略奪大作戦
こんにちは、小早川ゆたかです。突然ですが、私には好きな人がいます。何で好きかと訊かれたら上手くは言えないけど、そこは察してください。でも、私の好きな人には彼女がいます。諦めきれない私は意を決してこなたお姉ちゃんに相談する事にしました。何でこなたお姉ちゃんに相談したかというと私の好きな人と同じクラスだからです。ご都合主義の設定だなんて言わないでくださいね。私が話を伝えると、お姉ちゃんは目をキラキラさせながら言いました、 「略奪愛なんてゆーちゃんもやるねー。しかも、先輩とは。」 略奪愛なんて言われたら恥ずかしくなってきちゃいました。 「ほっほ、ゆーちゃんや顔なんか真っ赤にしちゃってカワユイねぇー。でも、キョンキョンか…、あのフラグクラッシャーをしとめるには相当な努力が必要だよー。ミサキチとはラブラブだしねぇ。」 今、お姉ちゃんが話したキョン先輩に私は恋をしています。そして、ミサキチこと日下部みさお先輩がキョン先輩の彼女です。とても明るい人だったと思います。かなりの強敵です。それにフラグクラッシャーってなんだろう。なんか怪しい香りがする…。やっぱり無理かなぁ…、私がそんな事をボヤくとお姉ちゃんは胸を叩きながら言いました。 「あったしに任せなさい!キョンキョンの萌えポイントはわかってるよ。そこからキョンキョンを籠絡させようではないか。」 ほんと!?でも何でお姉ちゃんそんな事知ってるの? 「かがみのときに一度調べてたからねぇ。」 かがみ先輩もキョン先輩のこと好きだったんだ。でも、今かがみ先輩は谷口という人と付き合っています。正直あんまり格好良くないです。あれもフラグクラッシャーとかいうのが原因なの?フラグクラッシャーっていうのされたらあんな人と付き合うようになるの?私がそう質問すると、お姉ちゃんは、関係ないよ、かがみの趣味だからね、と言いました。 とりあえず安心しました。フラグクラッシャーっていうのはそこまで危険ではないようです。 そしてその後、お姉ちゃんにはキョン先輩の4つの萌えポイントというものを教えてもらいました。 「これでキョンキョンもメロメロだよ。頑張ってねゆーちゃん。」 ありがとう、お姉ちゃん。私を応援してくれて。絶対期待に応えるね。 そして翌日から私の略奪大作戦はスタートしました。 第一条 ドジッ子をアピールせよ 私はお姉ちゃんとの打ち合わせ通り、いま三年生の教室の前をわざわざ歩いています。手にはプリントの山、周りからの視線が痛いです。でもこれもキョン先輩と付き合うため!そう考えると頑張れます。するとお姉ちゃんと廊下で話しているキョン先輩が見えました。日下部先輩もいるようです。日下部先輩がいるのは予想外でしたが、ここまでは大体作戦通りです。そしてついにドジッ子をアピールするときがきました。 ズシャーッ 私は勢いよく転びました。 お姉ちゃんによると、ここでキョン先輩がプリントを拾い上げるのを手伝ってくれて、プリントを拾ってくれた後に「ごめんなさい。私ドジで。」と言って舌を出せば、キョン先輩はメロメロになるそうです。 しかし、わたしを手伝ってくれたのは日下部先輩でした。 「大丈夫かーチビッ子。わたしも手伝うぞぉ。」 そう言って私のプリントを拾い半分持ってくれました。 作 戦 失 敗!! これじゃあ日下部先輩の優しさをキョン先輩の前で見せつけただけです。しかも、えらいだろー頭撫でてくりー、とかいって頭撫でてもらってます。見せつけないでください!! でも私にはまだ3つの手段が残されています。次こそは必ずキョン先輩を奪ってみせます! 第二条 家庭的なところをアピールせよ 昼休み、私はお姉ちゃんに言われてお姉ちゃんの教室までお弁当をもっていきます。