を取れなかったら後半の合宿はもっと厳しくするから」おい、今でも充分なぐらい厳しいと思うんだが?「じゃ、はじめるわよ」そういって、ハルヒは俺に問題と解答用紙を配った。「時間は60分、30分過ぎて出来たら休憩してもいいわ。名前は必ず書く事。じゃ、国語からはじめ!」ハルヒの声と同時に俺は鉛筆を走らせる。お、この問題は前にやったことがある。あ、これもだ・・・・。案外、記憶に残っているもんだな。次から次へと問題を解いてゆく、まだどこも躓いていない。最後の漢文問題で一瞬筆が止まったが、解答用紙を見るとペンが動き出す。なんだこれは?この鉛筆はホーミングモードにでもなっているのか?そして問題を全て解き終えた。顔を上げるとハルヒがこっちを見ている。「あんた、カンニングしていないでしょうね?」へへ、ハルヒにしては面白い冗談だ。俺とお前以外に誰がここに居るというのだ。「じゃ、解けたんで休憩するわ」という俺にハルヒはこういった。「あんた、確認し直しなさいよ、それにまだ20分しか経ってないから。」なんですと?まだ20分・・・・信じられん、いつ俺に時間を止める能力がついたんだ。仕方が無い、見直すか。 もう一度、問題を解く。間違いない。これはもしかすると満点じゃないか?ハルヒ、この調子なら一気に出来そうだ、あとの2教科を直ぐに配ってくれ。やる気が出た俺をもう誰も止められやしない。なんだこのやる気は。今まで感じたことの無いやる気だな。そうして俺は残り2教科を解き始める。うーん、自画自賛ではないが俺の学力は飛躍的に伸びているのかも知れん。問題を解き終え、ハルヒに渡す。ハルヒは直ぐに採点に入る。少しの間の沈黙、赤ペンを走らせるキュキュという小刻みな音だけが響く。そして、顔を上げたハルヒが俺に言った。 「やっぱ教える人間が良いとこうまで変わるものね。キョン、3教科で288点、合格よ!」おお、やった!ん?俺は喜んでいる。たぶん心の底から喜んでいる。何故だ?合格すればハルヒとまた4年間一緒なんだぞ。いいのか俺?本当にいいのか?得体の知れぬ葛藤が続く・・・・「キョン、カーテン開けてもいいわよ。それから雨戸も。」言われるまま俺は窓を開け、外の景色を楽しんだ。綺麗な夕焼けが見える。「キョン、晩御飯は外で食べましょう。今日はSOS団全員集まる事になっているから」ほー、早速俺の合格祝いか、いいねー「ここまでみんなの協力があったからこの点数なのよ、あんたが全部出しなさいよ!」なんだと?俺は懲役を喰らった上に罰金まで払わされるのか!なんだかなぁ・・・・「さ、いきましょう!」ハルヒは席を立った。 いつもの駅前に到着すると、長門、朝比奈さん、古泉が居た。「みんな、今日はキョンのおごりだからしっかり食べなさいよ」ハルヒは駅前のすし屋に入る。おい、ここの寿司は廻ってないぞ!こんな所で俺が全額とか無理だろ!すると古泉が俺に耳打ちした。「心配しないで下さい。ここも我々の管轄内なので大丈夫です。」そうなのか?それを聞いて俺はほっとした。「それにここ数日間、あなたが涼宮さんと一緒にいる間、閉鎖空間は一切発生しませんでした。組織も今回の事を非常に評価しています。なので、もしあなたが白紙で答案用紙を出しても六甲大には合格できると思いますよ。ま、その必要もなくなりましたが・・・・」結局俺は人類のためにペンを持っていたわけか。ペンは剣より強し、誰かが歌ってたな。そして、俺達は腹いっぱいの寿司を頬張った。 店を出てから古泉が切り出した。「私と長門さんは少し話がありますので、ここで失礼します。」朝比奈さんも今日は他の用があるらしい。「じゃ、ここで解散ね。明日は大晦日なんで23時に集合よ!初詣に行くから。」とハルヒ。今日は30日か・・・・やっと時間が戻ってきたぜみんな頷き、笑顔で別れる。 俺とハルヒは寒空の下を並んで歩いた。「ねぇ、キョン。やれば出来るって分かった?」ああ、俺は超人だからな「あんたね、そんな風に思っていると足元掬われるわよ」冗談だ。でもハルヒ、ありがとうな。「はぁ?何言ってんの!私は団のためにやっただけだから!」そういうハルヒの頬は少し赤く染まっていた。ような気がした。「ねぇキョン、六甲大に合格できそうで嬉しい?」え?そりゃまぁ良い大学に行けるってのは嬉しいさ。「六甲大に行ける事が嬉しいの?それとも私と同じ大学に行ける事が・・・・」ん?なんだって?聞こえないぞ?「聞こえてるのに聞こえないふりするなんて卑怯よ!」 そう言いながらハルヒは俺を肘でつっつく。いつもなら俺の息が止まるほどの強さなのだが・・・ 「ああ、お前と一緒にまた4年間居られると思うだけで俺は嬉しいぜ」 その一言を言い終えたとき、ハルヒの頬を小さな星の欠片が伝い流れたように見えた。「キョン、本当に頑張ったね。良かった。」ありがとう、お前のお陰だ「まだ、合格したわけじゃないんだから。気を抜かず頑張るのよ」ハルヒは反対を向いて呟く。ああ、分かっているさ。「ねぇ、キョン、これ合格のお守り」そういうとハルヒは俺に抱きつき背伸びをした・・・・ 閉鎖空間から開放されるときのスイッチはいつもこれだ・・・・空にはいつもより多目の星が輝いていた。 涼宮ハルヒの補習 おわり
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