ここではお姉ちゃんがお弁当を忘れたのでお姉ちゃんのところまでお弁当を持っていき、作りすぎたお弁当をキョン先輩にも渡すという流れになっています。ちなみにお弁当は私の手作りです。そりゃあもう苦労しましたよ。朝は5時から起きて、お姉ちゃんに借りたDSでお料理の作り方を必死に見て作りました。おかげさまで私の体はところてんのようです。あれ、表現おかしいですか?でも、今はそんな事気にしていられません。 お姉ちゃんの教室の着いて、近くにいる人にお姉ちゃんを呼んでもらいました。お姉ちゃんはこっちに気付くとキョン先輩をひきずってきました。ちょっとうらやましいなあ、それ。私はお姉ちゃんにお弁当を渡し、計画通りキョン先輩にもお弁当を渡しました。 「これ、俺にくれるのか?」 「は、はい。作りすぎちゃって。」 「でも、俺弁当あるしなあ…。」 私はこの時悟りました。なるほど、これがフラグクラッシャーたるゆえんかと。 ここはもう一押ししなきゃ駄目なんですよね。私が迷惑でしたか、と上目遣いで訊きました。この上目遣いも昨日お姉ちゃんに教えてもらいました。するとキョン先輩は、いやもらうよ、ありがとうな、と言って笑ってくれました。 ………………………………キターー(・∀・)ーーーー!! 今ならアイキャンフライと言って橋の上から飛べそうです。警察官?そんなの関係ありません。何か言われたら巨人が優勝したから、と言えばOKでしょう。 私がそれじゃあ、と言って帰ろうとすると、さらに嬉しいことが起きてくれました。 「何で帰るんだ?一緒に食おうぜ。」 私はそれを聞いたときホークスが優勝を逃した悔しさなど微塵もなく消え去っていました。ホークスは来年また頑張ればいいんですよ。斉藤完全復活で優勝しましょう。 私はうかれる気持ちを抑え、はい、と言ってお弁当を一緒に食べることにしました。キョン先輩は私のお弁当を食べるから、と言って私にキョン先輩のお弁当を渡してくれました。あ、でもお箸は交換しませんでした。ちょっと残念です。 私が幸せな気持ちでお弁当を食べていると、教室のドアがいきなり開き、日下部先輩が入ってきました。 「キョーン!一緒に弁当食べようぜぃ。」 ああ、またですか。ことごとく邪魔してくれますね。でも、仕方ないですね。キョン先輩の彼女ですから。 そういうわけで、今私たちは3人でお弁当を食べています。日下部先輩は私にもいろいろ話しかけてくれました。やっぱり強敵ですね。正直楽しいです。 「あ、キョンそれ上手そうだなー。」 日下部先輩が私の作ったお弁当に向かって言いました。キョン先輩はやれやれ、と言って日下部先輩にお箸を近づけました。これは、あーんって言うやつですか?私はまた見せつけられるんですか?はい、やられました。日下部先輩は頬を赤く染めながらキョン先輩のお箸に挟まれていたおかずを食べたのです。おいふぃなー、と言いながらたべる日下部先輩は女の私から見ても可愛かったです。もうやめてほしいんですが。しかし、この2人はこれだけでは飽きたらず、今度は日下部先輩がキョン先輩の顔にお箸を近づけました。挟んでいるのはミートボールです。ちなみに日下部先輩のお弁当は、六割はミートボールで埋め尽くされていました。 私はそんな2人を見ながらお弁当を食べました。ああしょっぺぇ、キョン先輩のお弁当塩味強いですよ……。 結果的にこの作戦も失敗気味ですね。次こそは……次こそは…… 第三条 ツンデレで攻めよ ツンデレって何? これは私がアドバイスを訊いた日にした質問です。お姉ちゃんが言うには、かがみ先輩みたいな人ということらしいです。よくわかりません。ちょっと恐くなったらいいんでしょうか。悩んでいても始まらないので、私は取りあえず試してみることにしました。 「キ、キョン先輩、なんでいつもボーっとしてるんですか。みんな迷惑してます。」 私がキョン先輩にそんなことを言うと、 「今日は虫の居所が悪そうだな…。まあ、機嫌直せよ。」 そう言って、日下部先輩と手を繋いで帰って行きました。私はそんな2人のすがたを見て思いました。 ………かがみ先輩みたいにって……、かがみ先輩結局ダメだったじゃん。 気付くのが遅かったみたいです。私はキョン先輩に不機嫌と思われてしまっただけでした。 次でもう最後だけど大丈夫かなあ……。もう諦めようかな……。 ──諦めたらそこで試合終了です。 え、今の声は!?私が声をする方を見るとカーネルおじさんがいました。……なるほどオーバーソウル イン カーネルおじさんですね。ハマりすぎです。でも確かに安西先生の言うとおりです。 だから私は諦めませんよ……。 ちなみになぜ私がシャーマンキングとスラムダンクを知っているかというと、お姉ちゃんの影響です。便利ですね、この設定。 第四条 最終手段はポニーテール 私はこの教えを信じ朝からポニーテールにして学校に行きました。お姉ちゃんの言うところによると、キョン先輩はポニーテール萌であると同時にとても厳しく、かがみ先輩がポニーテールにしてきたときは、ポニーというより武士みたいだ、と言って一刀両断したそうです。 かがみ先輩にその時のことを詳しく訊こうとすると、どんどん体が赤くなってデビルかがみになったので訊くのをやめました。キョン先輩に何と言われるかわかりませんが、私にはもうポニーテールしか残されていません。 そして今は放課後になっています。今日はまだキョン先輩に会えてないのでキョン先輩を探しに行くと教室にいました。私が声をかけようと思い教室に入ろうとすると日下部先輩と抱き合っているのが見えました。私は顔を真っ赤にしながらその光景を眺めていると、2人の顔が近づいていくのが見えました。私は思わずその場から走り去りました。 「やっぱり無理だったんだよね……。」 私は落ち込みながら下校しました。さっきまで小さな期待を寄せていたポニーテールも、今となっては悲しみを募らせるだけです。私が放心状態のまま歩いていると、横から大きな音がしました。 ブブーーッ 私が顔を横に向けると大きなトラックがすぐ近くまで来てました。ひかれるっ!!、私がそう思い目を閉じるとドンッという衝撃を後ろから感じました。 思ったより痛くないな…。 私は目を開けて辺りを見渡しました。すると、周りの人たちはみんな私の後ろに注目していました。私がうしろを振り向くとそこには日下部先輩が血だらけで倒れているのが見えました。 「日下部先輩っっ!!」 私がそう叫ぶように言うと、日下部先輩はこっちを見て言いました。 「よおチビッ子、大丈夫か……?」 私が泣きながら頷くと、日下部先輩は笑いながら言いました。 「さっき教室の外にいるチビッ子の姿が見えてさ、変な様子だったから追っかけてきたんだぜ。まチビッ子が無事でよかった。」 私は視界がぼやけるくらい泣いていました。もちろん悲しいのもあるけどこんなに優しい人からキョン先輩を奪おうとした自分を情けなく思って流した涙でもありました。 「チビッ子……最後にお願いしたいことがあるんだ……聞いてくれよ…、……キョンを……よろしくな。」 微笑みながら彼女はそう言い、そして目を閉じました。 ~~十年後~~ 私はいまとても幸せです。結婚して子供も生まれました。生まれたその子は、女の子なんだけど男の子っぽく明るい性格をしていて、私の夫の初めての彼女にそっくりでした。私はこの子を見るたび今でも泣きそうになります。そして、そのたび夫から多くの愛を受け取ります。私はこの幸せを絶対に手放したりはしません。自分のため、家族のため、そして天国に逝った彼女との約束のためにも……… fin.
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